相続登記の義務化は2024年4月1日から実施。義務化の内容と今からすべき対策とは?

不動産を持った方の相続の際に相続人が行う必要がある手続きの一つとして、”相続登記”があります。この相続登記はこれまで、行わなくても罰則などが課せられなかったため、必要がなければ費用もかかるので、手続きをしない方も多くいらっしゃいました。

しかし、相続登記がなされないことで、所有者が特定できず「有効な土地利用ができない」ということで国レベルで大きな問題となっていることをご存知でしょうか?

そのため、この問題の対策として、2021年2月10日に法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議において民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案(案)が決定され、同年4月21日の参議院本会議で成立しました。相続登記義務化は2024年4月1日から施行されます。

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今回の記事のポイントは、下記の通りです。

  • 相続登記義務化は2024年4月1日から施行される
  • 相続で不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由がなく登記・名義変更手続きをしないと10万円以下の過料の対象となる
  • 遺産分割協議がまとまらないなど3年以内に相続登記ができない可能性があれば、相続後の相続人申告登記の申出や相続前の遺言書作成、家族信託などの対策を検討する
  • 相続登記義務違反者を法務局の登記官が職務上知ったときに、義務違反者に対して催告がされ、相当の期間が経過しても相続登記がされない場合には、裁判所への過料通知が行われる
  • 住所変更した場合も不動産登記が義務化され、2年以内に正当な理由がなく手続きをしなければ5万円以下の過料の対象になる
  • 相続や住所変更などが登記簿に正しい所有者が反映されていないと相続関係が複雑になり、土地の利用・活用に支障が出る
  • 法改正以前に所有している相続登記・住所等の変更登記が済んでいない不動産についても義務化されるため、専門家の助力を得てできるだけ早く登記を行う必要がある

この改正によって、今登記を行っていないご家庭はどのようになるのか、何が変わるのかについて、本記事で解説していきたいと思いますので、参考になさってください。

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目次

1.相続登記とは

そもそも、相続登記とは具体的に何を指すのでしょうか?

相続登記とは、被相続人から相続した自宅、アパートなどの不動産の名義を被相続人から不動産を相続した相続人に変更する名義変更登記手続きをいいます。親などから相続した相続財産の中に不動産が含まれている場合には、相続登記をする必要があります。

相続登記は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書などの書類を整え、対象不動産の所在地を管轄する法務局で申請します。そのため、相続する不動産が複数の地域にある場合には、それぞれの不動産の所在地を管轄する法務局ごとに、相続登記を申請しなければなりません。

2.「相続登記義務化」の内容とは

相続登記がなされず放置されると、所有者がわからない土地が増えて、活用できない不動産が国土の大半を占めてしまうのは、大問題です。民間有識者でつくられた「所有者不明土地問題研究会」の調査では、この所有者不明土地による経済損失額が2017年から2040年までの累積で、6兆円規模になるとする考えも発表している程です。

これらの状況を鑑みて、相続登記を義務化することが決まり、相続登記義務化が2024年4月1日から施行されることになりました。

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2‐1.相続登記義務の起算日

相続登記は、2024年4月1日から義務化され、不動産の所有権を相続した者は、”自己のために相続の開始があったことを知り”、かつ、”不動産の所有権を取得したことを知った日”から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

つまり、3年以内の期限の起算日(スタート日)は、相続開始日ではなく、”不動産の所有権を相続したことを知った日”です。

不動産の所有権が義務化の対象となる

相続の対象となり不動産登記される権利としては、所有権のほか、地上権、賃借権、抵当権、根抵当権など各種権利があります。しかし、義務化の対象となるものは、不動産の所有権のみです。

地上権や賃借権などの権利は相続した場合でも義務化の対象とはなりません。

”不動産の所有権を相続をしたことを知った日”とは?

義務化の起算日(開始時期)は不動産所有者の相続開始日ではなく、”不動産の所有権を相続したことを知った日”です。不動産を相続したことを認識する瞬間、つまり「知った日」とは、自分が相続の対象者であることを知り、さらに、その中に不動産の所有権が含まれることを知るタイミングを指します。

これは、自分が相続人であることを知っていても、相続した財産の中に不動産が存在することを認識していない場合には、相続登記の義務は生じない、ということを意味しています。

遺言書があるケースの起算日

遺言書が存在し、その遺言によって不動産の所有権を相続する相続人がいる場合には、その相続人は、相続が開始されたことを知り、かつ、遺言により不動産の所有権を相続したことを知ったときから3年以内に、その相続登記をする必要があります。

2-2.相続登記は3年以内にしなければ、10万円以下の過料の対象となる

相続によって取得した不動産については、後述する法務局からの催告を受けたにもかかわらず、正当な理由がなく3年以内に相続登記を申請をしないでいると10万円以下の過料の対象となりまこれは、遺言などの遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した場合も同様です。

相続登記を申請しなくてもよい「正当な理由」とは?

相続登記を申請できない「正当な理由」があれば、過料の対象とはなりません。相続は個別の事情によって3年以内に登記申請を行うのが難しい場合があります。

どのようなケースが”正当な理由”に該当するかについては、法務省の通達(令和5年9月12日法務省民二第927号)にて下記を例示しています。

  • 相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する場合ケース
  • 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているため、誰が不動産を相続するのか明らかにならない場合
  • 相続登記申請義務を負う者自身に重病等の事情があるケース
  • 相続登記申請義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に規定する被害者等であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
  • 相続登記申請義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

上記に該当しない場合においても、法務局の登記官は相続登記申請義務者の事情を総合的に考慮したうえで、個別の事案における具体的な事情に応じて、相続登記ができない「正当な理由」として認められるかどうか判断します。

2-3.法改正前の相続物件にも適用される

注意しなければならないのが、この相続登記義務化は、相続登記義務化の施行日(2024年4月1日)以前の相続登記をしていない不動産についても適用がある、ということです。

民法等の一部を改正する法律 附則
第5条
6 第二号新不動産登記法第七十六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。この場合において、同条第一項中「所有権の登記名義人」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第  号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第二号施行日」という。)前に所有権の登記名義人」と、知った日」とあるのは「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と、同条第二項中「分割の日」とあるのは「分割の日又は第二号施行日のいずれか遅い日」とする。

引用元:法務省HP

いつまでに相続登記をしなければならないかというと改正法の施行日(2024年4月1日)又は不動産の所有権を相続を知った日のいずれか遅い日から3年以内に相続登記を行う必要があります。


引用元:法務省HP|令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント

改正法附則の条文では「”知った日”又は”施行日”のいずれか遅い日」と規定されており、自分が相続により不動産の所有権取得を知った日が遅ければ「知った日から3年以内」に相続登記をすればよいとされています。

例えば、先代が自宅やアパート以外にも地方に山林など所有していたことを今まで知らず、法改正後に不動産を相続していたことを知った場合には、改正法の施行日から3年ではなく、不動産の相続を初めて知った日から3年以内に相続登記する義務を負います。

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2-4.債権者・官公署が相続登記を申請した場合は義務履行があったものとみなされる

債権者や役所などの官公署が差押手続き等のために、相続人に代わり相続登記を申請するとき(代位による登記)があります。この場合は、相続登記が相続人から申請されなくても、第三者により相続登記がなされているので、相続人による相続登記義務履行があったものとみなされます。

3.速やかに相続登記ができない場合の対策

家族や財産状況によっては、被相続人の死亡後速やかに相続登記等を申請できない場合もあります。その場合の対策として、相続発生後(事後)に行う対策と相続発生前(事前)の対策があります。

3-1.【相続後】法定相続登記を申請する

相続後に行う遺産分割協議において、法定相続人間の合意形成がなかなかまとまらない場合もあります。

その場合において、相続登記義務を免れるために、遺産分割協議がまとまるまで、民法で定められている法定相続人の法定相続分での相続登記(法定相続登記)を行うことで相続登記義務を免れることができます。

法定相続登記後に遺産分割をした場合の起算日

法定相続分での相続登記がされた後に遺産分割協議が成立したときは、遺産分割によって、不動産を取得した者は、遺産分割の日から3年以内に所有権移転登記を申請しなければなりません。

法定相続登記後の登記手続きは単独申請が認めれる

法定相続分による相続登記がされた後に遺産分割をした場合や、相続放棄がされた又は遺言が発見されたなどの理由に基づく、不動産を相続した相続人に対する名義変更登記について、改正前の他の相続人の協力がなければ名義変更ができなかった取り扱いでした。

2023(令和5)年4月1日より、不動産を取得した者が単独で申請することができるよう取り扱いへと変わっています。

3-2.【相続後】相続人申告登記の申出をする

遺産分割協議がまとまりそうもないケースにおいて、法定相続登記を一旦申請するには、手間とコストがかかります。そこで、遺産分割協議がまとまらず速やかに相続登記をできない場合には、相続人であることを申告をすれば相続登記をする義務は免れる制度(相続人申告登記)が2024年(令和6年)4月1日より設けられます。

相続人申告登記とは

相続人申告登記とは、法務局(登記官)に対して、「該当の登記名義人に相続が発生したこと」もしくは「相続人が判明していることを申し出ることで登記官の職権で申告をしたものの氏名・住所などを登記簿に記録できる制度です。

この申出がされると、申出をした相続人の氏名・住所等が登記されます。この申出をすることで、登記簿に氏名・住所を記録された相続人は相続登記の義務を履行したものとみなされます。

相続登記とは異なり、権利の取得の事実を登記するものではないので、申出をした相続人の持分までは登記されません。また、法定相続人の範囲及び法定相続割合の確定も不要です。申出にあたっては添付書面として、申出をする相続人が被相続人の相続人であることがわかる、戸籍謄本を提出します。

相続人申告登記は、申出をした相続人のみが義務履行の対象となる

相続人申告登記の申出をした相続人は、相続登記の義務を履行したものとみなされます。

法定相続人が複数いる場合において、一部の相続人のみが相続人申告登記の申し出をしても他の相続人についての義務は履行されたものとみなされません。相続人の全員が義務を履行するには、相続人全員がそれぞれ相続人申告登記の申出をしなければなりません。

複数の相続人が連名で申出書を提出すれば、複数人分の申出をまとめてすることも可能です。

相続人申告登記の申出後に遺産分割をした場合の起算日

相続人申告登記は相続登記そのものではないので、あくまで義務を免れることができる予備的な制度にすぎません。そのため、所有権が亡くなった方(被相続人)から相続人に権利が移転したということを示すものではなく、あくまで「登記簿上の所有者」が亡くなったことを示しているに過ぎないという登記手続きです。

後日、遺産分割協議が成立し、不動産を相続する相続人が決まった場合には遺産分割の日から3年以内にその名義変更登記を行う必要があります。

3-3.【相続後】相続土地国庫帰属制度を利用する

2023年4月27日から「相続土地国庫帰属法」という新しい法律が施行されています。この法律は、相続によって得たが不要な土地を国に渡すことができる制度を定めています。

多くの人々が相続した土地を登記せず、放置することが多いため、この法律はそうした土地の効率的な利用を促進することを狙っています。

しかし、この制度を利用するためには、いくつかの条件があります。
土地を国に返すためには、土地評価に基づいて計算された10年間の管理費用を負担する必要があります。また、全ての土地がこの制度の対象となるわけではありません。例えば、建物が建てられている土地、土壌が汚染されている土地、担保権が設定されている土地、他人の通行権がある土地、権利に関する争いがある土地は、国庫に帰属させることができません。

この相続土地国庫帰属制度により、土地を国に帰属させることができるのか、要件を確認したうえで利用する必要があります。

参考:法務省HP「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」

3-4.【相続前】遺言書を作成する

遺言書を本人が作成しておくことで、相続後速やかに遺言書に基づく相続登記又は遺贈登記を不動産を取得する相続人のみで申請することができます。

相続人による遺贈登記は単独申請が認めれる

2023(令和5)年4月1日より、相続人に対して相続財産の一部を遺贈する内容の遺言があった場合には、遺贈を受けた相続人(受遺者)のみで遺贈による名義変更手続きができるように法務省の通達により取り扱いが変更されました。

改正前は、不動産の遺贈を受ける者以外に法定相続人全員(遺言執行者がいるときは遺言執行者)の協力がないと遺贈による名義変更手続きができませんでした。2023年4月1日より前に開始した相続により遺贈を受けた相続人(受遺者)についても同様に、単独で遺贈による名義変更登記を申請できるようになりました。

ただし、受遺者による単独申請ができるのは、受遺者が相続人に該当する場合に限定されます。相続人以外の第三者に対する遺贈については、従前と同様に法定相続人全員(遺言執行者がいるときは遺言執行者)の協力がないと遺贈による名義変更手続きができません。

3-5.【相続前】家族信託をする

家族信託は、認知症による資産凍結を防ぐ対策として近年注目を浴びています。家族信託のメリットとしては、本人が認知症になっても家族で財産管理ができるという点のほかに、本人他界後に残された財産について事前に資産承継先を決めておくことができるという点があります。

相続登記義務化がされても、遺言書と同様に法定相続人による遺産分割協議をせずに、資産を特定の相続人に取得させることができます。

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4.相続登記義務違反者に対する過料事件の手続きの流れ

相続登記義務を怠った場合の過料事件は、どういった内容で法的手続きが進められるかについて説明します。

4-1.登記官による申請義務違反事実の把握

法務局の登記官が相続登記の申請義務違反をしている者がいることを職務上知ったときに、過料手続きが始まります。

どのようなことを手掛かりに申請義務違反を知るかというと、法務省の通達(令和5年9月12日法務省民二第927号)では下記を示しています。

  • 相続人が遺言書を添付して遺言の内容に基づき特定の不動産の所有権移転登記を申請した場合において、遺言書の記載から、他の不動産の所有権についても、その相続人が遺贈又は相続するという内容が記載されていたとき
  • 相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産の所有権移転登記を申請した場合において、遺言書又は遺産分割協議書の内容として他の不動産も、その相続人が不動産の所有権を取得することが記載されていたとき

相続登記義務違反の過料を行うための催告は、相続人が相続登記等を申請した場面で提出された遺産分割協議書又は遺言書から他の不動産の所有権を相続したことを知った場合と限定しています。そのため、法務局が積極的に相続登記義務違反を調べるということにはならなそうです。

一般的に遺言書又は遺産分割協議書に記載されている不動産の一部のみを相続登記等をするケースは後日になって名義変更をしなかったというトラブルを避けるために少なく、催告される場面は限定的なケースになるものと考えられます。

4-2.申請義務違反者に対する申請の催告

法務局の登記官が申請義務に違反しており過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは、申請義務に違反した者に対して相当の期間を定めてその申請をすべき旨を書面で催告します。この催告書は、書留郵便や信書便を使って送付されます。

4-3.登記官から裁判所への過料通知

催告の通知に対して一定期間内に相続登記等がされない場合には、法務局の登記官は過料の対象にすべき事件として、事件を管轄する地方裁判所に通知します。但し、申請義務違反者から法務局の登記官に対して相続登記等を申請できない正当な理由が申告され、正当な理由があると確認された場合には、裁判所に対する過料通知は行われません。

4-4.裁判所での過料決定

裁判所は、登記官からの過料通知を基に、10万円以下の過料を科すかどうかを判断します。もし過料が科される場合には、その具体的な金額も裁判所によって決定されます。

引用元:法務省HP|令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント

4-5.相続登記義務化以前から義務化されている表題登記の過料処分の状況

相続登記義務化改正以前は相続登記や他の所有権や抵当権などの権利の登記には登記の義務化に伴う過料規定は存在しませんでした。権利登記以外の土地や建物の表題登記(例:建物の新築時の登記、表題部変更時の登記、建物解体時の滅失登記など)は従前から登記義務が課されており、表題登記を怠ると、10万円以下の過料に処せられる罰則が設けられています。

しかし、実際には、表題登記がされていない建物は日本国内に多数存在し、今に至っているのが現状です。そして、実務上も表題登記を怠った結果として過料に処せられた例はかなり少ないものと考えられます。

現状の建物表題登記の過料の運用状況からみると、相続登記義務化に伴う過料についても過料に処させられるケースは少ないものと考えられます。既に説明した通り、法務局登記官が相続登記申請された際に提出された遺言書又は遺産分割協議書記載内容から違反者を知り、催告するという手続きをとる関係上、催告につながるケースが少なく、また、正当理由あれば過料対象とならないからです。

法改正後、法務省の運用状況を今後しばらく注視する必要があります。

5.相続登記義務化に関連する他の不動産登記法の改正点

2024年(令和6年)4月1日から施行される相続登記義務化のほかにも、戸籍法、不動産登記に関する改正が予定されています。ここでは、相続登記義務化に関連する改正内容について解説します。

5-1.戸籍謄本が本籍地以外でも取得ができる(2024年3月1日施行)

戸籍法改正に伴い、2024年3月1日から新しい戸籍謄本の広域交付制度がスタートします。

この制度により、自分の本籍地以外の市区町村役場でも戸籍謄本や除籍謄本を取得できるようになります。この制度では電子化された戸籍情報を用い、本籍地が遠くても近くの市区町村役場で戸籍謄本を請求することが可能です。また、複数の本籍地にまたがる戸籍謄本の請求も、一箇所の市区町村役場で行えます。


法務省HP:戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)より引用

ただし、この広域交付制度では、コンピュータ化されていない一部の戸籍、除籍は対象外とされています。これらは従来通り、本籍地の市区町村役場か郵送での取得が必要です。また、戸籍抄本や除籍抄本の一部情報のみの証明はこの制度では対象外となり、これらも本籍地での取得が必要です。

子、親などの直系の親族の戸籍謄本が取得できる

広域交付制度では、本人やその配偶者、直系尊属(父母や祖父母など)、直系卑属(子や孫など)の戸籍謄本・除籍謄本を請求できます。しかし、兄弟姉妹やおじ、おばなどの戸籍謄本は請求できないため、従来通り本籍地での取得が必要です。

広域交付制度の利用は本人による市区町村窓口訪問での利用に限定される

さらに、広域交付での戸籍謄本の請求は、本人が直接市区町村の窓口に出向いて行う必要があり、郵送や代理人(司法書士、弁護士、行政書士等による資格者の職務上請求を含む)による請求はできません。これは個人情報保護の観点と特定の役所への負担軽減を目的としています。代理人による請求は、本籍地の市区町村役場でのみ可能です。

この制度を利用して戸籍謄本を請求する際、本人確認のために運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどの顔写真付きの身分証明書の提示が必要になります。

戸籍の附票は広域交付制度の対象外

戸籍附票は、広域交付制度には含まれていないため、本籍所在地の自治体で直接取得する必要があります。

不動産相続登記に際しては、故人(被相続人)の居住地と本籍を明らかにする目的で、戸籍附票や住民票の除票の提出が求められます。

戸籍謄本は故人の氏名、本籍、死亡日、生年月日などの情報を含んでいますが、住所については触れていません。対照的に、登記事項証明書は住所と氏名を掲載していますが、本籍に関する情報は欠けています。

したがって、相続登記を進めるにあたり、故人が不動産の正当な所有者であり、相続が生じたことを公的文書を通じて「住所」「氏名」「本籍」の三要素を繋げて証明することが必要です。この証明を行うためには、被相続人名義の戸籍附票や住民票の除票を添付することが要されます。

これらの文書に記載された「住所」「氏名」「本籍」をもって、故人が不動産の所有者であったこと、そして相続の事実を明確にすることができます。適切な書類を集めることにより、相続登記のプロセスをスムーズに進行させることが可能になります。

相続登記で住所をつなげる理由

5-2.所有者が法人の場合は法人識別番号が登記される(2024年4月1日施行)

不動産の所有者が会社など法人であるときは、商業・法人登記のシステム上の会社法人等番号が不動産の登記簿に記録されます。改正後に新たに法人が所有者となる場合、その登記申請時に会社法人等番号も登記事項として申請書に記載します。

改正前から既に法人が所有者となっている場合には、法人から申し出をすることで、登記官が職権で会社法人等番号を登記することが予定されています。

5-3.所有者が海外居住者の場合には、国内連絡先事項が登記される(2024年4月1日施行)

不動産を取得する者が国内に住所を有しない場合には、国内における連絡先となる者の氏名又は名称等の申告及び登記が必要となります。海外居住の日本人や海外投資家による不動産購入が増えており、その所有者の確認や連絡が難しいという現状から、日本国内の連絡先窓口が登記事項となります。

連絡先としては第三者(個人、法人どちらも可)を指定することができ、第三者の氏名又は名称、住所を登記することができます。第三者を連絡先として登記するためにはその第三者の承諾があること、そしてその第三者が国内に住所を有することが要件とされています。

本制度が定着するまでの当面の間は、”連絡先がない”旨の登記も許容される予定です。

5-4.DV被害者等保護のための登記事項証明書等の住所記載の見直し(2024年4月1日施行)

登記記録に記録されている者(自然人に限る)の住所が明らかにされることにより、DV被害者等の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがあるなど事由があるときは、その申し出により、対象者が載っている登記事項証明書にその住所を記載せず、住所に代わる事項(委任を受けた弁護士等の事務所や被害者支援団体、法務局の住所など)を記載した登記事項証明書が交付されます。

5-5.所有不動産記録証明制度(2026年2月2日施行)

所有不動産の一覧情報(所有不動産記録証明書)を本人又は相続人から法務局に対して交付を請求できるようになります。

これまでは、本人又は被相続人が所有する不動産の一覧を調べる方法としては、各市区町村役場で固定資産税課税明細(名寄せ)を取得する方法を用いられてきました。しかし、名寄せでは、その市区町村内に所有する不動産のみが対象となり、他市区町村の不動産は別途当該役場にて取得する必要があること、私道など非課税地については漏れているなどの課題がありました。相続登記申請義務化に伴い、被相続人名義の財産調査に関する負担を軽減し、登記漏れを防止する観点から、特定人が所有者として登記されている不動産の一覧の証明書を発行してもらえるようになります。

しかし、実際には、住所と氏名が一致していなければ財産の紐づけができないため、現時点における登記記録上の住所氏名が変更されていない不動産があることも想定されるため、正確な情報を反映しているかどうかは技術的な問題があります。そこで、当面は今までと同じ調査は併行し、名寄せと同じく所有不動産記録証明書は参考情報という形で利用することになりそうです。

5-6.所有者の住所変更登記等の義務化(2026年4月1日施行)

登記上の所有権の登記名義人の住所・氏名・名称変更についても義務化されます。その登記簿上の住所や氏名、名称の情報が更新されておらず、現在の居所がわからないことも所在不明土地の原因とされているからです。

これらの状況を鑑みて、所有者の住所変更登記等は、2026年(令和8年)4月1日から義務化されます。

住所変更登記等の起算日

所有者の氏名、住所、名称について変更があったときは、”その変更があった日”から2年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければなりません。

2年以内の期限の起算日(スタート日)である変更があった日とは、転居、結婚、離婚、会社名(商号)の変更などをした日、厳密に言うと住民票、戸籍謄本、会社登記簿に記録されている転居日、氏名変更日、変更日が該当します。

不動産の所有権が義務化の対象となる

相続登記の義務化と同じく、権利の対象は不動産の所有権です。地上権や賃借権は対象外です。不動産の所有者の住所等の変更があった場合には、住所変更登記等をしなければなりません。

住所変更登記等は2年以内にしなければ、5万円以下の過料の対象となる

住所変更登記も相続登記と同様に「正当な理由」がなく2年以内に登記申請をしないでいると5万円以下の過料の対象となります。正当な理由がある場合には過料の対象となりません。

「正当な理由」についての具体的な類型については、相続登記義務化と同じく今後の通達等で明確化される予定です。

法改正以前の物件にも適用される

住所変更登記等の義務化は相続登記義務化と同様に法改正後に発生した住所等の変更のみならず、法改正以前から住所等の変更登記をしていない不動産についても適用があります。

民法等の一部を改正する法律 附則
第5条
7 第二条の規定(附則第一条第三号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の不動産登記法(以下この項において「第三号新不動産登記法」という。)第七十六条の五の規定は、同号に掲げる規定の施行の日(以下「第三号施行日」という。)前に所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があった場合についても、適用する。この場合において、第三号新不動産登記法第七十六条の五中「所有権の登記名義人の」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第  号)附則第一条第三号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第三号施行日」という。)前に所有権の登記名義人となった者の」と、「あった日」とあるのは「あった日又は第三号施行日のいずれか遅い日」とする。

引用元:法務省HP

改正法附則の条文では「”変更のあった日”又は”施行日”のいずれか遅い日」と規定されており、法改正以前から住所等の変更をしていない場合には施行日から2年以内に行う住所等の変更登記をする必要があります。


引用元:法務省HP|令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント

5-7.法務局へ所有者個人の検索用情報の提供義務化(2026年4月1日施行)

個人が不動産を新しく所有する際には、氏名や住所の情報に加えて、生年月日などの情報の提供が求められるようになります。提供された生年月日は公には公示されませんが、法務局の検索用情報として内部で保管されます。

改正前から既に個人が所有者となっている場合には、個人から申し出をすることで、生年月日などの情報を提供できるようになる予定です。

この検索用情報は、他の公的機関からの所有者に関する情報、例えば死亡情報や氏名・住所の変更情報の取得に役立てられます。具体的には、法務局は提供された氏名、住所、生年月日等の情報を基に、住民基本台帳ネットワークシステムでの定期的なデータ照合や検索の際のキーワードとして使用する計画です。

5-8.職権による住所変更登記等の制度(2026年4月1日施行)

住所変更等登記の義務化に伴い、先述した法人識別番号、個人の生年月日などの検索用情報を用いて、法務局(登記官)が会社などの法人情報を管理する商業・法人登記のシステム又は住民基本台帳ネットワークシステムから所有者の氏名及び住所についての変更の情報を把握したときは、法務局(登記官)の職権で判断で、その住所、氏名などの変更登記ができるようになります。

これにより、変更登記の手間と費用の負担をかけずに住所変更登記等が可能となり、住所変更登記等の義務を履行したことになります。

法人については法人についての変更登記する旨の確認はされず職権で変更登記がされます。なお、所有者が個人の場合には、DV被害者や個人情報保護の観点から、職権で変更登記をすることについて個人への意思確認がなされその了解を得たときに職権で変更登記がされます。

5-9.法務局による死亡情報の職権登記(2026年4月1日施行)

何十年にもわたって登記簿の変更がされていない物件については、不動産登記簿を見ただけでは、所有者が生存しているのか、死亡しているのかわかりません。そこで、所有者個人から提供された生年月日などを用いて住民基本台帳ネットワークシステム等から、法務局(登記官)が登記簿上の所有者が死亡していることを確認した場合には、法務局(登記官)の職権で、不動産登記簿に死亡の事実を符号を表示します。これにより、登記簿を見れば、その不動産の所有者の死亡の事実が確認できるようになります。

ただし、あくまで死亡情報のみが記録するだけのものなので、相続登記義務は免れることはできません。

相続登記義務化が注目されていますが、その他にも遺産分割協議における特別受益と寄与分の期限の新設、土地所有権放棄の制度や行方不明共有者がいる不動産の管理処分制度の創設など、相続に関連する改正点があります。相続登記義務化以外の改正点については別の記事でも詳しく解説していますので確認してみてください。

当サイトでは、相続登記義務化に伴い、今所有している相続不動産についてどのような形で相続登記が必要か、相続人は誰か、どんな書類を集めなければいけないのか、手続きの流れ、相続登記後に必要な不動産の管理処分方法などの無料相談が可能です。

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6.相続登記義務化や関連事項が改正された理由

なぜ、この相続登記の義務化をはじめ多くの事項が改正されるまでに至ったのかというと、不動産関係の話題で最近よく聞かれる「所有者不明土地」の問題があります。

6-1.所有不明土地が増え続けている

所有者不明土地」とは、国土交通省によれば「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」を所有者不明土地と定義しています。

通常、土地など不動産の所有者は「不動産登記簿」で確認することができますが、様々な理由で登記簿に正しい情報が反映されないケースが多くなっています。これによって土地の所有者がだれであるのか分からない、名前が確認できたとしても居所がつかめないという事案が多発しているのです。

登記簿に正しい情報が反映されなくなる理由はいくつかありますが、一番の理由は「相続登記がされないケースが多いため」と考えられています。現状では相続登記は義務ではないので、以下の理由から相続登記が放置されてしまいがちです。

・手間や登記費用の出費を考えると、今でなくていい
・法定相続人間の話し合いがまとまらない
・遺産分割協議が面倒くさい

その状態で所有者が死亡し、代替わりが続いていけば相続人は鼠算式に膨れ上がり、もはや誰に所有権があるのか分からないということが、頻繁に起こっているのです。

また、不動産の所有者の住所変更登記も義務化されないことから、住民票上の住所を変更しても不動産登記簿の住所が反映されておらず、所有者へ連絡をとろうとしても所有者の居所がわからないという問題も発生しています。

このように相続や住所変更があっても登記が義務化されていないので所有者がどこにいるのか、現在生存しているのかわからないという不動産が多く発生してしまっている、というのが現状です。

6-2.九州の土地面積を上回る土地が有効活用できない状態に

平成30年版国土交通書土地白書によると所有者不明土地が発生する大きな原因として、不動産の相続登記がされないことが約66.7%、そして約32.4%が住所変更登記がされないことして上げられています。これは、日本全体で所有者不明土地は約410万ヘクタールに相当するとされており、九州の土地面積を上回る数値です。この広大な土地が所有者不明土地である弊害は多く出ています。

例えば、国や自治体から見た場合、公共用地として土地を取得したいのにその交渉相手が判明せず国土として利用できない、災害対策の工事が必要だが対象土地の権利者が不明で話を進められないということになり、実際に現実の問題として起きている状況です。

民間同士でも、空き家となっている不動産を売却したい、街の賑わい創出のために土地を利用したいなど公共性のある事業の話が持ち上がっても、土地所有者が不明では話を進められません。
また、所有者のうち一人が行方不明、所在不明という状態が発生すると、その人の同意が得られないと空き家、空き地である不動産を売却したり、有効活用ができないという問題も発生します。

国や自治体のみならず民間にとっても、国土、不動産の有効利用を妨げられることになり、経済や国力の維持など多方面への影響が危惧されているのです。

7.相続登記を先延ばしにするリスク

相続登記の放置がまだ1世代程度で、過去の相続権利者が生存しているのであれば、遺産分割協議を行って所有者を確定し、正しい登記内容に変更することは十分可能です。
しかし、何世代にもわたって相続登記が放置されている場合、遡って問題を処理するのは非常に困難になります。

7‐1.不動産の相続人が増え続けてしまい、複雑になる

数代にわたって相続登記が放置されているケースでは、被相続人となる人が相続登記が放置されている物件の共有持分を仮に保有していたとしても、どれくらいの持分なのか不動産登記簿から確認できませんし、実際にはそもそも持分を保有していない可能性もあります。

実際に当事務所でも、明治時代から相続登記がされていない事例を扱ったことがあります。世代を追って相続人を調査した結果100名超の相続人が登場し、その合意をとるために個別の合意や裁判手続きを経て2年超の期間を経て名義変更手続きを行いました。

このように、相続登記を怠ってしまった結果、専門家でも対処しきれないことがあるので、相続登記の放置は気がついた時点でできるだけ早く問題の処理に動く必要があります。遺言書を書くにしても、相続対象となる財産を正しく指定できないことから、遺言の内容の一部が無効になってしまったり、場合によっては遺言全体が無効になってしまう可能性も出てきます。

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7‐2.不動産を売却できなくなる

相続登記や住所変更登記が放置されていて登記簿で売主の名義が確認できなければ、購入希望者は危険を感じて取引に応じてくれないでしょう。

7-3.不動産の利用・活用ができない

例えば相続対策でアパートを建てて運用したいといったとき、ハウスメーカーは土地の権利者を正確に知るために登記簿で確認します。所有者の名義が確認できなければ、やはり業者側が危険を感じて取引には難色を示すはずです。
このため売却だけでなく不動産活用も難しくなります。

7‐4.抵当物件として利用できない

融資を受ける場合には、一般的に建設予定地を金融機関に担保として提供します。相続対策で建築するために土地を担保に出したい場合も、金融機関は必ず登記簿で土地の名義人を確認します。正確な所有者を確認できなければ、金融機関は抵当物件として利用することを拒絶するはずです。

8.相続登記の手続きの流れと費用の目安

もし、あなたの親が保有する土地が代々相続登記が放置されているなどで正しい所有者が確認できない場合、これまで述べてきたような権利関係の複雑化から不動産の売却や活用ができないといった問題のほかに、今後は、相続登記や住所変更登記の義務違反による罰則(過料)の問題が生じ困ってしまうことになるでしょう。

ですから、もし、現時点で相続や住所変更による相続登記や住所変更登記をしていない場合には、速やかに、正しい所有者を登記簿に反映させる必要があります。

ここでは、相続登記の手続きについて、一連の流れをみていきましょう。

8‐1.相続登記の手続きの流れ

相続登記をするには、法務局で登記手続きを行う必要があります。以下の手順にのっとり、申請を行いましょう。

(1)相続登記と住所変更登記は、不動産の所在地の法務局で行う

不動産の相続登記登記は全国どこの法務局でも申請できるわけではなく、「不動産の所在地の法務局」にて申請します。申請の方法は、①法務局の窓口での申請のほか、②郵送での申請、③オンラインでの申請という3つの方法があります。

郵送申請では申請書や必要書類など専門的知識を有する部分が多いため、間違いがあった場合の訂正対応が難しいこと、オンラインでの申請においては事前に電子証明書などの取得が必要なため、司法書士などの登記の専門家に依頼することが一般的です。一般の方が自分で行う際には、法務局での窓口申請で行います。

(2)必要書類を集め、登記申請書を作成する

登記手続きの一般的な流れは下記の通りです。

  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書などの必要書類を集める
  • 登録免許税の税額を計算して登記申請書を作成する
  • 申請書と必要書類を法務局に提出して登録免許税を納付する

登記手続きの内容によって、必要な書類や登記申請書の内容も変わってきます。手続きの流れや必要書類は、管轄の法務局にあらかじめ確認するようにしてください。

管轄のご案内(法務局ホームページ)

(3)登録免許税を計算し、納付する

不動産登記を申請するとき、登録免許税を支払う必要があります。
相続登記においては、相続する不動産の固定資産評価額に応じて、税額が変わります。登録免許税の税率は0.4%です。固定資産評価証明書に記載された額の1,000円未満を切捨てて税率0.4%を掛けて、100円未満を切捨てた額で登録免許税の税額を納付します。
仮に、評価額が3,000万円の不動産であれば12万円の登録免許税がかかります。

住所変更登記については不動産の個数(登記簿の数)1つにつき、1,000円です。

作成する書類や相続登記の費用の内訳について、さらにしっかりと知りたい方は別のブログに詳細が書いてありますので、そちらもご参考にしてください。

8‐2.相続登記の費用

通常、ご自身で相続登記をする場合、登録免許税(不動産の固定資産評価額の0.4%)とその他戸籍や必要書類を取得する費用が実費として発生します。

これは、不動産の評価額によって異なりますが、もし3,000万円の不動産を相続登記しようとすると15万円前後になります。
しかし、すべて一人で行うと、遺産分割協議書や申請書も自分で作成する必要があり、それが手間だと考えるなら、司法書士に依頼することをオススメします。

司法書士に登記を依頼した場合の目安として、上記で説明した実費のほかに一般的な相続登記では10万円程度住所変更登記では2万円程度の報酬がかかります。
ただし、権利関係が複雑化し、相続人が多数登場するようなケースでは案件に応じて費用も変わってくる可能性があります

9.動画解説|相続登記義務化に要注意

10.まとめ

  • 相続登記義務化は2024年4月1日から施行される
  • 相続で不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由がなく登記・名義変更手続きをしないと10万円以下の過料の対象となる
  • 遺産分割協議がまとまらないなど3年以内に相続登記ができない可能性があれば、相続後の相続人申告登記の申出や相続前の遺言書作成、家族信託などの対策を検討する
  • 相続登記義務違反者を法務局の登記官が職務上知ったときに、義務違反者に対して催告がされ、相当の期間が経過しても相続登記がされない場合には、裁判所への過料通知が行われる
  • 住所変更した場合も不動産登記が義務化され、2年以内に正当な理由がなく手続きをしなければ5万円以下の過料の対象になる
  • 相続や住所変更などが登記簿に正しい所有者が反映されていないと相続関係が複雑になり、土地の利用・活用に支障が出る
  • 法改正以前に所有している相続登記・住所等の変更登記が済んでいない不動産についても義務化されるため、専門家の助力を得てできるだけ早く登記を行う必要がある

所有者が不明な土地が国にあることによって様々な弊害があることから、国は相続登記の義務化に踏み出しました。これまで義務ではなかったので、長年登記されていない場合は大変な労力になる可能性もありますが、できるだけ早めの対処をすることをオススメします。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに350件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。


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