成年後見制度の手続きの流れとは?必要書類や費用も徹底解説

成年後見制度とは、判断能力が不十分な人を守るための制度です。法定後見制度と任意後見制度の2種類があり、手続き方法を確認しておかなければいけません。

今回の記事のポイントは、以下のとおりです。

  • 成年後見制度とは、判断能力が不十分な人を守るための制度のこと
  • 成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があり、手続きの内容が異なる
  • 成年後見人は誰でもなれるが、未成年者、過去に後見人等を解任された者、訴訟関係にあった者などはなれない
  • 成年後見を利用にあたっては、今まで通りの財産管理ができなくなるといった注意点を理解した上で手続きを行うべき
  • 法定後見制度で成年後見人を選任するときや任意後見制度で任意後見監督人の選任申立てをするときには、申立手数料や後見登記手数料が必要
  • 任意後見制度を利用する場合は事前に任意後見契約を結ぶ必要があり、公証役場で公正証書を作成するときに手数料が必要
  • 弁護士や司法書士などの専門家が成年後見人になる場合は報酬の支払いが必要になり、基本報酬の目安は月額2~6万円
  • 家族だけでの管理をしたいのであれば、本人が判断能力があるうちに家族信託契約を作成しておくのも対策の一つ
  • 成年後見人の選任手続きで必要な費用を払えない場合は、成年後見制度利用支援事業や法テラスの利用を検討する
  • 後見人を解任するためには、解任するための正当な理由が必要。一方的都合により解任はできない

本記事では、成年後見制度の手続き方法について解説します。必要書類や手続きにかかる費用も併せて参考にしてください。

目次

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1.成年後見制度とは

成年後見制度とは、知的障害や認知症などによって判断能力が不十分な人(被後見人)が不利益を被らないように守るための制度です。成年後見人が被後見人の代わりとなって、契約手続きや財産管理といった支援を行います。

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。法定後見制度とは、家庭裁判所に後見人を選んでもらう制度のことです。一方、任意後見制度は、被後見人である本人が判断能力のあるうちに後見人を指名できます。

なお、成年後見制度と任意後見制度についての詳細は、以下の記事をご覧ください。

2.誰が後見人になれる?

後見人になるためには、特別な専門資格(弁護士、司法書士、社会福祉士など)は必須ではありません。ただし、家庭裁判所の審査を通過する必要があり、特定の条件に当てはまる人は後見人になれません。

2‐1.成年後見人になれないケース

民法に基づき、以下に該当する人は後見人となれません。

  • 未成年者
  • 法定代理人、保佐人、補助人として家庭裁判所により解任された人
  • 破産者
  • 被後見人と訴訟関係がある、または過去に訴訟関係があった人、その配偶者や直系の親族
  • 行方不明者
  • 不正行為やその他の理由で後見人として不適格とされる人

2‐2.後見人候補者の希望を申立人が伝えることができる

成年後見人を選定する際、家庭裁判所が最終的な決断を下しますが、申立人は申立書に候補者の名前を記入することで、その希望を裁判所に伝えることが可能です。ただし、その候補者が確実に選ばれるわけではありません。

裁判所は候補者の信用性、専門知識、成年被後見人やその家族の状況を総合的に評価します。以下のような状況では、親族ではなく専門家が成年後見人として選ばれることが一般的です。

  • 被後見人が多額の財産を所有しており、その管理が複雑である
  • 親族が後見人になることに他の親族からの合意が得られない
  • 親族間で財産の管理について意見が分かれている
  • 後見人候補者の過去に何らかの問題が存在する

被後見人と候補者の住所が遠く、または過去に被後見人の財産を不正に使用した経歴がある場合、後見人としては不適格とされることがあります。

3.成年後見制度利用に際しての5つの注意点

成年後見制度は、判断能力が不十分な高齢者や障害者の財産管理に活用できますが、実際に利用するかどうかは、検討が必要です。以下に、成年後見制度の利用に際して注意すべき主要な5つのポイントを挙げます。

3-1.家族による従来通りの財産管理が制限される

成年後見制度が始まると、後見人が財産の管理を担当します。この制度では、被後見人の利益が最優先されるため、家族が普段行っているような「子供への贈与」や「不動産の売却」などが制限される場合があります。後見人が誰であれ、この制約は適用されます。

3-2. 希望する成年後見人が選ばれない可能性がある

多くの場合、家族が成年後見人として希望されますが、その希望が必ずしも叶うわけではありません。
家庭裁判所は、多くの要因を考慮して後見人を選びます。特に、最近の傾向としては、本人の身近に家族がいない方の利用が増えていることもあり、親族が後見人として選ばれる確率は約20%で、残りの80%は専門家が選ばれています。

(成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―から引用)

3-3.専門家が後見人になるとコストがかかる

専門家が後見人に選ばれた場合、その報酬が必要です。報酬は一般的に月額2万円から6万円で、後見が続く限りこの費用が発生します。特に、長期にわたる後見の場合、その費用はかなりの額になる可能性があります。

参考:東京家庭裁判所・成年後見人等の報酬額のめやす

3-4.親族が後見人になっても負担は大きい

親族が後見人になる場合、その負担は軽くないです。財産管理から身上監護まで、後見人の役割は多岐にわたります。成年後見人は年に一度裁判所への報告が義務付けられています。これには報告書や財産目録の作成が必要です。これが原因で、後見人が精神的、時間的に負担を感じることがあります。

3-5.成年後見制度は途中で解除できない

一度成年後見制度が始まると、基本的には被後見人が亡くなるまで解除することはできません。後見人が不適切な行動を取った場合には解任される可能性がありますが、その場合でも新しい後見人が選ばれ、制度は続きます。

なお、ご自身で書類を作成して提出された後に、家庭裁判所から書類の不備を指摘され、再度家庭裁判所に出直すことになる場合もあります。
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4.法定後見制度の流れと費用

法定後見制度の活用は、家庭裁判所に申立てを行って手続きを進めていきましょう。法定後見制度は医師の診断書が必要だったり、準備しなければいけない書類がいくつもあったりするため、時間に余裕を持った行動が大切です。

手続きに不備が生じないように、よく確認しておきましょう。

4-1.法定後見制度を活用する際の手続き

ここでは、法定後見制度の手続きの流れを解説します。

4-1-1.家庭裁判所と申立人を確認

まず、家庭裁判所の場所と申立てできる人を確認しましょう。申立てを行う家庭裁判所は、被後見人が住んでいる地域を管轄しているところです。

また、申立ては、本人・配偶者・四親等以内の親族が行えます。四親等以内の親族には、子どもや孫、ひ孫、兄弟姉妹、いとこ、叔母、叔父などが該当します。家族や親族がいない場合は、市区町村長が手続きを行うことも可能です。

4-1-2.医師の診断書や必要書類を用意

申立てするにあたり、医師に診断書を書いてもらいましょう。法定後見制度には判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3段階があり、診断書によって分類します。診断書は普段かかっている主治医にお願いすれば、作成してもらえるでしょう。

また、申立てには、診断書以外にもさまざまな書類が必要であるため、あらかじめ用意しなければいけません。必要書類についての詳細は、後述します。

4-1-3.申立書類の作成

法定後見制度を活用するための申立書類は、以下の手順で作ります。

  • 申立書類を用意する
  • 本人に関する資料を用意する
  • 申立書類に必要事項を書く
  • 郵便切手や収入印紙を用意する

申立書類は複数枚あるため、準備に時間が必要です。不足している書類があると手続きを進められないため、余裕を持った対応を心掛けておくと安心でしょう。

4-1-4.家庭裁判所との面接日を予約

申立書類の準備に目途がついたら、家庭裁判所との面接日を予約しましょう。家庭裁判所では申立てを行った後、詳しい状況を把握するために面接しなければいけません。

場合によっては面接日が2週間~1ヵ月後になることもあり、事前に予約を取っておくとスムーズに手続きを行えます。ただし、面接の1週間前までに書類を提出しなければいけないため、余裕を持って予約を取っておくと安心です。

4-1-5.申立てを行って審理を開始

申立書類や必要書類を提出すると、審理が開始されます。審理とは、裁判官によって書類や本人の状況などを総合的に審査することです。

面接時には申立てのために提出した書類に関する事柄を聞かれることから、提出する前にコピーをとっておくと安心です。なお、一度申立てを行ったら、原則取り下げられない点に注意しましょう。

4-1-6.申立人や後見人の候補者と面接を実施

面接日に、申立人や後見人の候補者との面接を実施します。面接は、非常勤の裁判所職員である参与員が担当します。面接で聞かれることは、主に以下のとおりです。

  • 申立てに至るまでにどのような事情があったのか
  • 本人の生活状況はどういったものか
  • 家族や親族の考えはどういったものか

なお、裁判官が必要だと判断した場合は、本人とも面接を実施します。

4-1-7.親族への意向照会

裁判官の判断によっては、親族への意向照会が行われます。意向照会とは、親族がどのように考えているのかを確認しておくことです。親族が意向照会を望んでいない場合であっても、裁判官が必要だと判断すれば行われるでしょう。

ただし、申立てを行う際にすべての親族からの同意書が添付されていれば、意向照会を行わないケースもあります。

4-1-8.医師に鑑定依頼

申立てのときに提出した医師の診断書や親族からの情報だけでは、本人の判断能力を判定できない場合は、医師に鑑定依頼するケースがあります。通常の鑑定依頼は、本人の病状を理解している主治医が行いますが、事情によっては別の医師に依頼することもあるでしょう。

ただし、医師に鑑定依頼されるケースは、申立ての7%程度しかないといわれており、判断能力の程度が明らかになっていれば省略されるケースもあります。

4-1-9.家庭裁判所の審判

さまざまな調査が実施されたのち、後見開始の審判が下されます。審判とは判断を決定する手続きのことで、後見人の選任も行われます。

場合によっては、後見人を監督する成年後見監督人も選任されるケースもあるでしょう。審判の内容が書かれた書類を成年後見人に送付して、2週間以内に不服の申立てがなければ審判の効力が確定とされます。

4-1-10.後見人の登記

審判が確定したら、裁判所から法務局に後見登記の依頼がされます。後見登記とは、後見人に関する情報を登記することです。後見登記ができたら、登記番号が通知されます。

登記番号は、本人の預金口座の解約や財産調査などの各種手続きを行う際に必要となる登記事項証明書を取得するときに使う番号のことです。登記番号が手元に届いたら、法務局に申請して登記事項証明書を取得しましょう。

4-1-11.成年後見人の仕事を開始

登記ができたら、成年後見人としての仕事が始まります。家庭裁判所から書類が届き次第、被後見人の財産目録を作成しましょう。財産目録とは、すべての財産を調査して一覧にしたもので、審判の確定から1ヵ月以内に提出しなければいけない書類のことです。

その後は、金融機関での手続きや役所に必要書類の提出など、さまざまな仕事を行う必要があります。

4-2.成年後見人の選任手続きでかかる費用

法定後見制度を利用するには家庭裁判所に申立てをする必要があり、申立手数料や手続きで提出する書類を揃えるための費用などが必要になります。主な費用は次のとおりです。

【必ず必要な費用】

  • 申立手数料800円
  • 後見登記手数料2,600円
  • 郵便切手代3,000~5,000円程度
  • 診断書の作成料数千円程度
  • 本人の戸籍謄本住民票または戸籍附票の発行費用1通につき数百円程度
  • 本人について成年後見等の登記が既にされていないことの証明書の発行費用300円

【ケースに応じて必要な費用】

  • 鑑定費用:5~10万円程度
  • 後見人候補者の住民票または戸籍の附票の発行費用:1通につき数百円程度
  • 登記事項証明書の発行費用(未登記の場合は固定資産評価証明書):1通につき数百円程度(本人が不動産を所有している場合)
  • 専門家への支払報酬:10~30万円前後(手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合)
  • 専門職後見人への支払報酬:20万円前後(後見制度支援信託を利用する場合)

上記以外にも書類が必要になる場合があるので、実際に手続きをする際には管轄の家庭裁判所に確認が必要ですが「必ず必要な費用」の額としては合計で2万円前後になります。

鑑定が行われる場合には5~10万円程度の費用がかかることもある

「ケースに応じて必要な費用」のうち、鑑定費用は裁判所が鑑定を必要と判断した場合に必要な費用です。なお、成年後見関係事件の終局事件のうち、鑑定が実施される割合は例年1割未満とそれほど多くありません。成年後見制度の「補助」「保佐」「後見」の3つのうち、本人がどの類型に該当するかを最終的に判断するのは家庭裁判所ですが、その判断材料になる資料として医師の診断書の提出が求められます。この医師の診断書で本人の状態がどの程度なのか明らかな場合には、鑑定は不要とされるからです。診断書だけで判断が出来ない場合には、鑑定が必要となります。その場合、鑑定費用が10万円を超えるケースもありますが、約半数のケースでは鑑定費用が5万円以下となっています。

後見制度支援信託を利用する場合には、専門家の費用が必要

後見制度支援信託とは、日常的な支払をするのに必要な金銭を預貯金等として後見人が管理して、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する(預ける)制度です。

(出典:裁判所|後見制度において利用する信託の概要

後見制度支援信託を利用すると、信託財産である金銭を払い戻したり、信託契約を解約したりするにはあらかじめ家庭裁判所が発行する指示書が必要となり、自由に引き出しができなくすることで本人の財産を後見人等の横領のリスクから守ることができます。後見制度を管轄する家庭裁判所によって運用のルールが異なりますが、例えば、本人が有する金融資産が1,500万円ある場合には、1,000万円を成年後見制度支援信託として信託銀行等に信託されます。この制度を利用する場合には、弁護士や司法書士などの専門職後見人が手続きをするため報酬(約10~30万円程度)の支払いが必要になり、信託銀行等に支払う費用が別途必要になります。

4-3.成年後見を開始した後に必要になる費用

後見を開始した後に必要になる主な費用は「後見事務にかかる費用」「成年後見人への報酬」「成年後見監督人への報酬」の3つです。

親族が成年後見人になり無報酬で後見を行う場合には報酬は発生しませんが、司法書士や弁護士、社会福祉士等が後見人になる場合は報酬の支払いが必要になります。成年後見監督人は選任される場合とされない場合があり、選任された場合には報酬の支払いが必要です。

成年後見人の基本報酬額の目安は月額2~6万円で、身上監護等に特別困難な事情があった場合には、基本報酬額の50%の範囲内で付加報酬が支払われます。成年後見監督人への報酬額は月額1~3万円が目安です。

なお、成年後見制度では基本的に被後見人が亡くなるまで後見が続き、途中でやめることは原則としてできません。認知症を発症して成年後見制度を利用し始めてから亡くなるまでの期間が長いと、長期間に渡って成年後見人に報酬を支払うことになり、結果的に費用の総額が大きくなる場合があります。

4-4.成年後見を利用する際に必要な書類

法定後見制度の申立を行うために、家庭裁判所に提出しなければならない書類は多岐にわたります。必要書類としては、下記の書類を取り寄せしていく必要があります。

  • 後見開始申立書
  • 申立事情説明書
  • 本人の財産目録と証拠の資料
  • 相続財産目録と証拠の資料
  • 本人の収支予定表と証拠の資料
  • 親族関係図
  • 後見人候補者事情説明書
  • 親族の同意書
  • 医師の診断書及び診断書付票(発行から3ヶ月以内)
  • 本人確認情報シート
  • 本人の戸籍謄本(発行から3ヶ月以内)
  • 本人の住民票(又は戸籍の附票)(発行から3ヶ月以内)
  • 後見人候補者の戸籍謄本(発行から3ヶ月以内)
  • 後見人候補者の住民票(又は戸籍の附票)(発行から3ヶ月以内)
  • 本人が登記されていないことの証明書(発行から3ヶ月以内)
  • 愛の手帳のコピー

各書類の詳細な説明と取り寄せ方法は、下記の記事で詳しく解説していますので、確認してみてください。

なお、ご自身で書類を作成して提出された後に、家庭裁判所から書類の不備を指摘され、再度家庭裁判所に出直すことになる場合もあります。
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5.司法書士や弁護士に依頼する場合の費用相場

法定後見制度における成年後見人の選任手続きやは、自分でやらずに専門家に任せることもできます。

司法書士や弁護士に依頼すれば自分で必要書類を揃える手間がかからずに済み、ミスなくスムーズに手続きを終えられる点がメリットです。慣れない手続きを自分でやると時間がかかることがあるため、手続き方法がよく分からない場合は、費用を払ってでも専門家に代行を依頼するべきでしょう。

また、成年後見人に就く人のうち、親族と親族以外の割合を見ると実に8割が親族以外で、その中でも後見人に就任することが多いのが司法書士です。成年被後見人が所有している不動産や多額の金融資産の管理が必要になるようなケースでは、不動産の専門家である司法書士や弁護士が成年後見人になることが多く、その場合には報酬の支払いが必要になります。

5-1.成年後見人の選任手続きの代行を頼む場合

法定後見制度を利用する際、成年後見人の選任手続きの代行を頼む場合の費用相場は10~30万円前後です。また、任意後見制度の場合、任意後見契約を締結するための公正証書の作成を依頼すると10万円前後、任意後見監督人の選任申立ての手続きを依頼すると20万円前後の報酬の支払いが必要になります。

ただし、具体的な報酬額は弁護士や司法書士ごとに異なるため、依頼する事務所に対して直接確認するようにしてください。

5-2.専門家に成年後見人になってもらう場合

既に解説したとおり、専門家に成年後見人になってもらう場合の費用相場は月額2~6万円です。管理財産の金額に応じて目安額が異なり、管理財産額が1,000万円以下であれば月額2万円、1,000万円超5,000万円以下であれば月額3~4万円5,000万円超であれば月額5~6万円が目安になります。

またケースによっては、基本報酬額の50%の範囲内で付加報酬額が発生するため、付加報酬額まで考慮した費用としては月額2~9万円が目安です。

なお、後見開始後は基本的に被後見人が亡くなるまで後見が続くことになります。本人の判断能力が回復したと認められる場合を除いて、途中でやめられません。

仮に認知症を発症して成年後見制度の利用を開始して、被後見人が亡くなり後見が終了するまでの期間が10年だった場合、月額2万円であっても10年間で240万円かかる計算になります。

最終的にいくら必要になるかについては、結果を見た後でなければ分かりませんが、ケースによっては成年後見人への支払報酬の累計額がかなり大きくなる点に注意が必要です。

6.任意後見制度の流れと費用

成年後見人になる人を事前に決めておいて、将来の認知症に備える任意後見制度を利用する場合、まずは任意後見受任者を定める任意後見契約を結ぶときに費用が必要となります。任意後見契約は公正証書によって結ぶ必要があり、公証役場で作成するときに手数料などが必要になるからです。

そして、実際に任意後見を開始する際、裁判所で手続きをするときに費用が発生し、後見が開始すると任意後見監督人へ支払う報酬などの費用が必要になります。

6-1.任意後見制度を活用する際の手続き

任意後見制度を活用する際の手続きは、以下のとおりです。

  • 任意後見受任者の決定
  • 任意後見契約の締結
  • 法務局で登記申請
  • 任意後見監督人選任の申立て
  • 任意後見監督人の選任

任意後見制度は法定後見制度と手続きの流れが異なる点に注意しましょう。ここでは、任意後見制度を活用する際の手続きの流れを解説します。

6-1-1.任意後見受任者の決定

まずは、任意後見受任者を決めましょう。任意後見受任者とは、被後見人の判断能力が低下したときに支援してくれる任意後見人のことです。そのため、任意後見人受任者は、適当に選ぶのではなく、心から信頼できる人に依頼することが重要です。

また、任意後見受任者は誰にでも依頼できるため、家族や親族以外に、司法書士や弁護士などの専門家にお願いすることもできます。

6-1-2.任意後見契約の締結

任意後見受任者を決めた後は、どのような支援を受けたいかを決めましょう。例えば、判断能力の低下によって1人での生活が困難になった場合、「在宅でケアを受けるのか」「施設に入所するのか」といった内容を決めておきます。

契約内容が決まったら原案を公証役場に持っていき、公正証書を作成してもらいましょう。任意後見契約は、公正証書での作成が法律で定められています。

6-1-3.法務局で登記申請

任意後見契約が締結したら、公証人が法務局に任意後見人の登記申請を行います。法務局に登記できれば、任意後見契約の内容を公的に証明できます。

登記は公証人の依頼から2~3週間で完了し、その内容を書面化したものが登記事項証明書です。登記事項証明書を見れば契約内容を確認できるため、気になる人はチェックしておくといいでしょう。

6-1-4.任意後見監督人選任の申立て

その後、被後見人の判断能力が不十分になれば、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てを行いましょう。任意後見監督人とは、任意後見受託者が契約どおりに支援しているかを監督する人のことです。任意後見監督人は、弁護士や司法書士といった専門家が選任されることが多いでしょう。

なお、任意後見制度では、任意後見監督人を選任することで初めて後見契約の効力が生じます。

6-1-5.任意後見監督人の選任

家庭裁判所が被後見人の状況や任意後見受任者の状況などをふまえて、任意後見監督人を選任します。審理の結果は、家庭裁判所から任意後見人に郵送されるため、書類をチェックしましょう。

任意後見監督人が選ばれると、任意後見人としての仕事が開始されます。財産目録を作成するほか、金融機関への手続きや役所への必要書類の提出などを行っていきます。

6-2.任意後見人を定める任意後見契約を結ぶ費用

任意後見人を定める任意後見契約を締結するにあたり、公証役場で公正証書を作成するときに主に次の費用が必要になります。

    • 公証役場の手数料:11,000円
    • 法務局に納める印紙代:2,600円
    • 法務局への登記嘱託料:1,400円
    • 書留郵便料:540円
    • 正本謄本の作成手数料:1枚250円
    • 専門家への支払報酬:10万円前後(手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合)

専門家に依頼せず、自分で手続きを行う場合は2万円程度の費用が必要です。一方、弁護士や司法書士に手続きを依頼する場合は、専門家への支払報酬が発生します。弁護士事務所や司法書士事務所によって金額に差がありますが、実際に依頼すると15万円前後の費用相場であると考えておけばよいでしょう。

また、任意後見契約とあわせて財産を管理してもらうための財産管理の委任契約を締結することがありますが、その場合は財産管理委任契約についても手数料が必要になります。

なお、司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、16万5,000円~で任意後見契約をしております。
任意後見契約書の作成や法務についてもサポートをしております。
初回相談は無料で、お客様のご状況をヒアリングして正確な費用をお伝えしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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6-3.任意後見を開始するときに必要な費用

認知症を発症するなど判断能力が低下して任意後見を開始する場合、本人や配偶者、任意後見人になる人などが任意後見監督人の選任申立てを行います。

手続きの際、申立手数料・後見登記手数料・郵便切手代・診断書作成料・戸籍謄本等の発行費用などが必要な点は、法定後見制度における成年後見人の選任手続きと同じで変わりません。それぞれの費用の額は基本的に法定後見制度のところで紹介した額と同じ(但し登記手数料は1,400円)で、裁判所が必要と判断した場合には鑑定を行うため費用が発生します。

任意後見人に報酬を支払うのか、また報酬額をいくらにするのについては当事者が自由に決められるため、任意後見契約を結ぶときに記載することが一般的です。一方、任意後見制度においては、法定後見制度とは異なり、後見監督人が必ず選任され、任意後見監督人の報酬額として月額1~3万円程度が必要になります。

また、専門家に任意後見監督人選任手続の代行を依頼した場合には20万円前後の費用の支払が必要となります。

6-4.任意後見を開始するときに必要な書類

また、費用のほかに、任意後見制度利用にあたっては、任意後見契約時と任意後見監督人選任時にそれぞれ必要な書類を収集する必要があります。必要な書類については、下記の記事で詳しく解説していますので確認してみてください。

なお、弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、どのような形で任意後見制度を利用をすればいいのか無料相談をさせていただいております。任意後見契約書の作成やその後の運用の相談などトータルでサポートさせていただきますので、お気軽にお問合せください。

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7. 親が元気な時に家族信託契約ができれば家族だけの管理ができる

親の認知症対策として「家族信託」が注目されています。家族信託は国の制度である「成年後見制度」と比べてこれまで説明してきた家庭裁判所の監督を受けず、家族だけで柔軟な財産管理・運用が可能であり、認知症対策として非常に有効です。

家族信託では、自分の家族へ財産を信託する「委託者(いたくしゃ)」、実際に財産を管理・運用する「受託者(じゅたくしゃ)」、財産の運用によって発生した利益を受け取る「受益者(じゅえきしゃ)」の3者の関係で成り立ちます。

家族信託は民法や任意後見契約に関する法律にもとづく「成年後見制度」「任意後見制度」よりも、柔軟な財産管理ができる制度として注目度が高まってきました。トラブルの中でも多い「親の預金が引き出せない」「不動産を売却できない」などの財産関係の問題も、あらかじめ家族信託で権限を受託者に移しておけば解決可能です。

しかし、本人がすでに認知症を患っており判断能力がない場合は家族信託契約が結べなかったり、信託財産以外の管理ができなかったりなど、事前に留意しておくべき注意点が存在します。

家族信託と成年後見制度の違いについては、別の記事で詳しく解説していますので確認してみてください。

8.どのような形で任意後見、家族信託の仕組みをつくることができるか、無料相談受付中

当サイトでは、どのような形で預金や不動産を家族だけで管理できる仕組みを作ることができるか、無料相談が可能です。累計4000件を超える相続・家族信託相談実績をもとに、専門の司法書士・行政書士がご連絡いたします。

家族信託、任意後見の活用など、ご家族にとってどんな対策が必要か、何ができるのかをご説明いたします。自分の家族の場合は何が必要なのか気になるという方は、ぜひこちらから無料相談をお試しください。

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9.成年後見人の選任費用を払えない場合は相談する

成年後見制度を利用するためにはある程度の費用が必要になるため、成年後見人の選任手続き費用を払えない人もいるでしょう。また、成年後見人に報酬を支払う場合は、一般的に成年被後見人の財産から報酬を拠出するため、財産をほとんど持っていないような場合にはそもそも報酬の支払いができません。

費用の支払いが難しい人が使える制度として「成年後見制度利用支援事業」と「法テラス」の2つがあります。利用要件が決まっているため必ず使えるわけではありませんが、費用の支払いが難しい場合には、これらの制度の利用を検討してみましょう。

9-1.親族が申立ができない方や身寄りがいない方などは成年後見制度利用支援を利用する

成年後見制度利用支援事業とは、身寄りがないなど親族による後見等開始の審判の申立てができない場合に、市長が代わって申立てを行う制度です。成年後見制度を利用するための費用を負担することが困難な人に対して、申立てに必要な費用や後見人への報酬の助成を行います。

当支援事業は自治体が運営を行い、助成金額や助成の対象となる費用、利用できる人の要件は自治体ごとに異なりますが、費用の支払いが難しい場合には、助成を受けられないかお住まいの自治体に確認するようにしてください。

9-2.法制度や手続きについて問い合わせ無料の法テラスを利用する

法的トラブルを解決するための情報やサービスを全国どこでも受けられる社会を実現するため「総合法律支援法」に基づき設立されたのが法テラス(日本司法支援センター)です。

収入が一定額以下であるなど一定の要件を満たす場合、弁護士や司法書士に支払う書類作成費用などを立て替えてもらう制度を利用できます。ただし、あくまでも法テラスが利用者に代わって弁護士や司法書士へその費用を支払って立て替える制度になるため、利用者は分割で法テラスに費用を返済しなければいけません。

なお制度の詳細な内容や相談窓口については以下のサイトで確認できます。
法テラスホームページ

10.後見人を解任する手続き

成年後見人が一度選任され、業務が開始すると、その解任は容易ではありません。任意後見人も、任意後見監督人選任前であれば公証人の認証を得て解除できますが、任意後見監督人選任後の後見業務が開始すると、成年後見人と同じく解任は難しい状況です。

特に、報酬の問題や家族との意見対立などがある場合、解任を希望するケースが多いです。しかし、家庭裁判所は明確な理由がなければ解任を許可しません。

10-1.後見人解任の具体的な理由

成年後見人を解任するためには、「不正行為」「明らかな失態」「その他の後見業務に不適切な事情」のいずれかが必要です。

財産の不正管理

成年後見人が財産を不正に管理していた場合、これは解任の理由となります。例えば、被後見人の財産を私的に使用したり、横領した場合などが該当します。

成年後見人としての不適切な行動

財産管理だけでなく、成年後見人がその他の業務で不適切な行動をとった場合も、解任の理由になります。例として、裁判所からの指示に従わない、財産目録を作成しないなどがあります。

業務遂行が困難な状況

成年後見人が病気や遠方への移住などで業務を遂行できなくなった場合も、解任の理由になります。

10-2.後見人解任手続きの流れ

後見人を解任するにあたっては、下記の手続きを行う必要があります。

証拠の収集

解任の理由を裏付ける証拠を集めます。これは専門家の協力が必要な場合もあります。

申立書の作成

解任を申し立てるための書類を作成し、家庭裁判所に提出します。申立て可能な人は限られています。

家庭裁判所への申立て

申立書を完成させたら、それを家庭裁判所に提出します。審査が行われ、解任が認められれば新しい後見人が選任されます。

このように、後見人を解任するには、解任できる理由と証拠集めが必要です。成年後見制度の手続きを実際に利用するにあたっては、慎重な判断の上、手続きを進めていきましょう。

11.動画解説|成年後見制度費用を詳細解説

12.まとめ

本記事は、成年後見制度を利用する際の手続きの流れについて解説しました。内容をまとめると以下のようになります。

  • 成年後見制度とは、判断能力が不十分な人を守るための制度のこと
  • 成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があり、手続きの内容が異なる
  • 成年後見人は誰でもなれるが、未成年者、過去に後見人等を解任された者、訴訟関係にあった者などはなれない
  • 成年後見を利用にあたっては、今まで通りの財産管理ができなくなるといった注意点を理解した上で手続きを行うべき
  • 法定後見制度で成年後見人を選任するときや任意後見制度で任意後見監督人の選任申立てをするときには、申立手数料や後見登記手数料が必要
  • 任意後見制度を利用する場合は事前に任意後見契約を結ぶ必要があり、公証役場で公正証書を作成するときに手数料が必要
  • 弁護士や司法書士などの専門家が成年後見人になる場合は報酬の支払いが必要になり、基本報酬の目安は月額2~6万円
  • 家族だけでの管理をしたいのであれば、本人が判断能力があるうちに家族信託契約を作成しておくのも対策の一つ
  • 成年後見人の選任手続きで必要な費用を払えない場合は、成年後見制度利用支援事業や法テラスの利用を検討する
  • 後見人を解任するためには、解任するための正当な理由が必要。一方的都合により解任はできない

成年後見制度を利用するためには、ある程度の費用がどうしても必要です。また、専門家に依頼した場合は、さらに費用がかかってしまいます。

費用を抑えることを優先して専門家に相談せず自分で手続きをする方もいます。しかし、成年後見制度を利用する場合には専門的な知識が必要になるため、司法書士や弁護士に相談したほうが賢明でしょう。

家族信託や成年後見制度、相続など多くの事案を扱ってきた当事務所では、ご家族が置かれた状況にあわせたサポートを行っています。将来認知症になった場合に備えて対策を検討したい方や、ご家族が認知症を発症して成年後見制度の利用を検討している方はお気軽にご相談ください。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

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