相続登記にはさまざまな必要書類の提出が求められます。どのような書類が必要なのかまとめて解説するので、ぜひ参考にしてください。また、遺言書どおり、法定相続分ずつなどのパターンに分けて、どのような書類が必要かについても解説します。
今回の記事のポイントは以下のとおりです。
- 相続登記には被相続人の戸籍謄本や住民票除票、相続人全員の戸籍謄本など必要書類が多い
- 遺言どおりに相続するか、法定相続分で相続するかなどによって必要書類も変わる
- 被相続人の除籍謄本が滅失して取得できないときは自治体の証明書が必要になることがある
- 相続登記の手続きが難しいときは司法書士などの専門家に依頼する
本記事では、相続登記の必要書類について詳しく解説します。また、書類が集められないときの対処策についても紹介しています。相続登記は2024年4月1日から義務化が予定されており、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に手続きをすることが必要です。スムーズに手続きを行うためにも、相続登記の必要書類について押さえておきましょう。
相続登記は必要書類が多く、手続きに手間がかかる傾向にあります。複雑な手続きをシンプルに進める方法については、次の記事で詳しく解説しています。相続関連のトラブルを回避するためにも、ぜひ参考にしてください。
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目次
1.【相続登記の必要書類】一覧表で紹介
相続登記を行うにあたって、必要になる書類とそれぞれの入手する場所は以下のとおりです。
相続登記の必要書類 | 入手する場所 |
被相続人の戸籍謄本 | 被相続人の本籍地の市区町村役場 |
被相続人の住民票除票 | 被相続人の住民票がある市区町村役場 |
相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 |
相続人全員の印鑑証明書 | 各相続人の住民票がある市区町村役場 |
登記事項証明書 | 法務局 |
固定資産評価証明書 | 不動産の所在地の市区町村役場 |
法定相続情報一覧図(相続関係説明図) | 法務局 |
委任状 ※司法書士に依頼する場合 | 司法書士 |
それぞれの書類について、詳しく見ていきましょう。
1-1.被相続人の戸籍謄本、住民票除票
引用元:東京都北区「戸籍全部事項証明書」
被相続人(亡くなった方)が生まれたときから死亡するまでの戸籍謄本が必要です。結婚したときや転籍したときなどは、同一人物であっても新たに戸籍が作られます。相続登記のときには被相続人が生まれたときから死亡するまでの連続した戸籍謄本が必要になるので、被相続人の本籍地のある市区町村役場で取り寄せましょう。
一方、住民票除票とは、被相続人が居住していた市区町村の役場で取り寄せる書類です。死亡したときの居住地と相続登記の対象となる不動産の登記簿に記載されている被相続人の所在地が異なるときは、一つ前の住民票があった市区町村の役場で取り寄せる、又は被相続人の戸籍の附表を本籍地の役所で取り寄せる必要があります。
もし住所がつながらない等の問題が発生した場合どうしたらいいかの対処法については、こちらに記載がありますので、確認してみてください。被相続人が市区町村をまたいで引っ越しを多く繰り返していたときは、各住所の履歴が解されている住民票除票又は戸籍の附表を各市区町村役場で取り寄せることになるため手間がかかる場合もあります。
1-2.相続人全員の戸籍謄本、不動産を相続する人の住民票
対象となる不動産を相続する人の戸籍謄本が必要です。相続発生時に相続人となる方との関係を存在するかどうかを確認するために提出するためのものです。戸籍謄本は、相続人と被相続人の関係と相続発生時に相続人が存在することを証明するのが目的であるため、現在の戸籍を示す謄本だけで十分です。戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で、住民票は住所所在地の市区町村で取り寄せましょう。
後で詳しく解説しますが、相続が発生したとき、誰がどの財産を相続するかを決める方法は3つあります。そのうち、遺産分割協議により相続をするときは、相続登記の際にすべての相続人による遺産分割協議書が必要です。また、遺産分割協議書がすべての相続人の意思を示すものであることを示すために、実印を押し、印鑑証明書を添付することも必要になります。
1-3.登記事項証明書
引用元:法務局「登記事項証明書」
相続登記の手続きは法務局で行いますが、その際、対象となる不動産の地番などについて正確な情報が必要になります。登記事項証明書には地番や家屋番号などの詳細な情報が記されているので、事前に発行して相続登記の書類作成に活用しましょう。
なお、登記事項証明書は法務局で取得できます。なお、登記事項証明書は相続登記の申請書類を正確に作成するために発行する書類なので、登記事項証明書自体を相続登記の際に提出する必要はありません。
1-4.固定資産評価証明書
相続登記の際には、法務局で登録免許税の納付が求められます。登録免許税は対象となる不動産の固定資産税評価額を基に計算するため、正しく計算するためにも固定資産評価証明書が必要です。
固定資産税評価額は変動するので、相続登記の際に提出する固定資産評価証明書は最新年度のものである必要があります。3月末で年度がかわるため、3月や4月など年度がまたがる時期に相続登記を申請するときには該当年度の評価証明書であるか注意が必要です。
例えば、2022年3月31日迄に相続登記を申請するときは2021年度の固定資産評価証明書の提出が求められますが、2022年4月1日以降に相続登記を申請するときは、2022年度の固定資産評価証明書の提出が必要となります。固定資産評価証明書は対象となる不動産が所在する市区町村役場で取得できます。
なお、相続登記の際の登録免許税は固定資産評価証明書に記載されている固定資産税評価額を基準として、以下の計算式で求めます。
- 固定資産税評価額×0.4%
不動産を贈与や売買によって取得するときの税率は2.0%なので、相続時の登録免許税は他のケースと比べて低く抑えられているといえるでしょう。
1-5.相続関係説明図
相続関係説明図とは、相続の関係がわかるようにまとめた図のことです。亡くなった被相続人と相続人がどのような関係にあるのかがわかるようにした図です。この相続関係説明図を申請時に提出すると、後で戸籍謄本の原本を返却してもらうことができます。
なお、相続関係説明図については、戸籍謄本とセットで定められた様式にしたがって作成し以下のいずれかの法務局に提出し登記官に証明してもらうことで、金融機関の相続手続きで戸籍謄本の代わりに提出することができる法定相続証明情報一覧図の発行を求めることができます。
- 被相続人の本籍地を管轄する法務局
- 被相続人の住民票があった地域を管轄する法務局
- 相続登記の手続きをする相続人の住民票がある地域を管轄する法務局
- 相続登記の対象となる不動産がある地域を管轄する法務局
1-6.委任状
相続登記の手続きを相続人自身が行わない場合には、相続人から依頼を受けて手続きをしていることがわかる委任状が必要となります。相続人自身が手続きをしないときは司法書士に依頼することが一般的なため、委任者が相続人、委任を受ける人が司法書士である委任状が必要です。
なお、司法書士に依頼する場合は、司法書士が委任状を作成し、相続人が署名・押印するだけで使用できる状態にしてくれるため、自作する必要はありません。
2.相続するパターン別の必要書類
相続登記の際には、紹介した書類以外の書類が必要になることがあります。相続の方法によって必要書類が異なるので、確認しておきましょう。なお、相続の方法は、次の3つに大別されます。
- 遺言どおりの相続
- 法定相続分に従った相続
- 遺産分割協議による相続
被相続人が生前作成した遺言書がある場合には、遺言書に沿った相続を行うことができます。しかし、遺言書がない場合や、遺言書はあるけれども内容に問題があり、すべての相続人が遺言書どおりの相続を望まないときには、法定相続分に従った相続、あるいは遺産分割協議による相続のいずれかを選択できるでしょう。
財産に不動産が含まれる場合は、法定相続分に従った相続や遺産分割協議による相続の手続きが複雑になることがあります。価値が類似する不動産が相続人の人数分あれば遺産分割しやすいのですが、現実にはそのようなケースはあまりないでしょう。不動産を売却して現金にし、法定相続分や遺産分割協議の結果に従って遺産を分けることもあります。
しかし、不動産の名義が被相続人のままでは、対象となる不動産を売却することはできません。売却のためには、一時的にでも不動産の名義を相続人のものに変更することが必要です。手続きが複雑でなかなか進まないとき、また、各相続人の意思が揃わず、遺産分割協議が思うように進まないときは、相続手続きの専門家に相談するという方法も検討しましょう。
当事務所では、相続に関する無料相談を随時実施しています。お気軽にお問い合わせください。
2-1.遺言どおりの相続
遺言どおりの相続を実施する場合には、上記に紹介した必要書類に加えて下記の書類が必要です。
- 遺言書
- 遺言執行者が選任されている場合には、執行者の印鑑証明書(※)
- 遺言執行者が選任されていない場合には、相続人の印鑑証明書(※)
※相続する人が法定相続人以外のときのみ必要です。相続する人が法定相続人のときは遺言書だけで問題ありません。
2-2.法定相続分に従った相続
法定相続分に従って相続を実施する場合には、上記に紹介した必要書類だけで相続登記を行うことができます。過不足なく準備して、法務局に出向きましょう。
2-3.遺産分割協議による相続
遺産分割協議によって相続を実施する場合には、上記に紹介した必要書類に加え、以下の書類が必要です。
- 遺産分割協議書
- 相続人の印鑑証明書
3.相続書類の綴じ方は?
法務局に提出する相続登記申請書や添付書類には、提出する書類の並べ方や綴り方について一定のルールがあります。厳密にこのルールに従わなければならない、という訳ではありませんが、法務局から遺産分割協議書や戸籍・住民票等の返却を正確にしてもらうためにも、一般的な相続登記の書類の並べ方・綴り方を覚えておく方がよいでしょう。
3-1.書類の並べ方
まず、相続登記を申請する際に必要な書類の並べ方を押さえておきましょう。
ここでは遺産分割協議による相続登記申請の場合の書類の並べ方を見ていきます。
一般的には下記の順番で書類を並べることが多いです。
1)相続登記申請書 2) 収入印紙貼付台紙 3)相続登記の委任状 4)相続関係説明図 |
①)遺産分割協議書(原本還付用:写) ②)印鑑証明書(原本還付用:写) ③)被相続人の住民票の除票or戸籍の附票(原本還付用:写) ④)遺産分割協議により不動産を取得した人の住民票or戸籍の附票(原本還付用:写) ⑤)固定資産評価証明書(原本還付用:写) |
4´)被相続人の死亡~出生までの戸籍謄本等、相続人の現在戸籍(原本) ①´)遺産分割協議書(原本) ②´) 印鑑証明書(原本) ③´) 被相続人の住民票の除票or戸籍の附票(原本) ④´) 遺産分割協議により不動産を取得した人の住民票or戸籍の附票(原本) ⑤´) 固定資産評価証明書(原本) |
先ほども少し触れましたが、相続登記申請書の添付書類の中には、原本と共にコピー(写)を添えることで、法務局から返却してもらえる書類があります。この提出した書類を返却してもらえることを「原本還付」と言います。
まず、1~4の書類は法務局より返却を受けることができない、出し切りの書類です。
これらの書類を最初に並べます。
次に、①~⑤の書類は原本還付を受けるためのコピーです。①´~⑤´が各々の書類の原本にあたります。
1~4の書類の次にコピーである①~⑤を並べます。
最後に原本である、4´、①´~⑤´の書類を並べます。
なお、「4´)被相続人の死亡~出生までの戸籍謄本等、相続人の現在戸籍」は
「4)相続関係説明図」が添付した戸籍類(=4´の書類)の代わりとみなされるため、
4´の書類についてはコピーの添付は必要ありません。
3-2.相続書類の綴じ方
上記の通り書類を並べた後の、書類の綴じ方を具体的に見ていきましょう。
まず、1)相続登記申請書 2) 収入印紙貼付台紙をホッチキスで綴じ、書類の見開き部分に契印をします。
契印とは、2枚以上となる文書が一連のものであるということを示すために押印する方法です。ページの連続性を確かめたり、文書の差し替えを防止することができます。契印に使用する印鑑は、申請書に押印した印鑑にしましょう。
また、2) 収入印紙貼付台紙には登録免許税相当額の収入印紙を貼付しましょう。
次に3)相続登記の委任状、4)相続関係説明図を上記の書類の下に重ねます。
その後は①~⑤の書類(=コピー)をホッチキスで綴じます。
これらのコピーの先頭に「この写しは原本に相違ありません」と記載し、この文言の横に申請人の氏名の記載をして、氏名の末尾に申請書に押印した同じ印鑑を押印します。
また、①~⑤の書類に契印をします。
1~4、①~⑤の書類をホッチキスで止める
1~4、①~⑤の書類は法務局に提出した後、法務局にてそのまま保管される書類のため、1~4の書類の下に①~⑤を重ねてこれらの書類をホッチキスで綴じます。
添付書類が多い場合は綴じこむ書類が分厚くなる可能性があるため、その際は大きい芯のホッチキスで綴じこみ、書類が抜け落ちないようにしましょう。
4´、①´~⑤´の書類をホッチキスで止める
そして、4´、①´~⑤´の書類(=原本還付を受けたい書類の原本)をホッチキスで綴じます。登記申請が完了するとこの原本の束が手元に返ってきます。
そのため、上記の1~4、①~⑤の書類と一緒に綴じこまないようにしましょう。
1~4、①~⑤の書類(法務局保管の書類)と4´、①´~⑤´の書類(原本還付を受けたい書類)をクリップでまとめる
最後に、ホチキスで綴じた1~4、①~⑤の書類と4´、①´~⑤´の書類をクリップでまとめて、法務局に提出します。
相続書類の綴じ方は以上です。
4.相続登記の必要書類が取得できないときは?
相続登記のときには、被相続人に関する書類が必要になります。被相続人が何度も引っ越している場合や、本籍地を変更している場合、婚姻を繰り返している場合などは、戸籍謄本や住民票除票の取得が難しくなるかもしれません。
古い書類を集めることができないときは、管轄する市区町村役場で、謄本等を交付できない旨を記した市区町村長の証明書を発行してもらうことが必要です。手続きが難しく感じるときは、相続の専門家に相談するという選択肢も検討してみましょう。当事務所では無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
5.相続登記の必要書類に関するよくある疑問
相続登記の際には、数多くの書類が必要です。相続人が多い場合には、さらに書類の数も増え、取り寄せの手間がかかることもあります。また、被相続人の戸籍謄本や住民票除票などを取り寄せることが困難になることもあるでしょう。スムーズに相続登記の手続きを済ませるためにも、早めに書類を準備しておくことが大切です。
相続登記の書類に関して、よくある疑問とその答えをまとめました。ぜひ参考にしてください。
5-1.提出するのは原本?コピー?
相続登記に提出する書類は、すべて原本です。登記手続き終了後に書類を返還して欲しい場合には、提出する書類のコピーを取り、コピーの末尾に「原本と相違ない」旨を記載し、記名押印することで原本の返却を受けることができます。
また、相続関係説明図を添付すると、戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍のコピーをとらずに、戸籍謄本等の原本の返却を受けることが可能です。法定相続証明情報一覧図を提出した場合には、事前に法務局で法定相続証明情報一覧図を作成時に戸籍謄本等の書類を確認しているため、原本の提出自体も省略できます。いずれも正しい手続きをしていないと返却を受けられないことがあるので、提出時に返還方法も尋ねておきましょう。
5-2.書類の有効期限は?
相続登記では、書類の有効期限は決まっていません。時間が経過した書類であっても記載内容に変更がないときは利用できます。ただし、相続人及びの戸籍謄本に関しては、相続発生時に相続人が存在(生存)することを証明するため、被相続人が死亡した後で発行されたものでないと提出できません。
5-3.不動産権利証を紛失したときは?
相続登記では不動産権利証(登記済証・登記識別情報)の提出は不要です。そのため、不動産権利証を紛失しても相続登記はできます。
ただし、被相続人除住民票又は戸籍の附表の提出が出来ない場合に、その代用書類として不動産権利証の提出が求められることがあります。不動産権利証は再発行できない書類であるため、権利証なしで手続きをする場合には法務局で相談が必要です。手続きが難しいときは、司法書士に相談しましょう。
6.まとめ
本記事では、相続登記の必要書類について解説しました。内容をまとめると以下のようになります。
- 相続登記には被相続人の戸籍謄本や住民票除票、相続人全員の戸籍謄本など必要書類が多い
- 遺言どおりに相続するか、法定相続分で相続するかなどによって必要書類も変わる
- 被相続人の除籍謄本が滅失して取得できないときは自治体の証明書が必要になることがある
- 相続登記の手続きが難しいときは司法書士などの専門家に依頼する
相続登記の手続きには提出する書類が多く、相続人が多いときや被相続人が転居を繰り返しているときなどは書類を揃えるのに手間と時間がかかることになるでしょう。また、古い書類は取得できず、自治体の証明書が必要になることもあります。手続きに困難を覚えるときは、司法書士に依頼することも検討してみましょう。
相続登記の多くの事案を扱ってきた当事務所では、手続きをスムーズに行うためのご提案やサポートを実施しています。ぜひお気軽にご相談ください。