相続における遺産分割協議書とは?自分で作成する際の書き方や流れを解説

遺産分割協議書は、相続において重要な役割を果たします。特に親族が亡くなった後、相続手続きが始まると、家族間での意見の食い違いを避けるためにも協議書の作成が必要です。

協議書には具体的にどのような項目を盛り込むべきか、また作成時の注意点は何かを知ることは、スムーズな相続手続きを進めるうえで非常に重要です。

本記事では、遺産分割協議書とは何か、どのように作成するか、具体的な流れや書き方について解説します。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

  • 遺産分割協議書は、相続手続きで重要な役割を果たし、家族間でのトラブル防止や円滑な手続きを進める手助けになる
  • 遺産分割協議書には、相続財産の分割内容や相続人全員の合意を明確に記載する
  • 遺言書がある場合でも、遺産分割協議書を作成することで、遺言とは異なる内容で分割することも可能である
  • 専門家の助言を受け慎重に作成することで、トラブルを回避し、書類の有効性を確保できる
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1.遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、被相続人の残した財産を、法定相続人がどのように分割するかを具体的に記載した書類です。遺産分割協議書は法的に必須ではありませんが、作成することで相続に関するトラブルを未然に防ぎ、金融機関や法務局での各種手続きを円滑に進める手助けとなります。

相続手続きが始まると、家族間での意見の食い違いが発生することも少なくありません。遺産分割協議書を用意することで、各相続人の同意内容が明確になり、将来的な紛争の予防にもつながります。

1-1.遺産分割協議書を作成しないリスク

遺産分割協議書を作成しない場合、相続人間で意見の相違や誤解が生じ、感情的な対立に発展することがあります。また、金融機関や法務局での手続きが滞り、預貯金の解約や不動産の名義変更などがスムーズに進まなくなるおそれもあるでしょう。

こうしたトラブルが重なると、相続手続きが遅れ、財産の分配が適切に行われないリスクも高まります。そのため、協議書を作成して相続人全員の合意内容を文書化することが、後々の紛争防止に有効です。

1-2.遺産分割協議書をいつまでに作成するべきか

遺産分割協議書の作成には、法的な期限はありませんが、相続税の申告期限である被相続人の死亡後10か月以内に作成することが推奨されます。相続税の申告期限を過ぎると、税の軽減措置を受けられない場合があるためです。

また、不動産や預貯金の名義変更などの手続きが遅れると、利息や管理費が発生することもあり、不利益となる可能性があります。不動産の相続登記については、取得を知った日から3年以内の申請が2024年4月から義務化されています。

そのため、早めに協議を行い、合意にいたった場合には、速やかに協議書を作成することが重要です。放置すると手続きが煩雑化し、家族間のトラブルの原因にもなるため注意が必要です。

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2.遺産分割協議書を使用する主な手続き

遺産分割協議書は、相続手続きを円滑に進めるために必要な書類です。遺産分割協議書があることで、以下の手続きがスムーズに行えます。

・不動産の名義変更(相続登記)
不動産を相続する際には、所有者を変更する「相続登記」が必要です。法務局で手続きする際、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が求められます。

・預貯金の払い戻し・名義変更
銀行口座にある預貯金を解約や名義変更をする際には、金融機関ごとに遺産分割協議書を求められる場合があるため、事前確認が必要です。

・株式・有価証券の名義変更
故人が保有していた株式や投資信託を相続する際にも、証券会社や信託銀行に遺産分割協議書の提出が必要です。

・自動車の名義変更
故人が所有していた自動車の相続には、運輸支局での名義変更手続きが必要です。その際も、相続人間の合意を証明する遺産分割協議書の提出が求められます。

・相続税の申告
相続税の申告と納付は、遺産総額から借金や葬儀費用を差し引いた額が基礎控除を超える場合に必要です。相続発生の翌日から10ヶ月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署へ申告・納付を行わなければなりません。その際に、遺産分割協議書の写しの提出が求められます。

3.遺産分割協議書が必要なケース・不要なケース

遺産分割協議書は、すべての相続で必要というわけではありません。相続の状況や財産の内容によって、作成が必要な場合と不要な場合があります。

区分 内容
必要なケース
  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 預貯金の名義変更・解約払戻し
  • 株式・有価証券の名義変更
  • 自動車の名義変更
  • 相続税の申告をする場合(特例の適用など含む)
  • 相続人間のトラブルが想定される場合
不要なケース
  • 相続人が1人しかいない場合
  • 有効な遺言書がある場合
  • 法定相続分どおりに分割する場合(ただし、実務上は書類提出を求められることもあり)

以下では、それぞれについて解説します。

3-1.遺産分割協議書が必要なケース

遺産分割協議書が必要なケースは、主に以下のとおりです。

・不動産の名義変更(相続登記)
相続によって土地や建物を取得した場合、法務局で所有者の変更手続きが必要です。その際、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書を求められます。

・預貯金の名義変更・解約払戻し
故人の銀行口座にある預貯金を引き出す際、金融機関により遺産分割協議書の提出が必要となることがあります。

・株式・有価証券の名義変更
株式や投資信託の相続には、証券会社や信託銀行での名義変更手続きが必要です。その際にも遺産分割協議書の提出が求められます。

・自動車の名義変更
故人が所有していた車を相続する場合、運輸支局で名義変更を行う必要があります。この手続きにも、相続人間の合意を証明する遺産分割協議書が必要です。

・相続税の申告をする場合
遺産が基礎控除額(3,000万円+法定相続人数×600万円)を超える場合には、申告義務が発生します。また、法定相続分とは異なる分け方をするケースや、配偶者控除・小規模宅地等の特例の適用を受ける場合には、分割内容を証明する書類として遺産分割協議書の写しの提出が求められます。

・相続人間のトラブルが想定される場合
相続では、当事者間の意見が対立するケースも少なくありません。口約束や非公式な取り決めでは、後々「聞いていない」といった争いに発展する可能性があります。
遺産分割協議書は、相続内容の証拠となるため、トラブルを未然に防ぐ効果があります。特に、財産の総額が大きい場合や相続人の人数が多い場合には、協議書を作成しておくことが重要です。

3-2.遺産分割協議書が不要なケース

遺産分割協議書が不要なケースは、主に以下のとおりです。

・相続人が1人しかいない場合
相続人が1人しかいない場合には、協議の相手が存在しないため、協議書の作成は不要です。相続放棄や欠格、廃除によって結果的に相続人が1人になった場合も同様です。ただし、相続人が1人であることを証明するために、戸籍などの書類が必要となります。

・遺言書がある場合
遺言書がある場合も、協議書が不要となることがあります。遺言書の内容に基づいて相続手続きを行うため、別途協議を行う必要がありません。不動産の名義変更や相続税の申告においても、協議書の代わりに遺言書を提出できます。

・法定相続割合で相続する場合
法定相続割合での遺産分割では原則として協議書は不要です。ただし、実務上は不動産登記や預貯金解約の際に相続人全員の合意を示す書類として求められることが多くあります。
また、相続税申告で配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を利用するためには、遺産分割の確定証明として協議書が必要です。そのため、法定相続分どおりであったとしても、手続きの円滑化や税制上のメリットのために協議書の作成が望ましいでしょう。

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4.遺産分割協議書を守らない相続人の対処方法

遺産分割協議書は原則として撤回できないため、協議書に反する行動をとる相続人がいる場合には、早めに法的措置を検討する必要があります。

まずは当事者間で話し合いを行い、履行を促します。ただし、すでに関係が悪化している場合は、合意にいたるのは難しいでしょう。

話し合いで解決できないときは、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。裁判所が仲介し、解決に向けた話し合いの機会を設けます。ただし、相手が調停に応じない場合には調停不成立となる可能性も視野に入れておく必要もあるでしょう。

調停が不調に終わった場合は、訴訟の提起によって履行の請求が可能です。遺産分割協議書は法的な証拠として有効であり、裁判での勝訴により強制的な履行もできます。

5.遺産分割協議書作成の流れ

遺産分割協議書作成の流れは、以下のとおりです。

ステップ 内容 ポイント
1. 遺言書の有無の確認 被相続人の遺言書の有無を確認する
  • 遺言があれば、協議不要の場合あり
  • 形式確認・必要手続き実施
2. 法定相続人・相続財産の確定 法定相続人と相続財産の範囲を正確に確定する
  • 戸籍で相続人特定
  • 全財産(資産・負債)を調査・リスト化
3. 遺産分割協議の実施 法定相続人全員で遺産の分割方法を話し合う
  • 誰がどの財産を取得するか具体的に決定
  • 全員の合意形成
4. 遺産分割協議書の作成 全員で合意した内容を遺産分割協議書にまとめる
  • 誰がどの財産をどれだけ取得するか明確に記載
  • 後の手続きで使用

以下で、それぞれ見ていきましょう。

5-1.遺言書の有無の確認

遺産分割協議書を作成する前に、まず遺言書の有無の確認が重要です。被相続人が遺言書を残している場合、その内容に基づいて遺産を分けるため、遺産分割協議が不要となることがあります。

遺言書には公正証書遺言や自筆証書遺言などの形式があります。公正証書遺言の有無は全国の公証役場で検索・確認が可能です。

自筆証書遺言については、まず法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用しているか確認しましょう。法務局に保管されている場合は、家庭裁判所での検認は不要です。法務局以外(自宅など)で自筆証書遺言が見つかった場合には、家庭裁判所での検認手続きが必要になります。

遺言書が見つからなかった場合には、法定相続人全員による遺産分割協議を行い、協議書を作成する必要があります。遺言書の確認を怠ると、後の相続手続きに支障をきたす可能性があるため、最初の段階で確実に確認しておきましょう。

5-2.法定相続人・相続財産の確定

遺産分割協議書を作成する前に、法定相続人と相続財産の範囲を正確に確定することが重要です。確認を怠ると、協議が無効になったり、後日紛争に発展したりする可能性があります。

相続人を確定するには、被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集し、家族関係を正確に読み解く必要があります。

ただし、戸籍が改製されていることも多く、調査には時間と労力を要してしまうでしょう。誤りがある場合には、協議をやり直す事態になりかねないため、司法書士や弁護士など専門家への相談をおすすめします。

また、相続財産の調査も同時に進めなければなりません。不動産や預貯金などの資産に加え、借金といった負債も含めて全体を把握する必要があります。

通帳や登記事項証明書などを基に財産リストを作成し、申告漏れや思わぬ負債の相続を防ぎましょう。負債が多い場合は、相続放棄や限定承認といった選択肢もあるため、早期の情報収集が求められます。

5-3.遺産分割協議の実施

遺産分割協議は、すべての法定相続人が集まり、誰がどの遺産を取得するかを決定する重要な手続きです。

遺産分割協議は、必ずしも一堂に会する必要はなく、電話やメールを活用しても構いません。協議を円滑に進めるためには、事前に相続財産の一覧を作成し、各相続人がどの財産を取得したいかの希望を整理しておくことが重要です。

意見の食い違いを避けるため、協議の際には全員が納得できる形での合意を目指し、具体的な取得財産を明確にします。特に、金銭や不動産など価値の大きな財産については、慎重に話し合いを重ねるようにしましょう。

5-4.遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書は、相続人全員で合意した分割内容を明確にするための書類です。遺産分割協議書は、後の相続手続きで必要となるほか、相続人間の無用なトラブルを防ぐためにも作成が推奨されます。

遺言書がある場合でも、相続人全員が合意した場合には、遺言とは異なる内容で分割することも可能です。遺言書がない場合は、法定相続分が一つの目安ですが、協議によって柔軟に調整できます。

話し合いで合意にいたった内容は、漏れなく正確に遺産分割協議書へ記載しましょう。誰が、どの財産をどれだけ取得するのかを具体的に記します。

協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判という方法もありますが、時間や労力がかかるため、できる限り当事者間の話し合いで解決することが望ましいでしょう。

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6.遺産分割協議書の書き方・ひな形

相続人が3名いて、それぞれが預貯金・不動産・有価証券に分けて相続する場合の、遺産分割協議書のひな形例を紹介します。

遺産分割協議書

 令和〇年〇月〇日、〇〇県〇〇市〇〇町〇〇番地 東京 一郎の死亡によって開始した相続の共同相続人である東京 太郎、埼玉 花子および千葉 温子は、本日、その相続財産について、次のとおり遺産分割の協議を行った。

 相続財産のうち、下記の不動産は、法務一郎が相続する。

 この協議を証するため、本協議書を3通作成して、それぞれに署名、押印し、各自1通を保有するものとする。

 令和〇年〇月〇日

       東京都〇〇区〇〇町〇〇番地 東京 太郎 実印

       埼玉県〇〇市〇〇町〇〇番地 埼玉 花子 実印

       千葉県〇〇市〇〇町〇〇番地 千葉 温子 実印

1.預貯金
以下の預貯金は、すべて相続人 東京 太郎が相続する。
 〇〇銀行 〇〇支店
 普通預金 口座番号〇〇〇〇
 口座名義人 〇〇 〇〇

2.不動産
以下の不動産は、相続人 埼玉 花子が相続する。
 所 在 〇〇市〇〇町〇〇丁目
 地 番 〇〇番
 地 目 宅地
 地 積 〇〇.〇〇平方メートル

 所 在 〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番地
 家屋番号 〇〇番
 種 類 居宅
 構 造 木造かわらぶき2階建
 床面積 1階 〇〇.〇〇平方メートル
     2階 〇〇.〇〇平方メートル

3.有価証券
以下の株式は、相続人 千葉 温子が相続する。

 〇〇証券 〇〇支店 口座番号〇〇〇〇
 〇〇〇〇株式会社 普通株式〇〇〇〇株

4.埼玉 花子は、土地と建物の遺産を取得する代償として、千葉 温子に〇〇〇〇年〇〇月〇〇日までに、金〇〇〇〇万円を支払う。

5.本協議書に記載されていない遺産や、後に判明した遺産および負債については、相続人である東京 太郎がすべて引き継ぐものとする。

6-1.遺産分割協議書に記載が必要な項目

遺産分割協議書には、相続人全員の合意内容を明確に記載する必要があります。必要事項を網羅しておくことで、名義変更などの手続きがスムーズに行え、将来の紛争防止にも役立ちます。

まず、「遺産分割協議書」の表題を記載し、被相続人の氏名や住所などの情報を明記しましょう。そのうえで、相続人全員が分割内容に合意していることを記載します。続いて、各相続人が取得する財産(不動産、預貯金など)の内容と分け方を具体的に記載しましょう。

代償分割を行う場合は、金銭の支払方法や期限といった条件も明示する必要があります。債務の引き継ぎや後日判明した財産の取り扱いについても、必要に応じて定めておくと安心です。最後に、協議成立日を記載します。そのうえで、相続人全員が住所・氏名を自署し、実印を押すことで正式な書類としての効力を持ちます。

6-2.相続財産の項目の分け方・記載内容

相続財産を遺産分割協議書に記載する際は、財産の種類ごとに区分し、内容を正確かつ具体的に示すことが重要です。預貯金や不動産、有価証券、債務などは、それぞれ記載方法や注意すべき点が異なります。

記載が不十分な場合や、あいまいな表現が含まれていると、後に手続きの遅延や相続人間のトラブルを招くおそれがあります。スムーズな相続を実現するためにも、各財産の記載ポイントを理解しておきましょう。

6-2-1.預貯金

預貯金を分割する場合、金融機関名・支店名・口座番号を正確に記載しましょう。「すべて」と明記することで、対象外の口座が残るリスクを防げます

例えば、「〇〇銀行〇〇支店の普通預金(口座番号〇〇〇〇)はすべて、相続人Aが取得する」と具体的に記します。複数の口座がある場合は、漏れなく列挙しましょう。記載が不十分な場合、相続後に残高の確認や解約手続きで支障をきたすこともあるため注意が必要です。

6-2-2.不動産

不動産を相続する場合は、登記簿謄本の記載内容に基づいて、所在地や地番に地目、面積や建物の構造・階数などを正確に記載する必要があります。市区町村の表示だけでは不十分であり、地番や家屋番号まで漏れなく記載しましょう。

また、土地と建物が一体である場合でも、それぞれを別項目として記載することで、登記変更手続きが円滑に進みます。

6-2-3.有価証券

株式や投資信託などの有価証券については、証券会社名・支店名・口座番号・銘柄名・保有株数を明記する必要があります。

相続時には、取引明細書や残高証明書などを基に、記載内容に間違いがないかを慎重に確認しましょう。

有価証券は時価が変動するため、相続時点での評価額も把握しておくと、代償分割などを行う際の参考になるでしょう。あいまいな表現は避け、具体的な数量と情報を示すことが重要です。

6-2-4.債務や負債

債務や負債も相続財産の一部として、明確に記載する必要があります。住宅ローンやクレジットカードの未払金、個人間の借入金など、被相続人に関連するすべての負債を漏れなく把握し、誰が引き継ぐかを明示しましょう。

負債の内容や金額、返済期限なども記載しておくと、将来のトラブルを回避しやすくなります。不透明なままにしておくと、相続人同士で責任の所在を巡る争いに発展しかねないため、慎重に対応しましょう。

7.遺産分割協議書作成時のポイント・注意点

遺産分割協議書は、相続人同士の合意内容を証明する重要な書類です。ただし、作成には慎重な調査と正確な手続きが求められます。記載内容に不備があれば、無効となる恐れや、後々のトラブルに発展することにもなりかねません。

ここでは、遺産分割協議書の作成において押さえるべき注意点や、円滑に進めるためのポイントを解説します。

7-1.調査時や書類作成時に遺産の漏れがないよう注意する

遺産分割協議書を作成する際には、すべての遺産を正確に把握し、漏れがないようにしましょう。遺産に漏れがある場合には意図したとおりの分割ができず、後々トラブルになる可能性があります。

まず、故人の財産を徹底的に調査し、預貯金や不動産、有価証券さらには負債まで漏れなく確認しましょう。これらを確定したうえで、協議書に正確に記載します。

記載漏れや誤りがあると、遺産分割協議書を再度作り直す必要が生じることもあるため、慎重な対応が求められます。すべての相続人が合意した内容を反映することも忘れずに行いましょう。

7-2.書類作成後に内容変更は難しいため慎重に協議する

遺産分割協議書を一度作成すると、内容を後から変更するのは非常に難しくなります。すべての相続人が同意した内容でなければ、新たな協議や合意を得る必要があるため、時間と労力がかかってしまいます。

そのため、書類作成前には、相続人全員で十分に話し合い、すべての財産や負債の分割に関して合意を得ることが重要です。事前に慎重な協議を行い、後日変更が必要になるような問題を未然に防ぎましょう。

7-3.作成した状況によっては無効になる場合がある

遺産分割協議書は、特定の条件下で無効となる可能性があります。例えば、一部の相続人を除外して行われた遺産分割協議に基づいて作成された場合や認知症、知的障害、精神障害などで判断能力のない人が協議を行った場合です。

また、意思表示に錯誤があった場合など、民法上の要件により法律行為として無効と判断されることもあります。こうしたリスクを回避するためにも、相続に関する専門知識を有する専門家に相談しながら手続きを進めることが重要です。

7-4.トラブルを防ぐために相続人全員分を作成し保管する

遺産分割協議書は、相続人全員が署名・押印をして初めて有効なものとなります。そのため、すべての相続人が署名押印した原本をそれぞれが保管することによって、後々の紛争を防げます。

また、各自が写しを持っておくことで、原本の紛失や損傷があった場合でもスムーズな対応が可能です。全員が同じ内容について確認できる状態を保つことは、家族間での認識の食い違いによるトラブルの防止にもつながります。

7-5.遺産相続に強い専門家に相談する

遺産相続の手続き、特に遺産分割協議書の作成や相続人調査には、民法や相続税法といった専門的な法律知識が求められます。加えて、戸籍謄本の収集や解読、関係機関とのやり取りには多くの時間と労力を要します。

これらを不慣れな個人が進めようとすると、相続人に漏れが生じたり遺産分割協議書が無効となったりするリスクもあり、後々のトラブルにつながりかねません。

このような負担やリスクを避けるためにも、相続に精通した専門家に相談することが有効です。司法書士や税理士、弁護士などに依頼することで、豊富な知識と経験に基づいて正確かつ網羅的に調査を進めてもらえます。

依頼者は自身の生活に集中しながら、調査や書類作成を専門家に任せられることも、大きな利点です。さらに、遺産分割の方法や相続税の取り扱いなど、手続きを進める中で生じるさまざまな疑問にも柔軟に対応してくれます。

円滑で法的に有効な相続を実現するためにも、不安がある場合は早めに専門家への相談を検討するとよいでしょう。

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8.まとめ

本記事では、相続の流れや遺産分割協議書の書き方について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

  • 遺産分割協議書は、相続手続きで重要な役割を果たし、家族間でのトラブル防止や円滑な手続きを進める手助けになる
  • 遺産分割協議書には、相続財産の分割内容や相続人全員の合意を明確に記載する
  • 遺言書がある場合でも、遺産分割協議書を作成することで、遺言とは異なる内容で分割することも可能である
  • 専門家の助言を受け慎重に作成することで、トラブルを回避し、書類の有効性を確保できる

遺産分割協議書は、相続手続きを円滑に進めるために重要な書類です。家族間で意見の食い違いを避けるためには、協議書に必要な項目をしっかりと盛り込み、相続財産を正確に把握することが大切です。また、協議書の作成時には専門家に相談することで、トラブルの防止や書類の有効性を確保できます。慎重に協議を行い、全員が納得する形で作成することが成功の鍵となります。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

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