戸籍法改正で全国どこの役所でも戸籍が収集できる!?

戸籍法改正で全国どこの役所でも戸籍が収集できる!?
この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに350件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

1.2024年に戸籍法が改正される!?

戸籍法改正ニュース

平成31年2月1日に戸籍法部会第12回会議において、「戸籍法の改正に関する要綱案」が決定されたというニュースがありました。

◆戸籍証明書、提出不要に結婚・年金受給など
◆相続時の戸籍謄本集め1カ所で請求OKに 24年から手続き簡略化

今から5年後のことになりますが、2024年に相続手続きで作業負担が多い、戸籍謄本、相続人確定作業が大きく変わる内容です。

2019年、2020年と相続法改正、遺言保管制度の創設と改正が目白押しですが、更に続いていきます。

今回の記事は、その改正内容についてお伝えします。

2.そもそも相続人確定のための戸籍請求とは?

役所での相続手続き

相続手続における、法務局での不動産の名義変更(相続登記)、税務署での相続税申告、金融機関での払い戻し手続きや年金事務所での手続きなど、相続発生後に様々な場面で戸籍謄本を要求されます。

手続きを行う法務局、税務署、金融機関などでは窓口にきた方が、本当に相続権を持っている相続人本人なのかわからないため、相続人であることを証明するために亡くなった方の出生から死亡までの戸籍と、相続人のつながりを証明するために相続人全員の戸籍を手続き上求められます。

これは法律上で規定されているもの、金融機関によって求められているものと、それぞれ根拠となる法律等は違いますが、概ね求められる書類はほぼ一緒です。

相続人を確定させないと、相続に関する法律関係を確定させることができないからです。

2-1.戸籍がどんなタイミングで作成される?

戸籍請求

戸籍は、「筆頭者」の本籍地である市区町村の役所に請求しなければなりません。
そして、本人の転籍、婚姻、離婚、コンピュータ化に伴う様式変更など、様々な事由によって戸籍が新たに作成されるため、戸籍を作った役所ごとに作成されていきます。

戸籍には原則、作成された期間中の情報しか記載されません。
過去に出生、離婚、養子縁組したなどの情報はその当時の戸籍を確認しなければわからないため、死亡時の戸籍から遡りながら、全ての役所から取り寄せるという手間暇が発生します。転籍など繰り返している人などは、数か所の役所で取り寄せる必要があるため、場合によっては戸籍を全て揃えるために1~3か月かかることもあります。

しかも、戸籍を一つ一つ専門的な知識をもとに戸籍を読み込まなければならないため、兄弟が多い、養子を迎えた、婚姻離婚を繰り返したなど、家族関係が複雑な家庭では、戸籍の数も多くなってしまうため、専門家でなければ読み込むことさえできないという状態も多くあります。

3.戸籍法改正の予定とその内容とは!?

戸籍法の改正は今国会に提出される予定で、要綱案が決定されました。

戸籍の広域交付制度が新設され、今までは、本籍地の役所で請求又は一部の地域だけですが、コンビニで現在戸籍を請求することができました。

今回の改正について日本経済新聞で下記の記事が掲載されました。

法制審議会(法相の諮問機関)の戸籍法部会は1日、マイナンバーを使い戸籍情報を管理するための法改正の要綱案をまとめた。結婚の届け出や年金受給に必要な戸籍の情報を全国で確認できる仕組みをつくり、戸籍謄本などの戸籍証明書の添付を不要にする。住所と本籍地が異なる場合も本籍のある自治体に出向く手間を省く。今国会に戸籍法改正案を提出する。

戸籍は全国約1900の市区町村が正本を管理しており、ほとんどの自治体は紙以外に電子データでも保存している。法務省は戸籍の副本データと、マイナンバーをひも付けするシステムをつくる。本籍地ではない自治体でも、マイナンバーカードやマイナンバーを提示するだけで戸籍情報を照会できるようにする。

マイナンバーの番号を伝えれば、戸籍証明書の取得なしに婚姻届の提出や養子縁組、パスポート(旅券)の発給申請、年金や児童扶養手当などの受給申請をできるようにする。相続などの際には近くの自治体の窓口で戸籍証明書を発行できる。引用元:日本経済新聞HP2019/2/1 23:00

上記の記事のとおり、2024年を目途に全国の市区町村の役所で現在戸籍と除籍を取り寄せることができます。
呼び方も、今までは戸籍謄本、除籍謄本と呼んでいましたが、改正されたのちは、今後は戸籍証明書、除籍証明書と呼ぶそうです。

僕も、この要綱案を読み解いていて、“???”という疑問点がたくさんつきましたが、他の制度を応用していることに気付きました。

3-1.戸籍法改正は登記情報システムをモデルにしている!?

不動産関係の仕事をしている方だとよく取り扱っている登記情報です。
登記情報も以前は登記簿が帳簿(バインダー)時代には、不動産の所在地を管轄する法務局でしか、請求できませんでした(今でもコンピュータ化前の閉鎖謄本は、現地の法務局でしか取得できません)。しかし、今では法務局間がネットワークで連携しており、どこの法務局でも全国の不動産の登記事項証明書を取り寄せることができます。

従前は登記簿謄本といっていましたが(名前の名残は残っています)、現在では登記記録のデータ化に伴い、登記事項証明書といいます。
この流れと同じく戸籍も戸籍謄本から戸籍証明書にかわっていくということです。

戸籍法の改正に関する要綱案では、“磁気ディスクをもって調整された戸籍又は除かれた戸籍の副本は、法第8条第2項の規定に関わらず、法務大臣がこれを保存するものとする。”と記載されています。

今までは、市区町村が戸籍の正本を法務局が副本を管理していましたが、このデータを法務大臣が保存するものとされています。
データ化されていることから、登記事項証明書と同じく、戸籍証明書も全国の市区町村で、地方の役所の戸籍も取り寄せすることができるという流れです。

請求する際は、マイナンバーカード等の写真付き身分証明書の提示の上、請求することになるようです。
今後の詳細な取り扱いはこれから詰めていくのでしょう。

しかし、今後、最寄りの役所で、登記事項証明書と同じく役所の職員と相談しながら、1つの窓口ですべて完結する時代が訪れます。
被相続人の出生から死亡までの戸籍や相続人の戸籍というように、今まで取り寄せるのにものすごく時間がかかっていた作業が1日で終わるようになるので、これは、一般の方にとっても、手続きを請け負う士業・専門家にとっても効率化が図れ、便利になります。

手続きが必要な法務局、金融機関などの最寄りの市役所で戸籍を収集して、そのまま手続きができるといった利用も想定できます。

4.戸籍謄本の添付省略、マイナンバーの紐づけは!?

手続き簡略

役所同士で情報が交換されるので不動産登記手続きなどにおける会社謄本などの取り扱いと同様に、婚姻届けなど戸籍謄本の提出が要求される手続きにおいても、戸籍謄本を提出が不要とさます。また、電子的な戸籍証明情報も発行できるようです。

電子的な戸籍証明情報がどういう取り扱いになるかは、今後の動向次第。

しかし、今後の活用方法次第では、効率化できる部分が多くなってくると思います。

マイナンバーと紐づけするかという部分については、要綱案では、個人番号(マイナンバー)を利用しないと明記されています。
個人的には、紐づけたほうが、2年前に行政手続きがオンライン化されているIT先進国エストニアで視察してきたような相続手続き、申告、すべての手続きについて徹底的な効率化が図れるので、役所の無駄な仕事も減っていいと思うのですが、マイナンバーを利用せず、所要の整備を行うようです。

ですので、マイナンバーと紐づけがされない結果、いずれの改正も、従前どおり、役所から取り寄せした戸籍の読み解き、相続関係図の作成などは行う必要はありますし、その関係図作成のために専門家の手助けをしてもらう必要があるなどの負担は残りそうです。

僕のような専門家にとってみれば、格段に業務効率が図れるようになるし、従前の登記情報の改正と同じく、調べる作業の時間短縮が図れる分、お客様とのコミュニケーションや面談などにあてることができ、より本来やるべき業務に集中できる時間をつくれるので、改正はどんどん進めていってほしいです。

5.まとめ

  • 戸籍法の改正により2024年以降、収集業務がどの役所でもできるようになり利便性が確実にあがる
  • 実際の実務での運用はこれから整備されていく
  • 戸籍の取り寄せが全国の役所でできるようになるが、実際の複雑な戸籍の読み取りなどについては専門家に依頼しなければ難しいという手続き負担は残る

改正は2024年以降の見込みです。
それまでに発生した相続手続きについては従前どおり、
その戸籍の本籍地の役所で取り寄せる必要があるので、注意してください。


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