ATMで50万円引出しは預金凍結の危険|高齢者の引出し制限と対策ガイド

昨今、高齢者による大金の引き出しは、預金者保護の観点から金融機関の厳しい監視下にあります。知らずに引き出してしまうと、口座が凍結され、日常生活に重大な支障をきたす可能性があるので注意が必要です。

認知症の親の財産管理、そして詐欺被害の予防。これらの課題に直面する家族が増える中、ATMでの引き出し制限について、知っておくべき重要な情報をお伝えします。

記事のポイントは以下の通りです。

  • 高齢者の金融機関での本人確認が厳格化されており、認知症等で口座が凍結される可能性がある
  • 連日限度額を引き出すと、金融機関が不正利用の可能性を考えてチェックが入ってしまうため、銀行側にバレないように気を付ける必要がある
  • 預金凍結になった場合、基本的にはATMや銀行からの入出金や手続き・取引の一切ができなくなるため、本人が認知症の場合は子どもが困窮してしまう可能性がある
  • 家族信託や任意後見制度を活用して、親が認知症になっても信頼できる家族が預貯金口座を管理することができる

もし預金が凍結されてしまった場合の対処方法についてもこの記事で解説していきたいと思います。

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1.実例|毎日50万円引き出しで預金凍結

「父の入院費用を工面するため、毎日ATMで50万円ずつ引き出していました。まさか、こんなことになるとは…」

都内在住の長男は、認知症の父親の財産管理を任されていました。ある日、父の入院費用の支払いに備えて、連日ATMで引き出しを続けていたところ、銀行から一本の電話がありました。

突然の預金凍結

不審な取引と判断した銀行からの問い合わせに対し、長男は正直に「父が認知症で自分が管理している」と答えました。その結果、即座に口座が凍結され、生活費すら引き出せない事態に陥ったのです。

銀行の対応

銀行は成年後見制度の利用を勧めましたが、手続きには時間がかかります。その間、必要な支払いもままならない状況が続きました。

このような事例は決して珍しくありません。高額の引き出しは、たとえ正当な理由があっても、金融機関の厳重な監視対象となります。事前の対策なしでの大金の引き出しは、思わぬトラブルを招く可能性があるのです。

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2.銀行口座が突然凍結される4つのケース

事例のように銀行口座は突然凍結されるケースがあります。これは事前の心構えがない人にとって深刻な問題となります。実際にどのような場合に口座は凍結されてしまうのか、主な4つのケースを詳しく見ていきましょう。

2-1.高齢者の認知症による凍結

第一章の都内在住の長男のケースは、認知症の父親の入院費用のために毎日50万円をATMで引き出していたところ、口座が突然凍結されました。このように、認知症の発症が金融機関に判明した時点で、即座に預金口座は凍結措置が取られます。

認知症による口座凍結は以下の状況で発生します。金融機関は判断能力が欠けているとわかった時点で許可なく凍結しますので、十分に注意しましょう。

  • 家族からの申し出があった場合
  • 銀行窓口での対応時に判断能力の低下が確認された場合
  • 本人が名前や生年月日を言えない状況

2-2.名義人が死亡した場合

預金口座の凍結は、名義人の死亡を金融機関が把握した時点で行われます。多くの場合、相続人や親族からの連絡がきっかけとなります。

銀行が口座を凍結する理由は明確です。死亡時点での預金残高を確定し、相続人同士のトラブルを防ぐためです。ただし、凍結によって実家の家賃や光熱費など、自動引き落としの支払いが止まってしまいます。このような事態に備えるためにも、普段から家族で口座の状況を確認しておくことが大切です。

2-3.債務整理よる凍結

口座を開設している銀行に対して債務を負っている場合、その借入を返済する見込みが低いと判断されると預金は凍結されます。債務整理には、任意整理や個人再生、自己破産など対応方法はそれぞれですが、どれを選んでも口座は凍結されてしまいます。

2-4.不正取引の場合

たびたびニュースでも話題になる詐欺や、盗難などによって、不正に入手した口座情報をもとに不正利用された可能性があると判断された場合、又は警察からの情報提供で犯罪抑止の措置を取る場合には、預金は凍結されます。

銀行側は、過去10年分の預金の入出金の履歴を見ることができます。これまでの入出金のパターンと異なる場合は、不正利用を疑われ自動的にロックされるケース、電話で確認をとるケースなど、状況や銀行によって対応は様々です。

3.【要注意】高齢者の引出し制限とは

高齢者の引き出し制限は、特殊詐欺被害を防止するために金融機関が導入している対策です。この制限は主に65歳以上の高齢者を対象とし、ATMでの1日あたりの引き出しや振込の限度額を設定するものです。

年齢やATM1回あたりの引き出しの限度額の引き下げなどが行われています。振込についても同様に制限が設けられており、多くの場合1回あたり30万円以上の振込ができなくなります。

ただし、これらの制限は銀行窓口での本人確認を経ることで、必要に応じて緩和することが可能です。制限の具体的な内容は金融機関によって異なるため、取引のある銀行に確認しましょう。

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4.銀行のATM引出し制限状況

高齢者の預金引き出しに関する制限は、金融機関によって対応が異なります。全国銀行協会が2021年2月に発表した指針はありますが、これはあくまでも参考であり、各銀行で独自の判断基準や運用ルールを設けています。

主要メガバンクの状況

メガバンクでも年齢による制限は実施していますが、地方銀行と比べると緩やかな制限となっています。メガバンクの基本限度額は一般的に50万円に設定されていますが、各銀行で独自の運用がなされています。ただし、いずれの銀行も生体認証の利用や窓口での手続きにより、より高額な限度額の設定が可能です。

また、これらの制限は、ATMでの取引履歴や利用状況によって変動する可能性があり、必要に応じて窓口での調整が可能となっています。

地方銀行・信用金庫の対応

一方、地方銀行や信用金庫では、70歳以上の顧客に対して以下のような厳格な制限を設けています。「70歳以上は1日10万円まで」というように、メガバンクは年齢による明確な制限を前面に出していませんが、取引履歴や顧客の状況に応じて制限を設ける仕組みを導入しています。

5.預金凍結で使えなくなるサービス

預金が凍結されてしまうと、具体的にどんな影響があるのでしょうか? 様々な理由で凍結されてしまう可能性はありますが、ここでは認知症や死亡による口座凍結に焦点をあててお伝えします。

5-1.各種手続きや取引の一切

口座が凍結されてしまうと、振込や引き落としなどの取引や定期預金の解約や口座振替などの手続き業務が一切できなくなってしまいます。

ただし、死亡時の預金凍結は、全取引が停止となりますが、認知症による凍結であれば、口座からの自動引き落としや家賃収入を受け取ったり年金を受け取ったりと他口座からの振込はそのまま続けることができます。入金はあるのに引きだせないということになりかねないので、事前に対策を考えておくことをお勧めします。

認知症の親の年金について、どのようにして家族が受け取ればいいかということについては、別の記事で解説しています。是非チェックしてください。

5-2.ATMからの入出金

もちろんATMからの入出金もできなくなります。事例のように親の代わりに預金を引きだしたくても引きだせなくなることで、介護費用や生活費の支払が子ども負担になるため、生活が困窮してしまう事態となります。

6.凍結された口座の解除方法

預金凍結を解除するにはどんな手続きが必要なのか、それぞれのパターンごとに解説します。

6-1.【名義人の死亡の場合】窓口で相談しながら手続き可能

もし、名義人が死亡したことで預金が引き出せなくなった場合、銀行の窓口に行ってその旨を伝えてください。そうすると、銀行側は手続きに必要な書類の一覧を教えてくれます。この手続きに必要な書類は各銀行で異なるので、複数の口座を持っている場合はすべて確認した上で進めるのがいいでしょう。

基本的に必要な書類は以下の通りです。

  • 預金通帳又はキャッシュカード
  • 名義人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員印鑑証明書
  • 遺言書又は遺産分割協議書
  • 相続関係届出書(遺言書、遺産分割協議書がない場合)
  • 検認調書もしくは検認済証明書(遺言書がある場合)

ただし、銀行口座の名義人の法定相続人であれば、葬儀費用の支払いや生活費として使用するために必要になった場合には「仮払い制度」が利用できます。
遺産分割がなされるまでは、基本的に名義人の財産は相続人全員の財産なので、引き出しはできないのですが、この制度を使えば一定限度額の範囲内で相続人全員の合意なしにそれが可能になります。

6-2.【名義人が認知症の場合】「成年後見制度」しか方法がない

認知症になってしまった後の対策の一つとして、認知症になった方については、成年後見制度が促されています。

成年後見人は、本人のために「法律行為(各種契約)」「財産管理」「身上監護」を行います。具体的には、預貯金の管理(銀行での手続きや支払い)、施設との契約、不動産の契約、年金の手続きなどです。本人のために、関係機関と連携して支援するのが、この制度です。

ただし、本制度を利用すると、手間や費用がかかること、成年後見人に家族がなれない可能性があること、柔軟な財産管理ができなくなるなどのデメリットがあるため、注意が必要です。
もし、名義人が認知症になり、それが銀行側にバレてしまった場合は、成年後見制度を使わざるを得ません。その選択肢しかないというのは、非常にリスクが高いため、事前の対策をしておくことをオススメしています。

成年後見制度のメリット・デメリットや、使った方がいいケースなどもありますので、それを詳しく知りたい方は以下のブログをチェックしていただければと思います。

7.【事前対策】口座凍結を防ぐ3つの方法

今、高齢者の5人に1人は認知症になる時代が来ると予想されています。それによって、預金が凍結されてしまうと、子ども世代が困窮してしまうということになりかねません。
そうならないように、事前に多くの方に対策について知ってもらい、ご家族の中でしっかりと考えておいていただきたいと思います。

8.事前対策①:家族信託制度の活用

家族信託は、最近多くのメディアで取り上げられている制度です。この制度は、認知症になる前に、本人(親)の財産の管理を、信頼できる家族に任せることができます。

実際に、家族信託をやろうとすると、親と財産管理方法について「何のために使うのか」「どのくらいの資産の管理を任せるのか」などをしっかりと相談して契約書を交わし、それを元に子どもは運用していくことになります。

もし、認知症による預金凍結に不安になっている場合、任せるご家族名義の信託口口座を作り、本人の口座から現金を移した上で運用していくので、本人が認知症になっても本人の許可なく財産を引きだす事ができます。そのため、銀行にバレる前に活用しておくとご家族は安心して介護や病院費用などのサポートが可能です。

家族信託は、目立ったデメリットはありません。費用とご自身のご希望がしっかりと実現できるかどうかを吟味して、活用するかどうかを検討しましょう。
家族信託についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

9.事前対策②:任意後見制度の利用

任意後見制度とは、自分が将来判断能力が低下した時に備えて、信頼できる人に以前に支援をしてもらえるように契約をしておくことができる制度です。成年後見制度(法定後見制度)のような要支援者への保護のための制度ではなく、本人が自由な意思に基づいて、支援策を準備することができるのが本制度の根幹になります。

そのため、契約において、誰に依頼するか、具体的にどんなことを依頼したいのかなど、本人の希望を反映することができます。ですから、預金口座の管理についても、ご家族や信頼出来る人に任せることができるため、こちらも対策として非常に有効です。

ただし、任意後見契約は、判断能力が発生した段階で申立てが必要だったり、任意後見監督人が必ず選任され報酬を支払う必要があります。報酬の目安は管理する財産によって異なりますが、1万円~3万円となりますので、出費がかさむ可能性があります。

任意後見制度について詳しくメリットデメリットや手続き方法などを知りたい方は以下のブログをチェックしてください。

10.事前対策③:銀行の代理人制度

各銀行において、高齢者の財産管理についての相談が近年非常に増えており、それぞれ対策を講じています。ほとんどの銀行にある対策をここでは紹介しますが、各銀行にどんな対策があるか事前に確認をとるとスムーズです。

代理人カードを利用する

代理人カード(家族カード)は、ほとんどの金融機関で対応されている、家族が預金を引きだすことができる制度です。名義人の方と生計を同じくする家族が銀行に出向いて手続きすることで、このカードを無料で発行してもらうことができます。

ただし、家族ができるのは出金のみであり、認知症になった後のことは想定されていない制度です。手軽に発行できる利点はあるものの、カードの紛失や磁気不良で再発行をすることができない金融機関もありますので、注意が必要です。

「代理人指名」のシステムを利用する

本人が元気なうちに、代理人をあらかじめ指名しておけば、本人の判断能力低下後も指名を受けたご家族が出金できる仕組みを持っている銀行もあります。

ただし、上記2つの代理人制度については、名義人本人の判断能力が低下した場合、取引を継続できなくなる可能性があります。ですから、前もって、銀行側に連絡して確認をとっておくのがいいでしょう。

11.【動画解説】預金凍結を回避するための家族信託とは?

12.まとめ

  • 高齢者の金融機関での本人確認が厳格化されており、認知症等で口座が凍結される可能性がある
  • 連日限度額を引き出すと、金融機関が不正利用の可能性を考えてチェックが入ってしまうため、銀行側にバレないように気を付ける必要がある
  • 預金凍結になった場合、基本的にはATMや銀行からの入出金や手続き・取引の一切ができなくなるため、本人が認知症の場合は子どもが困窮してしまう可能性がある
  • 家族信託や任意後見制度を活用して、親が認知症になっても信頼できる家族が預貯金口座を管理することができる

家族信託を行うことにより、父が認知症になっても受託者である長男が信託財産である 金銭の管理を継続することができ、信託財産である金銭は凍結しません。契約を結ぶためには、事前に契約内容を親子で取り決め、契約書の作成、金融機関などの手続きなどを行っていく必要があります。なかなか話しづらい将来の財産の問題ですが、元気な時にこそできる制度です。

預貯金など財産の管理を実際に任され始めたタイミングがベストな時期です。そのときに、是非話を切り出してみてください。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

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