成年後見制度はひどいって本当?問題点と課題、トラブル事例を解説

認知症や障がいにより判断能力が低下した人を守るための成年後見制度。一見すると頼もしい制度に思えますが、実際には様々な問題点や課題を抱えています。「成年後見制度はひどい」という声も少なくありません。
本当に成年後見制度は利用する価値があるのでしょうか?

記事のポイントは下記のとおりです。

  • 成年後見制度とは、認知症や障がいにより判断能力が低下した人を保護する制度だが、実際の運用では様々な制約や問題が存在する。
  • 制度の問題点として、財産管理の制限や高額な費用負担、後見人選任の問題など、家族の実情に合わない制約が多い。
  • 実際に後見人による横領や不正使用、不適切な制度利用の勧誘など、深刻な被害が発生している。
  • 制度を避けるための対策として、家族信託任意後見制度など、より柔軟な代替手段の検討が重要。

この記事では、成年後見制度の概要を簡単に説明した上で、制度が抱える8つの主な問題点を詳しく解説します。

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1.成年後見制度とは?

成年後見制度は、認知症や障がいにより判断能力が不十分となった人を法的に保護し支援するための制度です。この制度では、成年後見人が本人に代わって財産管理や契約などの法律行為を行います。

1-1.法定後見制度と任意後見制度の違い

成年後見制度には大きく分けて、法定後見制度と任意後見制度の2種類が存在します。

法定後見制度
・本人の判断能力が低下した後に家庭裁判所が後見人を選任する
・「後見」「保佐」「補助」の3つに分類される
・家庭裁判所が後見人を選ぶため、本人の意思が反映されにくい
任意後見制度
・本人に判断能力があるうちに、将来の後見人を自分で選んで契約を結ぶ
・本人の意思を尊重した財産管理が可能
・将来的に判断能力が低下した際に発効する

1-2.成年後見制度の利用状況

成年後見制度の利用者数は年々増加傾向にありますが、潜在的な需要に比べるとまだ少ない状況です。

2021年時点での利用者数:約24万人
潜在的な後見ニーズ:推定1,000万人
利用率:約2%

成年後見人の選任状況を見ると、親族が選任されるケースは約26.2%にとどまり、第三者(弁護士、司法書士、社会福祉士など)が選任されるケースが約73.8%と大半を占めています。

しかし、近年では専門家の人手不足が顕著になってきており、その結果として親族や市民後見人が選ばれるケースが増加傾向にあります。この傾向は、成年後見制度の運用に新たな課題をもたらす可能性があり、制度の持続可能性や質の維持に向けた取り組みが求められています。

2.成年後見制度がひどいと言われる8つの問題点

成年後見制度は、多くの場合、高齢者や障害を持つ人々の生活をサポートする有用な手段とされています。しかし、この制度には批判的な意見も少なくありません。成年後見制度が「ひどい」と言われる背景にある主な問題点としては、下記の8つがあります。

以下、成年後見制度では一番利用数が多い、「後見」を中心に成年後見制度がひどいと言われる問題点について詳しく解説していきます。

 ① 本人の財産を家族で自由に管理できなくなる

成年後見制度を利用すると、家族であっても本人の財産を自由に管理することができなくなります。これは、本人の財産を保護するという制度の目的に沿ったものですが、実際の生活では大きな支障となることがあります。

  • 本人の預金口座からの直接引き出しができない
  • 急な出費は一旦立て替え払いが必要
  • 領収書の提出と後見人への精算申請が毎回必要
  • 日常的な買い物でも手続きが煩雑

また、本人の財産を使って家族全体の生活を支えていた場合、突然その資金が使えなくなることで、家族の生活が立ち行かなくなるケースもあります。特に、本人の年金で家族の生活費を賄っていた場合や、本人名義の預金で子どもの教育費を支払っていた場合などは深刻な問題となります。

このように、成年後見制度による財産管理の制限は、本人と家族の実情に合わない場合があり、かえって本人や家族の生活の質を低下させる可能性があります。家族間の信頼関係があり、適切に財産管理ができている場合でも、制度利用によってその柔軟性が失われてしまうのです。

 ② 手続きに手間と費用がかかる

成年後見制度の利用開始には、予想以上の手間と費用がかかります。

・申立手数料:約1万円
・戸籍謄本や住民票の取得費用:数千円
・医師の診断書:5,000円~2万円程度
・鑑定費用:5~10万円程度

専門家に依頼する場合は、さらに着手金や報酬が発生します。弁護士や司法書士に依頼すると、30~50万円程度の費用が必要になることも珍しくありません。また、申立てから後見開始までは通常2~4ヶ月かかり、急を要する場合への対応が難しいという問題もあります。

参考:裁判所HP
申立てをお考えの方へ(成年後見・保佐・補助)東京家庭裁判所後見センター

 ③ 希望した成年後見人候補者が選ばれない可能性

成年後見人の選任は最終的に家庭裁判所が判断するため、申立人が希望する候補者が選ばれない可能性があります。特に近年は、親族後見人の選任率が約26.2%にとどまり、専門職後見人が選任されるケースが増加しています。

家庭裁判所は、本人の財産管理能力や親族間の関係性、後見業務の適性などを総合的に判断して後見人を選任します。そのため、たとえ本人や家族が特定の親族を希望していても、その人物に財産管理の知識が不足していたり、他の親族との関係が良好でない場合には、別の人物が選任されることがあります。

 ④ 専門家が後見人になる場合の高額な費用

専門職後見人が選任された場合、定期的な報酬の支払いが必要となります。一般的な報酬額は月額2~6万円程度で、本人の財産状況や後見事務の内容によって決定されます。さらに、成年後見監督人が選任された場合は、追加で月額1~3万円程度の費用が発生します。

これらの報酬は本人の財産から支払われますが、年間で考えると相当な金額になります。例えば、後見人報酬が月額4万円の場合、年間48万円もの費用が必要となります。本人の収入が年金のみの場合、これらの報酬支払いにより生活費を圧迫する可能性があります。

また、後見人が行う個々の業務に対しても追加報酬が発生することがあります。このような高額な費用負担は、特に資産が少ない方にとって大きな問題となり、制度利用を躊躇する要因となっています。

 ⑤ 親族が後見人になる場合の大きな負担

親族が後見人に選任された場合、想像以上の負担が発生します。まず、財産管理や身上監護に関する専門的な知識が必要となりますが、一般の方にとってこれらの知識を習得することは容易ではありません。

後見事務には、定期的な収支報告書の作成や通帳の管理、各種手続きの代行など、多岐にわたる業務が含まれます。これらの業務は継続的に発生し、場合によっては日常生活の大部分を後見業務に費やす必要があります。特に仕事を持つ方にとって、この時間的拘束は大きな負担となります。

また、他の親族との関係悪化のリスクも存在します。財産管理の方法や使途について意見の相違が生じた場合、親族間の対立に発展することがあります。後見人には、このような対立にも適切に対応することが求められ、このような責任の重さは、親族後見人にとって大きな精神的プレッシャーとなっています。

 ⑥ 生前贈与が難しくなる

成年後見制度を利用すると、相続対策として一般的な生前贈与や養子縁組が著しく制限されます。これは、本人の財産を保護するという制度の趣旨によるものですが、家族の実情に合わない場合が多々あります。

例えば、従来から行っていた子や孫への定期的な生前贈与も、後見人が本人の利益にならないと判断した場合は継続できなくなります。また、相続税対策として計画していた不動産の贈与なども、原則として実行できません。

このように、成年後見制度は本人の財産保護を重視するあまり、家族の実情や従来からの資産承継計画を考慮しない仕組みとなっており、柔軟な対応が困難となっています。

 ⑦ 制度を途中でやめられない

成年後見制度は、一度開始すると本人の判断能力が回復しない限り、途中で終了することができません。これは、制度の継続性を確保するための仕組みですが、実際の運用では様々な問題を引き起こしています。

例えば、後見人との関係が悪化した場合や、高額な後見報酬の支払いが困難になった場合でも、制度を終了することはできません。後見人の変更は可能ですが、それにも相応の手続きと費用が必要となります。

特にこの問題で重要なのが、専門家が後見人になる場合、後見が続く限り報酬の支払いが必要となる点です。費用負担が大きくなり辞めたいと思っても、やめることはできません。

このように、成年後見制度は途中で簡単にやめられない制度です。そのため、この制度を利用する前には、その必要性と長期にわたる影響をしっかりと考慮する必要があります。後見制度の利用は重大な決断であり、慎重な検討が求められます。

 ⑧ 後見人による不祥事が発生するリスク

成年後見制度において、後見人による不祥事や財産の横領は深刻な問題となっています。最高裁判所の統計によると、毎年数十件の後見人による不正が報告されており、その被害額は数億円に上ることもあります。

(裁判所HP:後見人等による不正事例(平成23年~令和4年まで)から引用)

このような不祥事を防ぐため、家庭裁判所による監督制度が設けられていますが、完全な防止は困難です。特に、後見人が単独で財産管理を行う現行制度では、不正発覚までに時間がかかり、発覚時には既に大きな被害が生じているケースも少なくありません。

また、不正が発覚した場合の被害回復も容易ではありません。後見人が資力を持たない場合、損害賠償を受けることができず、本人の財産が回復できないリスクがあります。このような制度上の欠陥は、成年後見制度に対する不信感を助長する要因となっています。

なお、弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、認知症対策のために今後どのような財産管理の仕組みをつくればいいのか、無料相談をさせていただいております。今からできる対策方法についてのアドバイスと手続きのサポートをさせていただきますので、お気軽にお問合せください。

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3.成年後見制度で実際に起きているトラブル事例

成年後見制度は、認知症や高齢による判断能力の低下など、さまざまな理由で本人の判断能力が不十分となった場合に、その人の財産や身上を守るための制度です。

実際に利用された方は、こんなはずではなかったとトラブルが発生し、成年後見制度をやめたいという相談を受けることが多くあります。しかし、この制度を利用する際には慎重な判断が必要であり、一度利用を開始すると簡単には終了できない点があります。

ここでは、どのようなトラブルが発生しているのかについて解説します。

3-1.知らぬ間に制度を利用されてしまった

成年後見制度は、家族が単独で法定後見の申し立てを行うことができます。

申立ては、本人・配偶者・四親等以内の親族が行えます。四親等以内の親族には、子どもや孫、ひ孫、兄弟姉妹、いとこ、叔母、叔父などが該当します。家族や親族がいない場合は、民生委員や介護事業所、社会福祉協議会等の関係者が市区町村長に働きかけて、市区町村長が申立人となって手続きを行うことも可能です。

例えば、兄弟間で意見が対立している場合、一方の兄弟が勝手に後見人の選任を進めてしまうと、家庭裁判所の審理の結果、成年後見人が選任されてしまう可能性があります。このような状況が生じた場合、成年後見人が選任された後にはその決定を覆すことは非常に困難です。

さらに、成年後見人が選任された後には、その成年後見人が施設に入居している親との面会を拒否する、財産の管理について独断で決定を下すなど、成年後見制度を悪用するケースも考えられます。特に、後見人が自分と意見が対立する家族であった場合、そのような悪用が行われるリスクは高まります。

このようなトラブルを避けるためには、成年後見制度の申し立てが行われる前に、家族内でしっかりと話し合いを行い、共通の認識を持つことが重要です。また、後見人が選任される過程での透明性を確保するためにも、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。後見制度は本人を守るためのものであり、家族間の対立を生む手段ではありません。そのため、慎重な手続きと共通の認識が必要です。

3-2.成年後見人に預貯金や年金を取り上げられた

成年後見人が選任された後の財産管理は、家庭内で深刻な影響を及ぼすことがあります。

具体的なケースとして、下記のような相談がありました。

夫が認知症になり、妻が成年後見人になることを希望し家庭裁判所に申し立てたケースです。しかし、裁判所から届いた通知には、意外にも妻ではなく、知らない弁護士が成年後見人に選任されたと書かれています。アパートや駐車場、農地など、夫が所有する財産が多岐にわたっていたことが理由です。

この瞬間から、妻の生活は一変します。夫の預貯金や年金は、この弁護士によって一元管理されることになります。妻がこれまで夫の預貯金と年金、家賃収入を家庭の生活費として使っていたのに対し、新しい後見人は、「本人の財産を管理する」として、成年後見人名義の口座で管理することにされました。

この決定により、妻は突如として生活費を失い、困窮することとなります。成年後見人からは定期的に生活費が送金されますが、妻自身が独自の収入や財産を持っていないため、成年後見制度利用前と同じような財産管理はできなくなったのです。

この事例は、後見人が選任された後に家庭で起こり得る問題の一つです。このような事態を避けるためには、成年後見制度を利用する前に、家族全員でしっかりと話し合いを行うことが重要です。また、可能であれば専門の法律家に相談し、後見人が選任された後の財産管理や生活費がどうなるのか明確にしておくことも考慮するべきです。

3-3.成年後見人が報酬だけもらい仕事をしない

成年後見人が報酬を受け取る一方で、その責任を果たしていないケースが報告されています。

後見人の主要な業務は、財産の管理、帳簿作成、不動産の維持管理、そして本人の見守りです。しかし、後見人がこれらの業務を適切に遂行しているかの確認は困難で、一部の後見人は報酬を受け取るだけで、本人の生活環境に対する責任を果たしていない事例も存在します。

成年後見人が任務を怠ったり、不正行為を行ったりしないように監督する役割を果たすのが「成年後見監督人」です。この監督人は家庭裁判所によって選任され、親族からの申立てや家庭裁判所の職権によっても選任され、多くの場合、司法書士や弁護士などの専門家が担当します。成年監督人が選任されると、その報酬も本人の財産から支払われるため、費用が継続的に発生します。これが継続的な費用となり、本人の財産に負担をかける可能性があります。

3-4.成年後見人による財産の使い込み

成年後見制度は、本人の財産や身体を保護する目的で設けられていますが、後見人が本人の財産を不適切に使用するという問題が発生しています。特に、本人と同居している家族が後見人に選任された場合、財産の管理が甘くなり、本人の財産を使い込むケースが報告されています。

このような問題を未然に防ぐためには、成年後見人が選任される前に、その人物の信頼性や責任感をしっかりと評価して、候補者を立てることが重要です。選任されてしまった後は、財産の使い込みを防止することは難しくなります。

4.成年後見制度のメリット

成年後見制度の問題点について解説してきましたが、メリットもあります。

  • 預金などを財産を管理し、親族による使い込みを防げる
  • 不動産の売買や遺産分割協議などの手続きができる
  • 介護施設や医療機関での契約や手続きができる
  • 本人が誤ってした契約を取り消すことができる

以下、解説します。

4-1. 預金などを財産管理し、親族による使い込みを防げる

成年後見人が選任されると、その人は本人の財産、例えば現金、預貯金、不動産などの管理を一手に引き受けます。これは、特に相続関係で問題が起こりやすい状況で有用です。一部の家族が大きな財産を独占して管理していると、使い込みをしているのではないかなど、他の家族はしばしば不信感を抱くことがあります。しかし、中立な立場にある成年後見人が管理することによって、家族による使い込みを防ぎ、そのような疑念や不安を大幅に減らすことができます。

成年後見人が不正に財産を使い込むケースも報道されることがありますが、成年後見人は家庭裁判所による監督を受けるので、全体的に見ると、そのような事例は少ないとされています。したがって、財産の安全な管理を成年後見人に任せることが、成年後見制度を利用する大きなメリットの一つです。

さらに、成年後見制度は本人が「判断能力が不足している」と判断された場合にも有効です。たとえば、認知症によって資産が一度凍結された状態でも、成年後見人が選任されれば、その財産を動かすことが可能になります。これにより、本人の日常生活に必要な費用、例えば生活費、医療費、介護施設の費用などが、本人の預金から容易に引き出せるようになるのです。

4-2.不動産の売買や遺産分割協議などの手続きができる

成年後見制度のもう一つの顕著なメリットは、不動産の売買や遺産分割協議などの複雑な手続きを成年後見人が代理できる点です。これは特に、本人が認知症やその他の理由で判断能力が不足している場合に有用です。

不動産の売買や相続における遺産分割協議は、本人の判断能力がなければできません。本人の判断能力がなければ、自宅の売却や相続手続きを行う必要があっても、何もできないという状況になってしまいます。

成年後見制度を利用することで、不動産の売買や遺産分割協議など、財産に関わる多くの手続きを成年後見人が代理人として行うことができるようになります。

4-3.介護施設や医療機関での契約や手続きができる

成年後見人は、本人の代理として各種契約を締結できます。これにより、例えば、介護施設への入所や医療機関での治療に関する手続きを、本人の代わりに成年後見人が効率的に行えます。これは、本人が自ら手続きを行うことが困難な場合に特に有用です。

また、介護保険の契約や更新、さらには特定の医療行為に対する同意なども、成年後見人が代行できます。これは、本人が状況を十分に理解できない場合や、緊急の医療判断が必要な場合に、迅速な対応を可能にします。

4-4. 本人が誤ってした契約を取り消すことができる

成年後見制度のメリットとして「契約の取消権」が成年後見人に与えられる点です。この取消権は、認知症やその他の理由で判断能力が低下している人々にとって、非常に有用です。

認知症や精神的な障害がある場合、本人はしばしば不適切な契約を結ぶリスクが高まります。例えば、訪問販売員や不誠実な業者によって、不必要な商品やサービスの契約を結んでしまうケースがあります。このような状況で成年後見人がいれば、不適切な契約を速やかに取り消すことができます。

成年後見人は、本人が不利益な契約を結んだ場合、その契約を取り消したり、場合によっては代金の返還を請求することが可能です。これにより、本人やその家族は、悪質な業者や不必要な費用から守られます。

なお、弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、認知症対策のために今後どのような財産管理の仕組みをつくればいいのか、無料相談をさせていただいております。今からできる対策方法についてのアドバイスと手続きのサポートをさせていただきますので、お気軽にお問合せください。

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5.成年後見制度を使ったほうがいい?

成年後見制度は、多くの人々にとって有用な法的手段ですが、その利用はケースバイケースです。本章では、成年後見制度を使うべきケースと、使うべきでないケースについて詳しく解説します。

5-1. 成年後見制度を使うべきケース

本人に判断能力がなければ、契約や各種手続きを自ら行うことができません。そこで、成年後見制度は、特定の状況では有効な法的手段となります。以下に、そのようなケースをいくつか挙げてみましょう。

銀行口座が凍結されてしまった

認知症やその他の理由で、本人が銀行での手続きができなくなった場合、成年後見人がその代わりを務めることができます。

自宅など不動産を売却できない

本人が不動産の売却などの大きな財産に関する決定を行えない場合、成年後見人がその手続きを代理できます。なお、自宅などの居住用不動産は家庭裁判所の許可を得て売却できます。

遺産分割などの相続手続きをしたい

相続が発生した際に、本人が遺産分割の手続きを行えない場合、成年後見人がその役割を果たすことができます。

身上監護のサポートが必要

本人が身体的または精神的な理由で、日常生活の管理が困難な場合、成年後見人が介護施設や医療機関の契約を行います。

詐欺被害が不安

高齢者や判断能力が低下している人が詐欺に遭うリスクが高い場合、成年後見人がその防止に努め、必要があれば取消権を行使します。

身近な家族による財産の使い込みが不安

家族が本人の財産を不適切に使用する可能性がある場合、成年後見人を選任し、その財産を中立的な立場で管理します。

障害を持つ子が心配

障害を持つ子供がいる場合、その将来を安全に見据えるためにも、成年後見制度の利用が考慮されます。

5-2. 成年後見制度を使うべきではないケース

成年後見制度には、これまで述べてきたような問題点があります。そこで、以下に、成年後見制度を避けるべき、使うべきではないケースをいくつか挙げてみましょう。

本人が元気である

もし本人が健康で判断能力があれば、成年後見制度の利用は必要ないでしょう。そのような状況では、将来における財産管理対策として、家族信託や生前贈与、金融機関の代理人カード発行など、他の方法で財産管理や相続対策が可能です。

財産管理を家族だけで行いたい

家族内で財産管理を円滑に行いたいのであれば、成年後見制度は避けるべきです。
家族信託を活用した家族間だけの財産管理や、本人が元気なうちから資産を早期に生前贈与するなどの方法を検討すべきです。

成年後見人の報酬などのランニングコストを抑えたい

成年後見制度を利用すると、後見人に対して報酬を支払う必要があります。これが長期にわたると、ランニングコストが高くなる可能性があります。

生前贈与など相続対策をやりたい

成年後見制度では、贈与や不動産の積極的な運用は基本的に認められません。もし、本人が生きている間に積極的な相続対策を行いたい場合は、成年後見制度を避けるべきです。

6. 成年後見制度以外の対策法

成年後見制度は財産管理や身上監護に有用な手段ですが、それ以外にも選択肢があります。特に家族信託と生前贈与は、成年後見制度とは異なる特長とメリットを持つ方法です。この章では、家族信託と生前贈与に焦点を当て、その特性と適用ケースについて解説します。

6-1. 家族信託

家族信託は、財産管理や身上監護において成年後見制度とは異なる方法です。以下でその特性と利点、そして任意後見制度との併用について説明します。

家族信託とは?

家族信託は、財産の管理や運用を信頼できる家族に委託する制度です。この制度では、財産を持つ人(委託者)が、信頼する家族(受託者)に財産の管理や運用を任せる信託契約を結びます。このようにして、委託者自身が高齢や健康状態で財産管理が困難になった場合でも、スムーズに財産の管理が続けられます。

家族信託と成年後見制度の違い

利用タイミング

家族信託は本人が判断能力を持っている間に設定できます。一方、成年後見制度は本人の判断能力が低下した後に適用されます。

選任の自由度

家族信託では本人が信頼する家族を自由に受託者として選べます。成年後見制度では、裁判所が後見人を選任する場合が多く、本人の意志が必ずしも反映されないことがあります。

また、 家族信託は財産の管理方法を柔軟に設定できます。成年後見制度は家庭裁判所の監督を受けるため柔軟性に制限があります。

対象財産

家族信託では受託者との間の信託契約で定めた財産のみが対象となります。成年後見制度では成年後見人が代理人として全財産管理できる点と異なります。

身上監護

家族信託の受託者は財産管理権限しかないため、成年後見制度と異なり身上監護はできません。

家族信託を選ぶべきケース

認知症リスクがある

認知症などのリスクがある場合、早期に家族信託を設定しておくことで、将来的な認知症対策を施すことができます。

家族だけの財産管理を行いたい

家族信託では、財産の活用方法を自由に設定できるため、積極的な資産運用や相続対策が可能です。

信頼する家族がいる

信頼できる家族がいる場合、その人を受託者として選べるので、安心して財産管理を任せられます。

任意後見制度と併用すると身上監護もカバーできる

家族信託は財産管理に特化していますが、身上監護に関する機能はありません。しかし、任意後見制度と併用することで、このギャップを埋めることが可能です。介護サービスの利用や福祉施設への入居手続きなど、身上監護に関する各種手続きもスムーズに行えます。

このように、家族信託と任意後見制度を併用することで、財産管理と身上監護の両方に対応する全面的な対策が可能となります。特に、早期の対策や財産管理の自由度が高い点が魅力とされています。

6-2.生前贈与

成年後見制度や家族信託と並び、生前贈与も財産管理や相続対策の一つの方法です。特に、生前に確実に財産を譲り渡したい場合や節税を考慮している場合に有用です。

生前贈与と成年後見制度の違い

タイミング

生前贈与は、本人が判断能力を持っている間に行われます。一方で、成年後見制度は本人の判断能力が低下した後に適用されます。

贈与対象

生前贈与では、本人が自由に贈与する相手を選べます。成年後見制度では、裁判所が成年後見人を選任し、その成年後見人が財産管理を行います。

税制

生前贈与には贈与税が発生しますが、適切な計画によって節税が可能です。成年後見制度では、あくまで本人の財産のため利用しても税金は発生しません。

財産の所有とリスク

生前贈与では、贈与時点で財産が本人(贈与者)から家族(受贈者)に移転します。これにより、その財産は家族のものとなり、本人の認知症リスクが関与しなくなります。一方、成年後見制度では、財産は本人のものであり、成年後見人がそれを管理します。

生活費の確保

生前贈与を受けた家族は、その財産を本人の生活費に充てることも可能です。成年後見制度では、財産は本人のものであり、成年後見人がその管理と使用を行います。

生前贈与を選ぶべきケース

確実な財産移転

本人が生きている間に確実に特定の人に財産を移したい場合、生前贈与が最も確実です。

節税対策

贈与税と相続税のどちらが有利かを計算し、節税が可能な場合は生前贈与が適しています。

感謝の表現

本人が生きている間に、贈与を通じて家族や親しい人々に感謝の意を示したい場合も、生前贈与が適しています。

生前贈与と成年後見制度は、それぞれ異なる特性と利点があります。特に、生前贈与は財産の確実な移転や認知症リスクの軽減、生活費の確保といった面で優れています。しかし、それぞれの制度には独自の税制やルールがあり、専門的な知識が必要です。したがって、専門家のアドバイスを求めることが重要です。

7.まとめ

  • 成年後見制度とは、認知症や障がいにより判断能力が低下した人を保護する制度だが、実際の運用では様々な制約や問題が存在する。
  • 制度の問題点として、財産管理の制限や高額な費用負担、後見人選任の問題など、家族の実情に合わない制約が多い。
  • 実際に後見人による横領や不正使用、不適切な制度利用の勧誘など、深刻な被害が発生している。
  • 制度を避けるための対策として、家族信託任意後見制度など、より柔軟な代替手段の検討が重要。

成年後見制度は、活用すべきでないご家族で利用してしまうと、「ひどい」ということを感じてしまうケースが多くあります。しかしながら、既に判断能力がなく、財産管理ができない状況に陥ってしまっている、身寄りがなく、任せられる親族がいないといったケースでは非常に有用な制度です。

活用すべきでないご家族では、事前の対策として家族信託や生前贈与、任意後見制度の利用も選択すべきです。ご家族にとって、どんな制度がよいのか、一度専門家と相談することをおススメします。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

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