配偶者のための相続|知らないと損するポイント徹底解説

相続は、誰にとっても多くの手続きや判断を求められる煩雑な問題です。特に残された配偶者にとっては、今後の生活基盤を大きく左右する重要なテーマであり、これからの生活や財産の引き継ぎに不安を感じている人も少なくありません。

相続において配偶者は特別な立場とされており、多くの優遇措置が設けられているものの、それらを知らなければ損をしてしまうこともあります。本記事では、配偶者の相続に関する基本的なポイントから実際に役立つ対策まで、わかりやすく解説していきます。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

  • 配偶者は常に相続人となり、法定相続分は相続人の構成により変動する
  • 配偶者に財産を残すには、遺言書作成や生前贈与、生命保険の活用が効果的である
  • 配偶者には、税額軽減・配偶者居住権・小規模宅地特例などの優遇措置がある
  • 親族間の不仲や不動産分割寄与分問題など、相続トラブルには事前の相続対策が重要である
  • 相続対策は法律や税務の専門知識が求められるため、専門家への相談が有効である
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1.相続における配偶者の定義・扱い

相続について考えるとき、まず押さえておきたいのが「配偶者」の法的な定義と、相続における特別な立場です。

民法上、配偶者は常に相続人とされており、これは被相続人(亡くなった方)に子どもがいるかどうか、親や兄弟姉妹が生存しているかどうかにかかわらず変わりません。つまり、配偶者はどのような相続関係においても、必ず財産を受け取る権利が保障されています。

ただし、ここでいう「配偶者」とは、婚姻届を提出した法律上の配偶者を指します。内縁関係や事実婚のパートナーは、現在の日本の法律では相続人として認められていません。そのため、内縁の配偶者に財産を遺したい場合は、遺言書の作成など生前の対策が必要です。

また、被相続人に子どもや親(直系尊属)、兄弟姉妹のいずれもいない場合、配偶者が遺産の全額を相続します。このように、配偶者は法的に強く保護された立場にありますが、実際の相続割合や権利内容は他の相続人の有無や構成によって変動します。

2.相続における配偶者の相続割合

配偶者は常に相続人となりますが、実際に受け取れる遺産の割合(法定相続分)は、他にどのような相続人がいるかによって変動します。民法では、この法定相続分が明確に定められています。

相続人の組み合わせと順位は、以下のとおりです。

  • 第1順位:配偶者 + 子ども
  • 第2順位:配偶者 + 直系尊属(父母、祖父母など) (子どもがいない場合)
  • 第3順位:配偶者 + 兄弟姉妹 (子どもも直系尊属もいない場合)

この順位に従って、配偶者の具体的な相続割合が決まります。

2-1.被相続人の子どもがいる場合

一般的なケースは、被相続人に子どもがいる場合です。この場合の法定相続分は、以下のとおりです。

  • 配偶者:1/2
  • 子ども:1/2

子どもが複数人いる場合は、子ども全体で1/2の相続分を、その人数で均等に分け合います。

【具体例】
夫が亡くなり、妻(配偶者)と子ども2人(長男、長女)が相続人であり、遺産総額が6,000万円のケース。

  • 妻の相続分:6,000万円 × 1/2 = 3,000万円
  • 長男の相続分:6,000万円 × 1/2 × 1/2 = 1,500万円
  • 長女の相続分:6,000万円 × 1/2 × 1/2 = 1,500万円

なお、子どもには実子だけでなく養子も含まれます。また、被相続人より先に子どもが亡くなっており、その子どもに子(被相続人から見て孫)がいる場合は、孫が代襲相続人となって親の相続分を引き継ぎます。

2-2.被相続人の子どもが居らず両親がいる場合

被相続人に子どもが居らず(またはすでに亡くなっており孫などもいない)、被相続人の両親(または祖父母などの直系尊属)が存命の場合は、配偶者と直系尊属が相続人となります。この場合の法定相続分は、以下のとおりです。

  • 配偶者:2/3
  • 直系尊属:1/3

直系尊属が複数人いる場合(例えば父と母の両方が存命の場合)は、直系尊属全体で1/3の相続分を、その人数で均等に分け合います。

【具体例】
夫が亡くなり、妻(配偶者)と夫の父、母が相続人となる場合(夫婦に子どもはいない)で、遺産総額が6,000万円のケース。

  • 妻の相続分:6,000万円 × 2/3 =4,000万円
  • 夫の父の相続分:6,000万円 × 1/3 × 1/2 =1,000万円
  • 夫の母の相続分:6,000万円 × 1/3 × 1/2= 1,000万円

直系尊属とは、父母や祖父母、曽祖父母など、縦のラインの血族を指します。父母がすでに亡くなっていた場合でも、祖父母が存命であれば祖父母が相続人となります。

2-3.被相続人の子ども・両親ともに居らず兄弟姉妹がいる場合

被相続人に子どもが居らず(代襲相続する孫などもいない)、直系尊属も全員亡くなっており、被相続人に兄弟姉妹がいる場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。この場合の法定相続分は以下のとおりです。

  • 配偶者:3/4
  • 兄弟姉妹:1/4

兄弟姉妹が複数人いる場合は、兄弟姉妹全体で1/4の相続分を、その人数で均等に分け合います。

【具体例】
妻が亡くなり、夫(配偶者)と妻の兄・妹が相続人となる場合(夫婦に子どもは居らず、妻の両親もすでに他界)で、遺産総額が6,000万円のケース。

  • 夫の相続分:6,000万円 × 3/4 = 4,500万円
  • 妻の兄の相続分:6,000万円 × 1/4 × 1/2 =750万円
  • 妻の妹の相続分:6,000万円 × 1/4 × 1/2 =750万円

なお、兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていた場合で、兄弟姉妹に子ども(被相続人から見て甥・姪)がいる場合には、甥・姪が代襲相続人として兄弟姉妹の相続分を引き継ぎます。ただし、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りで、甥・姪の子どもには再代襲されません

これらの法定相続分はあくまで法律で定められた目安であり、遺言書がある場合や、相続人全員の合意がある場合は、法定相続分と異なる割合で遺産を分けることも可能です。

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3.配偶者に相続させたい場合の相続対策

法定相続分について理解したところで、次に考えたいのが「配偶者になるべく多くの財産を残したい」「配偶者の生活を最大限保障したい」という想いを実現するための相続対策です。

法定相続分では配偶者以外の相続人にも財産が渡るため、自身の希望どおりに配偶者へ財産を移転させるには、生前からの準備が重要になります。

遺言書がない場合、遺産は原則として法定相続分に従って、相続人全員による遺産分割協議を経て分割されます。遺産分割協議がスムーズに進めばよいのですが、ときには意見がまとまらず、トラブルに発展することも少なくありません。

そこで、こうした事態を避け、確実に配偶者に財産を残すための代表的な相続対策として次の3つが挙げられます。

  • 遺言書を作成しておく
  • 配偶者に生前贈与を行う
  • 生命保険の受取人が配偶者になっているか確認する

以下で、それぞれの方法について見ていきましょう。

3-1.遺言書を作成しておく

遺言書の作成は、配偶者を確実に守るための有効な方法です。被相続人が遺言書によって意思を明確に残しておくことで、配偶者に有利な内容で財産を相続させ、相続人間の認識の違いやトラブルも防ぎやすくなります。

遺言書の利点は、遺産分割協議の負担を軽減できる点です。法定相続分にしばられず、配偶者に有利な分配が可能となるため、不動産など分割しにくい財産も配偶者が単独で取得しやすいようにできます。

以下では、遺言書として代表的な公正証書遺言と自筆証書遺言(法務局保管制度利用)について紹介します。

公正証書遺言

  • 公証人が作成に関与するため、形式不備のリスクが低い
  • 家庭裁判所での検認手続きが不要なため、相続開始後スムーズに手続きを進められる

【自筆証書遺言(自筆証書遺言書保管制度利用の場合)】

  • 自筆の遺言書を法務局に預けられる
  • 家庭裁判所での検認手続きが不要なため、相続開始後スムーズに手続きを進められる
  • 財産目録部分については、パソコンでの作成も可能になるなど作成方法も簡素化されている

ただし、遺言書による財産配分が相続人の遺留分を侵害する場合には、他の相続人から遺留分侵害額の請求を受ける可能性もあるため、財産の配分には配慮が求められます。また、認知症などにより意思能力を失ってからでは遺言書を作成できないため、早めの対応が望まれます。

遺言書の内容や法的有効性については、法律や税務の専門知識が必要となる場面も少なくありません。将来的なトラブルを避けるためにも、司法書士や税理士などの専門家に相談しながら進めるのが賢明です。

3-2.配偶者に生前贈与を行う

配偶者への生前贈与は、将来の相続を見据えた有効な手段の一つです。あらかじめ財産を移転することで相続財産が減少し、相続税の軽減につながる可能性があります。贈与された財産は原則として配偶者の固有財産となります。

ただし、遺産分割協議の際には「特別受益」として持ち戻しの対象となる場合もあるため、遺産分割の際には贈与の内容や時期に応じて取り扱いが異なることを理解しておかなければなりません。生前贈与の方法としては、「暦年贈与」「相続時精算課税制度」「贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)」が挙げられます。

【暦年贈与】

また、年間110万円までの贈与(暦年贈与)をコツコツと続ける方法もあります。ただし、2024年1月1日以降に行われた贈与については、相続開始前7年以内(改正前は3年以内)のものが相続財産に加算されことになりました。そのため、早期から継続的な贈与を始めることが重要になるでしょう。

この新しいルールによる影響は2027年1月1日以降に発生する相続から出始め、相続財産に加算される期間は段階的に長くなっていき、2031年1月1日以降に発生する相続で完全に7年分が対象となります。なお、今回の改正で延長された期間(相続開始前3年超7年以内の期間)に受けた贈与に関しては、総額100万円までは相続財産に加算されないという経過措置が設けられています。

毎年同じ金額を同じ時期に贈与し続けると、定期贈与と見なされる可能性があり、贈与全体が課税対象になる場合もあるため、専門家に相談しながら適切な方法を選択するようにしましょう。

【相続時精算課税制度の利用】

相続時精算課税制度では、累計2,500万円までの贈与が特別控除として非課税となります。さらに、2024年以降は年間110万円の基礎控除が新設され、この範囲内の贈与については贈与税が課されず、累計2,500万円の特別控除に含める必要がなくなりました。ただし、相続時精算課税制度を選択すると、以後は前述の暦年課税に戻れないため、慎重な検討が必要です。

【贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)】

贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 婚姻期間が20年以上であること
  • 贈与される財産が、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭であること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その居住用不動産に実際に居住し、その後も引き続き居住する見込みであること

贈与税の配偶者控除を利用することで、通常の贈与税の基礎控除110万円に加え、最大2,000万円までの贈与が非課税となります。つまり、合計で最大2,110万円までの贈与に対して税金がかかりません。加えて、暦年贈与や相続時精算課税制度とは異なり、相続開始前の加算の対象外です。贈与税の配偶者控除は、同一の配偶者からは一度しか使えませんが、大きな節税効果が見込めるでしょう。

例えば、夫名義の自宅を妻に生前贈与する場合や、妻が新たに自宅を購入するための資金を夫が贈与するケースなどで活用されます。ただし、不動産の贈与には登録免許税や不動産取得税などの費用も発生するため、事前に確認が必要です。

3-3.生命保険の受取人が配偶者になっているか確認する

生命保険金は原則として遺産分割の対象外であり、受取人に指定された人が単独で受け取れます。そのため、配偶者に確実に財産を渡すためには、生命保険の受取人が配偶者になっているかを必ず確認しましょう。

生命保険の受取人が指定されていない場合、保険約款では「被保険者の法定相続人」が受取人になると定められている場合が多いです。この場合、各相続人は法定相続分に応じた保険金を受け取ることになります。そのため、配偶者が期待どおりの金額を受け取れない可能性があります。

生命保険金には相続税の非課税枠が設けられており、「500万円 × 法定相続人の数」までが課税対象外です。この非課税枠は受取人が相続人である場合にのみ適用されるため、配偶者を受取人に指定することが節税につながります。

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4.配偶者が利用できる相続税優遇措置

配偶者には、相続税の負担を軽くするための特別な優遇措置が複数あります。代表的なものとして、次の制度が挙げられます。

  • 配偶者の税額軽減(配偶者控除)
  • 配偶者居住権
  • 小規模宅地の特例

それぞれの制度について、以下で順に解説します。

4-1.配偶者の税額軽減(配偶者控除)

配偶者の相続分が1億6千万円または法定相続分の範囲内の場合には、相続税は課されません。この制度は「配偶者の税額の軽減」と呼ばれ、被相続人の財産形成への貢献や、老後の生活保障を考慮して設けられた制度です。

配偶者控除により、配偶者の相続税が実質的にゼロになるケースも多く、遺産を受け継ぐ際の大きなメリットになります。適用にはいくつかの要件があるため、事前に内容を確認し、計画的に手続きを進めましょう。

参考:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減

4-2.配偶者居住権

配偶者居住権とは、残された配偶者が引き続き安心して自宅に住み続けられるようにするための制度です。

これまでの相続では、自宅が遺産の大部分を占めるケースで配偶者が自宅を相続すると、生活資金として使える現金などの取得が難しくなるケースもありました。配偶者居住権は、自宅の「所有権」とは別に「居住する権利」を認めることで配偶者が自宅に住み続けながらも他の財産を相続しやすくし、生活資金の確保を図れるようにする制度です。

配偶者居住権を得るには、被相続人の法律上の配偶者であり、相続開始時にその建物に住んでいたことが条件です。さらに、遺産分割協議などで権利を取得し、登記する必要があります。登記が済んでいれば、建物が第三者に売却されても引き続き居住が可能です。

なお、配偶者居住権には建物の譲渡や大規模なリフォームが原則として制限され、固定資産税の負担も生じます。配偶者居住権は住まいの確保と生活資金の両立に有効ですが、制度の内容や要件を正しく理解しておくことが重要です。

4-3.小規模宅地の特例

配偶者が自宅の土地を相続する際は、小規模宅地等の特例を活用することで、相続税を大きく抑えられます。小規模宅地の特例では、330㎡までの宅地について評価額を最大80%減額できます。

配偶者は特別な条件なく小規模宅地等の特例を受けられるため、自宅を売却せずに居住継続が可能です。ただし、相続税の申告は申告期限内に行う必要があります。

参考:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

5.配偶者がかかわる相続で起こりやすいトラブル

配偶者がかかわる相続は、必ずしも円満に進むとは限りません。遺産分割をめぐっては、さまざまな要因から他の相続人との間で意見の対立が生じ、思わぬトラブルに発展することがあります。

親族間の不仲や不動産の分け方、寄与分に関しては、配偶者が直面しやすい代表的な問題点といえるでしょう。以下では、これらのトラブル事例と対処法について解説します。

5-1.親族間の不仲により話し合いがまとまらない

相続トラブルで多く見られるのが、配偶者と他の相続人(子どもや被相続人の兄弟姉妹など)との関係が悪く、遺産分割協議が円滑に進まないケースです。

生前の親子関係や兄弟姉妹との確執、嫁姑間の対立といった感情的なしこりが、相続をきっかけに一気に表面化することがあります。特に、被相続人に子どもや直系尊属がいない場合は、兄弟姉妹が相続人です。その際、配偶者との関係が希薄だったり、もともと折り合いが悪かったりすると遺産の取り分をめぐって対立が激化しやすくなります。

話し合いがまとまらない場合、遺産分割協議は長期化し、預貯金の解約や不動産の名義変更などの手続きが進まなくなります。その結果、相続財産が宙に浮いたままとなってしまうおそれもあるため注意が必要です。最終的に家庭裁判所での調停や審判、訴訟に発展することもあり、精神的・経済的な負担は極めて大きくなります。

さらに、令和6年(2024年)4月1日からは、「相続人が不動産の所有権取得を知った日から3年以内」に相続登記の申請を行うことが義務化されました。遺産分割協議がまとまらない場合でも、「相続人申告登記」という制度を利用し、期限内に手続きを行っておく必要があります。登記の手続きを怠ると過料が科されるため注意しなければなりません。

このような事態を避けるためには、被相続人が生前に遺言書を作成しておくことが有効です。あわせて、相続人同士が日ごろから良好な関係を築いておくことも、トラブルの防止につながります。

5-2.遺産としての不動産の分け方がまとまらない

遺産に不動産が含まれていると、その分け方をめぐって相続人間で意見が対立し、協議が難航することもあります。

不動産は現金と違って物理的に分割しにくく、また評価方法も複数あるため、どの基準を採用するかで揉めることがあります。特定の不動産に対する相続人の思い入れが、公平な分割をさらに困難にする場合も考えられるでしょう。安易に共有名義にすると、将来的に管理や売却の場面で新たな問題が生じるおそれもあります。

こうした事態を避けるには、状況に応じた分割方法を検討することが大切です。不動産を売却して金銭で分ける換価分割や、一人が取得し他の相続人に代償金を支払う代償分割などが考えられます。相続人全員が納得できる方法を見つけるには、冷静な話し合いと、必要に応じて専門家の助言を受けることが重要です。

5-3.寄与分の請求が発生する

相続財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人に認められる「寄与分」の主張は、遺産分割協議で他の相続人と意見が対立し、トラブルの原因になる場合があります。

寄与分は、被相続人の介護に専念したり事業を無償で手伝ったりするなど、通常の親族関係で期待される範囲を超えた貢献があった場合に認められます。しかし、他の相続人がその貢献を「家族なら当然」と考え、寄与分の主張を認めなかったり金額に不満を持ったりして争いになるケースも少なくありません。

このようなトラブルを避けるには、被相続人が生前に遺言書で寄与分について明確に示しておくことが有効です。また、介護記録や資金援助の証拠を残すことで、主張の正当性を示しやすくなります。

6.配偶者がかかわる相続の注意点

配偶者がかかわる相続において、注意しておきたい以下のポイントを解説します。

  • 全員の合意による分割割合の変更
  • 一次・二次相続における税負担の違い
  • 短期間での連続相続時に使える相次相続控除
  • 遺留分をめぐるトラブルへの備え

以下で、各ポイントを解説します。事前に理解しておくことで、相続を有利かつ円滑に進められるでしょう。

6-1.全員の合意があれば法定相続割合や遺言書と異なる割合で分割できる

遺産相続において法定相続割合や遺言書で示された内容は基本的な指針ですが、相続人全員の合意があれば異なる割合で分割できます。

具体的には、相続人全員が合意のうえ遺産分割協議書を作成し、分割割合を自由に決められます。ただし、全員の合意を得るには事前の十分な話し合いと相続人間の信頼関係が欠かせません。配偶者としては、納得のいく相続を実現するために専門家などの助言を受けながら進めることが望ましいでしょう。

6-2.二次相続で相続税負担が増加する可能性がある

一次相続で配偶者が多くの財産を相続すると、二次相続時に配偶者控除が使えず、相続税の負担が増える可能性もあります。

配偶者控除は一次相続で大幅に軽減できますが、配偶者が亡くなった際の二次相続では控除が適用されません。そのため、一次相続の遺産分割割合は慎重に検討し、相続税負担を最小限に抑えるための計画的な遺産分割を進める必要があります。

6-3.相次相続控除とは

相次相続控除とは、10年以内に連続して相続が生じた場合に適用される税制上の特別な措置です。相次相続控除は、同じ財産に対して二重課税の防止を目的としており、最初の相続で相続税を支払っていることが前提となります。

具体的には、最初の相続で納めた相続税の一部を、次に発生した相続の際に支払う相続税から差し引ける仕組みです。相次相続控除により、短期間で続く相続にかかる税金の負担を軽くできます。相次相続控除を活用することで、配偶者が財産を受け継ぐ際の税負担を抑えられるため、相続税の対策を考える際には検討に入れるようにしましょう。

6-4.遺留分侵害請求をされる可能性がある

遺言書や生前贈与で特定の相続人に多くの財産が渡されていたとしても、他の相続人には法律で保障された「遺留分」があります。遺留分権利者は、配偶者・子ども(代襲相続人含む)・直系尊属であり、兄弟姉妹は遺留分請求の対象外す。

遺言書作成にあたって不安な場合には、弁護士や司法書士など法律に精通した専門家に相談することをおすすめします。

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7.まとめ

本記事では「配偶者のための相続」をテーマに、その定義や法定相続分、有利な相続対策に税金の優遇措置、起こりやすいトラブルや注意点について詳しく解説してきました。内容をまとめると、以下のとおりです。

  • 配偶者は常に相続人となり、法定相続分は相続人の構成により変動する
  • 配偶者に財産を残すには、遺言書作成や生前贈与、生命保険の活用が効果的である
  • 配偶者には、税額軽減・配偶者居住権・小規模宅地特例などの優遇措置がある
  • 親族間の不仲や不動産分割寄与分問題など、相続トラブルには事前の相続対策が重要である
  • 相続対策は法律や税務の専門知識が求められるため、専門家への相談が有効である

相続は誰にとっても避けて通れない重要な手続きです。特に配偶者が相続人となる場合は、生活の安定や住まいの確保といった実生活に直結する課題が生じやすく、十分な配慮が求められます。

法定相続分や各種控除を正しく理解し、生前に遺言書を作成するなどの対策を行うことで、配偶者の権利を守り、相続時のトラブルを未然に防ぐことに大いに役立つでしょう。

相続には法律に関する知識や煩雑な手続きが必要となり、予期せぬ損失やトラブルが起こることもあります。そのため、不安を感じた際は一人で抱え込まず、信頼できる専門家に早めに相談することが大切です。

相続について正しく理解し、必要な準備を進めることで、将来の財産承継を円滑に進めていきましょう。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

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