任意後見の登記とは?手続き5ステップ・費用・証明書の取得まで専門家が徹底解説

任意後見契約の公正証書を作成すると、その手続きの一環として、公証人が法務局へ「登記」を行います。これは、いわば自動的に行われる手続きなので、その重要性を意識せず済ませている方がほとんどではないでしょうか。

ですが、その仕組みを理解しておかないと、いざ契約内容を変更したい時や、万が一のトラブルが起きた時、適切な対応ができず困ってしまう可能性があります。

記事のポイントは下記のとおりです。

  • 任意後見契約は、法務局で「登記」して初めて法的な効力を持つ
  • 登記申請は公正証書作成と同時に公証人が代行するため、契約内容を具体的に作り込むことが最も重要
  • 登記内容は「登記事項証明書」で公に証明され、金融機関での手続きや不動産取引に不可欠となる
  • 証明書に登記される「代理権の範囲」が曖昧だと、いざという時に必要な手続きができないリスクがある
  • 登記後、実際に後見を始めるには、本人の判断能力低下後に家庭裁判所へ「任意後見監督人」の選任申立てが必要
  • 契約の解除や本人の死亡など状況に変化があった場合は、登記記録を抹消する「終了の登記」を忘れずに行う必要がある

この記事では、成年後見人になるための条件や具体的な手続きについて詳しく解説します。これを読めば、成年後見制度の基本から実際の運用まで、必要な知識をしっかりと理解できるはずです。

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1. 任意後見契約に登記はなぜ必要?

まず、最も重要な大前提からお話しします。任意後見契約において、「登記」は単なる手続きの一つではありません。契約の効力を左右する、いわば「契約の心臓部」とも言えるものです。

1-1.任意後見契約は「登記」が大前提

「登記」と聞くと、不動産登記や会社登記をイメージされる方が多いかもしれません。また、「後見」という言葉から、「戸籍に何か記録が残ってしまうのではないか」と心配される方もいらっしゃいます。

結論から言うと、任意後見契約の内容は戸籍には一切記載されません。

その代わりに、任意後見契約は「後見登記」という専用の公的な登録制度によって管理されます。これは、プライバシーに最大限配慮しつつ、契約の存在を社会的に証明するための、非常に優れた仕組みなのです。この「登記」こそが任意後見契約の生命線であり、任意後見契約は登記をしなければ、法的な効力が一切発生しません。

1-2.登記の2つの重要な役割

登記には、契約の効力を支える2つの重要な役割があります。

❶ 公示機能(社会的な証明力)

登記されることで、任意後見契約の内容が公に示され(これを「公示」といいます)、誰が見てもその契約の存在と内容を客観的に確認できるようになります。これにより、銀行や不動産の買主などの第三者も、安心して任意後見人と取引を行うことができるのです。

登記事項証明書は、いわば任意後見人の「公的な身分証明書」兼「権限証明書」と言えるでしょう。

➋ 任意後見監督人選任の前提

任意後見契約は、契約を結び、登記しただけではすぐに効力(スタート)は生じません。本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所に「任意後見監督人」を選任してもらうことで、初めて効力が生じます。

そして、家庭裁判所がこの監督人選任の手続きを開始するための大前提が、「任意後見契約が登記されていること」なのです。登記情報がなければ、家庭裁判所は監督人選任の申立てを受理することさえできません。

1-3.登記はいつまでに行うべき?

任意後見契約の登記申請は、契約者本人が行うのではなく、公正証書を作成した公証人が、法務局へ嘱託(しょくたく)する形で行われます。嘱託とは、公的機関が代行して申請手続きを行うことです。つまり、公正証書作成と登記申請はセットになっており、公証役場で手続きをすれば、公証人が責任を持って登記まで完了させてくれます。

そのため、「うっかり登記を忘れてしまった」という事態は通常起こりません。

ただし、これは逆に言えば、「最初の公正証書作成の段階で、登記される契約内容のすべてが決まる」ということです。後から「ああすればよかった」と後悔しないためにも、次の章で解説する手続きの流れと、契約内容の作り込みが極めて重要になります。

2.【5ステップで解説】任意後見の登記手続きの流れ

任意後見の登記手続きは、その大部分を専門家である公証人が代行してくれます。依頼者としては、「公正証書を正しく作成すること」に集中すれば、登記まで自動的に行われると理解しておきましょう。

ここでは、契約の準備から登記完了までの正確な流れを解説します。

 STEP1:契約内容を固め、公正証書を作成する

すべての始まりは、公証役場で「任意後見契約公正証書」を作成することです。これが登記の元となる、最も重要なステップとなります。

任意後見契約の公正証書は、本人(委任者)と任意後見人になる方(任意後見受任者)が揃って、全国の公証役場で作成します。 公証役場では、事前に打ち合わせた契約内容の最終確認を行い、公証人の前で署名と押印(実印)をすることで、法的に強力な効力を持つ公正証書が完成します。

このステップで最も重要なのは「契約内容の作り込み」です。公証人は法律と手続きの専門家ですが、あなたの家庭の事情や財産のすべてを把握しているわけではありません。

・どのような財産管理を任せたいか?
・どのような医療や介護を望むか?
・後見人への報酬はどうするか?

これらの具体的な希望を、事前に家族や司法書士などの専門家と十分に話し合い、将来本当に役立つ契約書案に落とし込んでおくことが、成功の9割を占めると言っても過言ではありません。

 STEP2:登記に必要な書類を漏れなく収集する

公正証書を作成するために、公証役場の指示に従って、いくつかの公的書類を準備・提出する必要があります。

書類名 取得場所 ポイント・注意点
住民票 各々の住所地の
市区町村役場
👤 本人・後見人候補者の両方が必要です。
⚠️ 発行後3ヶ月以内のものをご準備ください。
⚠️ マイナンバーが記載されていない形式のものが必要です。
戸籍謄本
(全部事項証明書)
本人の本籍地の
市区町村役場
👤 本人のみ必要です。
⚠️ 本籍地が遠方の場合は、郵送請求などで早めに手配しましょう。
印鑑登録証明書 各々の住所地の
市区町村役場
👤 本人・後見人候補者の両方が必要です。
⚠️ 手続き当日は、証明書だけでなく実印そのものも必ず持参してください。
本人確認書類 👤 本人・後見人候補者の両方が必要です。
✅ 運転免許証、マイナンバーカードなど顔写真付きのものを準備します。
(任意)財産に関する資料
✅ 不動産の登記簿謄本や預金通帳などです。
✅ 契約書に財産を具体的に記載する場合、その内容を正確に示すために役立ちます

これらの書類は、あくまで公正証書を作成するために、公証役場へ提出するものです。登記のために私たちが直接法務局へ書類を出すことはありません。必要書類は公証役場の指示に従って準備しましょう。

 STEP3:公証人が登記申請書を作成する

公正証書が完成すると、それ以降の登記申請に関する準備は、すべて公証人が行います。

公正証書の内容に基づき、登記申請書などの必要書類は公証人が職責で作成します。私たちが登記申請書に別途、署名や押印を求められることはありません。公正証書への署名押印が、登記申請への同意を兼ねているとお考えください。

 STEP4:法務局へ登記を申請する(嘱託)

公証役場での手続きが完了すると、公証人は法務局長官宛に登記を嘱託(しょくたく)します。

  • 申請先: 全国の任意後見登記は、すべて東京法務局の後見登録課に集約されます。これにより、全国どこからでも情報を一元的に確認できる仕組みになっています。
  • 期間:公証人による嘱託から登記が完了するまで、通常1週間〜2週間程度かかります。

 STEP5:登記事項証明書を取得して完了

公証人が法務局へ登記を申請(嘱託)してから、およそ1週間程度で登記自体は完了します。ただし、登記が無事に完了しても、法務局から「手続きが終わりました」といった連絡は、私たちのもとには届きません。

これは申請を代行してくれた公証人に対しても同じで、完了したかどうかは、自分たちで確認する必要があります。登記完了を確認するには、「実際に『登記事項証明書』を法務局に請求してみる」というステップが必要です。

3. 任意後見の登記にかかる費用一覧

登記手続きには、必ずかかる「実費」と、専門家にサポートを依頼した場合にかかる「専門家報酬」があります。ここでは、その内訳と相場を詳しく見ていきましょう。

法定実費(必ずかかる費用)

費用の種類 費用の目安
公証人手数料 11,000円
正本・謄本の費用 約2,000円~
登記嘱託手数料 1,400円
登録免許税
(収入印紙代)
2,600円
書類取得費用 1,000円〜
3,000円程度

専門家報酬(依頼する場合)

費用の種類 費用の目安
任意後見契約サポート費用 100,000円 ~
200,000円

あくまで目安であり、財産の額や契約内容の複雑さによって変動しますが、専門家に依頼すると約12万円 ~ 22万円ほど費用がかかります。

3-1.自分でやる場合 vs 専門家に頼む場合

上記の表からわかる通り、自分で公証役場とのやり取りや書類収集を行えば、費用は実費の2万円程度に抑えることができます。一方、司法書士などの専門家に依頼すると、報酬として10万円以上が加算されます。「なぜこんなに金額が違うの?」と疑問に思われるかもしれません。

専門家報酬には、単なる手続きの代行だけでなく以下のような重要なサービスが含まれています。

専門的なコンサルティング
あなたの希望や家族構成、財産状況をヒアリングし、将来起こりうるリスクを想定した上で、最適な契約内容(代理権の範囲や報酬規定など)をオーダーメイドで設計します。
面倒な書類収集の完全代行
平日に役所へ行く時間がない方でも、戸籍謄本や不動産の登記情報などの収集をすべて任せることができます。
公証人との事前調整・交渉
複雑な契約内容でも、専門家が事前に公証人と打ち合わせを行い、スムーズに公正証書が作成できるよう段取りを整えます。
アフターフォロー
契約後の状況変化(住所変更など)や、いざ監督人選任申立てを行う際のアドバイスなど、長期的なサポートが期待できます。

費用を抑えることはもちろん大切ですが、任意後見契約は「作って終わり」ではありません。 将来本当に使える、家族が揉めない契約内容にすることこそが最も重要です。そのための「保険」「安心料」として、専門家への依頼を検討する価値は十分にあると言えるでしょう。

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4.任意後見登記の「登記事項証明書」とは?

登記手続きが完了すると、その内容を証明する「登記事項証明書」が取得できます。登記事項証明書は、法務局が「この任意後見契約は、法的に有効なものとして登記されています」ということを公に証明してくれる書類であり、任意後見人としての活動の基盤となります。

4-1.登記事項証明書が必要になる2つの場面

この証明書は、主に2つの重要な場面で必要となります。

場面1:任意後見監督人の選任を申し立てる時

本人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所へ「任意後見監督人を選任してください」と申し立てる必要があります。この申立ての際、添付書類として登記事項証明書は必須です。これがなければ、申立てが受理されません。

場面2:任意後見人として活動する時

監督人が選任され、任意後見がスタートした後、任意後見人として様々な手続きを行う際に、相手方(金融機関、役所、病院、不動産会社など)から提示を求められます。

  • 銀行で本人の預金を解約する
  • 役所で介護保険に関する手続きをする
  • 本人の不動産を売却する
  • 介護施設との入居契約を結ぶ

これらの場面で登記事項証明書を提示することで、自分が正当な権限を持つ任意後見人であることを証明し、手続きを円滑に進めることができます。

4-2.記載される内容(登記事項)の見方|監督人選任の前後でこう変わる

登記事項証明書には、契約の内容が具体的に記載されます。そして、その記載内容は、任意後見監督人が選任される前(効力発生前)と後(効力発生後)で変化します。

効力発生前(監督人選任前)の主な登記事項

❶ 事件の種類:
「任意後見契約」と記載
➋ 登記番号:
個々の登記に割り振られるユニークな番号
❸ 公証役場と証書番号:
契約書を作成した公証役場名、公証人の氏名、公正証書の番号、作成年月日が記載(元となる契約書を特定できる)
❹ 本人に関する事項:
本人の氏名、生年月日、住所、本籍
❺ 任意後見受任者に関する事項:
後見人候補者の氏名、住所が記載(この時点では「受任者」という名称)
❻ 代理権の範囲:
後見人が本人に代わって何ができるかを定めた、非常に重要な部分(後述)

効力発生後(監督人選任後)に追加・変更される登記事項

❶ 任意後見人の表示:
「任意後見受任者」だった名称が「任意後見人」に変わる
➋ 任意後見監督人に関する事項:
家庭裁判所によって選任された任意後見監督人の氏名、住所が新たに追加

この「任意後見監督人」の登記がなされていることによって、第三者は「この任意後見契約は正式に効力が生じているな」と確認できるのです。

4-3.【重要】「代理権の範囲(代理権目録)」も登記される

登記事項の中でも特に重要なのが「代理権の範囲」です。これは、任意後見人が本人に代わって行うことができる法律行為のリストであり、「代理権目録」として登記されます。原則として、この目録に記載されていない行為は、任意後見人として行うことができません。

代理権目録の記載例

  • 預貯金等の管理、払戻し、解約及び新規契約に関する事項
  • 不動産の管理、保存、売却、賃貸借契約の締結及び解除に関する事項
  • 保険契約の締結、保険金の受領、解約に関する事項
  • 要介護認定の申請、介護サービス契約の締結、変更、解除に関する事項
  • 医療契約の締結、入院手続き及び入院費用の支払いに関する事項
  • 上記各号の行為に関する紛争処理(訴訟行為を除く)に関する事項

このように、具体的かつ網羅的に記載しておくことで、いざという時にスムーズな権限行使が可能になります。「財産管理に関する一切の件」というように記載するとあまりに抽象的で、金融機関などが「具体的に何をして良いのかわからない」と判断し、手続きを拒否するリスクがありますので注意が必要です。

4-4.登記事項証明書の取得方法(窓口申請・郵送申請)

登記事項証明書は、法務局の「窓口」で直接受け取る方法と、「郵送」で取り寄せる方法の2つがあります。お急ぎの場合は、法務局の本局窓口で即日交付が可能です(平日日中のみ)。お時間に余裕がある場合は、東京法務局への郵送申請が便利(到着まで数日~1週間)なので、状況で最適な選択をされてください。

項 目  詳 細
👤 請求できる人 本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見人、任意後見監督人など
※プライバシー保護のため、請求できるのは法律で定められた人のみ
💴 手数料 1通につき 550円(手数料は収入印紙で納付)
📄 基本的な必要書類 申請書(法務局のウェブサイトからダウンロードできます)
・請求者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
・(親族などが請求する場合)本人との関係を証明する戸籍謄本など

5.任意後見の登記でつまずく3つの”落とし穴”と回避策

手続き自体は公証人が進めてくれますが、契約全体で見たときに「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースは後を絶ちません。ここでは、専門家が実務で目にする3つの重大な落とし穴と、それを避けるためのプロの視点をご紹介します。

任意後見の登記手続き
落とし穴❶ 【契約内容の不備】「とりあえず」で作った契約書で後悔
落とし穴❷ 【運用面の準備不足】いざという時の「段取り」ができていない
落とし穴❸ 【手続き面の勘違い】登記後の手続きを忘れてしまう

 ❶【契約内容の不備】具体性に欠ける契約書で後悔

これが最も多く、かつ後から修正が難しい致命的な落とし穴です。契約内容が曖昧だと、いざという時に「肝心なことができない」という事態に陥ります。特に銀行や役所、不動産会社などの第三者は、非常に慎重です。「財産管理の一切」という曖昧な言葉では、「具体的に何をして良いのか」が判断できず、トラブルを恐れて手続きを断るケースが多いのです。

契約書は、後見人が第三者に見せる「権限の証明書」。誰が見ても「何をしても良いか」が明確にわかる必要があります。

【回避策】契約書作成前に、この3つを必ずチェック!

POINT 1:「やってほしい事」を具体的にリストアップする

将来必要になりそうな手続きを、面倒でも一つひとつ具体的に書き出しましょう。

  • 預貯金の管理、解約、新規契約
  • 不動産の管理、売却、賃貸
  • 介護サービス契約の締結、変更、解除
  • 入院手続き、医療費の支払い など
POINT 2:「報酬」を明確に決めて、家族トラブルを防ぐ

たとえ親子でも、「月額〇万円」と具体的な金額を決めましょう。これが後見人の働きに対する正当な対価となり、他の家族からの「不公平だ」という不満を防ぐ防波堤になります。

POINT 3:「報告ルール」を決めて、家族の信頼を保つ

「年に1回、他の兄弟にも財産目録を見せる」といった報告ルールを明記しましょう。財産管理の透明性を保つことが、家族間の信頼を守る秘訣です。

 ➋【運用面の準備不足】いざという時の「段取り」不足

任意後見契約は、登記が完了しても自動的にはスタートしません。本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所に「任意後見監督人を選任してください」と申し立て、監督人が選ばれて初めて効力が生じます。

しかし、任意後見を初めて実行する際に「監督人選任の申立て」を忘れてしまうケースが多く見受けられます。また、申立てには医師の診断書が必要なことを知らず、病院の予約や診断書の作成に時間がかかり、資産が凍結される期間が長引うというケースもあります。

【回避策】”いざという時”の段取りを家族で共有!

POINT 1:「監督人選任の申立て」の流れを家族で共有する

誰が(配偶者や四親等内の親族など)、どこへ(家庭裁判所)、何を持って(医師の診断書など)申し立てるのか、事前に家族全員で情報共有しておきましょう。

POINT 2:後見人候補者の「もしも」のプランを考える

後見人候補者が遠方に住んでいたり、病気になったりする可能性も考慮し、予備の後見人を指定しておく、専門家にも候補者になってもらうなどの対策を検討しましょう。

 ❸【手続き面の勘違い】登記後の手続きを忘れてしまう

当事者間で契約を解除しても、法務局の登記記録は自動的には消えません。登記が残ったままだと、既に無効なはずの契約が公的には生きているように見えてしまい、相続手続きなどの際にトラブルの原因となります。

事情が変わり、本人と後見人候補者が合意の上で契約を解除したり、本人が亡くなった際は登記の変更・終了登記を必ず行ってください。

【回避策】状況が変わったら、登記の変更・終了手続きを!

CASE1:契約を合意解除した

法務局で「終了の登記」を申請し、記録を抹消する必要があります。

CASE2:本人や後見人の住所・氏名が変わった

現状に合わせて「変更の登記」を申請します。

CASE3:本人が亡くなった

任意後見契約は本人の死亡で終了します。相続人が「終了の登記」を申請します。

※葬儀など死後の手続きを任せたい場合は、別途「死後事務委任契約」が必要です。

 

6.任意後見契約の登記内容の変更・終了手続き

人生には変化がつきものです。一度結んだ任意後見契約も、状況に応じて見直しが必要になることがあります。その際には、登記内容の変更や終了の手続きが必要となります。

6‐1.登記内容の変更

以下のような事情が発生した場合は、「変更の登記」を申請する必要があります。

  • 本人または任意後見受任者(後見人)の氏名、住所が変わった場合
  • 代理権の範囲(代理権目録)を変更したい場合
  • 任意後見受任者を交代したい場合

手続きの方法

氏名・住所の変更の場合は、法務局へ直接、変更登記申請書と住民票などの証明書類を提出して行います。代理権の範囲の変更・後見人の交代の場合は、契約内容の根幹に関わる変更であるため、再度、公証役場で変更契約の公正証書を作成し、公証人に変更登記を嘱託してもらう必要があります。

変更手続きを怠ると、登記事項証明書に記載された情報と現状が食い違い、いざという時に手続きが滞る原因になります。変更があった場合は速やかに手続きを行いましょう。

6‐2.登記の終了

任意後見契約は、以下のような事由で終了します。終了した際にも、「終了の登記」を申請し、登記記録を閉鎖する必要があります。

  • 本人と後見人受任者が合意して契約を解除した場合
  • 任意後見契約は本人の死亡
  • 任意後見受任者(後見人)の死亡、破産、解任など
  • 任意後見監督人選任前の、本人または受任者からの解除

手続きの方法

終了事由によって手続きが異なりますが、例えば本人が死亡した場合は、相続人などが本人の死亡の事実が記載された戸籍(除籍)謄本を添付して、法務局へ終了登記を申請します。

これを怠ると、既に終了しているはずの契約が登記上は有効なまま残り、後々の相続手続きなどで混乱を招く可能性があります。契約が終了したら、必ず終了登記まで完了させることが重要です。

7.まとめ

  • 任意後見契約は、法務局で「登記」して初めて法的な効力を持つ
  • 登記申請は公正証書作成と同時に公証人が代行するため、契約内容を具体的に作り込むことが最も重要
  • 登記内容は「登記事項証明書」で公に証明され、金融機関での手続きや不動産取引に不可欠となる
  • 証明書に登記される「代理権の範囲」が曖昧だと、いざという時に必要な手続きができないリスクがある
  • 登記後、実際に後見を始めるには、本人の判断能力低下後に家庭裁判所へ「任意後見監督人」の選任申立てが必要
  • 契約の解除や本人の死亡など状況に変化があった場合は、登記記録を抹消する「終了の登記」を忘れずに行う必要がある

任意後見は、ご家族の未来を左右する、本当に大切な取り決めです。契約前の手続きの流れや、ご自身に最適な契約内容について、また、任意後見人になった後、どのように仕事をこなしていくのか、そのイメージができない場合など少しでも疑問や不安があれば、決して一人で抱え込まず、私たちのような任意後見・家族信託の専門家にご相談ください。

私たちは、あなたの家族構成や財産状況を丁寧にお伺いした上で、法律と実務の両面から、あなたにとって最適なプランをご提案します。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

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