親が高齢になってくると、成年後見人になるかどうかを考える人もいるでしょう。成年後見人は、本人の代わりになって財産を守っていく重要な役割があるため、誰でもなれるわけではありません。どのような場合に家族が成年後見人になれるのかを事前に確認しましょう。
今回の記事のポイントは下記のとおりです。
- 成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類がある
- 専門職後見人が約7割という状況から、最高裁判所が親族後見人が望ましいとの考え方を示した
- 最高裁判所の運用見直しにより、親族後見人を後見候補者とした場合に認められる割合が約8割となっている
- 親族が後見人選任されるポイントとして、①管理が難しくない、②監督人又は成年後見制度支援信託・預貯金を活用すること、③親族の反対がない、④候補者に問題がない、がある
- 親が元気な時に財産管理を行う親族を定める制度として「任意後見制度」「家族信託」がある
成年後見制度の基礎知識から、親族が後見人として認められた事例まで詳しく解説します。
目次
1.成年後見制度とは
成年後見制度とは、判断能力が不十分な人を法的に保護する制度のことです。成年後見人が本人に代わって契約の手続きや財産管理を行います。制度を開始するタイミングによって、法定後見制度と任意後見制度の2種類に分けられます。
また、成年後見人に選定されたからといって、本人に関わるすべての事柄を代行できるわけではありません。ここでは、成年後見制度の基礎知識について解説します。
1-1.成年後見制度は2種類に分けられる
成年後見制度とは、精神障害や認知症などによって判断能力が不十分な人が不利益を被らないように法的に保護する制度のことです。本人に代わって成年後見人が契約の手続きをしたり、財産を管理したりできます。
また、成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。ともに判断能力が不十分な人を守る制度ではあるものの、制度が開始するタイミングが異なる点に注意が必要です。
法定後見制度は本人の判断能力が低下してから制度の利用を開始するのに対して、任意後見制度は将来に備えて本人の判断能力があるうちから制度を利用します。どのタイミングで成年後見制度を利用したいかよく考えるようにしましょう。
なお、成年後見制度の基礎知識は、以下の記事で詳しく解説しています。併せて参考にしてください。
1-2.後見人の役割や仕事内容
成年後見人の主な役割や仕事内容は、以下の3つです。
- 身上配慮の義務
- 代理権
- 同意権・取消権
成年後見人になったからといって、本人に関わるすべての事柄を代行できるわけではありません。身上配慮の義務とは、本人の意思を尊重しながら本人の生活や健康などに配慮する義務のことです。例えば、施設や介護の入所契約などを本人に代わって手続きを行います。
代理権とは、本人に代わって預貯金や保険といった財産を管理することです。同意権・取消権は、成年後見人に断りなく契約を行った際、その契約を取り消せる権利などを指します。悪質な訪問販売をはじめ、さまざまなトラブルから本人を守るための権利といえるでしょう。
1-3.後見人はどのように選ばれる?
後見人の選任方法は、法定後見人と任意後見人で異なります。法定後見人は、本人の意思確認が取れないため、家庭裁判所が適任者を選びます。
一方、任意後見人は、判断能力があるうちに、被後見人本人が選任する仕組みです。そのため、自分が信頼できる人に任せられるでしょう。ここでは、後見人の選び方について解説します。
1-3-1.法定後見人の場合
法定後見人の選任は、家庭裁判所が決定します。家庭裁判所が法定後見人の候補者の中から、誰が相応しいかを慎重に判断する仕組みです。そのため、たとえ親族であっても、家庭裁判所が相応しくないと判断すれば法定後見人にはなれません。
実際、法定後見人に選ばれる人の多くが、親族以外の司法書士や弁護士といった法律の専門家です。
1-3-2.任意後見人の場合
任意後見人の選任は、被後見人本人が判断できるうちに自分で選任します。例えば、子どもなどの親族を選ぶことや、「専門知識を持った人に頼みたい」と思えば司法書士や弁護士といった専門家を選ぶことも可能です。任意後見人は、財産管理を任せる相手であるため、信頼できる人を選任しなければいけません。
なお、任意後見人を選ぶ際は、本人よりも一世代下の若い人を選びましょう。同世代を選んでしまうと、後見人も高齢になってしまうためです。
2.家庭裁判所の成年後見制度運用状況
(第7回 成年後見制度利用促進専門家会議 成年後見制度利用促進に関する現状(概要)より引用)
2015年の厚生労働省の資料によると、2012年時点で、認知症患者は約462万人いるといわれており、今後、少子高齢化に伴ってこの数はますます増えてくるものと思われます。そして、2025年には、約700万人にのぼるとも予測されています。これは、65歳以上の高齢者の約5人に1人という割合です。
成年後見制度を活用した場合、家庭裁判所に成年後見人選任の申し立てを行いますが、希望した候補者が成年後見人に選任されるとは限りません。平成24年以降、第三者後見人が占める割合が50%を超えて以来、その割合は徐々に上昇しており、実際の運用として2020年、2021年ともに約8割が司法書士、弁護士などの専門職などが就任しています。
(第7回 成年後見制度利用促進専門家会議 中間検証報告書を踏まえた取組の進捗状況について(最高裁判所)より引用)
中立的な専門家が後見人につくことで本人のための財産管理という面では適切にされますが、身近な親族のための行為は原則できず、また、本人が亡くなるなど、後見手続きが終了するまでその専門家の報酬(毎月約2万円~がかかります、横浜家庭裁判所の報酬の目安)がかかります。
本人が長生きすればするほど、専門家が業務として行うので継続的に費用がかかり、その負担が親族にかかることになるため、報酬が成年後見制度利用をためらわせる一因ともなっています。
成年後見制度全体の利用者数は、2021年12月末時点で239,983人と増加傾向にあるものの、その利用者数は推計される認知症高齢者や知的障碍者、精神障碍者に比べると少ない状況です。また、成年後見制度の新規申立件数は、令和3(2021)年において39,809件と平成24(2012)年の34,689件から9年間で14%増加しつつありますが、推計される対象者数に比べると新規利用はまだまだ進んでいない状況です。
2‐1.2019年に最高裁判所「身近な親族を後見人に選任するのが望ましい」と考えを示す
司法書士や弁護士が成年後見人として多く就任している実情の運用の見直しのため、2019年3月18日の厚生労働省の第2回成年後見制度利用促進専門家会議にて、最高裁判所が下記の考えを明らかにしました。
●本人の利益保護の観点からは,後見人となるにふさわしい親族等の身近な支援者がいる場合は,これらの身近な支援者を後見人に選任することが望ましい
●中核機関による後見人支援機能が不十分な場合は,専門職後見監督人による親族等後見人の支援を検討
●後見人選任後も,後見人の選任形態等を定期的に見直し,状況の変化に応じて柔軟に後見人の交代・追加選任等を行う”
そして、この考えを2019年1月に各家庭裁判所に提供し、各家庭裁判所では、中央での議論の状況等を踏まえ,自治体や各地の専門職団体等とも意見交換の上,検討を進めていくという形で今に至っています。
2‐2.最高裁の「親族後見人」の考え方の見直しの影響の結果
最高裁判所からの考え方の発表後、現状の成年後見制度の運用状況はどう変わったのか、最新の令和3(2021)年1月~12月の成年後見事件の概況から下記のことがわかります。
- 親族後見人希望者は全体の約23.9%しかいない。その結果、専門家の後見人等への就任割合が全体の約8割と高止まりしている。
- データから逆算すると、見直し発表後の親族後見人が認められた割合は約8割。
- 親族後見のうち、後見監督等選任率は約15.0%、成年後見制度支援信託・預貯金の利用率は約37.3%。残り約4割は親族での単独後見が認められている可能性がある。
親族後見人希望者は全体の約23.9%、専門家の就任割合は約8割
令和2年2月から初めて、成年後見申し立て時に親族を成年後見候補者として申立書に記載されている事件数の割合を公表しています。このデータによると、全体の約23.9%について親族後見を希望しているとのことです。つまり、約7割は本人の財産管理を担う親族後見人を希望していない事実がわかります。
周りに親族がいなく、市区町村長が代わりに成年後見を申し立てが事案が増えている(9,185件(昨年8,822件、昨年比4.1%増加))という事情、そして成年後見制度が利用しづらいという事情が周知されてきており親族で管理している方が成年後見の利用を避けているという背景もあり、約7割超が親族後見人候補希望なしで成年後見制度を利用しています。その結果から、専門家が後見人として約8割選任されているという状況になっているもののと推察されます。
見直し発表後の親族後見人が認められた割合は約8割
一般的には親族後見人候補者がある場合に親族後見人が選任されるケースがほとんどです。
令和3年の成年後見の事件数(39,571件)に対して、親族後見人候補者希望率(約23.9%)を掛け合わせて、想定される年間の親族後見希望数は約9,457件です。そのうち、実際に親族後見人が選任された件数は7,852件であるため、親族後見人希望数に対して約83.0%の割合で親族後見人が認められている実態が推察されます。
つまり、適切な方法で親族後見人を指定すれば親族後見人は約8割は認められるということがわかります。適切な方法については後半の記事でお伝えします。
親族後見における後見監督等選任率と後見制度支援信託・預貯金の利用率は?
後見監督人、後見制度支援信託・預金とは?
多額の財産を後見人等が管理することによる横領などの不祥事案件などを防止がするため、まとまった財産を管理する場合には、成年後見人の管理に加えて、家庭裁判所から選任された成年後見監督人による監督(専門家による監督報酬の負担があります)を受けるか、又は後見監督人をつけないのであれば、日常生活に必要がない金融資産については、家庭裁判所の「報告書・指図書」がないと引き出し等ができないという「後見制度支援信託」か「後見制度支援預貯金」の利用を求められることがあります。
成年後見監督人をつけて後見人が適切に管理しているか監督を受ける、又は、必要がない金融資産については家庭裁判所の関与がないと引き出しができない特別の口座に金銭を預けさせることにより、成年後見人等による横領を防ぐ趣旨です。
後見監督人の選任率は約15.0%
後見開始,保佐開始及び補助開始事件のうち,成年後見監督人等が選任されたものは1,174件です。
財産状況が多岐にわたるなど複雑な事案によっては、親族後見人に対して専門家を監督人として選任されることがあります。場合によっては、専門家が後見人等に選任されたものについてさらに専門家が監督人に選任されるというケースも希にありますが、基本的には一般の親族の方に専門家の監督人がつくケースがほとんどです。
計算の便宜上、後見監督等≒親族後見として考えて、親族後見に対する後見監督割合を計算してみると、親族後見人7,852件に対して、後見等監督案件1,174件と割合にして約15.0%の案件について成年後見監督人が就任している実態となっています。
後見制度支援信託・預貯金の利用率は約37.3%
2020年の実績ですが、後見制度支援信託等の利用状況等について-令和2年1月~12月-が公表されています。同データによると、全国の家庭裁判所における後見制度支援信託及び後見制度支援預貯金の利用者数は2,701名となっています。
後見制度支援信託等は親族後見で活用するケースがほとんどです。
ここでは、計算の便宜上、後見制度支援信託等≒親族後見として考えて、2020年の親族後見(7,8522件)に対する後見制度支援信託等の割合を計算してみると後見制度支援信託等利用率は約37.3%となっています。
つまり、親族後見人が管理する財産が多いご家庭では、専門家の関与をなるべく少なくしたいのであれば「後見制度支援信託・預貯金」を活用する、親族後見人として家庭裁判所の指図がなくても手元で管理できる財産を多くしたいのであれば、専門家による成年後見監督人を利用するという選択肢となっており、管理する財産が少ない約4割の家庭では両制度は求められていないということがわかります。
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3.成年後見人になるまでの流れ
成年後見人になるまでの流れは、法定後見制度を利用する場合と、任意後見制度を利用する場合で異なります。法定後見制度を利用する場合は、必要書類を準備して家庭裁判所で手続きを行いましょう。その後、審理が開始されて後見人を決定します。
一方、任意後見制度を活用する場合は、将来誰に支援を行ってもらうかを決め、支援してもらいたい内容を締結することから始めます。法務局で登記申請を行い、将来に備えておくのです。
成年後見人になるまでの流れは、以下の記事で詳しく解説しています。併せて参考にしてください。
4.親族を後見人とするための4つのポイント
ここまで述べてきた家庭裁判所での成年後見等の運用実績から、親族を後見人とするためのポイントとして下記の4つが考えられます。実際の判断は、裁判官が行うため、そのときの本人、家族構成、資産状況によって異なる点は了承ください。
- 本人が所有する財産の管理が難しくないこと
- 管理する財産が多い場合には、第三者専門職が成年後見監督人となりその監督を受ける、又は、後見制度支援信託又は後見制度支援預貯金制度を利用する
- 他の親族から、申立書に記載した後見人候補者が後見人となることについて同意を得ている
- 親族後見人候補者の年齢、居住環境、資産状況、経歴などに問題がない
以下、各ポイントについて解説していきます。
4‐1.本人が所有する財産の管理が難しくないこと
本人が有している財産が、アパート、駐車場、借地など、複数の借主との賃貸借契約や管理など行う必要がある場合には、専門家を選ぶ傾向が高いです。また、多額の預金、有価証券など金融資産を有している場合もその傾向が強いです。
もともと、本人がもっている資産が、300万円程度のみなど、少なく、財産管理が複雑でない状況であれば、専門家を付けることによる負担を負うことができないので、後述する「成年後見制度支援信託・支援預金」を活用することなく、親族のみの後見人が認められやすい傾向があります。
4‐2.管理する財産が多い場合には、第三者専門職が成年後見監督人となりその監督を受ける、又は、成年後見制度支援信託又は成年後見制度支援預金を受けること
多額の財産管理による、横領などの不祥事案件が発生を防止するため、多額の財産を親族後見人が管理するためには、すでに説明した成年後見監督人による監督を受けるか、又は後見監督人をつけないのであれば、日常生活に必要がない金融資産については、家庭裁判所の「報告書・指図書」がないと引き出し等ができないという「後見制度支援信託」か「後見制度支援預金」の利用を家庭裁判所から求められます。
いずれかの方法を受け入れることができれば親族後見人が認められやすい傾向があります。これらの制度の利用を拒む場合には専門家が成年後見人等に就任する可能性が高くなります。
4‐3.他の親族から、申立書に記載した後見人候補者が後見人となることについて同意を得ていること
後見人候補者となる方について、他の親族から反対意見がある場合などには、家族関係に対立がある可能性があり、適切な財産管理ができない可能性があるため、中立的な第三者専門職を選任します。
4‐4.後見人候補者の年齢、居住環境、資産状況、経歴などに問題がないこと
成年後見の申し立ての際に、成年後見候補者の状況、本人の状況の報告の他、本人の財産目録、その根拠資料として1年分の預金通帳の写し、金融資産の資料、収入、支出の明細書、領収書などの提出が求められます。上記資料を通じて、候補者となる方が適切に財産管理をできるのか、また、一般的に、候補者となる方が今まで本人の財産管理を行っていることが多いため、今までの管理が適切か、通帳の動きと経費の支払が適切かなど見られます。
上記を事情を総合勘案して、候補者が後見人となっても問題ないか判断しています。
また、申し立ての際に家庭裁判所に提出する医師の診断書も、家庭裁判所が判断する際の重要な要素です。
診断書については、下記の記事で詳しく解説していますので、確認してみてください。
なお、弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、預金が凍結されてしまいお金の管理ができなくなった方、現在キャッシュカードで認知症の親の預金管理を行っている方へ、今後どのように財産管理の仕組みをつくればいいのか、無料相談をさせていただいております。どのような対策が今ならできるのかアドバイスと手続きのサポートをさせていただきますので、お気軽にお問合せください。
5.家庭裁判所より親族後見人が認められた事例
最高裁判所による親族後見見直しの考え方の報道後に、実際に当事務所で親族後見人が認められた事例を紹介します。
5‐1.相談内容:施設に入所するため、空家となる実家を売却したい
状況
高齢の父と母がいる長男からの相談です(個人情報保護のため、実際の事案を一部変えて掲載しております)。
自宅(時価3000万円)が父と母の2分の1の割合で2名の共有名義となっています。母は既に認知症を患っており、施設で生活をしています。母は体は元気なのですが、コミュニケーションをとることができず、判断能力が無い状態です。
父は実家で一人暮らしをしていましたが、今度、母と同じ施設に入ることになり、今後の施設入所資金と生活費が必要なため、実家の売却をしたいということで当事務所に長男が相談にいらっしゃいました。
母には、共有名義の自宅の他、預金と有価証券が約2000万円あります。財産の管理は今まで、父が行ってきましたが、父自身も施設に入所するため、今後、長男に任せていきたいという希望です。
ご提案
現状、不動産が父と母の二人の名義となっているため、実家の売買取引を行うには母が売買契約の当事者となり売買契約など不動産取引を行うことが必要です。しかしながら、母には、不動産取引を理解できる判断能力がないため、その手続きを行うことができません。そのため、成年後見制度の活用を提案しました。
5‐2.事例:親族後見人を認めるための家庭裁判所からの要望
今回の相談者には、実家の他、金融資産があることから、必ずしも長男が後見人と必ず後見人と選任されるとは限らないこと、そして、場合によっては、成年後見監督人又は成年後見制度支援信託・成年後見制度支援預金の利用を条件とされる可能性があることを伝えたうえで、成年後見申し立てを行うことになりました。
そして、上記運用を踏まえ、長男のみが成年後見人として選任されるよう、内容を精査の上、上申書、照会書など書類を用意して成年後見後見申し立てを行いました。
家庭裁判所からの要望
自宅の他、金融資産が2000万円ほどあるため、長男が後見人となるためは、下記選択肢の中から、いずれかの方法を選択することを求められました。
①成年後見監督人を選任
成年後見人である長男の他に、第三者専門職である成年後見監督人を別途選任し、成年見監督人の元、長男が後見人として財産管理を行う。
➡今回の事案では、長男のみで財産管理を行うことが希望のため、選択できません。
②成年後見制度支援信託を活用する
成年後見制度支援信託を活用した場合、長男の他、専門職(弁護士)選任し、当初2名体制で後見人として就任することになります。そして、弁護士主導のもと、有価証券を全て現金化し、自宅の売却も弁護士が行い、全て現金化した上で、信託銀行に日常生活に必要がない金銭を全て信託し(金銭を全て預け)、すべての手続きが完了次第、弁護士が後見人を辞任し、その後は長男が単独で財産管理を行うことになります。
➡最終的に財産管理を長男が行うことができるものの、有価証券の現金化、自宅の売却、信託銀行への成年後見制度支援信託の手続きなど、手続きに関するそれぞれの手続きにかかる報酬(例.居住用不動産の任意売却 被後見人の療養看護費用を捻出する目的で,その居住用不動産を,家庭裁判所の許可を得て3000万円で任意売却した場合:約40万円~約70万円、横浜家庭裁判所報酬の目安により)がかかるため、その後の母の生活費のための財産負担の懸念から選択できません。
③後見制度支援預貯金を活用する
専門職は入らず、後見人である長男本人が金融機関や不動産取引(別途、裁判所の自宅売却の許可は必要)を行います。成年後見制度支援信託と異なり、成年後見制度支援預金では、専門職は選任されないため、その報酬を払う等、余計なお金はかかりません。
有価証券、自宅を現金化して日常必要な生活費相当額以外は全て成年後見制度支援預金に全て金銭を入れます。
➡長男のみで金融機関及び不動産取引など全て財産管理ができることから、今回は後見制度支援預貯金を活用することにしました。上記手続きにおいては当事務所でサポートすることになりました。
6.どんな形で預金や不動産を家族で管理できるか、無料相談受付中
当サイトでは、どんな形で預金や不動産を家族だけで管理できる仕組みを作ることができるか、無料相談が可能です。累計4000件を超える相続・家族信託相談実績をもとに、専門の司法書士・行政書士がご連絡いたします。
成年後見制度をはじめ、後ほど紹介する親が元気なうちに任意後見契約や家族信託契約を活用した財産管理方法など、ご家族にとってどんな対策が必要か、何ができるのかをご説明いたします。自分の家族の場合は何が必要なのか気になるという方は、ぜひこちらから無料相談をお試しください。
7.親族が成年後見人になる際の注意点2つ
親族が成年後見人になる際の注意点は、以下の2つです。
- 一度後見人になると簡単には辞められない
- 本人が亡くなるまで報告の義務がある
成年後見人に選任されると自己都合で辞めることはできません。そのため、制度をよく理解して親族内でしっかりと話し合いをすることが重要です。ここでは、親族が成年後見人になる際の注意点について解説します。
7-1.一度後見人になると簡単には辞められない
一度、成年後見人になると簡単には辞任できない点に注意しましょう。例えば「想像以上に後見人の業務が負担である」といった事態が生じても、家庭裁判所によって後見人の解任または辞任が認められない限り、業務を遂行しなければいけないのです。
そのため、成年後見人になる際は、制度をよく理解したうえで手続きをしなければいけません。
7-2.本人が亡くなるまで報告の義務がある
成年後見人は、本人が亡くなるまで家庭裁判所に定期的な報告をする義務があります。成年後見人は本人の財産を自分の財産と分けて管理する必要があり、財産の管理状況を報告しなければいけないためです。
そのため、後見人としての役割がある間は家庭裁判所への報告書提出を続けなければならず、大きな負担となるでしょう。
なお、本人が亡くなった場合は、財産の相続人に連絡したり、相続財産の引き渡しを行ったりといった業務も発生します。
8.親が認知症になるまでであれば「任意後見」「家族信託」で対策できる
親が判断能力を失ってしまった「後」では、成年後見制度を利用するという方法しかありません。その中でできる選択肢としては、専門家を成年後見人にするか、もしくは、身近な親族を後見人とするくらいの対策しかできないのが実情です。
このように、判断能力喪失後のは1つしかありませんが、親が判断能力のある内であれば、選択肢の幅は格段と増えます。成年後見制度では家庭裁判所が職権で成年後見人等を選任するのに対して、元気な時に財産管理を行う親族を定める制度として、「任意後見制度」「家族信託」を検討することができます。
任意後見と家族信託の詳しい説明と違いについては、下記の記事で詳しく解説していますので、確認をしてみてください。
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9.まとめ
本記事は、親族が成年後見人になるための流れを解説しました。内容をまとめると以下のようになります。
- 成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類がある
- 専門職後見人が約7割という状況から、最高裁判所が親族後見人が望ましいとの考え方を示した
- 最高裁判所の運用見直しにより、親族後見人を後見候補者とした場合に認められる割合が約8割となっている
- 親族が後見人選任されるポイントとして、①管理が難しくない、②監督人又は成年後見制度支援信託・預貯金を活用すること、③親族の反対がない、④候補者に問題がない、がある
- 親が元気な時に財産管理を行う親族を定める制度として「任意後見制度」「家族信託」がある
上記の通り、最高裁判所による運用方針が変わり、以前であれば金融資産が2000万円ある場合など、「全て親族のみが後見人となる」ことを認めることは難しかったのですが、運用見直しにより、条件付きではありますが、運用は見直されつつあります。
ただし、成年後見制度の原則である“本人のための財産管理”という部分については厳格な運用は変わらないため、家族のために両親の財産を活用したい、今まで通り柔軟な財産管理をしたい、積極的な相続対策をしたいというニーズを満たすことはできません。やはり、できることであれば、両親が元気なうちに将来の財産管理、資産承継の道筋を作ることができる、家族信託・民事信託での財産管理の方法も含めて、対策を検討すべきです。
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是非、上記も踏まえて、家族で一度将来のことについて話してみてくださいね。