家族信託のデメリットとは?注意点・対策方法を徹底解説

「家族信託」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。相続対策や財産管理の一環として注目される一方で、実際に利用するにあたってのデメリットや注意点も存在します。万人にとって有効ではない制度ですので、導入する前にデメリットと家族信託が必要・不必要なケースについて理解した上で、家族信託をやるかどうか検討しましょう。

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1.家族信託のデメリット14選

家族信託は、財産管理や相続対策として有用な手段として注目されています。しかし、その一方でデメリットも存在し、家族信託を利用する際には注意が必要です。ここでは、家族信託を導入する前に知っておくべき14のデメリットについて詳しく解説します。これらのポイントを押さえることで、家族信託の適切な活用方法を見極め、予期せぬトラブルを避けることができます。

家族信託の仕組みや制度、手続きの基本は以下のブログをご覧ください。

 ① 受託者の負担や責任が重い

家族信託は多くのメリットがある一方で、受託者にかかる負担や責任は非常に大きいです。例えば、信託財産で賄いきれない損害が発生した場合、受託者は個人の財産で補填しなければならない無限責任を負います。これは、連帯保証人のような立場に置かれることを意味し、長期にわたって大きなプレッシャーを感じることになる可能性もあるのです。

他にも、受託者の役割を全うするには善管注意義務信託事務の計算や帳簿作成、毎年の報告書作成公平義務利益相反行為の制限など、信託法に基づく複数の義務も守る必要があります。

また、受託者には信託の目的達成のための決定権が与えられていることで、他の家族から信託財産の使い方について不信感を抱かせてしまう可能性があることも否めません。信託の運用に関する判断が難しい場合や、家族内で意見が対立する場合には、受託者は心理的なストレスを感じることもあるでしょう。

「受託者の負担や責任が重い」ことへの解決策

家族信託を利用する際には、受託者にかかる負担や責任を十分に考慮する必要があります。しかし、以下の解決策を講じることで、その負担を軽減することができます。

解決策①: 受託者の報酬を設定する

家族信託では、受託者に報酬を設定することが可能です。受託者の責任や業務に対する適切な対価を提供することで、モチベーションの維持に繋がります。報酬を受け取ることで、受託者は財産管理や信託事務をより積極的に行うことができ、結果的に信託の目的達成にも繋がります。

解決策②: 信託監督人や受益者代理人を設定する

受託者の業務をサポートし負担を分散させるために、信託監督人や受益者代理人を設定することも有効です。信託監督人や受益者代理人は、それぞれ異なる役割を持ってはいますが、どちらも受託者を支援し、必要に応じて助言を行うことが仕事です。これにより、受託者は安心して業務を遂行でき、信託の運用がスムーズに進むでしょう。

解決策③: 信託契約で受託者の責任を軽減する

信託契約の中で、受託者の責任を軽減する条項を設けることも重要です。例えば、受託者の善管注意義務の範囲を明確にし、責任の範囲を制限することができます。また、特定の状況下での責任免除を明記することで、受託者が過度なプレッシャーを感じずに業務を行えるようにすることも可能です。

 ② 受託者の担い手が見つからない可能性がある

家族信託は委託者と受託者の間の信託契約で成立しますが、その責任の重さから受託者の担い手が見つからないケースも少なくありません。受託者は財産管理の責任を負い、多岐にわたる業務を遂行しなければならないため、家族内で適任者を見つけることが難しいことがあります。

さらに、家族信託を考える際には通常、契約終了までに受託者が他界し場合も想定しておく必要があり「後継受託者」を設定します。信託財産を管理する人がいなくなってしまうと、家族信託の運営が滞るリスクが生じるからです。受託者は見つかったけれど、後継受託者の適任者が見つからない可能性もあります。

受託者候補がいない場合の解決策

子供が1人しかいないケースの場合や、任せるには適任ではないと判断した場合には、下記の方法を検討します。

解決策①: 家族以外で後継受託者を探す

家族内に適任者がいない場合、信頼できる家族外の人物を後継受託者にする方法があります。例えば、子の配偶者や孫、甥、姪、または親しい友人や知人に依頼することが考えられます。後継受託者は現受託者に万が一のことがあった場合のみ業務を引き継ぐため、通常は負担が発生しません。この点を説明し、予備的な役割として了承してもらうことで、適切な後継受託者を確保できます。

解決策②: 法人を受託者にする

適任の個人が見つからない場合、法人を受託者とする選択肢もあります。新たに設立した資産管理会社や既存の法人を利用し、法人を受託者とすることで、継続的かつ専門的な財産管理が可能です。法人設立に伴う費用はかかりますが、収益物件の賃料収入などで賄うことができる場合もあります。

解決策③: 信託会社や成年後見制度を活用する

信託業の免許を持つ信託会社や信託銀行を受託者とする商事信託を利用する方法も有効です。信託会社は専門知識を持ち、信託財産の管理を適切に行えます。ただし、不動産の信託受け入れについては各信託会社の条件に依存するため、事前に確認が必要です。商事信託が難しい場合には、成年後見制度を活用することも検討できます。家庭裁判所が後見人を選任するため、信託財産の適切な管理が保証されます。

 ③ 受託者が権限濫用する可能性がある

家族信託において、受託者は信託契約に基づき、委託者の財産管理や運用に広範な権限を持ちます。しかし、この大きな権限が濫用されるリスクもあります。受託者が信託財産を自己判断で管理することで、信託の目的に反した行為が行われる可能性があるのです。この権限乱用のリスクを防ぐためには、適切な対策が必要です。

受託者の権限濫用を防止する方法

受託者の権限を濫用されてしまうと、ご家族間で不信感につながり家族の仲が悪くなります。そうならないように対策をしておくこともできます。

解決策①:信託財産の処分行為に制限を設ける

信託契約の中で、信託財産の売却や購入など重要な行為について、受益者や第三者の同意を必要とする条項を設けることができます。このような制限を設けることで、受託者が独断で重要な決定を行うことを防ぎ、信託財産の適正な管理を確保します。

解決策②:受益者代理人や信託監督人を設定する

受託者の行為を監督するために、受益者代理人や信託監督人を設定することが有効です。受益者代理人や信託監督人は、受託者の業務が適切に行われているかを監視し、必要に応じて助言や指示を行います。特に、受益者が高齢で監督が難しい場合には、第三者の目を入れることで、受託者の権限乱用を防止できます。

 ④ 信託できない財産がある

家族信託は財産の管理を目的とした契約ですが、すべての財産を信託できるわけではありません。成年後見制度とは異なり、信託できない財産も存在します。以下に、間違いやすい信託財産についての留意点と対策を解説します。

預金口座

預金口座は信託契約書に口座番号を明記しても、直接信託財産とすることはできません。これは、預金口座の譲渡が基本的に禁止されているためです。対策として、信託したい金額を預金口座から引き出し、受託者名義の新しい口座に移すことで、間接的に信託財産として管理することが可能です。

年金

年金は受給者固有の権利であり、受託者名義の信託用管理口座に振込指定することはできません。対策として、年金を受け取った後、その金銭を受託者名義の口座に移し、追加信託として管理する方法があります。これにより、年金受給金も信託財産として取り扱うことができます。

農地

農地は農業委員会の許可や届け出がないと信託することができません。対策として、まず農業委員会に許可や届け出を行う必要があります。専門家に相談して、必要な手続きを適切に進めることが重要です。宅地化を予定している場合も、同様の手続きを行うことで信託が可能になります。

借地権(土地の賃借権)

借地権は地主の許可が必要です。信託契約には借地権の譲渡が含まれるため、地主の同意が求められます。対策として、借地権を信託する場合には、地主に信託の意図を説明し、理解と同意を得ることが必要です。専門家の助けを借りて、地主との円滑な交渉を行うことが大切です。

 ⑤ 信託をしても施設契約できない

家族信託は財産管理に限定された契約であり、信託された財産の範囲内での運用しか認められていません。つまり、委託者自身の財産や信託に含まれない財産の管理は対象外となります。

さらに、家族信託には成年後見制度で対応できる「身上監護」という役割が含まれていません。身上監護とは、医療施設の手続きやケアホームの入退所など、日常生活におけるサポートを指します。受託者が本人に近い子などであれば、施設が手続きを許可することもありますが、遠い親戚や無関係な第三者が受託者の場合、これらの手続きを行うのは難しくなります。

身上監護をカバーするための対策

もし、医療施設の手続きなどが必要で身上監護をカバーする必要がある場合には、任意後見制度の併用が推奨されます。任意後見制度を活用することで、任意後見人は被後見人の日常生活に関する法的行為を代行できます。家族信託と任意後見制度を併用することで、財産管理だけでなく、日常生活のサポートも包括的にカバーできるため、より安心して生活を送ることができます。

 ⑥ 直接節税対策にはならない

家族信託は、直接的な相続税の節税手段ではありません。「家族信託を利用すれば相続税が軽減される」との誤解が広がっていることが背景にありますが、実際にはそうではありません。

家族信託を行っても、財産の実質的所有者は依然として本人です。そのため、相続税の評価は変わりません。受託者は名義上の管理者として行動しますが、財産権や受益権は本人に残るため、信託を利用しただけでは相続税の評価を下げたり、節税効果を得ることはできません。

長期にわたる受託者の対策による間接的な効果

家族信託を長期にわたってうまく活用することで、以下のような間接的な効果が期待できます。

  • 委託者が判断能力を失っても、受託者が相続対策を進めることができる。
  • 本人他界後も家族信託を続けることで、二次相続対策も行える。

これらの効果は、家族信託を長期的かつ適切に活用した結果として得られるものです。家族信託自体には直接的な節税効果はないことを理解し、他の相続税対策と併用することが重要です。

 ⑦ 信託不動産の損益通算ができない

家族信託を活用する際、特にアパートなどの収益物件を所有している場合には、損益通算の規定に注意が必要です。
家族信託では、個人の所得と信託不動産の所得を通算することができません。例えば、信託不動産が100万円の赤字で、委託者の個人所得が200万円の黒字だった場合、信託財産の赤字はなかったものと見なされ、200万円が課税対象となります。通常の青色申告では赤字を翌年以降に繰越して相殺できますが、家族信託ではこれも認められません。

収益不動産を家族信託する場合の注意点

不動産を家族信託の対象にする場合、税務面で不利益を避けるために以下のポイントを検討することが重要です。

前もって大規模修繕を計画

家族信託の成立後に大規模修繕を行うと、その赤字を他の所得と損益通算することができません。そのため、信託成立前に必要な修繕を実施し、赤字を相殺しておくことが税務上有利です。これにより、信託後の賃貸経営がスムーズに進むようになります。

どの不動産を信託にするか検討する

複数の収益不動産を所有している場合、すべてを信託にするのではなく、一部のみを信託にする選択も重要です。信託契約内の異なる不動産間での損益通算は可能ですが、繰り越しはできません。黒字と赤字が見込まれる不動産を適切に選択して信託財産にすることで、税務上のメリットを最大化することができます。

任意後見の利用を検討

家族信託とは異なり、任意後見制度では損益通算に関する制約がないため、節税を期待する場合にはこの制度の活用も考慮する価値があります。ただし、任意後見制度は家族信託に比べて資産管理の柔軟性が低い点に注意が必要です。

これらの対策を講じることで、家族信託を利用する際の税務上の不利益を最小限に抑え、最適な資産管理を行うことができます。専門家のアドバイスを受けながら、慎重に計画を進めることが成功への鍵です。

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 ⑧ 遺留分侵害額請求される可能性がある

「遺留分」とは、配偶者、子、父母などの法定相続人に保障される最低限の相続財産のことを指します。これを侵すような家族信託契約を結ぶと、相続トラブルの火種となる可能性があるため、注意が必要です。

遺留分に関する家族信託の取り扱いは、法的にはまだ確定していない部分が多くあります。2018年9月12日、東京地方裁判所では、遺留分を逃れる目的で結ばれた家族信託契約が公序良俗に反するとして一部無効とする判例が出されました。最高裁での最終的な判断はまだ出ていないため、今後の法的動向に注視する必要があります。

遺留分も踏まえた対策

遺留分を考慮し、相続人全員が納得できる信託契約を設計することが重要です。専門家の助言を受けながら、契約内容を慎重に検討し、トラブルを未然に防ぐ対策を講じましょう。また、家族信託を介さずに財産を受け継ぐ予定の相続人には、遺言や生命保険を活用して財産の承継を確保することも考慮しましょう。これにより、遺留分侵害を回避しつつ、円滑な相続を実現できます。

 ⑨ 手続き費用が高い

家族信託は自分で行うことができます。しかし、これまで述べてきたようなリスクなど回避するためには専門家に依頼するほうが、安全です。家族信託に行うための専門家の報酬としては、下記の費用がかかります。

  • コンサルティング報酬(報酬相場:信託財産評価の1.1%程度(最低33万円))
  • 信託契約書作成報酬(報酬相場:11~16.5万円)
  • 信託登記報酬(報酬相場:11~16.5万円

また、実費として、信託契約書を公正証書化する際の費用(費用相場:3.3~11万円)、不動産の信託登記にかかる登録免許税(費用相場:固定資産評価額の0.3~0.4%)がかかります。

成年後見制度を利用した場合の費用と検討する

家族信託は最初の契約締結時点のみ費用がかかります。成年後見制度で、専門家が成年後見人へ選任された場合には、月額の報酬が継続的にかかる点と異なります。導入時に費用はかかりますが、トータルで見て成年後見制度と比較してみると家族信託のほうが安く済むケースがあります。

 ⑩ 実務経験が豊富な専門家が少ない

家族信託は制度が導入されてまだ間もないため、法務や税務に関する判例や通達が確定していない部分があります。このため、今後の動向によっては、当初の計画通りにいかない可能性もあります。

また、家族信託の知名度は上昇していますが、実際に家族信託の豊富な経験を持つ専門家はまだ少ないのが現状です。ホームページで家族信託の相談ができると謳っている弁護士や司法書士でも、詳細なアドバイスを提供できるとは限りません。専門家を選ぶ際には、慎重な判断が必要です。

家族信託の導入には、法務や税務に関する深い理解が求められます。そのため、実績が豊富で知識のある専門家の選定が重要です。

弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、4000件を超えるお問い合わせ対応の実績があります。経験豊富な専門家に相談し、適切な家族信託を設計することで、将来のリスクを減らし、安心して財産管理を行うことができます。ぜひ一度まずは無料相談へ

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 ⑪ 裁判例によって解釈変更のリスクがある

家族信託は制度自体が比較的新しいため、法律や判例がまだ確立されていない「グレーゾーン」が多くあります。例えば、信託契約の内容が判例によって変更を求められることがあり、その度に信託財産の運用などに影響が出る可能性があることを知っておく必要があるのです。

12‐1.判例によって見直しが起きた事例

これまで判例や公文書によって、見直しを考える必要のある事例がいくつかありましたので、以下ご紹介します。

事例①:相続空き家特例が家族信託では使えない

2022年12月20日に東京国税局から示された文書回答事例により、家族信託終了後に帰属する不動産が「相続空き家特例」の対象外であることが明らかにされました。「相続空き家特例」とは、亡くなった人の空き家を相続や遺贈で取得し、その後、耐震リフォームや取り壊しを行い売却した場合に、その売却収入から3,000万円を特別控除できる制度です。

しかし、受益者の死亡を理由として家族信託が終了した場合に帰属する不動産は「相続または遺贈による取得」の要件に該当しないため、この特例の適用ができないという内容が示されました。これにより、これまで相続空き家特例が使えるものと思って作成した契約書の変更が必要になった事例です。

事例②:信託終了時の登記手続きの取り扱い

2023年まで、家族信託が終了する際の不動産の名義変更手続きについては明確でない部分がありました。特に、受託者を信託不動産の権利帰属者とした場合の登記手続きで、法務局ごとに取り扱いが異なる問題がありました。ある法務局では、受託者の固有財産化の変更登記に際し、受益者の相続人全員の印鑑証明を要求することがあり、協力を得られない相続人がいると手続きが難航していたのです。

2024年1月10日からは全国の法務局で受託者のみの単独申請が可能となりました。これにより、他の相続人の関与を受けることなく、受託者のみで登記手続きを進めることができるようになりました。

裁判例による解釈変更のリスクへの対策

解決策①: 家族信託の実務に長けた専門家に依頼する

信託契約の変更頻度を減らすためには、家族信託に精通した専門家に依頼することが重要です。専門家は最新の法律や判例を把握しており、適切なアドバイスを提供できます。信頼できる専門家の助言を受けることで、契約書の内容を慎重に検討し、将来的な変更のリスクを最小限に抑えることができます。

解決策②: 事後サポートを受ける

信託契約後も、継続的にサポートを受けることが重要です。専門家からの定期的なサポートを受けることで、法律や判例の変更に迅速に対応できます。例えば、契約後に法律が改正された場合や新しい判例が出た場合、専門家からの知らせを受けることで、適切なタイミングで契約内容を見直すことができます。

 ⑫ 家族・親族間でトラブルになる可能性がある

家族信託の契約は、財産を預ける委託者とそれを預かる受託者の間で成立し、他の家族の同意は必ずしも必要ではありません。しかし、家族全員の同意を得ずに手続きを進めると、後に大きなトラブルに発展する可能性があります。信託契約の内容や受託者の行動が原因で、不信感や家族同士で対立してしまうことがあります。特に、親の財産を管理する際には、兄弟間でのトラブルが起こりやすく、信託の透明性が欠如していると不和が生じるリスクが高まります。

仲良く家族信託をするための方法

家族信託は家族間の信頼関係を基盤とする制度です。家族全員が信託の目的や運用方法を理解し、協力することが求められます。

解決策①: 家族会議を行う

家族信託を導入する際には、家族全員が参加する家族会議を行い、信託の目的や運用方法についてオープンに話し合うことが重要です。家族全員が納得する形で信託契約を結ぶことで、後のトラブルを防ぐことができます。定期的な家族会議を開催し、信託の進行状況や問題点を共有し、迅速に対応することがトラブル回避に役立ちます。

解決策②: 契約書を公正証書で作成する

信託契約書を公正証書で作成することで、契約内容の透明性を高め、トラブルを未然に防ぐことができます。公正証書は公証人が関与して作成されるため、法的に有効であり、信託契約の信頼性を確保します。これにより、契約内容に関する争いが発生した場合でも、公正証書が証拠として機能し、問題解決をスムーズに進めることができます。

 ⑬ 途中で契約内容の変更はできない

家族信託は、委託者と受託者の2者間の契約になりますので、契約をする際や変更する際も両者の意思判断が必要になります。委託者の判断能力がしっかりしているうちは契約変更が可能ですが、認知症になると契約内容を変更することはできないのです。

判断能力による無効を防ぐ方法

信託契約後に家族が契約内容に不満を持ち、契約当時の委託者の判断能力が足りなかったと主張することがあります。このようなトラブルを防ぐためには、以下の方法が有効です。

早めの対応

判断能力がしっかりしているうちに、家族全員の意見を取り入れて信託契約を結びましょう。

客観的な証拠の収集

契約時に医師の診断書を取得し、委託者の判断能力がしっかりしていることを証明します。また、委託者の意向を手書きのメモや音声・動画で記録しておくと、後の証拠になります。

公正証書を利用

信託契約を公正証書にすることで、契約の信頼性を高めます。公正証書は法的に強力な証拠となり、トラブルが起きたときにも有効です。ただし、家族関係が良好でトラブルが予想されない場合は、公正証書にするかどうかを状況に応じて決めましょう。

 ⑭ 両親の同意をとるのが難しい

成年後見制度は本人が判断能力を失った後でも利用できますが、家族信託は違います。家族信託では本人が信託契約の当事者となるため、制度を利用する祖父母や両親の理解と同意が必要です。これが得られない限り、家族信託を実行に移すことはできません。

家族信託は、「贈与」「売買」「遺言」などと比べて知名度が低いため、財産を預ける委託者にとって理解が難しいと感じられることがあります。また、不動産や金銭を本人ではなく受託者名義で管理するため、「難しそうだからやりたくない」「自分の財産が取り上げられるのではないか」といった不安感から同意を得られないことがあります。

委託者の同意を得るための対策

家族信託の契約を進める際には、本人の理解と合意が必要となります。家族信託の専門家の事例を踏まえた説明を取り入れることは、本人の誤解を解消し納得を促進する効果的な方法と言えます。専門家を交えることで、本人の希望を取り入れた信託契約書を作成することができます。

2.家族信託である必要ないケースとは?

これまで見てきた14つのデメリットを踏まえて、家族信託の必要がない・おすすめできないケースの特徴を紹介します。

2-1.争いのある親族関係のケース

家族信託は新しい制度であるため、ご家族の仲でも見解が分かれることも多いです。そのため、家族信託を利用する際には、親族全員が制度を理解し、納得して手続きを進めることが重要です。

家族信託は「生前の遺産分割に近い」と説明されることが多く、将来の財産管理と資産承継先を生前に家族会議を経て決めることで、その後のトラブルを防ぐことが期待されています。しかし、「事前に説明ができない」「家族関係に問題がある」といった状況では、家族信託が逆にトラブルの原因となる可能性があります。

例えば、以下のような場合には家族信託を避けた方が良いかもしれません。

  • 家族の仲が悪い
  • 親族同士で話し合いができない
  • 一部の家族が信託契約に納得していない

このような場合、家庭裁判所の関与の元で中立な第三者が成年後見人として管理する成年後見制度を利用する方が安全です。また、家族間で財産管理の権限を持つ人に対する不公平感が生じることもあります。

家族信託をした場合に想定されるトラブル

家族信託契約は委託者と受託者の同意があれば成立し、他の家族の同意は法律上必要ありません。しかし、実際には家族全員が納得しなければ、裁判沙汰や日常生活での小競り合いが続く可能性があります。以下のようなトラブルが考えられます

  • 判断力が鈍った親(委託者)を騙して無理やり結んだのではないかと疑われる
  • 「なぜ他の家族に話を通さずに勝手に受託者を決めたのか」と周りから権力集中について非難される
  • 「自分は兄よりうまく財産を扱えるはずだ」といった受託者選定に関する不満が出る
  • 任せた子ども(受託者)が財産を不正利用して暴走しているが周囲に止める権限がない
  • 受託者として常に大きな権限と義務を持ったが周りにサポートしてくれる人がいない  など

親の財産を一人の子が独占して管理し、外部に情報開示しないような家族信託は、将来の「争族問題」を引き起こす可能性があります。将来の相続人全員が納得していない場合は、家族信託を慎重に検討することが重要です。

2‐2.受託者を任せられる親族がいないケース

家族信託を結ぶ際、受託者となる親族には非常に広い権限が与えられます。信託財産の管理、運用、処分だけでなく、信託契約に基づいた行為も基本的には可能です。一方で負担や義務が重く、家族信託は「受託者を誰にするか?」が非常に重要な制度です。

受託者には、自分の財産と信託財産を別々に管理する「善管注意義務」が課されます。これは、他人の財産を預かり管理するという責任を非常に高いレベルで遂行することを求められるものです。親族であっても、信託財産を自分のもの以上に注意深く管理する能力と意識が必要です。

こうした責任を果たせる親族がいない場合、家族信託を結ぶのは難しいかもしれません。その場合、信頼できる専門家に成年後見人となってもらい、財産管理を任せる方が効果的でしょう。専門家であれば、法的な知識や経験を活かして、適切に財産を管理・運用することが期待できます。

また、受託者の負担を軽減するために、信託監督人受益者代理人を設ける方法もあります。これにより、受託者一人に過度な負担がかからず、家族全体で信託をサポートする体制を整えることができます。しかし、それでもなお、受託者となる親族の信頼性が確保できない場合は、専門家の力を借りるのが最善です。

2-3.委託者が若く認知症ではないケース

若くて健康状態が良く、認知症のリスクが低い場合、家族信託はまだ必要ないことがあります。健康な状態であれば、生前贈与や不動産の売却など、他にも多くの生前対策の方法があります。また、万が一に備えて遺言を作成しておく程度の対策で十分でしょう。これにより、財産の管理や相続に関する基本的な準備は整います。

ただし、健康状態に変化の兆候が見られた場合には、家族信託の導入を検討するべきです。一般的には、65歳を超えた段階から家族信託の検討を始めると良いでしょう。健康であるうちに適切な対策を考えておくことで、将来的なリスクに備えることができます。

2-4.親の不動産の売却や施設費用を支払う予定がないケース

家族信託のメリットは、信託財産について契約の範囲内で管理・運用しやすくなる点です。つまり信託財産による収益の見込みがなかったり、そもそも不動産といった収益性がある財産を持っていなかったりする場合は、家族信託を結ぶ必要がない可能性があります。
例えば下記のケースです。

  • 委託者の自宅や所有するアパートの貸付・売却などの予定がない
  • 親の認知症によって凍結される財産がない、もしくは凍結しても困らない
  • 親の介護や治療、生活、施設への入居などの出費に関して信託財産の収益を当てにしていない
  • 相続に関しては遺言で十分に対応できる など

2-5.生前贈与などで資産譲渡が完了しているケース

例えば、生前贈与によって受託者にしたい人への財産譲渡や名義変更がすでに完了している場合、あるいはその予定がある場合は、家族信託を新たに結ぶ必要はありません。

「家族信託と生前贈与、どちらが良いのか?」という疑問が湧くかもしれません。それぞれには独自のメリットとデメリットがあるため、状況に応じて選択することが重要です。なお、家族信託と生前贈与のどちらも、一方が認知症やそのほかの病気などで判断能力がなくなると契約を締結できません。

家族信託 生前贈与
財産の管理 ・受託者
・委託者(受益者)が受託者へ意見できる
・贈与された者
・贈与した側の意見に関係なく財産を管理できる
かかる税金 ・贈与税(※)
・相続税
・登録免許税(家屋評価額0.4%)
・贈与税
・不動産取得税
・登録免許税(家屋評価額2%)
契約終了の条件 家族信託契約の終了 贈与した側への再贈与や売買
詳しい専門家 少ない 多い

※委託者と受益者が違う人物であるとき(他益信託)は課せられる可能性がある

2-6.資産より身の回りの管理をしてほしいケース

家族信託で管理できるのはあくまで信託財産に関わる範囲のみです。例えば、認知症になった方の介護や治療、生活、施設への入居などの法律行為は代行できません。こうしたケースに対応できるのは、「身上監護」がついている成年後見制度(法定後見制度と任意後見制度)になります。

もし親の認知症対策で「お金や不動産だけでなく、毎日の生活や介護関係などに関する法手続きを自分でしたい、もしくは信頼ある人に任せたい」という場合は、成年後見制度の利用も検討しましょう。とはいえ多くの介護・医療施設では身上監護がなくても、サービスを受ける本人の家族で近くに住んでいるときは手続きの代行を認めています。

2-7.信託できない財産が多いケース

家族信託を考える際には、自分の持っている財産が信託財産にできるかどうかを確認することが重要です。実は、信託できない、もしくは信託するのが難しい財産があります。

デメリット④でも解説していますが、農地や年金は信託財産とすることができないため、例えば年金だけで生活している方などは家族信託ではなく、成年後見制度の利用のほうが有用でしょう。

3.家族信託をすべきケースとは?

これまでに多くの家族信託のデメリットを見てきましたが、それでも家族信託を検討すべきケースが存在します。家族信託は、特定の状況下で非常に有効な財産管理手段です。以下では、家族信託が特に有用であり、検討すべきケースについて詳しく説明していきます。

3-1.家族だけで財産を柔軟に管理したいケース

家族だけで財産を柔軟に管理したい場合、家族信託は非常に有効な手段となります。成年後見制度では、家庭裁判所が関与し、専門家が後見人として選ばれることが一般的です。後見人が財産管理を行う場合、財産の売買や大規模な修繕などの重要な決定には、家庭裁判所の許可が必要です。

一方、家族信託を利用すれば、家族内の信頼できる人に財産管理を任せることができます。信託契約に基づいて財産の管理・運用・処分を行うため、家庭裁判所の許可を待つことなく迅速に対応できます。

さらに、家族信託では信託財産の使い道を詳細に規定することができるため、家族のニーズに合わせた柔軟な財産管理が可能です。例えば、生活費や医療費の支払い、特定の教育資金の確保など、家族の状況に応じた管理ができます。

3-2.孫世代の相続や引き継ぎたい財産がある

通常の遺言や生前贈与では、一次相続人(子供や配偶者)に対しては財産の引き継ぎは可能ですが、その後の二次相続については指定できません。つまり、一度財産を受け取った人が亡くなった後、その財産が誰に渡るかを事前に決めることができないのです。

もし、子供や配偶者の後、相続させたい相手がいる場合には、家族信託は非常に有効な手段となります。家族信託の「受益者連続型信託」を利用することで、子供や配偶者だけでなく、孫やひ孫といった複数世代への相続先を指定することができます。これにより、委託者は自身の財産が直系の家族だけでなく、将来の世代にも確実に継承されるよう指定することができるのです。

代々継いでいってほしい土地や財産についての相続先を決められるのは、家族信託が備える有効な機能の一つです。ご家庭でそういった要望がある場合は家族信託を検討したほうがいいでしょう。

3-3.共有不動産による管理を楽にしたい

兄弟姉妹などが共同で所有する不動産を持っている場合、管理や売却などの手続きにも全員の同意が必要になります。特に一人でも意思決定能力が欠けてしまうと、管理や売却などの手続きをすることが困難になり、資産凍結のリスクにつながります。

家族信託は、委託者から受託者に管理権限を委託することができる制度です。家族信託を活用し、特定の代表者(受託者)に不動産の管理や運営の決定権を集中させれば、共有者が認知症になっても手続きが停滞することなく進められます。さらに、受託者が管理する不動産から得られる収益は、信託契約に基づき、他の共有者にも公平に分配されるため、全員の利益を守ることもできるのです。

3-4.事業承継を円滑にしたい

家族信託は、金銭や不動産だけでなく、事業関連財産の管理にも利用できるため、事業承継を円滑に進めるための強力なツールとなります。

例えば、創業オーナーが持つ自社株式を信託財産として設定することで、事業の継続性を確保しながら、スムーズな株式の承継や事業継承計画を立てることが可能です。委託者が認知症などで意思疎通が難しくなった場合でも、受託者が経営決定権を持続的に行使できるため、事業の安定性を保つことができます。

家族信託は、経営者の意向に沿った事業の継承を実現するための有力な選択肢となります。事業承継計画を立てる際には、家族信託の利用を検討し、専門家のアドバイスを受けながら最適な方法を選択しましょう。

4.動画解説|家族信託がデメリットとは?

5.まとめ

  • 家族信託にはメリットがある反面、デメリットも多くある
  • デメリットを考慮したうえで対策を取り入れた家族信託契約を結ぶことが重要
  • 家族信託を導入する際は、受託者への権限集中やほかの家族との話し合いに注意しながら家族の同意をとり、親族間で争いが起きないように将来の財産管理、資産承継の道筋をつくるべき
  • 認知症対策や共有不動産の問題解消、次の世代への確実な継承など家族信託だからこそ柔軟な対応ができるケースもある
  • 家族信託は今後も判例や実務が変わっていく可能性があるので、実績経験が豊富な専門家と相談しながら進めていくべき

家族信託を行うことにより、成年後見制度に変わる財産管理と遺産承継への新たな選択肢の一つとしてのメリットがあります。その一方で、2007年に信託法が改正され実務が徐々に普及はしていますが、まだ歴史がないため遺言や生命保険の分野のような法務・税務について判例などの積重ねがないことから法解釈が確定していなく、予期していたものと異なる解釈に覆る可能性もあるのです。

そのため、導入にあたっては、信託法や相続税法などにしたがってそのメリットとデメリットを考慮して、家族全員で合意形成をしたうえで、家族信託の設計をしていく必要があります。

そのうえで、メリット・デメリットを考慮し、やるのか?やらないのか?を家族で話し合いをすることで、いままでにはなかった有益な家族会議をすることができるかもしれません。選択肢は多いに越したことはありません。導入せずとも検討することは可能です。是非一度検討してみてはいかがでしょうか?

当事務所では家族信託関連の相談から解決まで数多くの経験と実績を積んできました。350件を超える信託形成の実績と日々のアップデートにより、適切な家族信託締結をサポートします。また1年に1回定期的な連絡といったアフターフォローも忘れません。

家族信託について不安やお悩みがある方はぜひ気軽にご相談ください。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

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