親が認知症になったら相談はどこにする?家族の介護や相続に関する相談先を解説

認知症の相談先を知ることは、家族の介護や将来に備えるために欠かせません。本記事では、医療・介護の相談窓口、同じ悩みを持つ人々との交流の場、相続に関する専門家の相談先まで幅広く紹介します。早めの相談と適切な支援を受けることで、認知症の方とその家族の生活の質を向上させ、不安を軽減できます。一人で抱え込まず、さまざまな相談先を活用しましょう。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

  • 親や家族の認知症が疑われる場合の主な相談先は、かかりつけ医」「認知症コールセンター・若年性認知症専用コールセンター」「地域包括支援センター」「認知症疾患医療センター」「認知症学会専門医」「日本老年精神医学会専門医の6つである
  • 認知症の家族を持つ人にとって、同じ経験を持つ人々との交流や専門家からのアドバイスが重要であり、その主な相談先として認知症カフェ」と「認知症の人と家族の会がある
  • 法律や税務の専門知識が求められた際の主な相談先として、「司法書士」「行政書士」「税理士」「弁護士」がある
  • 認知症・介護の重要なポイントは、「一人で抱え込まない」「早期に相談する」「各種制度やサービスを活用する」ことである
  • 持続可能な介護環境を整えつつ、介護者自身の生活の質も維持することが大切である

早期の相談と適切な支援を受けることにより、認知症の方とその家族における生活の質が向上し、将来の不安も軽減します。一人で抱え込まずに、さまざまな相談先を活用しましょう

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1.親や家族の認知症に関する行政・医療機関の相談先

親や家族の認知症が疑われる場合、適切な相談先を知ることが重要です。ここでは、6つの相談先を取り上げます。

  • かかりつけの医師
  • 認知症コールセンター・若年性認知症専用コールセンター
  • 地域包括支援センター(高齢者総合相談センター)
  • 認知症疾患医療センター
  • 認知症学会専門医
  • 日本老年精神医学会専門医

以下で、それぞれについて解説します。

1-1.かかりつけの医師

家族の認知症が疑われた場合、かかりつけ医に相談してみましょう。認知症は早期対応が重要であり、適切な診断と治療が病状の進行に大きく影響します。かかりつけ医は患者の日常的な健康状態を把握しており、必要に応じて専門医療機関への紹介もしてくれます

かかりつけ医がいない場合や、かかりつけ医での対応が難しい場合は、近くの認知症診断ができる医療機関に相談しましょう。脳神経外科や心療内科の受診も有効ですが、近年では、認知症の専門診断が可能な「もの忘れ外来」を併設した医療機関や「認知症疾患医療センター」が増えています。こうした施設を利用するのもおすすめです。

1-2.認知症コールセンター・若年性認知症専用コールセンター

認知症の疑いがある症状に気づいたり、介護に悩んだりした際に頼れる主な相談窓口は、以下のとおりです。 

電話相談 認知症に関する電話相談 若年性認知症専用コールセンター
公益社団法人 認知症の人と家族の会 認知症介護研究・研修大府センター
特徴
  • 年間4,000回以上開催される「つどい」で介護家族や認知症の本人が交流する場を提供
  • 経験豊富な相談員が本部や各都道府県支部で電話相談に対応
  • 無料で利用でき、症状や介護、就労など幅広い相談に対応
  • 必要に応じて地域の支援機関とも連携
  • 若年性認知症に関する専門知識を持つスタッフが対応し、無料で的確なアドバイスや情報を提供
  • 症状や介護方法、就労問題など、幅広い相談内容にも対応
  • 地域の支援コーディネーターや適切な支援機関との連携も行い、家族や介護者の悩みにも対応
  • 最新の情報や支援制度について発信
フリーダイヤル 0120-294-456

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備考 このほか、全国47都道府県の支部でも相談可能 65才未満の認知症の人やその家族の相談

参考:認知症に関する相談先(厚生労働省)

症状が軽い段階のうちに認知症であることに気づき、適切な治療が受けられれば薬で認知症の進行を遅らせられることもあります。一人で悩まず、まずは相談してみましょう。

1-3.地域包括支援センター(高齢者総合相談センター)

地域包括支援センターは、高齢者や認知症の方やその家族のさまざまな相談に対応し、必要な支援を提供する専門施設です。

保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などの専門職員が在籍しており、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるようサポートしています。

また、全ての市町村に設置されており、どこに相談すれば良いか迷ったときでも、状況に適したサービスや機関につないでくれるため、まずは相談してみることをおすすめします

1-4.認知症疾患医療センター

認知症疾患医療センターは、認知症に関する専門的な医療相談や鑑別診断を提供し、地域の保健医療や介護機関と連携する拠点です。専門の相談員は、本人や家族からのさまざまな認知症に関する相談に応じ、地域包括支援センターなどと協力して問題に対応します。

専門医による詳細な鑑別診断を行い、認知症診断のための検査や診察を実施し、その診断に基づいた治療や初期対応も主な業務の一つです。また、幻覚、妄想、徘徊などの認知症の周辺症状や合併症にも対応しています。

認知症疾患医療センターは、都道府県および指定都市に設置されています。東京都の場合は、以下の通りです。

参考:東京都認知症疾患医療センター一覧(東京都福祉局)

1-5.認知症学会専門医

認知症学会専門医とは、日本認知症学会が認定する、認知症医療に関する高度な知識と経験、技術を有する医師です。認知症学会専門医は知識、経験が裏付けされているため、安心して相談できるでしょう。

認知症学会専門医は、厳しい認定プロセスを経て認められた信頼できる専門家です。認知症に関する相談や診療を安心して任せられる医師として、患者とその家族にとって心強い存在といえます。認知症学会専門医は、インターネットで検索できます。

参考:日本認知症学会認定専門医(日本認知症学会)

1-6.日本老年精神医学会専門医

日本老年精神医学会は、高齢者医療の向上および保健・福祉への貢献を目的として、優れた医師を認定する組織です。そして、老年精神医学会専門医とは、老年精神医学についての優れた学識、高度な技能、倫理観を備えた臨床医として日本老年精神医学会から認められた医師です。

老年精神医学会専門医への相談は、専門的な診療や治療を求める方に適しています。老年精神医学会専門医は、認知症学会専門医と同様に、インターネットで検索できます。

参考:高齢者のこころの病と認知症に関する専門医検索(日本老年精神医学会)

2.認知症の家族を持つ人の話を聞ける相談先

認知症の家族を持つ人にとって、経験を同じくする人々との交流や専門家からのアドバイスは大きな支えです。「認知症カフェ」や「認知症の人と家族の会」は、そのような交流や相談の場を提供しています。

これらの場所での情報交換や悩みの共有は、孤立感の軽減や介護負担の軽減に役立つことでしょう。ここでは、それぞれについて紹介します。

2-1.認知症カフェ

「認知症カフェ」は、認知症の家族を持つ人にとって貴重な相談先です。ここでは、当事者や家族だけでなく、地域住民や医療専門職など誰でも参加できるため、貴重な情報交換や交流の場となっています。

また、介護福祉士や看護師などの専門家も参加していることが多く、専門的なアドバイスを得られることもメリットです。月1〜2回程度の開催で費用も手頃なため、気軽に参加できます。

認知症カフェについて詳細な情報を知りたい場合は、地元の市役所や地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。自宅から近い場所も便利ですが、運営する団体によって提供されるサービス内容が異なるため、比較して選ぶことをおすすめします。

2-2.認知症の人と家族の会

「認知症の人と家族の会」は、認知症に関する相談受付や情報発信を行う公益社団法人です。1980年から活動を続け、全国47都道府県に支部を持つ歴史ある団体です。

会員は認知症患者や介護に携わる家族が多く、同じ悩みを持つ人々が交流し情報交換できる場を提供しています。また、フリーダイヤルによる電話相談窓口を設置しており、認知症に関する知識や介護の仕方などを相談できます。「家族の会」への入会は、介護家族、認知症の本人だけでなく、だれでも登録可能です。困ったときには、最寄りの支部へ気軽に相談できる安心感があります。

参考:ひとりで悩まないで 認知症のこと(認知症の人と家族の会)

3.認知症の親や家族の相続・財産管理に関する相談先

認知症の親や家族の相続問題は、法律や税務の専門知識が必要となる複雑な問題です。適切な専門家に相談することにより、スムーズな相続手続きや財産管理が可能です。

司法書士・行政書士・税理士・弁護士など、それぞれの専門家が異なる役割を担っています。ここでは、相続に関する主な相談先とその特徴を紹介し、状況に応じた適切な専門家の選び方を解説します。

3-1.司法書士

司法書士は、登記や相続に関する専門家です。不動産登記や遺産管理業務をはじめとして、遺言書作成や家族信託(注1)の利用など、相続発生前の生前対策にも精通しています。

特に多くの司法書士は、家族信託に関する専門知識を有しており、オーダーメイドの契約書作成において条項の不備によるトラブルを防げます。家族信託制度は比較的新しく、関連する判例も少ないため、契約の作成には細心の注意が必要です。経験豊富な司法書士は、法的リスクを最小限に抑えた信託契約の作成をサポートできます。

また、不動産実務にも詳しく、相続財産の中で大きな割合を占める不動産の取り扱いについて適切なアドバイスができます。さらに、相続手続きの全体を見渡し、最後の手続きまで意識した解決方法を提案できる点も司法書士の強みです。

注1:所有する財産(信託財産)を、信頼できる家族に託し財産管理ができる制度

弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、4000件を超えるお問い合わせ対応の実績があります。経験豊富な専門家に相談し、適切な家族信託を設計することで、将来のリスクを減らし、安心して財産管理を行うことができます。無料相談を随時受け付けておりますので、ぜひご利用ください。

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3-2.行政書士

行政書士は、相続に関する相談先の一つです。特に遺産分割に争いがなく、不動産が含まれない相続案件の相談に適しています。主な業務として、必要書類の収集や遺産分割協議書の作成があります。また、車の名義変更など、特定の財産に関する手続きも得意分野です。

行政書士の強みは、行政に提出する書類や事実証明に関する書類の作成・提出手続きにあります。さらに、遺言書の作成や証人、家族信託における信託契約書の作成なども行えるため、相続の事前対策に役立ちます。

3-3.税理士

税理士は税の専門家として、相続における重要な役割を果たします。相続が発生した際、遺産総額によっては相続税の申告が必要です。税理士は、「相続税がかかるかどうか」「どれくらいの税額が発生するか」「節税の方法」についてのアドバイスができます。また、相続税の申告手続きの代行も可能です。

また、節税だけでなく親族間のトラブルを避ける分配方法にも配慮しなければなりません。そうした際には、税理士のアドバイスが貴重なものとなります。

3-4.弁護士

弁護士は、相続に関するトラブル解決の専門家です。特に遺産分割を巡る家族間の紛争や、調停・裁判の代理人を務めます。

遺産の分け方について争いが予想される場合や、遺留分の請求問題が発生した場合には弁護士に相談するとよいでしょう。

また、使い込まれた遺産の取り戻しや相続放棄の手続きも扱います。ただし、弁護士の費用は他の専門家に比べて高くなる傾向にあるため、その点には留意しておきましょう。

4.親や家族の認知症・介護に関するポイント

認知症・介護に関する主なポイントは、以下の3つです。

  • 一人で頑張りすぎない
  • 相談はなるべく早く行う
  • 各種制度やサービスを頼る

ここでは、それぞれについて解説します。

4-1.一人で頑張りすぎない

認知症介護においては、「一人で頑張りすぎない」ことが極めて重要です。介護は身体的・精神的負担が大きく、家族だけで抱え込むと介護者の健康を損ない「介護うつ」を引き起こすおそれがあります

結果として、要介護者との共倒れにつながる可能性も高まります。長期的に持続可能な介護を実現するためには、外部の支援を積極的に活用し、負担を分散させるようにしましょう

介護サービスや地域のサポート体制を利用し、自分の時間も確保しながら、バランスの取れた介護環境を整えることが大切です。

4-2.相談はなるべく早く行う

認知症の早期発見・早期対応は極めて重要です。認知症になると、自分ではコントロールできない様々な問題に直面します。特に、財産管理に関する問題は、一度認知症になってしまうと後からどうすることもできません

例えば、不動産の売却や贈与、銀行口座からの引き出しなどが難しくなり、家族であっても自由に扱えないケースも生じることでしょう。また、詐欺に遭いやすく、大切な財産を失ってしまうリスクも高まります。
そうならないうちに、適切な治療を開始しなければなりません。症状が軽いうちであれば、進行を緩やかにし、場合によっては発症を遅らせることも可能です。

た、本人と家族に生活を見直す時間的余裕が生まれることによって、認知症と適切に向き合えるようになります。

近年の診断技術の進歩により、軽度の症状でも認知症を特定できるようになりました。気になる症状があれば、ためらわず早めに専門医を受診しましょう。早期の対応は、本人と家族の悩みや負担の軽減につながります。早期の相談は、将来の生活の質を大きく左右する重要な一歩です。

4-3.各種制度やサービスを頼る

認知症介護においては、各種制度やサービスを積極的に活用することが大切です。介護を全て自分で担おうとするのではなく、介護保険制度や関連サービスの利用によって負担軽減をはかりましょう。

介護者の負担軽減につながる主な介護サービスには、ホームヘルパーによる訪問介護」「専門スタッフによる訪問入浴介護」「デイサービス」「ショートステイなどがあります。

さらに、保険適用外のサービスも含め、地域包括支援センターや自治体の福祉課などから得た情報を活用して、持続可能な介護環境を目指しましょう。

5.まとめ

本記事では、親が認知症になった場合の相談先について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

  • 親や家族の認知症が疑われる場合の主な相談先は、かかりつけ医」「認知症コールセンター・若年性認知症専用コールセンター」「地域包括支援センター」「認知症疾患医療センター」「認知症学会専門医」「日本老年精神医学会専門医の6つである
  • 認知症の家族を持つ人にとって、同じ経験を持つ人々との交流や専門家からのアドバイスが重要であり、その主な相談先として認知症カフェ」と「認知症の人と家族の会がある
  • 法律や税務の専門知識が求められた際の主な相談先として、「司法書士」「行政書士」「税理士」「弁護士」がある
  • 認知症・介護の重要なポイントは、「一人で抱え込まない」「早期に相談する」「各種制度やサービスを活用する」ことである
  • 持続可能な介護環境を整えつつ、介護者自身の生活の質も維持することが大切である

親や家族が認知症になった際の相談先は多岐にわたります。医療面では、かかりつけ医や認知症専門医、認知症疾患医療センターが重要な窓口です。介護に関しては、地域包括支援センターや認知症コールセンターが相談に応じてくれます。

また、同じ悩みを持つ人々との交流の場として認知症カフェや認知症の人と家族の会があり、心理的サポートを得られるのは大きなメリットです。相続に関しては、司法書士・行政書士・税理士・弁護士などの専門家に相談することにより、法的・財務的な問題に対処できます。

重要なのは、一人で抱え込まず早めに相談すること、そして各種制度やサービスを積極的に活用することです。適切な情報と支援を得ることで、介護者自身の生活の質を保ちながら、よりよいケアを提供できます。認知症の家族を支える上で、これらの相談先を知り、活用することが大切です。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

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