家族信託は公正証書で作るべき?家族が安心して財産管理をするための契約書の作り方

近年、認知症対策として注目を集めている「家族信託」。しかし、その効果を最大限に活用するためには、信託契約書の作成方法が大きなポイントになることをご存じでしょうか?

特に「公正証書」で作成するかどうかは、家族の安心と財産管理のスムーズさに直結する重要な選択です。「公正証書」で作成すると、契約内容が法的に強固なものとなり、家族間のトラブル防止や金融機関での手続きがスムーズになるなど、多くのメリットがあります。

記事のポイントは以下のとおりです。

  • 家族信託をするときは契約書を作成する必要がある
  • 家族信託契約書私文書もしくは公正証書として作成する
  • 公正証書のほうがトラブルを回避しやすい
  • 公正証書として家族信託契約書を作成するときは費用が発生する

本記事では、公正証書と私文書の違いを詳しく解説しながら、「公正証書を作成すると認知症対策としてどんな効果があるのか」「公正証書で作成しない場合に家族が直面する可能性のあるリスク」について掘り下げていきます。

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1.【認知症対策】家族信託とは?

家族信託は、認知症対策として注目を集める財産管理の仕組みです。この制度では、財産所有者(委託者)が信頼できる家族(受託者)に財産管理を任せることができます。

1、委託者が、受託者に財産管理を委託
2、受託者が、委託者や指定された家族(受益者)のために財産を管理・運用
3、受益者が財産から生じる利益を受け取る

家族信託は、委託者が認知症になった後も、受託者が適切に財産管理を続けられるという大きな利点があります。これにより、認知症発症後の財産凍結や管理の困難さを回避できます。

認知症対策としての効果

認知症かどうかあやふやな状態での家族信託契約は、本来の目的に沿うような効力を発揮しません。そのため、委託者の意思能力が明確なうちに契約を結ぶことが重要です。

家族信託は、公正証書で作成することで、より確実で安心な認知症対策となります。ただし、個々の状況に応じて適切な契約形式を選択することが大切です。

2.家族信託契約書の2つの作成形式(公正証書と私文書)

家族信託の契約は委託者と受託者の間で結ばれますが、契約の証明のために契約書の作成が必要です。家族信託契約書を作成する際、主に公正証書私文書の2つの方法があります。どちらの方法を選択するかは、個々の状況や目的によって異なります。

公正証書による作成 公正証書とは、公証人が作成する公的な文書です。家族信託契約を公正証書で作成すると、法的な効力が強く、契約の存在や内容を証明しやすくなります。
私文書による作成 私文書とは、個人間で作成する文書のことです。家族信託契約を私文書で作成する場合、公正証書に比べて手続きが簡単で費用も抑えられますが、法的な証明力は公正証書より弱くなります。

3.公正証書で作成する3つのメリット

家族信託契約書を公正証書で作成することには、多くのメリットがあります。前章でお伝えした通り、私文書での作成と比較して、公正証書には法的な効力や信頼性が高いという特徴があります。

公正証書で家族信託契約書を作成する際の3つの主要なメリットとしては、次のものが挙げられます。

  • 契約の証明力が高く家族間トラブルを防止できる
  • 信託口口座の開設が可能になる
  • 紛失・盗難時に再発行が可能

家族の将来を守るために、公正証書の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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 ❶ 契約証明力によりトラブル防止できる

公正証書で家族信託契約書を作成すると、契約の証明力が高まり、家族間のトラブルを防止できます。例えば、以下のようなトラブルを回避できる可能性が高くなります。

■ 「契約書の内容が違う」と主張されるケース
■ 「契約時に判断能力がなかった」と主張されるケース
■ 「そもそも契約を許した覚えがない」と主張されるケース

これらのトラブルを防ぐ大きな理由は、公証人の関与にあります。公証人は、契約者本人(委託者と受託者)の判断能力をチェックする基準があります。

具体的には、氏名や生年月日、住所を言えるかどうか、契約書に署名できるかどうか、そして契約内容を理解しているかどうかなどを確認します。

これにより、公正証書として作成された家族信託契約書は、高い証明力を持ち、後々のトラブルを大幅に軽減することができます。

 ❷ 信託口口座の開設できる

公正証書で家族信託契約を作成すると、信託口口座を開設できるようになります。信託口口座とは、信託財産を管理するための専用の銀行口座で、受託者の個人財産と明確に区分されます。

この口座の開設には大きなメリットがあります。

■ 財産の分別管理ができ、受託者個人の財産と混同されない
■ 受託者の破産・差し押さえから保護される
■ 委託者の死亡時、指定された家族がすぐに財産を受け取れる
■ 受託者が口座管理や入出金、振込手続きしやすい

ほとんどの金融機関では、私文書による契約では信託口口座を開設できません。私文書の場合は通常の個人口座を「信託専用口座」として使用することになりますが、これには上記のような法的保護が及びません。

したがって、信託口口座の開設を可能にする公正証書での契約作成は、家族信託の効果を最大限に発揮させる重要な要素と言えます。特に認知症対策や将来の財産管理を考える上で、公正証書による契約と信託口口座の組み合わせは非常に有効な選択肢となります。

 ❸ 紛失・盗難時に再発行が可能

公正証書で作成した家族信託契約書は、万が一紛失や盗難にあっても安心です。公証役場では原本を保管しているため、いつでも再発行が可能です。

例えば、以下のような状況でも対応できます。

■ 災害で契約書が焼失してしまった
■ 引っ越しの際に契約書をなくしてしまった
■ 相続時に契約書が見つからない

再発行の手続きは比較的簡単で、費用も1枚あたり250円程度と手頃です。これにより、大切な家族信託契約を長期にわたって安全に維持することができます。

4.公正証書にしないリスクとは?

家族信託を考える際、多くの方が「公正証書は本当に必要なの?」と疑問に思うかもしれません。しかし、公正証書を作成しないことには、思わぬリスクが潜んでいます。

  • 家族間での紛争リスク(契約の有効性を巡る争い)
  • 金融機関での手続きができないケースがある

それぞれどのようなケースなのか、具体的に見ていきましょう。

4-1.家族間での紛争リスク(契約の有効性を巡る争い)

家族信託は、財産管理の方法として効果的ですが、同時に家族間の複雑な感情を引き起こす可能性もあります。例えば、次のような状況を想像してみてください。

このような場合、私文書で作成した契約書では、委託者(親)の真意を証明することが難しくなります。公正証書であれば、公証人が契約時の委託者の判断能力を確認しているため、このような紛争のリスクを大幅に減らすことができます。

もし私文書で作成する場合は、契約締結時の医師の診断書を取得したり、契約締結の過程を動画や音声で記録して対策をとる必要があります。しかし、これらの対策を講じても、公正証書ほどの証明力はありません。

4-2.金融機関での手続きができないケースがある

家族信託を活用する上で、金融機関での手続きは避けて通れません。しかし、私文書で作成した契約書では、次のような問題に直面する可能性があります。

・信託口口座の開設ができない
・信託不動産を担保とする融資が受けられない
・信託不動産の売却時に買主から契約書の信頼性を疑われる

多くの金融機関は、家族信託の手続きに公正証書を要求します。私文書では証拠力が不十分と判断され、手続きが進められないケースが多いのです。

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5.公正証書作成のデメリットと注意点

公正証書で家族信託契約を作成することには多くのメリットがありますが、同時に費用、時間、内容の制約というデメリットがあります。しかし、これらのデメリットを理解した上で、メリットと比較検討することが重要です。

  • 手続きに時間と手間がかかる
  • 費用がかかる(信託財産額による手数料)
  • 希望通りの柔軟な契約内容にならない可能性がある

最終的には、ご自身の状況や優先事項に応じて、公正証書と私文書のどちらが適しているかを判断することが大切です。専門家に相談しながら、最適な選択をすることをお勧めします。

5-1.手続きに時間と手間がかかる

公正証書の作成には、一定の時間と手間が必要です。

■ 予約が必要: 公証役場は予約制のため、すぐに対応してもらえるとは限りません
■ 書類作成に時間がかかる: 公証人による公正証書案の作成に2週間程度かかることも
■ 複数回の打ち合わせ: 内容の確認や修正のために複数回の打ち合わせが必要な場合も

家族信託契約書を作成しようと決めてから完成までに、1ヶ月以上かかることも珍しくありません。急いで契約を結びたい場合は、この時間的制約が大きなデメリットとなるでしょう。

私文書であれば、曜日や時間を問わずいつでも作成可能です。今すぐ契約を結びたい場合や、委託者の体調が不安定で早急に契約を結ぶ必要がある場合には、私文書での作成も検討する価値があります。

5-2.費用がかかる(信託財産額による手数料)

公正証書の作成には、一定の費用が発生します。この費用は主に以下の要素で構成されています。

■ 公証人手数料:  信託財産の価額に応じて変動します
■ 正本・謄本の交付手数料: 1枚あたり250円程度
■ 書面代: 数千円程度

例えば、5,000万円の不動産を信託する場合、公証人手数料だけで約5万円程度かかることもあります。さらに、司法書士などの専門家に依頼すると、別途報酬が発生します。

一方、私文書であれば印紙代(200円)程度で作成可能です。費用を抑えたい場合は、私文書での作成も選択肢の一つとなります。

5-3.希望通りの柔軟な契約内容にならない可能性がある

公正証書作成の過程では、契約内容に関して以下のような制約が生じる可能性があります。

■ 公証人の裁量:  公証人によっては、公証役場指定の雛形を使用するよう求められることがあります
■ 法的観点からの修正: 公証人が法的観点から契約内容の一部修正を求めることがあります
■ 金融機関の要求: 信託口口座開設のために、金融機関から契約内容の変更を求められることもあります

これに対して私文書であれば、契約当事者間の合意さえあれば、より自由度の高い契約内容を盛り込むことができます。特殊な条件や独自の取り決めを含めたい場合は、この点を考慮する必要があるでしょう。

6.公正証書作成の具体的な手順と必要書類

家族信託契約書を公正証書として作成するときは、以下の流れで手続きを進めていきます。

  1. 当事者で契約内容を話し合う
  2. 公証人との面談を予約する
  3. 公証役場で必要書類を提出する
  4. 公正証書に間違いがないか確認する
  5. 費用を払って正本・謄本を受け取る

それぞれの段階で必要なものなども紹介します。

6-1.当事者で契約内容を話し合う

公証役場に行く前に、まずは委託者と受託者、受益者の間で契約内容を話し合います。信託財産の範囲や財産管理の方針など、細部まで決めておきましょう。

話し合った内容を紙にまとめておくと、誤認がなくなり、当事者間でトラブルが起こりにくくなります。また、公証役場でも、契約内容を抜け漏れなく公証人に伝えられるようになります。

6-2.公証人との面談を予約する

最寄りの公証役場で面談の予約をします。予約をする際に、必要な書類についても確認しておきましょう。

司法書士などの専門家に公正証書の手続き代行を依頼する場合は、公証人との面談を予約する必要はありません。公証人との対応もすべて司法書士などに任せられるため、公証役場に行かずに公正証書を作成できます。

6-3.公証役場で必要書類を提出する

専門家に依頼せずに公正証書を作成するときは、約束した日に公証役場に出向き、次の必要書類などを提出します。

公証役場で公正証書を依頼するときに持っていくもの

  • 本人確認書類
  • 印鑑
  • 信託する不動産の登記事項証明書
  • 信託する不動産の固定資産税評価証明書

依頼する内容を確認した後、公正証書の受取日時を予約します。

6-4.公正証書に間違いがないか確認する

依頼してから証書の作成までに2週間ほどかかります。予約した受取日時に再度公証役場に出向き、公証人が作成した公正証書に間違いがないか確認します。

6-5.費用を払って正本・謄本を受け取る

公正証書に間違いがないときは、費用を支払って正本と謄本を受け取ります。公正証書の原本は公証役場が保管します。

7.公正証書作成にかかる費用の詳細

家族信託契約書を公正証書として作成するときは、次の費用がかかります。

  • 公正証書の作成にかかる費用
  • 司法書士などに手続き代行を依頼するときの費用

それぞれの目安を紹介します。なお、契約当事者が公証役場に出向いて手続きをするときは、司法書士などへの専門家報酬は発生しません。

7-1.公正証書の作成にかかる費用

公正証書の作成にかかる費用は、信託金額によって異なります。以下をご覧ください。

信託金額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円超200万円以下 7,000円
200万円超500万円以下 11,000円
500万円超1,000万円以下 17,000円
1,000万円超3,000万円以下 23,000円
3,000万円超5,000万円以下 29,000円
5,000万円超1億円以下 43,000円
1億円超3億円以下 43,000円に、超過額5,000万円までごとに13,000円を追加
3億円超10億円以下 95,000円に、超過額5,000万円までごとに11,000円を追加
10億円超 249,000円に、超過額5,000万円までごとに8,000円を追加

なお、別途、謄本費用や追加費用がかかることがあります。

出典:手数料|日本公証人連合会

7-2.司法書士などに手続き代行を依頼するときの費用

司法書士に手続きの代行を依頼するときは、10~15万円程度の専門家報酬が必要です。ただし、委託する内容によってはさらに高額になることもあります。

8.【動画解説】家族信託契約書を公正証書または私文書で作成する際のメリット・デメリット

9.まとめ

本記事では、家族信託の契約書について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

  • 家族信託をするときは契約書を作成する必要がある
  • 家族信託契約書私文書もしくは公正証書として作成する
  • 公正証書のほうがトラブルを回避しやすい
  • 公正証書として家族信託契約書を作成するときは費用が発生する

認知症は誰もが発症する可能性を秘めた病気です。万が一に備えるためにも、判断能力が衰えたときのための対策を練っておく必要があります。

なお、家族信託は財産を適正に管理するためのよい方法ですが、財産管理の方法は家族信託だけではありません。任意後見制度や民事信託など、ほかの方法も比較してから決めるようにしましょう。

弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、ご家族に合わせた家族信託や後見制度について、無料相談を承っております。ぜひ、お気軽にお問合せください。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

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