家族信託で兄弟トラブルを避ける方法とは?注意点や解決方法を解説

家族信託を利用する際、家族間の仲が悪くなくても、兄弟間でトラブルが生じることがあります。特に、家族のお世話や財産管理の方法について、全員が納得するプランを立てることは、非常に重要です。このブログでは、家族信託を活用して遺産の円滑な管理と公平な分配を実現する方法を、具体的に解説いたします。

記事のポイントは、下記の通りです。

  • 兄弟でのトラブルを避けるには、事前の家族会議の開催と情報共有が重要
  • 兄弟間で争いになる火種は「誰が受託者になるか」が最大の争点
  • 兄弟全員で受託者になる選択も可能だが、信託不動産の売却等の信託実務を受託者単独で行えず、手続きが煩雑になるというデメリットが生じる
  • 家族信託を兄弟で円滑に行うには、監督役を設けるか、兄弟ごとに信託契約を作る方法がある

本ブログで、家族信託を利用することによって、兄妹間のトラブルを未然に防ぐ方法と、万一発生した際の解決策について詳しく解説します。

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1.はじめに:家族信託の仕組み

家族信託は、家族の将来にわたる財産管理と安定を確保するための重要な法的手段です。まずは、その仕組みについてお伝えしていきます。

家族信託とは?

家族信託は、親の介護や認知症対策など、未来の不確かな事態に備える頼もしい手段です。この制度を使えば、もし親が認知症になっても、子どもたちが財産を管理でき、それを介護費用や生活費に充てることが可能になります。

法律上家族信託は2者間で成立する

家族信託とは、財産を預ける人(委託者)とそれを預かる人(受託者)の間で結ばれる契約です。この契約は、二人の合意があれば成立し、他の家族の同意は必ずしも必要ではありません。これにより、家族関係が少し複雑でも、法律上、信託契約を結ぶことは可能です。

仲が悪い家族に内緒で手続きを進めることはできますが、できれば家族全員の同意を得ることが望ましいです。なぜなら、親の財産を管理する際に兄弟間でトラブルが起きやすいからです。全員が納得する透明な財産管理と信託契約が、後のトラブルを防ぐためには欠かせません。
家族信託を考えるときは、家族全員が参加するオープンな議論を行い、共通の理解と合意を得ることが大切です。これが、スムーズな財産管理と相続への道となります。

最適な受託者の選び方

家族信託では、誰を受託者に選ぶかが非常に重要です。一般的には、委託者の子どもが選ばれることが多いですが、それは子どもたちが親との信頼関係が深く、親の財産に対する理解もあり、その意向をよく反映できるからです。

しかし、受託者としては重い責任が伴います。委託された財産を公正に、そして効果的に管理・運用する責任です。だから、受託者を決める際には、その人が責任を適切に果たせるか、そして信頼できるかをしっかりと見極めることが必要です。

もし委託者に子どもがいない場合や、家族内で適切な受託者がいないと感じる場合、家族以外の人や法人を受託者として考えることもあります。これは大きな決断ですので、誰に財産管理を任せるかは、非常に慎重に考えるべきです。信頼できる人に財産を委ねることが、家族信託を成功させる鍵となります。

2.家族信託での兄弟間トラブル発生原因

家族信託を進める際には、全員が合意するのが理想です。しかし、現実には兄弟間の不和がしばしば問題となります。ここでは、家族信託で兄弟間のトラブルが発生しやすいタイミングとその原因を解説します。

2-1.受託者に誰がなるかで意見が割れる

家族信託で最も意見が割れるのが、誰を受託者にするかという点です。

たとえば、親の資産を長男が管理する場合、その管理方法が兄弟には共有されず不透明であれば、疑問を持ってしまいます。特に、家族信託について詳細を知らない場合には、兄が持つ大きな権限に対して不満を持つ兄弟が出ることも珍しくありません。

こうした受託者としての権限が一人に集中してしまうことは、管理義務を果たす上で必要なものの、それが原因で他の家族からの反感を招くこともしばしばです。

また、高齢者の中には認知症を患っており、財産が不正に扱われていると誤解するケースもあります。これらの要因が、デリケートな受託者の選定をさらに難しくしています。

2-2.兄弟間の寄与度と財産分割のギャップ

家族信託においてよくある問題の一つが、兄弟間での財産管理に対する負担と期待の違いです。例えば、兄が日常的に両親の世話をし、財産の管理も担っているのに対し、弟は月に一度の病院訪問しかしていない場合、兄は大きな負担を感じているかもしれません。それにも関わらず、弟は財産が平等に分けられることを望むことがあります。

このような状況では、家族信託を進める際に兄弟間の感情的な衝突が生じやすいです。兄が自分の負担と貢献が正当に評価されていないと感じると、不公平感が紛争に火をつける可能性があります。これは、信託契約を作成する時や、親が亡くなった後の遺産分割の時に特に顕著になることがあります。

一方で、弟もこれまでの自分の貢献が過小評価されていると感じるかもしれず、遺産の法的な平等性を主張して、兄との間の緊張をさらに高めることがあります。このような事例から分かるように、家族信託における問題は、しばしば兄弟間の長年の感情や期待が複雑に絡み合っています。

2-3.当事者以外の家族に同意なく家族信託を行う

家族信託は、通常、財産の持ち主である親(委託者)と、その財産を管理する子ども(受託者)の間で結ばれる契約です。法的には、この信託契約に他の家族の同意は必要とされていません。また、信託には他の家族メンバーも間接的に関わることがありますが、彼らが直接契約にサインする必要もありません。

しかし、家族の同意なしに家族信託を設定すると、裁判に発展するリスクが非常に高まり、家族間の対立が深まり、長引く法的紛争につながることがあります。特に、家族信託は比較的新しい制度であり、先例が少ないため、同意なしで進めた場合の裁判の結果を予測するのは難しいです。このような不確実性を避けるために、全家族の同意を得て進めることが最も賢明な方法と言えます。

2-4.受託者になった兄弟が権利濫用をした

受託者は、信託契約で定められた目的に従って、委託者の財産の管理や運用に広範な権限を持っています。この責務には、財産を公正に管理するという重要な責任が伴います。

もし受託者がこの責任を逸脱して、兄弟に隠れて自分のビジネス投資や生活費、旅行資金など個人的な利益のために財産を使ってしまった場合、これは重大な問題です。このような行為は兄弟間の信頼を損ね、しばしば家族内の紛争に発展することがあります。

3.兄弟全員が共同で受託者になることは可能?

家族信託で、一人にすべての権限や負担が集中してしまうと、時に問題が生じることがあります。これを解決する一つの方法は、兄弟全員を共同受託者として設定することです。これは法的にも認められており、多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも理解しておく必要があります。

3-1.共同受託者にするメリット

家族信託で兄弟全員を共同受託者にすると、いくつかの明確な利点があります。具体的なメリットを見てみましょう。

①信託事務の負担を分担できる

複数の受託者を設定することで、信託事務の重責を分散させることが可能です。これにより、一人ひとりの負担が軽減され、効率的に任務を遂行できます。また、すべての重責が一人に集中することも避けられます。

②相互チェックによる適切な財産管理

複数の受託者がいることで、お互いの判断や行動を監督し合うことができます。このことで適切な財産管理を確保し、間違いや不正行為を防ぐのに役立ちます。

③複雑な判断が必要な時に相談しあえる

重要な決定や複雑な問題が発生した際、複数の受託者が意見を出し合うことで、より総合的な視点から最適な決断を下すことができます。

④受託者の一人が欠けても財産管理を継続できる

何らかの理由で一人の受託者が職務を続けられなくなった場合でも、他の受託者が業務を引き継ぐことで、信託の目的を維持し続けることが可能です。

3-2.共同受託者にするデメリット

兄弟全員を共同受託者にする際、考慮すべきいくつかの問題点があります。具体的なデメリットを見てみましょう。

①意思決定に複数受託者の同意が必要

複数の受託者がいる場合、すべての重要な決定には過半数の同意が必要です。これが原因で、特に緊急を要する事態に対応する際に意思決定が遅れることがあります。

②信託口口座が開設できない

複数の受託者を持つ信託では、一部の金融機関で信託口座の開設が難しいことがあります。これにより財産管理が複雑化し、効率が低下する恐れがあります。

③受託者が作った債務は、連帯債務になる

一人の受託者が引き起こした債務は、他の共同受託者も連帯して負うことになります。これは、受託者間の信頼関係に亀裂を入れる原因となり得ます。

④信託の仕組みが複雑になる

家族信託は長期にわたることが多く、受益者や受託者の生活状況に変化が生じる可能性があります。例えば、死亡や離婚などの重要な人生のイベントが発生すると、複雑な信託の構造がこれらの変化に柔軟に対応するのを難しくします。

家族信託で複数受託者のメリットとデメリット、そしてその際の注意点について、更に詳しく知りたい場合は、以下のブログを参照ください。

4.兄弟で円滑に家族信託を行う方法

家族信託を成功させるためには、兄弟間での協力と明確な計画が非常に重要です。特に、兄弟が共同で受託者となる場合、信託の管理をスムーズに行うためには効果的な戦略と適切な役割分担が求められます。この章では、兄弟間での紛争を最小限に抑え、家族信託を円滑に運用するための具体的な方法を探ります。

4-1.信託監督人・受益者代理人を活用する

家族信託において、信託監督人と受益者代理人の役割は非常に重要です。特に、受益者が高齢者や未成年者、または判断能力に制限がある場合、これらの役職者が受託者の活動を監視し、受益者の利益を守ることは不可欠です。これにより信託の透明性が高まり、受益者の権利がしっかり保護されます。

信託
監督人
信託監督人は、受託者が信託財産を適切に管理しているかどうかを監視します。これは、受益者が自己の権利を適切に主張できない状況、例えば高齢者や未成年者の場合に、不正行為や不適切な管理から受益者を保護するために特に重要です。
受益者
代理人
受益者代理人は、受益者が自らの意思を表明できない場合にその意思を代行します。これにより、認知症や判断能力が限定されている受益者の代わりに、信託財産の管理や必要な法的行動を取ることができます。

信託監督人・受益者代理人を設置するメリット

  • 受益者の保護と監督:受益者が認知症を発症している場合や未成年者である場合など、自身の権利を十分に守る能力が欠けている場合、受託者の行動を監視し受益者の利益を保護することができます。これは受託者が権限を逸脱した行動や利益相反行為を行うことを抑止する効果があります。
  • 受益者代理人による権利行使:受益者代理人は受益者が自らの意思を表現できない場合にその代わりとなり、信託財産の適切な使用を確保します。これにより、受益者の日常生活の質を維持するための費用や、必要な財産処分を受託者に要求することが可能となります。

信託監督人・受益者代理人を設置するデメリット

  • 選定の難しさと家族間の対立:信託監督人や受益者代理人は受託者の行動を監視する立場にありますが、これが家族内の対立を引き起こすことがあります。特に家族がこれらの役職を担う場合、感情的な軋轢が生じやすく、場合によっては不必要な解任が行われるリスクがあります。
  • 受託者への不信感:受託者は信託監督人や受益者代理人の選任により、自らが信用されていないと感じることがあります。これにより、信託関係の透明性と信頼性が損なわれる可能性があります。

4-2.各兄弟が個別の信託契約を締結する

家族信託の計画において、兄弟それぞれが独自の信託契約を結ぶ方法は、複数の財産の種類が存在し、受託者が複数いる場合に特に効果的です。この方法では、各兄弟が委託者と別々に契約を結ぶことにより、それぞれが信託財産に対して責任を負います。これにより、負担が均等に分散されます。

たとえば、もし自宅、アパート、現金、株式といった異なる種類の財産がある場合、長男が自宅と現金を、次男がアパートと株式を担当する契約を結ぶことが可能です。これにより、各受託者が特定の財産を専門的に管理し、それぞれの財産に適した意思決定を行うことができます。

信託契約を複数締結するメリット

  • 意思決定がシンプルになる:各受託者が個別に意思決定を行うため、共同受託よりも事務がスムーズに遂行されます。
  • 遺産分割もシンプルになる:受託者が管理する財産をそのまま相続させることで、遺産分割時の争いを避けることが可能です。

信託契約を複数締結するデメリット

  • 契約書作成の費用があがる:複数の契約を必要とするため、法律家など専門家への報酬が増え、費用が大きな負担になります。
  • 損益通算ができなくなる:別々の契約の不動産について、一方が赤字で他方が黒字でも損益を通算できないため、税務上の取り扱いや資産管理が最適化されません。

4-3.第二受託者を設定する

家族信託では、受託者が中核的な役割を担っていますが、事故や病気など予期せぬ事態で職務を果たせなくなる可能性もあります。そのため、受託者が職務を遂行できなくなった際に備え、「第二受託者」を設定することが重要です。これにより、信託の持続性と安定性が保たれます。

第二受託者は通常、主受託者が在任中はその役職に就いていませんが、受益者代理人や信託監督人としての役割を兼任することが可能です。しかし、主受託者が死亡したり辞任したりした場合、第二受託者が新たな受託者としての職務を引き継ぐことになります。そのため、彼らが兼任していた役職を辞する必要が生じます。

このように第二受託者を設定することで、信託がスムーズに運営され続けることを保証し、万が一の状況にも迅速に対応できる体制を整えることができます。

第二受託者を設置するメリット

  • 受託者にかかるストレス軽減:元の受託者が負う重大な責任を、第二受託者がサポートすることにより、受託者のストレスや責任感が軽減されます。
  • 信託が中断されることを防ぐ:受託者が突然職務を遂行できなくなった場合でも、第二受託者が速やかに業務を引き継ぐことで、信託の活動が停止するリスクを最小化します。

第二受託者を設置するデメリット

  • 実質の受託者が負担は減らない:第二受託者は基本的に予備の位置づけであり、受託者が負っている信託事務や責任については、第二受託者が代われるものではありません。
  • 信託実務の引き継ぎ:新しい受託者としての責任を完全に理解した上で、信託実務がしっかりと引き継がれるように準備が整っている必要があります。

これまで3つの方法を伝えた通り、それぞれ明確な利点と共に、注意すべきデメリットを有しています。信託の目的と家族の状況を総合的に考慮し、最も適切な信託構造を選択することが重要です。

5. 兄弟で家族信託を行う際の注意点

家族信託は、親の財産を管理し相続をスムーズに行う強力なツールです。しかし、これを成功させるには、きちんとした計画と家族間の明確なコミュニケーションが必要です。この章では、兄弟間で家族信託を効果的に行うための重要なポイントをご紹介します。

5-1.全員が納得できるように家族会議を行う

家族信託を始める前には、関わる全員が参加する「家族会議」が必須です。この会議で、信託の目的や役割分担、期待される成果についてオープンに話し合います。この透明な対話を通じて、将来的な誤解を防ぎ、信託の決定が全員にとって納得のいくものになるよう導きます。

特に、兄弟間のトラブルを避けるためには、親が元気なうちから家族会議を開くことが非常に効果的です。親の財産に関する意向を明確にしておくことで、基本的には子供たちもその内容に納得しやすくなります。

早期からしっかりとコミュニケーションを取ることで、将来的な問題が生じる前に家族全員の意見を調整し、必要な合意形成を行うことができます。これにより、家族信託がより円滑に進むことが期待されます。

5-2.信託運用中の定期的な方針の見直しと情報共有

家族信託は長期間続くため、時には方針の見直しや最新情報の共有が必要になります。年に一度は、関係する全員が集まって信託の進行状況を確認し、必要に応じて計画を調整することが大切です。この定期的なミーティングは信託の透明性を保ち、家族間の信頼を強化します。

5-3.受託者を監督する立場を設置する

受託者が責任をもって行動しているかを確認するために、監督役の設置が重要です。この役割には信託監督人や受益者代理人を別途設けることで対応できますし、専門的知識を持つ第三者を選ぶこともできます。

監督役は受託者の活動を定期的にチェックし、問題があれば適切な対策を講じます。これにより、信託がその目的に沿って適切に管理され、すべての受益者の利益が守られます。

5-4. 家族信託以外の対策も検討する

家族信託は多くの場合に有効な手段ですが、「家族信託をやるんだ」と意気込む方からの相談も少なくありません。ただし、家族信託だけが解決策ではありません。そのため、他の選択肢も検討することが重要です。

例えば、遺言書の作成は信託に比べて手続きがシンプルで、費用も抑えられます。遺言を通じて財産の分配を具体的に指定することで、家族間の紛争を未然に防ぐことが可能です。

どの方法を選択するにせよ、メリットとデメリットを理解し、ご家族のニーズや財産の種類、将来の見通しを考慮して、法的な助言を得ながら最適な計画を立てることが大切です。費用とご家族の状況に最も適した方法を選ぶことが重要であり、状況に応じて複数の方法を組み合わせることで、家族全体の財産管理と相続計画の質を高めることができます。

どの方法が最適な対策なのかを判断するには、客観的な視点が必要です。一度、専門家にアドバイスを受けて進めることが効果的でしょう。専門家からの意見を参考にすることで、家族の状況に最も合った解決策を見つけ出すことが可能になります。

リーガルエステートでは、400件超の家族信託相談実績をもとに、専門の司法書士・行政書士がご連絡いたします。ご家族にとってどんな対策が必要か、何ができるのかをご説明いたします。自分の家族の場合は何が必要なのか気になるという方は、ぜひ無料相談をお試しください。

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6.兄弟の同意が得られない時の家族信託の進め方

家族信託を始めるとき、できれば全員の賛同を得たいものですが、現実には意見が合わないこともよくあります。家族の中で大切な財産の取り扱いを決める時、さまざまな感情や利害が絡み合って、全員が同じ意見になるのはなかなか難しいです。

それでは、全員の同意を得られなかった場合、どのように対応するのが良いでしょうか?この記事では、すべての家族の賛同を得ることができない状況で家族信託を進める際のポイントをご紹介します。

(1)信託契約書は必ず公正証書で作成

家族信託を設定する際には、公正証書で契約書を作成することをおすすめします。公正証書を用いると、公証人が内容を詳細にチェックし、契約者の身元を確認して、同意していることを公式に証明するため、将来のトラブルを予防することができます。

例えば、「誰かが勝手に親の判子を使った」や「認知症の親をだまして契約させた」といった疑問が持ち上がった場合でも、公正証書があればこれらの疑問を明確に否定できます。また、契約者が認知症になったとしても、契約内容を忘れることがなく、内容が後から改ざんされるリスクも避けられます。

公正証書なしでも家族信託の契約は法的に成立はしますが、万が一の紛争を避けるためにも、公正証書を用いた正式な手続きを踏むことが賢明です。これにより、関係者全員にとって明確で信頼できる基盤が築かれるのです。

(2)信託監督人・受益者代理人の設置

家族信託で非常に重要な役割を果たすのが信託監督人・受益者代理人です。信託監督人・受益者代理人は、受託者の行動を注意深く監視し、信託財産が適切に管理されているかをチェックします。信託法に基づき、この役割には受託者と同様に信託財産を管理するための必要な権限が与えられています。

特に家族間での争いが起こった際に、信託監督人・受益者代理人の存在が大きなメリットをもたらすことがあります。信託監督人・受益者代理人による財産の監督は信託の運用が透明であることを保証し、受託者の行動が信託契約の規約に則って行われているかを証明できます。

(3)入出金の記録と報告を徹底する

家族信託で財産を管理する際は、家族からの信頼を守るために、お金の使い道を細かく記録することがとても重要です。支出があるたびに領収書を保管したり、支払いを銀行振込で行って記録を残したりすると良いでしょう。また、通帳を定期的に更新し、現金での支払いでも請求書や領収書をしっかりと保管することが推奨されます。これらの習慣は日々の管理を楽にし、将来的な疑問や誤解を防ぎます。

さらに、信託法によると、信託の管理者は毎年、受益者に向けて報告書を作成し提出する義務があります(信託法第37条)。この年次報告書は、信託資産の状況を透明にし、管理者と受益者との間の信頼関係を強化するのに不可欠です。

日々の細かい記録と、年に一度の丁寧な報告作成により、信託管理の精度と透明性が向上します。これによって、家族間の不要な疑いや争いを事前に防ぐことができるのです。

(4)遺留分侵害額請求に備える

家族信託はただの財産管理だけでなく、遺言書のように財産の引き継ぎ先を定めることもできます。このように、委託者(たとえば親)が亡くなった後の財産の行き先を事前に指定することが可能ですが、ここには注意が必要です。

特定の相続人に財産の大部分を譲るような信託契約を結んだ場合、他の相続人が「遺留分侵害額請求」をする可能性があります。遺留分とは、法律で保証された相続人の最低限の権利のことで、配偶者や子どもなど相続人によってその割合が決まっています。

家族信託を利用するときは、こうした遺留分の問題にも配慮することが大切です。家族の中で不必要な争いが起こらないよう、事前にきちんと対策を考えておくことが推奨されます。これにより、円滑な財産の承継が可能となり、亡くなった後も家族間の関係が良好に保たれることが期待されます。

(5)家族信託をせず他の対策を活用する

家族信託は、認知症対策として非常に多くのメリットがありますが、まだ判例が少ないという現実があります。このため、全員の同意が得られない中での運用はリスクが伴い、得策とは言えない場合もあります。さらに、専門家の中にはこのような状況での責任を負うことが困難であるため、同意がない家族信託の依頼を断るケースもあります。

このような不確実性を避けるために、他の対策を検討することも重要です。適切な対策を選ぶには、専門家と相談して個々の状況に最適な方法を検討することが望ましいです。これにより、財産管理と承継を円滑に行い、未来の家族間の争いを避けることができます。

7.まとめ

  • 兄弟でのトラブルを避けるには、事前の家族会議の開催と情報共有が重要
  • 兄弟間で争いになる火種は「誰が受託者になるか」が最大の争点
  • 兄弟全員で受託者になる選択も可能だが、信託不動産の売却等の信託実務を受託者単独で行えず、手続きが煩雑になるというデメリットが生じる
  • 家族信託を兄弟で円滑に行うには、監督役を設けるか、兄弟ごとに信託契約を作る方法がある

家族信託は単なる財産管理の手段を超え、家族の絆を深め、次世代への平和的な財産移行を促す枠組みです。各家族が直面する個別の課題に対して適切な対応を計画することが、トラブルを未然に防ぎ、全体の成功につながるため重要です。特に兄弟間でのトラブルは、家族信託の導入に際して注意が必要なポイントです。透明で明確なコミュニケーションと信託契約における明確なルール設定を通じて、問題を事前に対処することが可能です。

家族信託を成功させるためには、すべての関係者が納得できる形で信託契約を行い、定期的な見直しと情報の透明な共有が不可欠です。これにより、家族全員が信託の運用状況を理解し、共に協力して目的を達成することができます。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

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