「相続手続き費用の計算は複雑で大変だ」と思う方は少なくありません。相続手続きは財産の種類ごとに行わなければならず、依頼する専門家によっても費用が変わってくるからです。
安くしようと思うと自分でやることもできますが、期限内に様々な手続きを行う必要があるため、結構大変な作業です。費用や作業量を鑑みて、士業・専門家に依頼するかご自身でやるかどうかを選択できるようこの記事で詳細を解説します。
今回の記事のポイントは下記の通りです。
- 自分で相続手続きを行えば費用は抑えられるが大変
- 相続手続き費用は依頼先や財産の種類によって異なる
- パッケージなら相続手続き費用の計算もシンプル
- 相続手続きは専門家に任せたほうがよい
この記事では相続手続き費用がいくらかかるのか、相場を交えながらわかりやすく説明していきます。
目次
1.相続手続きを代行する場合の費用相場
相続手続きの依頼先は一つではなく、様々な専門家が相続手続きの代行を受け付けています。まずはそれぞれの専門家の特徴を一覧で見てみましょう。
専門家の種類 | 特徴 |
司法書士 | 相続登記(不動産の名義変更)に強い。他の相続手続きも代行 相場は66,000円~15万円 |
行政書士 | 相続専門の行政書士を選べば相続手続きを代行してくれる 相場は3万円~15万円 |
弁護士 | 相続トラブルに強い。直接相続手続きに関わることはない 相場は着手金で20~30万円かかる。総額は事案・事務所によって変わる。 |
税理士 | 税金の専門家。相続税申告をメインに代行してくれる 相場は遺産総額の0.5%~1%(例:遺産総額5,000万円の場合は25~50万円) |
銀行 | 司法書士や税理士を紹介してくれるが、費用が割高になる 相場は110万円以上 |
相続手続きを依頼できる専門家とひとことで言っても、得意分野が違うことがわかると思います。ここからは、それぞれの専門家の費用相場を比較します。
司法書士・行政書士事務所リーガルエステートは、4000件を超える相続手続きの実績があります。
戸籍収集をはじめ相続人調査のほか、相続による預貯金の解約や不動産の名義変更手続きなど相続後の手続きを33,000円〜サポートしています。
どんな手続きが必要か、必要な書類はどのように集めればいいのかなどの相談もお受けしております。 初回無料相談を随時承っておりますのでお気軽にお問合せください。
1-1.不動産の登記手続きがあるなら司法書士
まずは司法書士に「相続登記」という相続手続きを依頼したときの費用相場を見てみましょう。
相続登記とは、家や土地などの不動産の名義人を変更する手続きのことです。相続登記には司法書士の報酬に加えて、登録免許税や実費(書類の取得にかかる費用など)が必要となります。
司法書士への報酬 | 特記事項 | |
司法書士事務所A | 6万6,000円 | 相続人が複数人の場合などで増額 |
司法書士事務所B | 7万7,000円 | 案件が複雑な場合などで増額 |
司法書士事務所C | 7万8,000円~15万8,000円 | 不動産の価格によって変動 |
相続登記の際の司法書士への報酬は安くても6万6,000円、不動産の価値が高い場合は15万円を超えることもあります。
1-2.遺産分割協議書作成など書類作成なら行政書士
行政書士は相続業務の代行を幅広く行っており、担当する内容によって費用相場が異なります。ここでは、ある行政書士事務所の料金表を見てみましょう。
業務の内容 | 報酬額 |
相続基本報酬 | 6万円~ |
戸籍・住民票取得 | 1,500円/1通 |
財産目録作成(遺産分割協議用) | 3万円~ |
遺産分割協議書作成 | 3万円~ |
金融機関の預貯金の相続手続き | 3万円~ |
有価証券の相続手続き | 3万5,000円~ |
自動車の相続手続き | 3万円~ |
行政書士は預貯金、有価証券(株式など)、自動車など様々な財産の相続手続きを代行してくれますが、土地や建物などの相続登記は司法書士しか代行できません。
そのため、相続登記については行政書士事務所で提携している司法書士を紹介してもらえることが多いです。なお、相続登記の費用相場は次章で解説します。
1-3.争いやトラブルに不安があれば弁護士
前述の通り、弁護士は相続手続きを代行するのではなく、相続トラブルの防止や解決を主な業務としています。弁護士に相続関連の依頼をしたときの費用相場は、以下のとおりです。
業務の内容 | 弁護士事務所A | 弁護士事務所B | 弁護士事務所C |
遺言書の作成 | 16万5,000円~ | 16万5,000円 | 11万円~ |
遺言書の執行 | 33万円~ | 33万円~ | 遺産評価額の2%+30万円~ |
相続人調査 | 5万5,000円 | 3万8,500円 | 5万5,000~11万円 |
遺産分割協議の代理人 | 22万円~ | 22万円~ | 利益の18%~ |
相続放棄 | 5万5,000円~ | 5万5,000円~ | 11万円 |
弁護士に相続関連の依頼をした場合、案件の内容によって費用が大きく異なってくる場合があります。例えば、弁護士に遺産分割協議の代理人となってもらった場合の報酬は、遺産の金額などの条件によって変動する可能性が高いです。
また、遺言書の作成や執行についても、費用は遺言書の形式や遺産の金額などによって変わってきます。弁護士に依頼するときは、見積もりをしっかり出してもらいましょう。
1-4.税金関係のお悩みがあれば税理士
税理士は、税務に関する専門家であり、相続手続きを依頼する場合は「相続税の申告業務」を主に行います。税理士に相続手続きを依頼した場合、相続登記手続きや相続放棄、紛争解決に向けた業務はできませんので、基本的には司法書士や行政書士など他の専門家とタッグを組んで進めていくことが多く、その窓口として税理士が対応していくことになるでしょう。
費用は、遺産総額の0.5%~1%が相場となっています。
ただし、相続に特化した事務所でないと対応できない事務所もあるので、もし知り合いや顧問についていただいている税理士がいるなら、直接聞いてみることをオススメします。
1-5.銀行の相続手続き費用の相場
銀行は遺産調査や財産目録の作成、遺産分割協議書に基づく遺産分割手続きなどを代行してくれます。相続登記や相続税の申告など、専門知識を要する手続きが発生した場合は、司法書士や税理士などの専門家を紹介してもらうこともできます。
銀行は相続手続き代行のパッケージサービスを提供していることが多いですが、手数料は他の依頼先と比べて割高になっており、最低報酬額の相場は110万円程度です。
銀行は立地の良い場所に店舗を構えていることが多く、司法書士や行政書士の事務所よりも高額な土地代がかかります。また相続手続き代行以外のサービスを提供するために人件費も必要となるので、相続手続き代行の手数料も必然的に高くなってしまうのです。
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2.煩雑な相続手続きを依頼するならパッケージサービスを利用する
相続手続きを自分でやるとなると、非常に煩雑・複雑になります。
また、これら財産調査や遺産分割協議書の作成、相続税申告などの手続きをバラバラに行うと非常に面倒になってしまいます。ですので、司法書士事務所などで提供されているパッケージサービスを利用すれば、相続手続きをまとめて任せられるので安心です。
2-1.相続手続きを丸ごとおまかせにできる
司法書士事務所や行政書士事務所などでは、基本的な相続手続きを丸ごと任せられるパッケージを利用できることがあります。「相続手続き丸ごと代行サービス」「相続手続きおまかせパック」など名称は様々ですが、財産目録の作成や相続登記など面倒な手続きをひとまとめにして依頼できるというメリットは同じです。
相続手続きのパッケージサービスは、特に下記のような方に適しています。
- 平日は仕事なので役所で手続きをしている暇がない
- 相続人が多くてやり取りが大変
- 相続財産の種類が多い
- 面倒な手続きが苦手
パッケージに含まれるサービスは事務所によって異なるため、事前によく確認しておきましょう。
2-2.相続手続き費用の計算もシンプルになる
相続手続きパッケージのもう一つのメリットは、費用の計算がシンプルになる点です。財産目録の作成や相続登記などの相続手続きをバラバラに依頼するとその都度費用を計算しなければなりませんが、パッケージであれば基本的な手続きをすべて含めた料金を提示してもらえます。
含まれる業務の内容や遺産の金額にもよりますが、相続手続きパッケージの料金は平均的なところでは60万~80万円程度となっていることが多いです。
3.相続手続きパッケージの2つの注意点
相続手続きをパッケージで依頼する場合、注意点が2つあります。
1つ目は、パッケージに含まれるサービスを事前に確認しなくてはいけない点。2つ目は、相続トラブルが起きる可能性が高いと費用が上がる点です。
どちらの場合も事前に注意しておけば「事前に言われていなかった費用を後から要求された……」といったトラブルを抑制できるでしょう。
3-1.パッケージに含まれるサービスを把握しよう
相続手続きをパッケージで依頼するときは、パッケージにどこまでの業務が含まれるのか正確に把握しておきましょう。
例えば「不動産・預金・株式の相続はパッケージに含まれるがそれ以外の手続きは別料金」など「おまかせ」といってもすべての業務を引き受けてくれるわけではない場合があるので注意してください。また「財産が○○万円以上だと料金加算」「相続登記は1物件まで」など、案件の規模によって別料金がかかったり、パッケージに含めてもらえなかったりするケースもあります。
後々になって「この業務はパッケージに含まれていないのか」ともめないように、事前の説明や見積もりでサービス内容をよく確認することが重要です。
3-2.相続トラブルの可能性が高いと費用が上がる
相続手続きパッケージの料金は、基本的には「相続人全員との関係が良好であること」が前提として決められています。逆に言うと、相続トラブルが発生する可能性が高い場合は料金が上乗せされるケースが多いです。
例えば「相続人の中に意見が対立している人がいる」「連絡が取れない人がいる」など、スムーズに相続手続きが行えない可能性があると追加料金がかかったり、パッケージでの依頼が難しくなったりすることがあるため注意しましょう。
4.財産の種類によって相続手続きの費用が変わる
遺産相続では、以下のような財産について相続手続きをする必要があります。
- 不動産(家、土地、ビルなど)
- 預金
- 有価証券(株式など)
- 自動車やバイク
ここでは、それぞれの財産の相続手続きでどの程度の費用がかかるのかを説明していきます。
4-1.不動産がある場合
家や土地などの不動産は、相続手続きの中で最も費用が高くなる財産です。
不動産を相続するときは「相続登記」という手続きをとる必要があり「登録免許税」と書類の取得費用が必ずかかります。登録免許税は法務局に支払う税金で「固定資産税評価額×0.4%」の金額が必要です。
相続登記の必要書類には以下のようなものがあり、取得に実費が必要になります。
- 不動産の登記事項証明書:600円
- 戸籍謄本:450円
- 除籍謄本:750円
- 住民票:300円
- 住民票の除票:300円
- 固定資産評価証明書:400円(2件目以降1件100円)
- 印鑑証明書:300円
これらに加えて、司法書士に相続登記を依頼した場合は3万~12万円程度の報酬が必要ですし、遺産分割協議書を作成する場合はそのための費用もかかります。参考までに、固定資産税評価額が1,000万円の土地の相続登記をした場合の費用例を紹介します。
- 登録免許税:4万円
- 必要書類の取得費用:3,000~5,000円程度
- 司法書士報酬:3万~12万円程度
- 遺産分割協議書の作成費用:5万~10万円程度
合計すると費用は10数万~30万円程度でしょう。
4-2.預金を相続する場合
銀行口座の名義人が亡くなった場合、口座が凍結されて預金の引き出しができなくなります。銀行口座の凍結後に預金を引き出すためには、銀行口座の相続手続きが必要です。
銀行口座の相続手続きでは、以下のような書類が必要になります。
- 口座名義人の戸籍謄本
- 口座名義人の預金通帳と届出印
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書(発行後3ヵ月以内)
- 遺産分割協議書
必要書類の取得に実費が必要となるほか、遺産分割協議書を専門家に依頼して作成する場合には、3万~10万円程度の費用がかかります。
リーガルエステートでは遺産分割サポートを行なっており、遺産分割協議書は44,000円〜作成しております。 遺産分割に必要なポイントや文案のアドバイスなどもしております。 特別代理人選任申立てのサポートもしておりますので必要な方はご相談ください。 初回無料相談をしておりますので、お気軽にご相談ください。
4-3.有価証券がある場合
株式などの有価証券は、相続するときに所定の手続きが必要です。有価証券の相続手続きでは、遺産分割協議書を作成してから証券会社に行き、必要書類を提出して名義変更を行います。
証券会社に提出する書類は、一般的な事例としては以下の通りです。
- 遺産分割協議書
- 遺言書
- 名義人の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本(名義人と相続人の関係がわかるもの)
- 相続人全員の印鑑証明書(発行後3~6ヵ月以内)
- 相続を受ける相続人全員の実印
一般的に、遺産分割協議書の作成費用は1万~5万円程度となる場合が多いです。その他の書類についても、取得の際に実費がかかるものがあります。
4-4.車やバイクなどを相続する場合
亡くなった人が自動車やバイクを持っていた場合も、相続手続きが必要となります。自動車やバイクを相続人がそのまま使う場合はもちろんですが、売却する場合や廃車にする場合も、いったん相続手続きを行い、新しい名義人が売却や廃車の手続きをとらなければなりません。
自動車の相続手続きでは、以下のような書類が必要になります。
- 名義人の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人の印鑑証明書(発行後3ヵ月以内)
- 相続人の実印
- 車検証
- 遺産分割協議書
遺産分割協議書は相続人が複数いる場合に必要で、専門家に依頼して作成する場合は1万~5万円程度の費用が必要です。その他の書類についても、発行のときに数百円の実費がかかるものがあります。
書類が用意できたら運輸支局に行き、下記3種類の書類を作成して名義変更を申請しましょう。
- 申請書(OCRシート第1号様式)
- 手数料納付書
- 自動車税・自動車取得税申告書
バイクを相続する場合は排気量などによって必要な書類が異なります。原付バイクの場合は、いったん廃車にしてナンバープレートを再取得する手続きをとってください。この場合、特に費用は必要ありません。
軽二輪バイクや小型二輪バイクは、廃車にする場合は数百円の手数料が発生します。管轄の運輸支局が同じであれば、廃車にせずにナンバープレートを再取得することも可能で、その場合の費用は1,000円未満です。
5.遺産相続の流れから考える手続費用
遺産相続は、状況や資産によって、費用がかかる場合とかからない場合があります。この章では、相続開始してからの流れにのっとって、費用が発生するタイミングとどのくらいかかるのかについて解説していきたいと思います。
5-1.遺言書の有無を確認する
相続において、一番最初に行う必要があるのが「遺言書の確認」です。そして相続において、一番に重要とされるのが「故人の意思」であるため、その有無によってその後の対応が変わってきます。ご自宅になければ、公証役場、法務局に行って、遺言書の有無を確認しましょう。
もし、遺言書が見つかった場合、その種類で手続きが変わってきます。
・公正証書遺言が見つかった場合 ⇒ 相続人調査で戸籍を収集し名義変更手続きへ
・自筆証書遺言が見つかった場合 ⇒ 検認手続き後、上記の通り
・秘密証書遺言が見つかった場合 ⇒ 検認手続き後、上記の通り
検認に必要な費用としては、遺言書1通につき収入印紙800円分と、検認証明書の収入印紙150円分になります。手続き上の費用としても対策としても基本的に遺言を書いて損はありませんので、是非書いておくことをオススメします。
ただし、形式的に書き方を間違えると遺言書として認めてもらえない可能性もあるので、注意しましょう。遺言作成について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
遺言がなかった場合、また、遺言書通りの分配に不満がある場合には、相続分をどのように分けるのかを遺産分割協議をして決める必要があります。
相続人間が円満であればそれほど時間もかかりませんが、相続人の一人に強い要望がある場合や兄弟間の仲が悪い場合は、紛争に発展する場合もあります。その場合はますます費用がかかってしまうので、それを踏まえて進めていきましょう。
5-2.戸籍を収集する(相続人調査)
遺産分割協議は、法定相続人になる者全員が揃って協議をしない限り、認められません。また、所有する財産の名義変更においても、相続人が誰であるか示されている戸籍などの書類を提出する必要があるので、相続手続きをする場合には基本的に書類収集をしなければなりません。
相続人が誰であるかをしっかりと確定するために以下の書類を収集します。
・被相続人の死亡から出生までのすべての戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・相続人全員の戸籍謄本 など
相続に必要な戸籍の書類には、戸籍謄本(1通450円)、除籍謄本(1通750円)、改製原戸籍謄本(1通750円)と3つに分かれています。また、住民票(1通200円~400円)については自治体によって費用が異なるため、注意して取得する必要があります。
5-3.相続財産の調査
上記の相続人調査と同時並行で、被相続人の財産調査もする必要があります。相続財産には大きく分けて、プラスの財産である不動産・預貯金・証券(株式・投資信託など)、そして借金や住宅ローンなどのマイナスの財産も含まれます。
この時、財産状況に関する書類を取り寄せる通信費や手数料などがかかります。財産ごとに求められる書類などは異なりますので、こちらは第2章でチェックをお願いします。
5-4.相続放棄・限定承認(3か月以内)
もし、相続財産にマイナスの財産が多かった場合、被相続人の財産を相続の権利を放棄すること(相続放棄)もできます。手続きをするには、以下の費用がかかります。
・相続放棄申述書の印紙代:800円(申述人1人)
・郵便切手:500円前後
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票:300円程度(市区町村によって異なる)
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本:750円
ただし、相続放棄は3か月以内に書類を作成しミスなく手続きを済ませる必要があります。慣れない書類の作成や手続きですので、確実に相続放棄をされたい方は専門家に依頼するのをオススメします。相続放棄について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
5-5.準確定申告(4か月以内)
相続が発生すると、被相続人の死亡日までの収入に対しての所得税額を計算し、4か月以内に申告する必要があります。ただし、生前に収入があった人に限られます。こちらはどちらかというと、書類を作成する手間がかかりますので、早めに取り掛かった方がいい手続きになります。
5-6.遺産分割協議
相続人と財産が決まったら、あとはどのように分配するかを決めていくことになります。遺産分割協議書の作成などは自分でも作成することができますので、実費という費用はかかりません。ただし、遺産分割協議書を公正証書とする場合は、遺産額によって変わりますが、3万円~10万円ほどになります。
遺産分割協議は、相続人全員の合意がないと成立しません。一人でも反対して協議書に判子を押さない相続人がいると、内容がまとまらず相続手続きが進まないこともあります。専門家という第三者が入ると進むこともあるので、是非そんなところから自分でやるか、専門家に任せるかを考えてみてください。
5-7.名義変更
財産が誰のものなのか明確にするため、被相続人の名義を相続人に変更していかなければなりません。不動産や預貯金、株や自動車等についてそれぞれに必要な書類や手続きがありますので、こちらも第2章で解説します。
名義変更は放置すると、時間の経過とともに当初の相続人の更に相続人というように、相続人が増加してしまい手続きが複雑になってしまいます。ですから、できるだけ早めに名義変更を進めていきましょう。
5-8.相続税申告(10か月以内)
相続税は、被相続人が死亡したのを知った日から10か月以内に申告しなくてはなりません。この期間に相続財産の中で課税対象になる財産とその金額を明確にしていきます。
相続した財産が基礎控除額である「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」以下になれば申告は不要です。この相続税申告は、特例を活用したり状況によって必要書類が変わったりするので、もし基礎控除額を超えそうだと思ったら税理士などの専門家に依頼するといいでしょう。
6.自分で相続手続きをすれば費用は安くなる
相続手続きを自分で行うと費用は安く抑えられますが、時間や手間がかかるというデメリットがあります。ここでは自分で相続手続きを行う場合の費用についてまとめたうえで、デメリットについても説明していきます。
6-.相続手続きを自分で実施する基準
相続手続きは、相続人の人数や相続財産の内容に加えて、期限内に手続きをしなくてはならない等、手続きを自分で始めたはいいものの途中で「できない」と匙を投げてしまうケースをよく聞きます。ですから、ある程度判断基準をもって相続手続きに臨むのがいいでしょう。
前述したように相続手続きは相続人が多ければ多いほど、遺産分割協議で全員の合意をとるのに時間もかかりますし、調整業務など仕事が増えます。また、財産調査の際に遺産が多岐に渡ると、それぞれの機関に問い合わせて財産照会をするのに手間もかかります。
ですので、基本的には時間に余裕があり、遺産が預貯金のみなど財産状況が把握しやすいこと、何より相続人の人数が少なければ自分で手続きをすることは十分に可能です。
ただし、相続手続きというのは人生で何回も経験するものではありません。手続きを始めてみるとわからないことが多く、調べたりしながら実施するのもなかなか大変です。そのことを踏まえてご自身で行うか、専門家に任せるかを選択されるとよいでしょう。
6-2.自分で相続手続きをする場合は時間と手間がかかる
相続手続きを自分で行えば費用は安くなりますが、デメリットは少なくありません。
相続手続きでは相続人の調査や役所での手続きなど、時間や手間のかかる作業をしなければならないことに加え、遺産分割協議などの話し合いが必要になるケースもあります。仕事をしている方にとっては、役所で手続きをするために平日の日中に時間を取らなければならないのは大きなデメリットだといえるでしょう。
不動産などの名義変更では、書類の記入や手続きにある程度の専門知識が必要となってくるため、苦手な方にとってはかなり辛い作業だと思います。しかし、専門家に相続手続きを依頼すれば、面倒な作業を任せられるため、時間や手間を節約することが可能です。
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7.司法書士など相続の専門家への依頼を検討した方が良いケース
「相続手続きは自分でもできるのではないか」と考えて挑戦する方は少なくありません。しかし、実際に自分で相続手続きをしても「専門知識が必要で難しかった」「手続きの数が多くて時間がかかりすぎる」など、「やはり専門家に任せればよかった」という結果になりがちです。
相続手続きを専門家に依頼する最大のメリットは、複雑な手続きを任せられることです。特に相続手続きをパッケージで依頼してしまえば、いくつもある手続きを丸ごと専門家に任せられるので、時間や手間を大幅に削減できます。
また、相続手続きにはトラブルがつきものです。相続手続きを専門家に任せることで、面倒な相続トラブルを未然に防げるケースもあります。
7-1. 兄弟での相続や代襲相続が発生するケース
相続人が兄弟姉妹や甥っ子姪っ子になる場合、相続人が誰なのか確定するのも複雑になり、戸籍収集も難しくなります。
また、遺産分割の話し合いも難しくなりがちです。その場合、専門家なら法的根拠に基づいて正しい主張ができるため、他の相続人に不満を抱かせずに問題を解決することができるので、プロである専門家に依頼するといいでしょう。
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7-2.相続人同士が仲の悪いケース
相続人同士が仲が悪い、または疎遠である場合、連絡先や住所を知らないこともあるでしょう。または連絡をとると、すぐ喧嘩になってしまうため、自分から連絡を取りたくないといった場合、第三者である専門家に依頼して手続きをしてもらうのがいいでしょう。
相続手続きにはトラブルもつきものですが、司法書士や弁護士などの専門家がその場にいるだけでトラブルを防げるケースも多いものです。遺産の分け方などをスムーズにしたいという場合は専門家にお任せください。
7-3.先々代以上前の先祖の名前のまま名義変更がされていなかったケース
長い間、放置された不動産を名義変更する場合、膨大な書類が必要となります。先祖を遡って、その人物から今生きている相続人をたどっていくと、時に何十人もの相続人が現れるケースもあります。
その場合、時間と労力が非常にかかるため、慣れている専門家に依頼するほうがいいでしょう。
また、代を遡って戸籍を集めていくと、戦前の旧民法についても読み解かなくてはなりません。そのため、一般の方が手続きに必要な戸籍をすべて集めるのは、非常に難しいと言えるでしょう。
7-4.他の相続人に対して金銭を代わりに支払う代償分割や換価分割を利用するケース
例えば、被相続人の財産のほとんどが不動産で占めている場合、相続人に均等に遺産分割をすることが難しくなります。その際に利用するのが「代償分割」や「換価分割」になります。
- 代償分割:特定の相続人が不動産などの現物を相続する代わりに、
他の相続人に対して金銭を支払い、調整することで分割する方法 - 換価分割:不動産などの現物を金銭に換えて、相続人間で分割する方法
このように遺産分割協議が複雑になってしまうような場合、相続税の観点や法務的な知識も必要になるので、司法書士や税理士といった専門家に任せるのがいいでしょう。
また、こうした相続の場合、相続人間で揉めてしまう可能性も高くなるので、間に調整役として専門家がいるという状況を作っておくという意味でも効果的です。
7-5.期限までに急いで不動産を売却しなければならないケース
被相続人の不動産を納税資金に充てたい等の理由で、相続税申告などの期限までに売却したい場合、売却するまでの行程で9か月かかる場合もあります。
期限ギリギリで、資料作成や戸籍収集など、失敗が許されないような場合は、不動産売却までを士業などの専門家に依頼して対応してもらうと安心でしょう。
ただし、例で出しているような、「不動産を納税資金にしたい」というケースの場合、相続が発生してから遺産分割をどうするか検討しているのでは、期限内に間に合わなくなる可能性もあります。
ですから、生前のうちから相続対策をしておくことが重要になってきます。
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9.まとめ
この記事では相続手続き費用について、相場を交えながら説明してきました。ポイントをまとめると以下のようになります。
- 自分で相続手続きを行えば費用は抑えられるが大変
- 相続手続き費用は依頼先や財産の種類によって異なる
- パッケージなら相続手続き費用の計算もシンプル
- 相続手続きは専門家に任せたほうがよい
相続手続きを専門家に依頼した場合の費用相場は、依頼先や財産の内容によって大きく異なります。特に不動産が財産に含まれていると費用は高めになり、相続登記だけで30万円を超える場合もあるでしょう。
相続手続きはパッケージで丸ごと依頼することも可能ですので、専門家に依頼して負担を減らすというのも一つの方法です。当事務所でも相続手続きを丸ごとおまかせにできるパッケージを提供しておりますので、相続手続きでお困りの方はお気軽にご相談ください。