相続放棄で家はどうなる?不動産があるケースの判断基準を詳しく解説

相続放棄で家はどうなる?不動産があるケースの判断基準を詳しく解説
この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

相続放棄をした場合、相続財産に家が含まれているときは家の権利を失います。しかし、管理責任は残るため、場合によっては管理費などが発生することもあるので注意が必要です。家を含む財産を相続放棄したいときに知っておきたいことをまとめて解説します。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

  • 相続した家に暮らさないときは、管理コストと不動産価値のバランスを考えて、相続放棄するか決定する
  • 相続放棄をしても、家を管理する人が決まるまでは管理責任がある
  • 相続放棄した家には基本的には住み続けることはできない
  • 相続放棄した家は相続財産管理人又は相続放棄していない相続人が財産に関する権利や権限を有しているため、購入するには相続財産管理人又は相続人と交渉する
  • 相続登記や相続放棄の手続きについて悩んだときは司法書士などの専門家に依頼する

本記事では、家を相続放棄する手続きについて詳しく解説します。また、家を相続放棄するか迷ったときに検討する事柄についても解説します。

検討した結果、家を相続するという結論に達することもあるでしょう。その場合は、相続登記が必要になります。相続登記は2024年4月1日から義務化が予定されており、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に手続きをすることが必要です。スムーズに手続きを行うためにも、相続登記の必要書類について押さえておきましょう。

相続放棄の手続きも手間がかかりますが、相続登記も必要書類が多く、手続きに手間がかかる傾向にあります。複雑な手続きをシンプルに進める方法については、次の記事で詳しく解説しています。相続関連のトラブルを回避するためにも、ぜひ参考にしてください。

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1.相続放棄とは?

相続放棄とは、亡くなった被相続人の家や預貯金などプラスの財産と借金などのマイナスの財産を含む全ての財産を相続する権利すべてを放棄することです。家庭裁判所に必要書類を提出し、受理されると放棄が完了します。

例えば、父親が亡くなったとき、子は相続権を有することが一般的です。しかし、相続放棄を選択すると、父親の財産相続に対しての一切の権利を失うため、「借金だけを放棄して家は相続する」「家は放棄して現金だけ相続する」といった選択的な相続は不可能になります。

1‐1.相続放棄を選択するケース

相続放棄の多くは、次の2つのケースにおいて実施されます。

  • 借金が明らかに多い場合
  • 親族間の相続トラブルに巻き込まれたくない場合

それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。

1‐1-1.借金が明らかに多い場合

財産を相続するときは、金銭的価値がプラスのものだけでなくマイナスのもの、例えば借金なども相続することになります。そのため、プラスの財産よりもマイナスの財産が多いときは、相続することで損をすることになるでしょう。明らかにプラスの財産よりも借金のほうが多いときや、今後も多くの借金が判明しそうなときは相続放棄を検討します。

1‐1-2.親族間の相続トラブルに巻き込まれたくない場合

財産を相続すると親族間のトラブルに巻き込まれそうなときも、財産放棄を選択できます。トラブルに巻き込まれても受け取れる財産が多いときは別ですが、すでに十分な資産を持っている場合や平穏な生活を望む場合は、財産放棄も検討できるでしょう。

1-2.相続放棄を選択すべきでないケース

一方、次のケースでは相続放棄を選択しないほうが良いでしょう。

  • 不動産など資産を売却すれば借金を返済できる可能性がある場合
  • 借金は多いが、過払い金が発生している可能性がある場合

それぞれのケースについて具体的に解説します。

1‐2-1.不動産など資産を売却すれば借金を返済できる可能性がある場合

一見、借金が多そうでも、相続する不動産を売却すれば借金を完済し、なおかつ利益が出そうなときは、相続放棄をしないほうが良いかもしれません。信頼できる複数の不動産会社に査定を依頼し、どの程度で売却できそうか確認しておきましょう。

1‐2-2.借金が多いが、過払い金が発生している可能性がある場合

現在の法律に沿った金利基準(借入れ額によって年15~20%を上限金利とする)を超えた金利で借りていた借金であるなど条件が揃えば、過払い金が発生し、借金が減額になることや反対に還付されることがあります。

借入期間が長い借金が相続財産に含まれている場合は、一度、過払い金を専門的に扱う法律事務所などに相談してみましょう。過払い金が発生し、財産がトータルでプラスになることもあります。

2.家を相続したときに相続放棄をするか判断する基準

相続財産は必ずしも相続しなくてはいけないものではありません。例えば、親の名義となっている家で親と同居している場合であれば、相続財産として家を引き継ぎ、相続登記をして名義を変更するのがよいでしょう。

しかし、元々一緒に暮らしているのではない場合、相続することで管理財産が増え、手間や税金も増えることがあります。相続放棄するか迷ったときは、次の3つのポイントに注目してみましょう。

  • 管理コストと不動産価値のバランス
  • 売却できるか調べる
  • 不動産投資に適した立地か調べる

それぞれのポイントについて、わかりやすく解説します。

2-1.管理コストと不動産価値のバランス

家を相続すると、管理コストが発生します。例えば、誰も住む人がいないときであっても、定期的に庭木の手入れをしたり、家に風を通したりすることが必要です。何もしないで放置すると外観が悪くなることや治安悪化につながることがあり、近隣の住民にも迷惑をかけてしまうでしょう。また、家が早期劣化する可能性もあります。

管理コストに含まれるのは、メンテナンスの費用や手間だけではありません。家を所有することで固定資産税や都市計画税などの納税義務も発生します。地価が高い場所であれば、納税額も多くなるでしょう。

将来的には相続した家で暮らしたい、あるいは更地にして自分や子どものための家を建てたい場合であれば、管理コストを支払ってでも維持するべきか考えてみる必要があります。管理コストよりも不動産価値が低いときは、相続放棄も検討してみましょう。

2-2.売却できるか調べる

管理コストが高い場合は、相続放棄ではなく売却も検討できます。売却するためには名義を自分のものにする必要があるため、家を相続し、相続登記の手続きをしておきましょう。

しかし、立地などの条件によっては、売却が難しいこともあります。買い手がつくのか、またどの程度の金額で売却できるのか、相続か相続放棄か決める前に不動産会社に相談してみましょう。

2-3.不動産投資に適した立地か調べる

管理コストよりも不動産価値が高い場合は、家を貸して収益を得ることも選択肢のひとつになります。家の状態があまり良くないときは、リフォームや建て替えをしてから賃貸物件にすることもできるでしょう。

この場合は、リフォームや建て替えにかかる費用を計算し、どの程度の期間で元が取れるのか見積もっておくことが必要です。また、借り手がすぐに見つかるとは限らないため、どの程度の賃貸ニーズのあるエリアなのか調べておくようにしましょう。

不動産が財産に含まれるときは、価値を調べるだけでも費用が発生することがある点に注意が必要です。例えば、不動産会社や測量会社などに依頼するために何度も脚を運んだり、ホームインスペクションにより建物の安全性や性能を調べたりする際にも費用がかかります。

また、すぐに売却できないときは固定資産税などもかかってくるでしょう。売れるまでに時間がかかりそうなとき、労力や時間に見合わないと思えるときも、相続放棄を検討できるかもしれません。

家を相続する場合は、不動産の調査や相続登記の手続きが必要になります。煩雑な手続きを簡単に済ませたい方は、相続の専門家に相談してみましょう。当事務所では無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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3.相続放棄をすると家はどうなる?時系列で解説

家を相続しないときは、相続放棄の手続きが必要です。相続放棄に関連する手続きは次のような流れで進みます。

  • 1.相続開始後3カ月以内に相続放棄する
  • 2.相続財産管理人を選任する
  • 3.相続財産管理人が財産の管理・清算を行う
  • 4.財産が国庫に引き継がれる

それぞれの段階において何が必要か、またどのような手続きをするのか詳しく見ていきましょう。

3-1.相続開始後3カ月以内に相続放棄する

相続放棄は、相続が生じたことを知ってから3カ月以内に実施します。つまり、被相続人が亡くなったことを知り、ご自身が相続人であることを知ったときから3カ月以内に、相続放棄をするかどうかの判断をしなくてはいけません。相続放棄を決意したときは、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申し立てを行います。

相続放棄は相続人個々が行う手続きのため、相続放棄の手続きをしない相続人がいるときは、その相続人に家を含む財産の相続権が移ります。相続人全員と話し合うことで、ある程度のトラブルは回避できるでしょう。

また、財産ごとに相続放棄を行えない点にも注意が必要です。相続したい財産と相続したくない財産があったとしても、すべてを相続するかすべてを放棄するかいずれかを選択しなくてはいけません。

3-2.相続財産管理人を選任する

相続放棄の手続きをした後も、財産関連の手続きは残ります。特に不動産などの管理が必要な財産があるときは、適切に対応することが必要です。

相続財産に不動産などがあり、相続人全員が相続放棄をしたときは、相続人から代表者を決めて、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てましょう。相続財産管理人としては、弁護士などの専門家が選任されることが一般的です。

3-2-1.相続財産管理人に引き渡すまでは管理責任が発生する

相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産管理人が選任されるまでは、相続人には相続財産の管理責任が発生します。相続財産管理人がすぐに決まらない場合は、相続人が財産の管理を行わなくてはいけません。

例えば、庭木などのメンテナンスや建物の管理、清掃などを相続人が行うことになるでしょう。専門の業者にメンテナンスや清掃の作業を依頼するときは、発生した費用は相続人が負担します。管理が十分に行われず、行政から取り壊しを指示されるときは、解体費用も相続人が負担しなくてはいけません。

なお、相続放棄をするときは、財産の管理にかかる費用を被相続人の財産から支払うことはできない点に注意しましょう。被相続人の財産から管理費用を支払うと、財産を相続する意思があるとみなされて相続放棄ができなくなることがあります。

3-2-2.相続人がいるときは所有権が移動する

相続放棄をしたのが相続人の一部だけの場合には、相続財産管理人を選任する必要はありません。家の所有権は相続放棄をしていない相続人に移るので、その相続人が責任を持って家の管理も行います。

ただし、相続放棄をすることで相続人が変わるケースもあるので注意が必要です。例えば、被相続人の配偶者と子どもの全員が相続放棄をした場合には、相続権は被相続人の親に移ります。被相続人の親も相続放棄する場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人です。

なお、相続放棄により相続人が変わる場合、新たな相続人が相続放棄できるのは、相続する権利が自分にあることを知ってから3カ月以内となります。誰も相続しないときは、相続財産管理人選任の申し立てを行います。

3-3.相続財産管理人が財産の管理・清算を行う

相続財産管理人が決まると、財産の管理責任は相続財産管理人が負うことになります。また、相続財産管理人は家庭裁判所から許可を得れば、財産を売却することも可能です。現金化を進め、債権者がいる場合には申し出をするように呼びかけ、相続財産から返済を行います。

3-4.相続財産が国庫に引き継がれる

現金化できない不動産などの財産は、そのまま国庫に引き継がれ、国の財産になります。相続財産すべての現金化あるいは国庫への引き継ぎなどの業務が終わると、相続財産管理人は役目を終えます。

4.相続放棄をした家に住み続ける方法

相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産管理人が決まるまでの間は相続人に管理責任があります。そのため、管理などに費用が発生するときは、被相続人の財産ではなく相続人自身の資産から支払うことが必要です。

しかし、費用を負担している場合であっても、相続放棄をした事実が前提としてあるため、相続放棄した家に住むことはできません。管理義務と居住権は別であることを理解しておきましょう。

4-1.相続財産管理人に購入を申し入れる

相続財産管理人が決まった場合、財産の権利は相続財産管理人が有しています。相続放棄した家に住みたい、あるいは所有したいときは、相続財産管理人に購入を申し入れましょう。売買取引が成立したときは、自分の財産として所有・居住することができます。

4-2.相続人がいる場合は相続人に購入を申し入れる

相続人全員が相続放棄をしなかった場合は、相続人のうちの誰か、あるいは複数人が対象となる家の権利を有しているはずです。相続放棄した家を所有したいときは、家の権利を持つ相続人に購入を申し入れましょう。売買取引が成立したときは、自分の財産として所有・居住することが可能です。

相続放棄するか相続するか迷ったとき、また、相続放棄後の手続きに負担を感じるときは、相続の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。当事務所では、相続に関する無料相談を実施しています。お気軽にお問い合わせください。

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5.まとめ

本記事では、家を相続放棄するケースや手続きについて解説しました。内容をまとめると以下のようになります。

  • 相続した家に暮らさないときは、管理コストと不動産価値のバランスを考えて、相続放棄するか決定する
  • 相続放棄をしても、家を管理する人が決まるまでは管理責任がある
  • 相続放棄した家には基本的には住み続けることはできない
  • 相続放棄した家は相続財産管理人又は相続放棄していない相続人が財産に関する権利や権限を有しているため、購入するには相続財産管理人又は相続人と交渉する
  • 相続登記や相続放棄の手続きについて悩んだときは司法書士などの専門家に依頼する

相続財産(正の財産)よりも負債(負の財産)が多いときは、相続放棄を選択することが多いでしょう。しかし、相続財産に含まれる家を後で買い戻したいと考えている場合であれば、相続放棄をしないほうが経済的にプラスのこともあります。

相続放棄するかどうか迷ったときは、財産の管理コストや市場価値などについて細かく計算してみましょう。不動産会社に相談することで、相続対象の不動産の価値や収益性についての情報を得られることもあります。

相続放棄をする場合には、相続が発生したことを知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申し立てを行わなくてはいけません。相続人全員が相続放棄をした場合は、相続する権利が変わり、新たな相続人が生じることもあります。すべての相続人が相続放棄をしたときは、相続財産管理人を決めることが必要です。相続財産管理人が決まるまでは相続放棄をした財産であっても管理義務がある点に注意しましょう。

相続放棄しないという選択をしたときは、相続登記の手続きが必要です。相続登記には提出する書類が多いため手間がかかり、また、手続き自体も複雑になることがあります。手続きに困難を感じるときや時間が取れないときは、相続を専門とする司法書士へ依頼することも検討してみましょう。

相続登記の多くの事案を扱ってきた当事務所では、手続きをスムーズに行うためのご提案やサポートを実施しています。ぜひお気軽にご相談ください。

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