「家族信託の手続き、自分でできたら費用も抑えられるのに…」そう考えたことはありませんか?
実は、家族信託は専門家に依頼しなくても、自分で手続きすることが可能です。ただし、契約書の作成や信託口口座の開設、登記など、注意すべきポイントも多く、一歩間違えると「信託が無効になる」「税金が余分にかかる」リスクもあります。
記事のポイントは次の通りです。
- 家族信託は法律上、自分で手続きすることが可能だが、信託法や税務など幅広い専門知識が必要であり、実務の難易度は高い。
- 自分で手続きする最大のメリットは、専門家への依頼費用を抑えられること。ただし、公正証書作成や登記などの実費は必要。
- 契約書の不備や手続きミスがあると、信託が無効になったり、余計な税金が発生したり、トラブルにつながるリスクがある。
- テンプレートの流用ではなく、家族の状況や財産内容に応じたオーダーメイド設計が重要で、慎重な準備が求められる。
- コスト最優先で、自力で頑張れる自信がある人は「自分で手続き」にチャレンジ、確実性・安心感を重視したい人は「専門家に依頼する」ことをオススメする。
今回の記事では、契約書の作成から口座の準備、登記まで必要なステップを順を追って説明します。
目次
1.家族信託は自分でできるのか?
家族信託とは、親の財産を信頼できる家族に託し、契約に基づいて財産管理を行う仕組みです。高齢による判断能力の低下や病気に備え、本人に代わって家族が財産を守る手段として、近年注目されています。
結論:家族信託は自分でできるが、実務は“難易度高め”
家族信託は、法律上「自分で手続きすることが可能」です。実際、信託契約書は本人と家族が納得して作成し、双方が合意すれば法的に有効となります。専門家に依頼しなくても、最低限の手続きは自力で完結できます。
自分で家族信託を手続きする最大のメリットは、費用を抑えられることです。専門家に依頼すると、契約書作成から信託登記まで、少なくとも40万円以上の費用がかかるケースが一般的ですが、自分で行えば、実費(登記費用や公証役場手数料など)だけで済ませることができます。
一方で、信託契約書の作成や各種手続きには、信託法・民法・税務・登記など幅広い知識が求められ、実務の難易度は決して低くありません。たとえば、
- 信託契約書に必要な条項が抜けている
- 税務上の設定を誤り、贈与税・不動産取得税が発生する
- 信託口口座を開設できない
- 信託登記の申請書に不備があり、登記ができない
こうした問題が生じると、家族信託自体が無効になったり、思わぬ税金負担が発生するリスクがあります。
特に信託契約書は、単なるテンプレートでは対応できず、財産の種類・家族関係・将来のリスク(認知症、相続、資産売却など)をふまえたオーダーメイド設計が重要です。
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2.【手順】家族信託を自分でやる流れと必要書類
家族信託の手続きを自分で行うことは法律上可能ですが、適切なステップを踏まないと無効になったり、後でトラブルになったりするリスクがあります。
このセクションでは、家族信託を自分で進める際の全体の流れと各ステップで必要な書類を分かりやすく解説します。
STEP❶:家族信託の目的・内容を決める
家族信託の目的や内容は、一人で進めると、後からトラブルになるリスクが高まりますので、家族全員で共有・納得したうえで進めることが大切です。以下の項目について、しっかりと話し合いをしていきましょう。
1)家族信託の目的を明確にする
家族信託の一番最初のステップは「なぜやるのか」という目的を明確にすることです。目的が明確になれば適切な契約内容が見えてきて、家族全員が安心して進められます。
目的が曖昧なまま進めてしまうと、本来達成したかったゴールに到達できないリスクがあるので注意が必要です。
家族信託でよく設定される目的
- 認知症対策
認知症になった場合でも、財産管理や生活費の確保がスムーズに行えます。 - 相続のトラブル回避対策
相続トラブルが予想される場合、だれに残すかをを事前に示す手段となります。 - 障害を持つ子どもの将来の生活費支援
障害を持つ子どもがいる場合、その将来を確実にするためにも家族信託が役立ちます。 - 事業承継対策
自分が経営する企業をスムーズに次世代に引き継ぐための自社株式の承継や資金確保に有用です。
例えば、「親が高齢になり介護費用の支払いが心配」というケースでは、親名義の財産を子どもがスムーズに管理できるよう家族信託を活用するのが効果的です。一方で、「親の財産を生前に子どもへ移したい」場合には、生前贈与など別の方法が適している場合もあります。
2)どの財産を信託するか決める
基本的には、金銭的価値がある預貯金、自宅、収益不動産、有価証券などは信託財産にできますが、信託できない財産もあるので注意が必要です。
信託財産は「受託者が管理・処分できる財産」になり、それ以外の財産は本人が管理し続けます。非信託財産については、任意後見や遺言など別の手段を検討する必要があります。
3)受託者の権限を決める
受託者には、信託財産を管理・運用・処分する権限が与えられます。しかし、家族とはいえ、他人の財産を管理する権限を与えるので、責任や義務も伴います。どこまで権限を持たせるかは慎重に決めましょう。
権限に制限を加えることも可能です。例えば「不動産管理はOKだが売却はNG」という設定もできます。受託者の権限は信託契約の運用をスムーズにする重要な要素なので、信託する財産の種類や目的に応じて慎重に検討しましょう。
4)家族信託における役割を誰に依頼するか
家族信託には複数の役割があり、誰がどの役割を担うかが信託の成否を左右します。自分で手続きをするためには、それぞれの役割を理解し適切に選定することが重要です。
受託者は、財産を管理・運用する重要な役割を果たすため、特に信頼性が求められます。もし適切な受託者がいなければ家族信託自体が困難となり、成年後見、任意後見制度や遺言など他の手段を探る必要が出てきます。
5)いつまで家族信託を続けるか決める
信託契約の期間と終わらせ方も重要な要素です。
- 一般的な期間設定:
「委託者兼受益者(親)の死亡まで」が多い - 状況による設定:
「父母両方の死亡まで」など柔軟な設定も可能 - 具体的な期間:
「契約発動から10年間」「受益者が満○歳に達するまで」
ただし、数十年にわたる長期の信託契約はリスクが高まります。家族状況の変化や法改正など、長い期間で多くの要素が変わる可能性があるからです。想定外の事態に備えて、柔軟性も考慮しましょう。
受益者連続信託について
複数世代にわたって財産を承継させる「受益者連続信託」も可能です。例えば第1受益者を親、第2受益者を子、第3受益者を孫とすることで、計画的に財産を受け継げます。
6)信託財産を誰に引き継ぐか
家族信託が終了した際に信託財産を誰に引き継ぐかは、信託契約の締結段階で明確にする重要な事項です。信託の終了は「委託者兼受益者の死亡」によって一般的に終了します。その場合、信託財産は契約で定めた”帰属権利者”に帰属します。
信託終了後の財産帰属先を今はまだ決めあれないというような場合、契約に「相続人で協議する」といった条項を含めることも可能です。
STEP❷:信託契約書を作成する
家族信託の信託契約書は、信託の運用や相続を左右する“設計図”です。内容が不十分だったり、曖昧な表現があると後々トラブルの原因になります。
STEP❶で家族と話しあったことを明文化していく作業ですが、書き方がありますので一つ一つ確認していきましょう。
①契約の趣旨
この契約が家族信託であることを明記します。冒頭に「委託者は受託者に財産を信託し、受託者はこれを引き受けた」といった文言を入れましょう。
②信託の目的
「認知症対策」「相続トラブルの予防」「障害を持つ子の生活支援」など、何のために信託を行うのかを具体的に記載します。目的が明確だと、受託者の判断基準や財産管理の指針にもなります。
③信託財産
どの財産を信託の対象にするかを明確に記載します。不動産、預貯金、株式など、対象ごとに具体的に書き出しましょう。「信託した財産」だけが契約の効力範囲となるため、漏れなく記載することが重要です。
④契約の当事者(委託者・受託者・受益者)
それぞれの氏名・住所・生年月日などを明記します。一般的には「委託者=受益者」とすることで贈与税リスクを避けることが多いですが、家族構成や目的に応じて設定しましょう。
⑤受託者の権限・義務
受託者がどこまで財産を管理・運用・処分できるか、必要に応じて具体的に定めます。たとえば「不動産の売却権限を与えるか」「賃貸のみ許可するか」など、将来の運用を見据えて設定しましょう。また、将来の受託者が亡くなった場合などの状況変化を想定して、契約内容の変更方法なども盛り込んでおくと安心です。
⑥信託期間・終了事由
信託をいつまで続けるか、どんな場合に終了するかを記載します。多くは「委託者(親)が亡くなるまで」などとしますが、家族の状況に応じて柔軟に決めることができます。
⑦信託終了後の財産の帰属先
信託が終了したとき、財産を誰に引き継ぐか(帰属権利者)を明確に記載します。
以下のブログには契約書のひな形がダウンロードできます。ただしそのまま使うのではなく、必ず自分たちの状況に合わせてカスタマイズしましょう。
STEP❸:信託契約書を公正証書にする
家族信託の契約書は、必ずしも公正証書にする義務はありません。しかし、安全性と信頼性を重視するなら、公正証書で作成するのが一般的です。
万が一のトラブルを防ぎ、安心して信託を運用するためのポイントを解説します。
公正証書にするメリット
公正証書とは、公証人(法務大臣が任命した法律の専門家)が作成する公的文書です。これには次のようなメリットがあります。
- 法的証明力が高い:
第三者に対しても契約の存在と内容を強く証明できる - 改ざん・紛失リスクの低減:
原本が公証役場に保管されるため安全 - その後の手続がスムーズ:
金融機関や法務局など第三者への説明がスムーズになる
特に家族信託は、親族間の契約になるため、信頼性を担保する手段として公正証書化が推奨されます。
公正証書の作成手順
自分で公証役場に依頼して、公正証書を作成する手順は次のとおりです。ただし、家族信託はまだ新しい制度のため、公証人によって経験や知識に差があります。可能であれば信託実務に詳しい公証役場を選びましょう。
①公証役場に予約する
まずは公証役場に電話やメールで予約を入れます。信託契約書の内容を事前に伝え、必要な書類を確認します。
②必要書類の準備
– 信託契約書案
– 委託者・受託者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
– 住民票・印鑑証明書 など
③公証人との打ち合わせ
公証人と打ち合わせを行い、契約内容を確認と法的アドバイスを受けて修正対応をします。
④署名・押印と公正証書の完成
契約内容に問題がなければ、公証役場にて署名・押印を行い、公正証書が作成されます。
もし委託者が高齢や病気で公証役場に出向けない場合は、公証人の出張も可能です(※別途出張費用がかかります)。早めに相談しておきましょう。
私文書で作成する方法
家族信託は、自宅のパソコンで信託契約書(私文書)を作成することも可能です。しかし、私文書では紛失や盗難のリスクが高く、親族や第三者から訴訟リスクもあります。
信託口口座の開設も難しく、受託者が破産すると信託財産を失う可能性が高くなります。私文書での家族信託契約書は短期間かつ低コストで設定できますが、その後の管理や法的保証には課題があります。
契約内容や信託財産の大きさ、リスクを慎重に考慮し、最適な方法を選択しましょう。
STEP❹:信託口口座を開設する
家族信託をスムーズに運用するためには、信託財産専用の口座を準備することが欠かせません。この口座を使うことで、個人財産と信託財産を明確に区別でき、万が一のトラブル時にも、財産管理の透明性を保つことができます。
信託口口座とは?
信託口口座とは、【受託者名義+信託口】の名前で開設される、信託財産管理専用の銀行口座です。
信託法上、受託者には「分別管理義務」があるため、信託財産を明確に区分して管理することが求められており、一般の個人口座とは異なり、信託契約に基づいて管理される資金専用の口座になります。
銀行での信託口口座開設の流れ
信託口口座を開設するには、以下の流れで進めます。
①対応金融機関の選定
信託口口座は、すべての銀行で開設できるわけではありません。主に大手信託銀行や一部の都市銀行、地方銀行、ネット銀行などが対応しています。まずは希望する銀行が信託口口座の開設に対応しているかを必ず確認しましょう。
②事前相談・審査
口座開設前に、信託契約書案を銀行に提出し、法務チェックや事前審査を受ける必要があります。銀行によっては「専門家が作成した信託契約書」や「公正証書であること」を必須条件としている場合も多いです。
また、信託契約書が金融機関の条件に合致しない場合、口座開設を断られることがあります。信託契約書の案を作成する段階で、金融機関に打診するようにしてください。
③必要書類の準備
– 受託者の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
– 受託者の届出印(実印や銀行印)
– 信託契約書(公正証書の謄本)
– 委託者・受託者の印鑑証明書、住民票、戸籍謄本など(銀行によって異なる)
– 必要に応じて家系図や受益者の情報など
④銀行窓口での手続き
書類を持参し、銀行窓口で口座開設手続きを行います。銀行によっては、委託者・受託者双方の同席を求められる場合もあります。手続き後、1週間~10日ほどで通帳やキャッシュカードが届きます。
⑤信託財産の入金・管理開始
開設した信託口口座に、委託者から信託金銭を振り込み、受託者による管理がスタートします。
信託口口座開設が難しい場合
信託口口座がすぐに開設できない場合は、受託者の個人口座を「家族信託専用」として暫定利用する方法(信託専用口座)もあります。
この方法では、金融機関内部では「受託者の個人口座扱い」となるため、受託者の死亡や破産などによって信託金銭が凍結・差押えのリスクがあります。あくまでも「暫定処置」と割り切り、正式な信託口口座を早めに開設しましょう。
STEP❺:不動産がある場合は信託登記を行う
家族信託で不動産を信託財産に含める場合、「所有権移転登記」と「信託登記」が必要です。
これにより、不動産の名義が委託者(元の所有者)から受託者(管理者)へ移り、信託契約の内容が第三者にも明確になります。正確な信託登記を行うことで、信託財産の保護や管理がスムーズに進みます。
信託登記の手順
①必要書類を準備する
– 登記申請書(法務局窓口で入手可)
– 固定資産評価証明書(または固定資産税課税明細書)
– 不動産の権利書(登記済証)または登記識別情報
– 登記原因証明情報(信託契約書の公正証書など)
– 信託目録に記載する情報
– 委託者の印鑑証明書
– 受託者の住民票
– 委託者の実印、受託者の認印
– 委託者・受託者の本人確認資料(運転免許証など)
必要書類は管轄の法務局や信託内容によって異なる場合があるため、事前に確認しましょう。
②登記申請書を作成・提出
所有権移転登記と信託登記は、1つの申請書で同時に申請できるため、書類が揃ったら不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。郵送や電子申請も可能ですが、窓口申請の場合は平日の日中に行く必要があります。
③登録免許税の納付
登録免許税は、土地は固定資産税評価額の0.3%、建物は0.4%が目安です。所有権移転登記は家族信託の場合、特例で非課税となることがありますが、信託登記には必ず登録免許税がかかります。
④登記完了の確認
登記が完了すると、登記事項証明書に受託者名や信託条項などが記載されます。信託目録には、信託契約の概要や受益者、信託の目的などが公示されます。
登記された内容は誰でも閲覧できるため、慎重に扱う必要があります。信託財産としての不動産の将来的な運用を考慮し、必要な条件や制限、受益者代理人の同意なども登記します。特にプライバシー保護の観点から、公開したくない内容は工夫して記載しないようにします。
STEP❻:信託開始後の管理・報告体制を整える
家族信託が正式に成立した後、受託者は信託財産に関する契約や管理業務を行う責任を負います。
受託者が行う契約は肩書付きで行う
受託者として契約を結ぶ場合、契約は信託財産に対するものであり、受託者個人の財産には影響しません。このため、契約書や文書では「受益者〇〇 受託者〇〇」と明記する必要があります。
信託用管理口座で公共料金等を引き落としする
信託契約後に専用の預貯金口座(信託用管理口座)を開設します。この口座から公共料金や固定資産税を引き落とすために、各サービス提供者に連絡し、口座振替の手続きを行います。
不動産を信託した場合の火災保険名義変更
信託が成立すると、不動産の管理者が受託者に変わるため、火災保険の名義変更が必要になる場合があります。保険会社に確認し、必要な手続きを行いましょう。
収益物件は入居者へ賃貸人が代わったことを通知する
信託不動産の収益物件では、信託成立後に新しい賃貸人(受託者)の名前や連絡先、賃貸料の振込先を入居者に通知します。
信託財産の帳簿作成と収益があれば、毎年信託計算書の提出が必要
信託財産から年間3万円以上の収益がある場合、次年度の1月31日までに税務署に信託計算書を提出します。また、信託不動産からの収益がある場合、確定申告時に明細書を提出します。
受益者への報告義務
受託者は信託帳簿と信託事務処理に関する書類を定期的に作成・保管し、最低でも年に1回は「財産状況開示資料」を作成して受益者に報告する必要があります。
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3.家族信託を自分でやるメリット・デメリット
家族信託は、自分で手続きをすることで費用を大幅に下げることができますが、それにはリスクが伴うことを理解しておく必要があります。専門家に依頼せずに家族信託を進めることで、思わぬ問題が発生する可能性が多分にあります。
3-1.家族信託を自分でやるメリット
メリット❶:費用を大幅に節約できる
専門家(司法書士・弁護士・税理士など)に依頼すると、契約書作成・公正証書化・登記などで最低でも40万円以上かかることが一般的です。
一方、自分で手続きを行えば、必要なのは公証役場の手数料や登録免許税などの実費だけとなり、トータルコストを大幅に抑えることができます。
メリット➋:仕組みを深く理解できる
自分で設計・契約書作成を行う過程で、信託の構造や税務・登記に関する知識も身につきます。仕組みを正しく理解しておくことで、信託運用中に何か問題が起きた際にも冷静に対応できる力が養われます。
3-2.家族信託を自分でやるデメリット・リスク
デメリット❶:契約書の不備で信託が機能しない
家族信託の契約書を独学で作成する場合、
- 必須条項の漏れ
- 将来リスクへの対応不足
- 言葉のあいまいさ
といった問題が生じやすくなります。
もし、銀行・法務局・税務署など、各所で契約内容の不備を指摘され、信託が機能しない可能性もあるので注意が必要です。特に、受託者が死亡・破産した場合の対応条項が抜けていると、信託が途中でストップしてしまう重大なリスクがあります。
デメリット➋:税務設計ミスで余計な税金が発生
家族信託は、基本的に贈与税や不動産取得税がかからず、信頼できる家族が委託者の財産を管理できることが大きなメリットです。しかし、「受益者」や「帰属権利者」の設定によっては、余計な税金がかかるリスクがあります。
例えば、認知症の妻のために子に財産管理を託す場合、受益者に母を設定すると、受益権の価格(信託財産の価格)に対して贈与税が課税されてしまうのです。
デメリット❸:信託口口座の開設ができない可能性
家族信託を利用する際の注意点として、信託口座の開設に関する問題が挙げられます。信託財産としての金銭を適切に管理するため、信託口座の開設は不可欠です。しかしその過程で、どの銀行や金融機関が最適かの判断が求められ、更に口座開設の手続きにはさまざまな細かい点をクリアする必要があります。
金融機関によっては、専門家が関与する信託契約書でなければ受け付けないケースもあります。
デメリット❹:時間・労力・精神的負担が大きい
家族信託は、信託契約書の作成、必要な書類の準備、銀行や法務局での手続きなど、各ステップにおいて多くの時間と労力が求められます。特に、以下のような関係機関との調整や手続きの進行管理も大変です。
- 信託契約書の作成と内容の精査
- 各種必要書類の準備と確認
- 銀行での信託口口座開設手続き
- 不動産がある場合の法務局での登記申請
また、家族信託は相続と直結するため、家族全員での事前共有が極めて重要です。家族信託は仕組みが複雑なため、メリット・デメリットを含めて家族間でしっかり話し合い、全員の理解と納得を得ながら進めることが、将来のトラブル防止につながります。
家族信託は適切に行えば大きな安心をもたらしますが、手続きの負担と家族関係への配慮を忘れずに進めましょう。
4.自分で手続きする際の費用と節約ポイント
家族信託を自分で行う場合の一番の理由は、費用にあることが多くあります。どの程度費用が異なるか、専門家に依頼した場合との費用比較や節約できるポイントと注意点を解説します。
4-1.自分で家族信託を手続きする場合にかかる主な費用
自分で家族信託の手続きを進める場合、全体の費用はおおよそ20万円前後が目安です。主な内訳は以下の通りです。
| 自分で手続きをしてもかかる費用 | |
| 項 目 | 費用の目安 |
| 信託契約書を公正証書化する際の費用 | 3.3~11万円 |
| 不動産の信託登記にかかる登録免許税 | 固定資産評価額の0.3~0.4% |
| 書類収集・交通費など | 5,000円~1万円程度 |
金銭信託のみ・私文書作成のみなら200円だけで済みますが、実際には公正証書化+不動産登記まで行うのが一般的なため、10万円以上かかるケースが多いです。
4-2.専門家に依頼した場合との費用比較
| 専門家への報酬 | |
| 項 目 | 報酬 (相場) |
| コンサルティング報酬 | 信託財産評価の1.1%程度(最低33万円) |
| 信託契約書作成報酬 | 11~16.5万円 |
| 信託登記報酬 | 11~16.5万円 |
専門家に依頼すると、合計で50万~100万円程度かかることも珍しくありません。
4-3.家族信託の費用を節約するポイント
家族信託は「できるだけ費用を抑えたい」というご相談が多い制度です。自分で手続きを進める場合はもちろん、専門家に依頼する場合でも、ちょっとした工夫で大きなコストダウンが可能です。ここでは、特に効果的な2つの節約ポイントを解説します。
節約❶:信託財産を必要最低限に絞る
家族信託にかかる費用は、信託財産の評価額によって大きく変動します。
- 公正証書作成手数料:
信託財産の価格によって決まる - 登録免許税:
不動産固定資産評価額に基づく - コンサルティング報酬:
信託財産総額の一定割合
つまり「本当に管理したい財産だけを信託財産に設定する」ことが節約になります。
たとえば、預金すべてを信託せず「資産凍結されては困る分」だけに限定したり、将来的に売却予定の不動産だけを信託財産に含めるといったように、信託財産を最小限に絞ることで、手続き全体のコストを大幅に抑えられます。
節約➋:一部を専門家に依頼する
もしコストをさらに抑えたい場合は、「最初からすべて専門家に丸投げ」ではなく、要所だけ専門家のサポートを受ける方法も有効です。
たとえば・・・
- 信託契約書のチェックサービスを利用する:
自分で作成した契約書案を専門家が添削・修正してくれるサービス - 設計段階だけコンサルティングを受ける:
信託スキームの設計まで専門家に相談し、細かい手続きは自分で進める - 専登記や口座開設のみ依頼:
専門的な登記申請や金融機関対応だけピンポイントで外注
上記のようにポイントに絞って専門家に依頼することで、安心感を確保しながらも、全体のコストを大幅に抑えることができます。
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5.専門家に依頼する場合との違いと費用比較
5-1.自分でやる vs 専門家に依頼
家族信託は、設計・契約作成・登記・口座開設など、複数の専門領域が関わる複雑な手続きです。費用を抑えたいなら「自分で手続き」、安心・確実性を重視するなら「専門家に依頼」ということになりますが、改めて比較しながら見ていきましょう。
費用比較
※信託財産や依頼範囲によって費用は変動します。また、不動産を含む場合や財産規模が大きい場合は、専門家報酬も高額になります。
サポート・リスク・安心感の違い
2つの比較表を見ると、
- コスト最優先で、自力で頑張れる自信がある人 → 自分で手続きにチャレンジ
- 確実性・安心感を重視したい人 → 専門家に依頼するのがおすすめ
家族信託は、一度設計すると長期間運用することが前提の仕組みです。後悔しないためにも、自分に合った方法をじっくり検討してみましょう!
5-2.どの専門家に依頼するのが効果的?
家族信託を依頼できる専門家には、いくつか種類があります。それぞれの特徴を理解して、最適な依頼先を選びましょう。
不動産を含む場合は司法書士、税務が絡む場合は税理士、家族間の紛争リスクが高い場合は弁護士が適しています。詳しい選び方はこちらの記事でも解説しています。
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6.他の制度(任意後見・遺言等)との併用も検討
家族信託は、認知症対策や財産管理に非常に有効な制度ですが、家族信託だけですべてをカバーできるわけではありません。特に、信託に含めなかった財産や、医療・介護契約などの手続きには限界があります。
- すべての財産を信託に含めると管理が煩雑になりやすく、家族の心理的負担も増大
- 信託財産以外の財産が相続時に遺産分割の対象となり、思わぬトラブルの原因に
このため、家族信託と他の制度の併用が重要です。
6-1.任意後見制度との併用
任意後見制度は、本人が元気なうちに後見人と内容を契約で決めておき、判断能力が低下した時に発動する制度です。任意後見でできることは契約書の内容次第ですが、以下のようなことが可能です。
■ 医療・介護サービスの契約手続き
■ 施設入居・転居に関する契約
■ 年金・保険手続きなど
■ 預貯金の出し入れ、口座管理
■ 公共料金(電気・ガス・水道)の支払い
■ 年金・保険金などの受領・手続き
■ 必要に応じた資産の売却や購入(※契約内容による)
任意後見制度と家族信託の機能比較
| 項目 | 家族信託 | 任意後見 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 財産管理・承継 | 身上監護(生活支援) |
| 手続きの開始 | 信託契約成立時から開始 | 本人の判断能力低下後に開始 |
| 家庭裁判所の関与 | 基本なし | 任意後見監督人が選任される |
「任意後見制度 + 家族信託」の活用方法
家族信託と併用することで、判断能力低下前は家族信託で柔軟に財産管理、低下後は任意後見で生活面までサポートすることができます。また、信託財産は「家族信託」、信託財産に含まれない財産の管理や身上監護を「任意後見制度」、というようにそれぞれ契約書で定めることができます。
ただし、両制度の内容が重複・矛盾しないように設計する必要があるので、併用を考えている場合は専門家に依頼することをオススメします。
6-2.遺言書の作成と併用
遺言書は、信託財産以外の財産や将来発生する可能性のある財産の承継先を定めることができます。家族信託と併用することで、漏れのない相続対策が可能になります。遺言書を公正証書で作成すると法的証明力が強まり、相続発生時に遺言書の検認や遺産分割協議が不要となり、手続きを簡略化できます。
一般的に、家族信託では全ての財産を信託することはないため、信託外の財産については遺言を併用して定めておくことが効果的です。これにより、包括的な財産管理と円滑な相続が実現します。
7.まとめ
- 家族信託は法律上、自分で手続きすることが可能だが、信託法や税務など幅広い専門知識が必要であり、実務の難易度は高い。
- 自分で手続きする最大のメリットは、専門家への依頼費用を抑えられること。ただし、公正証書作成や登記などの実費は必要。
- 契約書の不備や手続きミスがあると、信託が無効になったり、余計な税金が発生したり、トラブルにつながるリスクがある。
- テンプレートの流用ではなく、家族の状況や財産内容に応じたオーダーメイド設計が重要で、慎重な準備が求められる。
- コスト最優先で、自力で頑張れる自信がある人は「自分で手続き」にチャレンジ、確実性・安心感を重視したい人は「専門家に依頼する」ことをオススメする。
自分で家族信託の手続きをする場合には、費用を節約できる反面、専門的な知識、経験不足による思わぬリスクが発生する可能性が高いです。我が家にとってどんな対策が必要なのか、専門家と是非相談しながら進めていくことをおススメします。
























司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

















































































































































