相続登記の義務化は2024年4月1日から実施。義務化の内容と今からすべき対策とは?

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに350件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

不動産を持った方の相続の際に相続人が行う必要がある手続きの一つとして、「相続登記」があります。この相続登記はこれまで、行わなくても罰則などが課せられなかったため、必要がなければ費用もかかるので、手続きをしない方も多くいらっしゃいました。

しかし、相続登記がなされないことで、所有者が特定できず「有効な土地利用ができない」ということで国レベルで大きな問題となっていることをご存知でしょうか?

そのため、この問題の対策として、2021年2月10日に法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議において民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案(案)が決定され、同年4月21日の参議院本会議で成立しました。相続登記義務化は2024年4月1日から施行されます。なお、住所変更登記も義務化されますが、施行日は公布後5年以内の政令で定めるとして、住所変更登記も義務化されるとも決まっているのです。

今回の記事のポイントは、下記の通りです。

  • 相続登記義務化は2024年4月1日から施行される
  • 相続で不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由がなく登記・名義変更手続きをしないと10万円以下の過料の対象となる
  • 住所変更した場合も不動産登記が義務化され、2年以内に正当な理由がなく手続きをしなければ5万円以下の過料の対象になる
  • 登記簿に正しい所有者が反映されていないと土地の利用・活用に支障が出る
  • 法改正以前に所有している相続登記・住所等の変更登記が済んでいない不動産についても義務化されるため、専門家の助力を得てできるだけ早く登記を行う必要がある

この改正によって、今登記を行っていないご家庭はどのようになるのか、何が変わるのかについて、本記事で解説していきたいと思いますので、参考になさってください。

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目次

1.相続登記が放置されると、何が問題なの?

1-1.相続登記とは?

そもそも、相続登記とは具体的に何を指すのでしょうか?

相続登記とは、被相続人から相続した自宅、アパートなどの不動産の名義を被相続人から不動産を相続した相続人に変更する名義変更登記手続きをいいます。親などから相続した相続財産の中に不動産が含まれている場合には、相続登記をする必要があります。

相続登記は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書などの書類を整え、対象不動産の所在地を管轄する法務局で申請します。そのため、相続する不動産が複数の地域にある場合には、それぞれの不動産の所在地を管轄する法務局ごとに、相続登記を申請しなければなりません。

1-2.相続登記がされないと、所有者不明の土地が増える

では、なぜこの相続登記が義務化されるまでに至ったのかというと、不動産関係の話題で最近よく聞かれる「所有者不明土地」の問題があります。

所有者不明土地」とは、国土交通省によれば「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」を所有者不明土地と定義しています。

通常、土地など不動産の所有者は「不動産登記簿」で確認することができますが、様々な理由で登記簿に正しい情報が反映されないケースが多くなっています。これによって土地の所有者がだれであるのか分からない、名前が確認できたとしても居所がつかめないという事案が多発しているのです。

 

登記簿に正しい情報が反映されなくなる理由はいくつかありますが、一番の理由は「相続登記がされないケースが多いため」と考えられています。
現状では相続登記は義務ではないので、以下の理由から相続登記が放置されてしまいがちです。

・手間や登記費用の出費を考えると、今でなくていい
・法定相続人間の話し合いがまとまらない
・遺産分割協議が面倒くさい

その状態で所有者が死亡し、代替わりが続いていけば相続人は鼠算式に膨れ上がり、もはや誰に所有権があるのか分からないということが、頻繁に起こっているのです。

また、不動産の所有者の住所変更登記も義務化されないことから、住民票上の住所を変更しても不動産登記簿の住所が反映されておらず、所有者へ連絡をとろうとしても所有者の居所がわからないという問題も発生しています。

このように相続や住所変更があっても登記が義務化されていないので所有者がどこにいるのか、現在生存しているのかわからないという不動産が多く発生してしまっている、というのが現状です。

1-3.九州の土地面積を上回る土地が有効活用できない状態に

平成30年版国土交通書土地白書によると所有者不明土地が発生する大きな原因として、不動産の相続登記がされないことが約66.7%、そして約32.4%が住所変更登記がされないことして上げられています。これは、日本全体で所有者不明土地は約410万ヘクタールに相当するとされており、九州の土地面積を上回る数値です。

この広大な土地が所有者不明土地である弊害は多く出ています。

例えば、国や自治体から見た場合、公共用地として土地を取得したいのにその交渉相手が判明せず国土として利用できない、災害対策の工事が必要だが対象土地の権利者が不明で話を進められないということになり、実際に現実の問題として起きている状況です。

民間同士でも、空き家となっている不動産を売却したい、街の賑わい創出のために土地を利用したいなど公共性のある事業の話が持ち上がっても、土地所有者が不明では話を進められません。
また、所有者のうち一人が行方不明、所在不明という状態が発生すると、その人の同意が得られないと空き家、空き地である不動産を売却したり、有効活用ができないという問題も発生します。

国や自治体のみならず民間にとっても、国土、不動産の有効利用を妨げられることになり、経済や国力の維持など多方面への影響が危惧されているのです。

2.「相続登記義務化」で押さえておきたい3つポイント

相続登記や所有者の住所変更登記がなされず放置されると、所有者がわからない土地が増えて、活用できない不動産が国土の大半を占めてしまうのは、大問題です。民間有識者でつくられた「所有者不明土地問題研究会」の調査では、この所有者不明土地による経済損失額が2017年から2040年までの累積で、6兆円規模になるとする考えも発表している程です。

これらの状況を鑑みて、かねてより相続登記を義務化することが検討されており、法案の議論もかなり進んだ結果、2021年2月10日に法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議において民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案(案)が決定されたのです。政府は3月5日に改正案を閣議決定をし、同年4月21日の参議院本会議で成立しました。

相続登記義務化は2024年4月1日から施行されます住所変更登記も義務化されますが、施行日は公布後5年以内の政令で定める日とされており、現段階では施行日は未定です。

所有者の情報を正確に反映させ、連絡をとれるようにするための方策として、要綱案における不動産登記の義務化に関連するポイントは下記のとおりです。

  • 相続登記の義務化
  • 住所変更登記の義務化
  • 法務局への所有者情報提供の義務化

以下、それぞれについて解説していきます。

相続登記義務化が注目されていますが、その他にも遺産分割協議における特別受益と寄与分の期限の新設、土地所有権放棄の制度や行方不明共有者がいる不動産の管理処分制度の創設など、相続に関連する改正点があります。相続登記義務化以外の改正点については別の記事でも詳しく解説していますので確認してみてください。

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3.ポイント①:相続登記義務化

相続登記義務化

3‐1.相続登記の義務化の開始時期

相続登記は、2024年4月1日から義務化され、不動産の所有者に相続があったときは、相続により不動産の所有権を取得した子どもは「相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に不動産の名義変更登記をしなければなりません。

3-2.相続登記は3年以内に!できなかった時の罰則とは?

もし、相続登記をしなければどんな罰則になるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

相続によって取得した不動産については、正当な理由がないのにも関わらず3年以内に登記申請をしないでいると10万円以下の過料の対象となります。これは、遺言などの遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も同様です。

相続登記を申請しない「正当な理由」とは?

ここで疑問に思うのが「正当な理由」とは具体的にはどんなことかという点ですが、相続は個別の事情によって3年以内に登記申請を行うのが難しい場合があります。
どのようなケースが”正当な理由”に該当するかについては、法務省のホームページでは、正当な理由があると考えられるケースとして下記を例示しています。

  • 数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
  • 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
  • 申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース など

相続登記義務化に伴う過料の対象とならない「正当な理由」の具体例については、今後通達等で明確化される予定となっています。

3-3.法改正以前の相続登記未登記物件にも適用される

また、注意しなければならないのが、この相続登記義務化は、法改正後に発生した相続のみならず、法改正以前から相続登記をしていない不動産についても適用がある、ということです。

民法等の一部を改正する法律 附則
第5条
6 第二号新不動産登記法第七十六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。この場合において、同条第一項中「所有権の登記名義人」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第  号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第二号施行日」という。)前に所有権の登記名義人」と、知った日」とあるのは「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と、同条第二項中「分割の日」とあるのは「分割の日又は第二号施行日のいずれか遅い日」とする。

引用元:法務省HP

では、いつまでに相続登記をしなければならないかというと原則、改正法の施行日から3年以内に相続登記を行う必要があります。

改正法附則の条文では「”知った日”又は”施行日”のいずれか遅い日」と規定されており、自分が相続により不動産の取得を知った日が遅ければ「知った日から3年以内」に相続登記をすればよいとされています。例えば、先代が自宅やアパート以外にも地方に山林など所有していたことを今まで知らず、法改正後に相続していたことを知った場合には、改正法の施行日から3年ではなく、不動産の相続を初めて知った日から3年以内に相続登記する義務を負います。

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4.速やかに相続登記ができない場合のパターン別対処法

4-1.遺産分割がまとまらないケース

家族の内容によっては、遺産分割協議による相続人間の合意形成がなかなかまとまらない場合もあります。

その場合において、相続登記義務を免れるために、遺産分割協議がまとまるまで法定相続分での登記手続きを行うことには手間とコストがかかります。
そこで、遺産分割協議がまとまらず速やかに相続登記をできない場合には、相続人であることを申告をすれば相続登記をする義務は免れる制度(相続人申告登記(仮称))が設けられました。

相続人申告登記(仮称)の仕組みとは?

相続人申告登記とは、法務局(登記官)に対して、「該当の登記名義人に相続が発生したこと」もしくは「相続人が判明していることを申し出ることで、登記官の職権で申告をしたものの氏名・住所などを登記簿に記録できる制度です。
この申出をすることで、一時的に相続登記の義務を履行したものとみなされます。

ただし、この相続人申告登記は相続登記そのものではないので、あくまで義務を免れることができる予備的な制度にすぎません。そのため、所有権が亡くなった方(被相続人)から相続人に権利が移転したということを示すものではなく、あくまで「登記簿上の所有者」が亡くなったことを示しているに過ぎないという登記手続きです。

後日、遺産分割協議が成立し、不動産を相続する相続人が決まった場合には上記で述べたように遺産分割の日から3年以内にその名義変更登記を行う必要があります。

4-2.不動産の遺贈を受けたケース

相続人に対して相続財産の一部を遺贈する内容の遺言があった場合には、不動産の遺贈を受ける者以外に法定相続人全員(遺言執行者がいるときは遺言執行者)の協力がないと遺贈による名義変更手続きができません。

協力をしない相続人等がいると義務を履行できないため、改正後は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による名義変更は、不動産の遺贈を受ける者が単独で申請することができようになります。

また、法定相続分による相続登記後、遺産分割による名義変更登記も、他の相続人の協力がなければ名義変更ができなかったのが、法改正により、不動産を取得した者の単独で申請することができるようになります。

4-3.法務局が住基ネットで把握した死亡情報を登記できる

住民基本台帳ネットワークシステムで、法務局(登記官)が登記簿上の所有者が死亡していること把握した場合には、法務局(登記官)の判断で所有者が死亡していることを登記簿に記録することができます。ただし、あくまで死亡情報のみを記録するのみで、その相続登記の義務は免れることはできません。

なお、弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、相続登記義務化に伴い、今所有している相続不動産についてどのような形で相続登記が必要か、相続登記に必要な書類と手続きの流れ、相続登記後に必要な不動産の管理処分方法などの無料相談をさせていただいております。どのような対策が今ならできるのかアドバイスと手続きのサポートをさせていただきますので、お気軽にお問合せください。

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5.相続登記を先延ばしにするリスクとは?

相続登記の放置がまだ1世代程度で、過去の相続権利者が生存しているのであれば、遺産分割協議を行って所有者を確定し、正しい登記内容に変更することは十分可能です。
しかし、何世代にもわたって相続登記が放置されている場合、遡って問題を処理するのは非常に困難になります。

5‐1.不動産を売却できなくなる

相続登記や住所変更登記が放置されていて登記簿で売主の名義が確認できなければ、購入希望者は危険を感じて取引に応じてくれないでしょう。

5‐2.利用・活用ができない

例えば相続対策でアパートを建てて運用したいといったとき、ハウスメーカーは土地の権利者を正確に知るために登記簿で確認します。所有者の名義が確認できなければ、やはり業者側が危険を感じて取引には難色を示すはずです。
このため売却だけでなく不動産活用も難しくなります。

5‐3.抵当物件として利用できない

融資を受ける場合には、一般的に建設予定地を金融機関に担保として提供します。相続対策で建築するために土地を担保に出したい場合も、金融機関は必ず登記簿で土地の名義人を確認します。正確な所有者を確認できなければ、金融機関は抵当物件として利用することを拒絶するはずです。

5‐4.正しい相続ができない

数代にわたって相続登記が放置されているケースでは、被相続人となる人が相続登記が放置されている物件の共有持分を仮に保有していたとしても、どれくらいの持分なのか不動産登記簿から確認できませんし、実際にはそもそも持分を保有していない可能性もあります。

実際に当事務所でも、明治時代から相続登記がされていない事例を扱ったことがあります。世代を追って相続人を調査した結果100名超の相続人が登場し、その合意をとるために個別の合意や裁判手続きを経て2年超の期間を経て名義変更手続きを行いました。

このように、相続登記を怠ってしまった結果、専門家でも対処しきれないことがあるので、相続登記の放置は気がついた時点でできるだけ早く問題の処理に動く必要があります。

遺言書を書くにしても、相続対象となる財産を正しく指定できないことから、遺言の内容の一部が無効になってしまったり、場合によっては遺言全体が無効になってしまう可能性も出てきます。

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6.ポイント②:住所変更登記の義務化

住所変更登記義務化

登記上の所有者の住所・氏名・名称変更についても義務化されます。その登記簿上の住所や氏名、名称の情報が更新されておらず、現在の居所がわからないことも所在不明土地の原因とされているからです。

6-1.「住所変更登記義務化」の開始時期

住所変更登記は、2026年4月28日までには義務化されることとなります。

不動産の所有者が変更されるのは、相続以外にも売買や贈与などのケースもあります。このように所有者の氏名、住所、名称について変更があったときは、その変更があった日から2年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければなりません。

6-2.住所変更登記は2年以内に!できなかった時の罰則とは?

住所変更登記も相続登記と同様に正当な理由」がなく2年以内に登記申請をしないでいると5万円以下の過料の対象となります。正当な理由がある場合には過料の対象となりません。

「正当な理由」についての具体的な類型については、相続登記義務化と同じく通達等で明確化される予定です。

6-3.法改正以前の住所等の変更未登記物件にも適用される

この住所等の変更登記義務化は相続登記義務化と同様に法改正後に発生した住所等の変更のみならず、法改正以前から住所等の変更登記をしていない不動産についても適用があります。

民法等の一部を改正する法律 附則
第5条
7 第二条の規定(附則第一条第三号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の不動産登記法(以下この項において「第三号新不動産登記法」という。)第七十六条の五の規定は、同号に掲げる規定の施行の日(以下「第三号施行日」という。)前に所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があった場合についても、適用する。この場合において、第三号新不動産登記法第七十六条の五中「所有権の登記名義人の」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第  号)附則第一条第三号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第三号施行日」という。)前に所有権の登記名義人となった者の」と、「あった日」とあるのは「あった日又は第三号施行日のいずれか遅い日」とする。

引用元:法務省HP

改正法附則の条文では「”変更のあった日”又は”施行日”のいずれか遅い日」と規定されており、法改正以前から住所等の変更をしていない場合には施行日から2年以内に行う住所等の変更登記をする必要があります。

法務局が住基ネット、商業・法人登記システムで把握した住所変更情報を登記できる

法務局(登記官)が住民基本台帳ネットワークシステム又は会社などの法人情報を管理する商業・法人登記のシステムから所有者の氏名及び住所についての変更の情報を把握したときは、法務局(登記官)の判断で、その住所、氏名などの変更登記ができるようになります。ただし、所有者が個人の場合には、個人への意向確認と本人からの申し出が必要です。

7.ポイント③:法務局への所有者情報提供の義務化

法改正が行われた後、新たに不動産の所有権を取得した場合は、名義変更登記時に生年月日や住所、氏名等の情報の提供が義務化されることになります。

7-1.提供する所有者情報について

個人は、名義変更登記時に生年月日等の情報の提供が必要

個人の生年月日は登記簿には記録されませんが、法務局内部において登記官は、氏名、住所、生年月日などの情報を元に住民基本台帳ネットワークシステムに定期的に照会及び検索用のキーワードとして利用される予定です。

企業が所有者の場合

所有者が会社など法人であるときは、商業・法人登記のシステム上の会社法人等番号が登記簿に記録されます。

海外居住者が所有者の場合

不動産を取得する者が海外居住者の場合には、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称等の申告及び登記が必要となります。連絡先としては第三者も指定することができますが、その第三者は日本国内に住所を要することが要件とされています。

被害者保護のための住所情報の公開の見直しも

登記記録に記録されている者(自然人に限る。)の住所が明らかにされることにより、人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合などの事由があるときは、その者からの申し出により、法務局から交付される登記事項証明書に住所を公開せず、住所に代わる事項を記載した登記事項証明書が交付されます。

7-2.所有不動産の一覧情報(所有不動産記録証明書(仮称))が発行される

所有している不動産の一覧情報(所有不動産記録証明書(仮称))を本人又は相続人から法務局に対して交付を請求できるようになります。
今までは不動産の所有財産の一覧を調べるには、不動産ごとの所在地にある市区町村役場で固定資産税評価証明や名寄せを取り寄せるなどの必要がありました。しかし、固定資産税が課税されていない不動産については、記載されていないなど問題がありました。

そこで、法務局で自らが所有者となっている物件の明細(所有不動産記録証明書(仮称))を取り寄せることができるようになります。
ただし、この証明書は、その時点における登記簿に記録されている所有者の氏名又は名称及び住所は過去の一定時点のものであり、必ずしもその情報が更新されているものではないことなどから、あくまでこれらの情報に一致したものを一覧的に証明するものであり、正確な網羅ができるかどうかは技術的な問題があるとされています。

8.相続登記義務化は今のうちに対応したい方向けに無料相談受付中

当サイトでは、相続登記義務化に伴い、今所有している相続不動産についてどのような形で相続登記が必要か、相続人は誰か、どんな書類を集めなければいけないのか、手続きの流れ、相続登記後に必要な不動産の管理処分方法などの無料相談が可能です。

累計4000件を超える相続・家族信託相談実績をもとに、専門の司法書士・行政書士がご連絡いたします。

ご家族にとってどんな対策が必要か、何ができるのかをご説明いたします。自分の家族の場合は何が必要なのか気になるという方は、ぜひこちらから無料相談をお試しください。

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9.相続登記の手続きの流れと費用の目安

もし、あなたの親が保有する土地が代々相続登記が放置されているなどで正しい所有者が確認できない場合、これまで述べてきたような権利関係の複雑化から不動産の売却や活用ができないといった問題のほかに、今後は、相続登記や住所変更登記の義務違反による罰則(過料)の問題が生じ困ってしまうことになるでしょう。

ですから、もし、現時点で相続や住所変更による相続登記や住所変更登記をしていない場合には、速やかに、正しい所有者を登記簿に反映させる必要があります。

10.不動産登記の手続きの流れの目安

法務局

ここでは、相続登記の手続きについて、一連の流れをみていきましょう。

10‐1.相続登記の手続き

相続登記をするには、法務局で登記手続きを行う必要があります。以下の手順にのっとり、申請を行いましょう。

(1)相続登記と住所変更登記は、不動産の所在地の法務局で行う

不動産の相続登記登記は全国どこの法務局でも申請できるわけではなく、「不動産の所在地の法務局」にて申請します。申請の方法は、①法務局の窓口での申請のほか、②郵送での申請、③オンラインでの申請という3つの方法があります。

郵送申請では申請書や必要書類など専門的知識を有する部分が多いため、間違いがあった場合の訂正対応が難しいこと、オンラインでの申請においては事前に電子証明書などの取得が必要なため、司法書士などの登記の専門家に依頼することが一般的です。一般の方が自分で行う際には、法務局での窓口申請で行います。

(2)必要書類を集め、登記申請書を作成する

登記手続きの一般的な流れは下記の通りです。

  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書などの必要書類を集める
  • 登録免許税の税額を計算して登記申請書を作成する
  • 申請書と必要書類を法務局に提出して登録免許税を納付する

登記手続きの内容によって、必要な書類や登記申請書の内容も変わってきます。手続きの流れや必要書類は、管轄の法務局にあらかじめ確認するようにしてください。

管轄のご案内(法務局ホームページ)

(3)登録免許税を計算し、納付する

不動産登記を申請するとき、登録免許税を支払う必要があります。
相続登記においては、相続する不動産の固定資産評価額に応じて、税額が変わります。登録免許税の税率は0.4%です。固定資産評価証明書に記載された額の1,000円未満を切捨てて税率0.4%を掛けて、100円未満を切捨てた額で登録免許税の税額を納付します。
仮に、評価額が3,000万円の不動産であれば12万円の登録免許税がかかります。

住所変更登記については不動産の個数(登記簿の数)1つにつき、1,000円です。

作成する書類や相続登記の費用の内訳について、さらにしっかりと知りたい方は別のブログに詳細が書いてありますので、そちらもご参考にしてください。

10‐2.相続登記の費用

通常、ご自身で相続登記をする場合、登録免許税(不動産の固定資産評価額の0.4%)とその他戸籍や必要書類を取得する費用が実費として発生します。

これは、不動産の評価額によって異なりますが、もし3,000万円の不動産を相続登記しようとすると15万円前後になります。
しかし、すべて一人で行うと、遺産分割協議書や申請書も自分で作成する必要があり、それが手間だと考えるなら、司法書士に依頼することをオススメします。

司法書士に登記を依頼した場合の目安として、上記で説明した実費のほかに一般的な相続登記では10万円程度住所変更登記では2万円程度の報酬がかかります。
ただし、権利関係が複雑化し、相続人が多数登場するようなケースでは案件に応じて費用も変わってくる可能性がありますので、ご自身の場合はどのようになるのかリーガルエステートにお問合せください。

11.まとめ

今回の記事では、2024年と遠くない未来に施行される「相続登記の義務化」について、変更される点や新設される制度について解説しました。内容をまとめてみましょう

  • 相続登記義務化は2024年4月1日から施行される
  • 相続で不動産取得を知った日から3年以内に手続きを登記・名義変更をしないと10万円以下の過料の対象となる
  • 住所変更した場合も不動産登記が義務化され、2年以内に手続きをしなければ5万円以下の過料の対象になる
  • 登記簿に正しい所有者が反映されていないと土地の利用・活用に支障が出る
  • 法改正以前に所有している相続登記・住所等の変更登記が済んでいない不動産についても義務化されるため、専門家の助力を得てできるだけ早く登記を行う必要がある

所有者が不明な土地が国にあることによって様々な弊害があることから、国は相続登記の義務化に踏み出しました。これまで義務ではなかったので、長年登記されていない場合は大変な労力になる可能性もありますが、できるだけ早めの対処をすることをオススメします。


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