相続登記の手続きにはどの程度の期間がかかるのかまとめました。また、2024年4月1日からは相続登記が義務化され、登記手続きも一定期間内に完了することが求められます。どのように変わるのか、どうすれば登記手続きを簡単に完了できるのかについても見ていきましょう。
今回の記事のポイントは以下のとおりです。
- 相続登記の期間は書類準備の期間と法務局への相続登記申請から完了までの2つの期間がある
- 相続登記では書類準備の期間が数週間~2か月程度、相続登記申請から完了までの時間が約1週間程度、合計2か月程度時間がかかる
- 相続登記の期間を短縮するポイントは、①不動産の相続人を早めに決める、②相続手続きを早めに動く、③司法書士など専門家に相談する、の3つ
- 相続登記をしないで放置すると、手続きが複雑化することがある
- 2024年4月1日からは相続登記が義務化され、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に手続きをしなくてはいけなくなる
本記事では、相続登記の期間について詳しく解説します。相続登記にかかる期間を短縮する方法や、相続登記をしないまま放置しておくデメリットについても解説します。
そもそも、相続登記は相続した不動産の登記を行うことですが、2024年4月1日から義務化が予定されており、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に手続きをすることが必要です。スムーズに手続きを行うためにも、相続登記に遺産分割協議書が必要なケースと遺産分割協議書の作成方法についても押さえておきましょう。
なお、相続登記には提出する書類が多く、手続きに手間がかかる傾向にあります。複雑な手続きをシンプルに進める方法については、次の記事で詳しく解説しています。相続関連のトラブルを回避するためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
1.相続登記を完了するまでにかかる期間はどれくらい?
相続登記には数週間からおおよそ2ヶ月ほどの期間がかかるとされています。相続登記を済ませないことには相続した不動産を売却できないため、早く売却しようと考えている方は、余裕を持って早めに手続きを開始しましょう。
1-1.相続登記の書類準備の期間と相続登記申請から完了まで2つの期間がある
相続登記の期間は、書類準備の期間と、相続登記申請から完了までの2つの期間からなります。相続登記には準備する書類が多く、相続対象となる土地が多いときや遠方にあるとき、被相続人が何度も引っ越しを繰り返していたときなどは、書類を準備する期間が長引きます。逆に、相続人の数や相続対象の不動産が1箇所など相続登記の内容がシンプルの場合には書類を取り寄せる役所の対象数が少なくなるので、準備期間も短くなります。
書類の準備の量によって相続登記完了までの数週間で済む場合や、2か月程度かかる場合など書類準備期間が大きく影響を受けます。
1-2.相続登記の書類準備から相続登記完了までの日数の目安
必要書類を準備した後、相続登記申請書と共に法務局に提出します。法務局に提出してから相続登記が完了するまでは約1~2週間です。ただし書類に不備がある場合は、さらに長引くことがあります。
2.相続登記の書類準備にかかる期間
相続登記の手続きを始める前に、不動産を調査したり、提出書類を集めたりするなどの準備が必要です。ケースごとに準備する内容も異なるため、必要な期間も異なります。どのような準備が必要か、それぞれの準備にどの程度の期間がかかるのかについて紹介するので、逆算して準備を開始し、遅滞なく手続きを済ませるようにしましょう。
2-1.不動産の調査
相続対象の財産の中に不動産があるときは、不動産の調査をします。被相続人が登記識別情報通知書(不動産登記済証)や固定資産税の納税通知書を持っていたときは、記載されている不動産を確認することによって、被相続人が所有している不動産の範囲を確認できます。
登記識別情報通知書は本人が過去不動産を取得したときに法務局から発行される書類です。再発行はできません。固定資産税の納税通知書は毎年5月前後に不動産所在地の役所から不動産所有者に郵送されてくる書類です。これらの書類が手元にないときは、不動産所在地の役所から名寄帳を取り寄せることで名寄帳から被相続人の所有している不動産を確認できます。
相続登記対象不動産が把握出来たら、法務局で登記事項証明書と不動産所在地の役所で固定資産税評価証明書を取り寄せます。
通常、これらの調査には2週間前後ほどかかります。対象となる不動産が遠方にある、複数あるときなどは、さらに時間がかかるでしょう。
2-2.被相続人の調査
次に被相続人の調査を実施します。被相続人が居住していた自治体の役場で戸籍謄本を取得し、順を追ってさかのぼり、出生までのすべての戸籍謄本をそろえましょう。本籍地が途中で変わっている場合は、移転前の本籍地の自治体に戸籍謄本を請求して取り寄せます。
被相続人の調査後、相続人についても調査が必要です。集めた被相続人の戸籍謄本を調べ、相続人をすべて確認します。そして、相続人全員の戸籍謄本も取り寄せます。被相続人の移動が多かった場合は時間がかかるので、1~2ヶ月ほど見積もっておきましょう。
なお、被相続人の戸籍謄本を集める作業に関しては、司法書士に依頼できます。労力と時間を節約できるので、自力で集めることが難しいときは依頼しましょう。
2-3.遺言書の検認
被相続人が自筆で遺言書を作成していた場合には、家庭裁判所による遺言書の検認が必要です。検認とは遺言書の内容を相続人に知らせ、遺言書の偽造を防止するために必要な手続きとなります。ただし、公正証書による遺言書や、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言書においては、検認は必要ありません。
検認の手続きには被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要です。また、書類を提出してから検認が終了するまでに1~2ヶ月ほどかかるため、早めに書類を集めておきましょう。
2-4.遺産分割協議書の作成
遺言書がなく法定相続分とは異なる割合で遺産相続を行う場合、あるいは遺言書どおりに遺産分割しない場合は、遺産分割協議が必要になります。遺産分割協議は相続人全員で行わなくてはいけません。
すぐに全員が集まることができ、なおかつスムーズに話し合いがまとまれば、遺産分割協議も遺産分割協議書の作成も短時間で終了します。しかし、話し合いがまとまらないときは、場合によっては数ヶ月かかることもあるでしょう。
作成した遺産分割協議書には相続人全員が署名して実印を押し、印鑑証明書を添付することで完成します。相続税がかかる状況であれば、相続税の納付期限(相続が始まったことを知った日の翌日から10ヶ月以内)に間に合わせるように意識して、話し合いを進めましょう。
2-5.相続登記申請書の作成
不動産を相続する場合は、相続登記申請書を作成します。書類作成が難しいときは、司法書士に相談してみましょう。
ここまで説明した通り、相続登記においては書類準備の期間が一番かかります。書類の量が少なければ短期間で済むケースもあり、数週間で書類準備が完了することもありますし、遠方の役所で取り寄せが必要なケースでは2か月程度かかることもあります。
3.相続登記申請から完了までの期間
相続登記の必要書類を添えて法務局に提出し、受理されれば1週間ほどで完了です。記載した内容に誤りや不備があるときは、申請書の訂正や添付書類の再提出が必要になります。書類に不備があるとさらに長引くため、余裕を持って早めに手続きを始めましょう。
3-1.法務局内での相続登記の手続き
対象となる不動産の管轄の法務局で、相続登記申請書と必要書類を提出します。登記申請の際には登録免許税の納付も必要です。郵便局や法務局で所定の登録免許税額に相当する印紙を購入し、相続登記申請書に貼付して提出します。
3-2.登記識別情報通知書・登記事項証明書の取得
相続登記の手続きが完了すると、法務局から登記識別情報通知書が発行されます。また、相続登記した不動産の登記事項証明書の取得も窓口で申請し、相続登記した内容と登記事項証明書の記載内容に間違いがないか確認しておきましょう。
4.相続登記の期間を短縮させるポイント
ここまで説明した通り、相続登記の書類準備期間として数週間から2か月程度と、相続登記申請から完了まで約1週間の期間がかかります。相続登記の期間を短縮させるポイントは下記の3つです。次のポイントに留意し、手続きにかかる期間を短縮しましょう。
- 早めに不動産を相続する相続人を決めておく
- 相続登記の必要書類の収集を早めに始める
- 司法書士に相談する
それぞれのポイントを解説します。
4-1.早めに不動産を相続するに相続人を決めておく
遺産分割協議により相続を実施する場合、話し合いが長引くと相続登記までの期間も長引いてしまいます。早めに話し合いを開始し、スムーズに相続が進むようにしておきましょう。
4-2.相続登記の必要書類の収集を早めに始める
時間が経過すればするほど、被相続人の戸籍や相続財産に関する書類を集めにくくなることがあります。被相続人が亡くなったらできるだけ早く書類を集め、手続きを開始するようにしましょう。
4-3.司法書士に相談する
被相続人の戸籍などの書類集めは、司法書士にも依頼できます。相続登記に手間がかかりそうなときは、早めに司法書士に相談しましょう。
司法書士に手続きを依頼するか迷ったときは、当事務所にご相談ください。相続登記の手続きにサポートが必要かどうか、無料で相談いたします。
5.相続登記の提出期限は?
財産を相続したときは、適切に相続税を納付する義務があります。しかし、財産に不動産が含まれていた場合、相続登記することについては2022年6月時点では期限はありません。
そのため、いつまでに相続登記をしなくてはいけないという決まりもありません。とはいえ、相続した不動産をいつまでも放置しておくことには問題も生じます。例えば、不動産を売却するためには、その不動産の所有者であることを示すことが必要です。登記をしていないと所有権を主張できないため、売却もできなくなってしまいます。
5-1.相続登記義務化後は3年以内の手続きが必要
2024年4月1日からは相続登記が義務化されます。義務化後は、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の手続きをしなければなりません。
相続登記には提出書類も多く、相続する不動産が多いときや被相続人が何度も引っ越しをしていたときなどは、さらに書類が増えて手続きに時間がかかることがあります。早めに相続登記の手続きに着手し、期間内に終わらせるようにしましょう。
6.相続登記を長期間放置するデメリット
相続登記の手続きをしないまま長期間放置すると、次のようなデメリットが生じます。
- 相続財産を売却できない
- 相続人の死亡により手続きが複雑化する
- 相続人のトラブルにより手続きが複雑化する
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
6-1.相続財産を売却できない
不動産を相続した場合であっても、相続登記をしていないときは正しく所有権を主張することができません。とはいえ固定資産税や都市計画税の納付書は1月1日時点で不動産を所有している方宛て(この場合であれば被相続人)に届くので、相続する場合は納税の義務も負うことになります。
将来的に活用しようと考えている不動産であれば問題ありませんが、特に使う予定がない場合は、税金の負担だけかさんでしまいます。速やかに相続登記を済ませ、売却するほうがよいでしょう。
相続税の納付が困難になることも
相続した財産に対する相続税は、原則として現金で納付します。財産が多いときは相続税も多額になるでしょう。
相続登記をしておけば、相続した不動産を売却して相続税額に充当できます。しかし、登記手続きがまだのときは不動産を売却できないため、相続税の納付が困難になるかもしれません。
6-2.相続人の死亡により手続きが複雑化する
相続登記をしていない状態で相続人のうちの誰か死亡すると、その財産が新たに相続対象となるため、手続きが複雑化します。相続人がそろっているうちに、早めに相続登記も済ませるようにしましょう。
6-3.相続人のトラブルにより手続きが複雑化する
相続人が認知症になり判断能力がなくなる、あるいは相続人に借金があり相続財産の権利が債権者に移るなどのケースも想定されます。さらに手続きが複雑化することもあるため、できるだけトラブルが起こっていないときに早めに相続登記を行うようにしましょう。
7.動画解説|相続登記の手続き期間はどれくらい?
8.まとめ
本記事では、相続登記の期間と相続登記を長期間放置したときに起こりうるトラブルについて解説しました。内容をまとめると以下のようになります。
- 相続登記の期間は書類準備の期間と法務局への相続登記申請から完了までの2つの期間がある
- 相続登記では書類準備の期間が数週間~2か月程度、相続登記申請から完了までの時間が約1週間程度、合計2か月程度時間がかかる
- 相続登記の期間を短縮するポイントは、①不動産の相続人を早めに決める、②相続手続きを早めに動く、③司法書士など専門家に相談する、の3つ
- 相続登記をしないで放置すると、手続きが複雑化することがある
- 2024年4月1日からは相続登記が義務化され、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に手続きをしなくてはいけなくなる
相続登記の際に提出する書類は多いため、スムーズに手続きを進めるためにも、早めに着手することが必要です。早めに着手することで書類を集めやすくなるだけでなく、相続人の死亡やトラブルによる手続きの複雑化を回避することもできます。また、相続登記の手続きが完了すると、相続した財産を売却できるようになるため、固定資産税などの維持費を節約できることにもなるでしょう。
相続登記の多くの事案を扱ってきた当事務所では、手続きをスムーズに行うためのご提案やサポートを実施しています。ぜひお気軽にご相談ください。