親が認知症になったら銀行口座は凍結される?認知症の親の預金口座を堂々と引き出し・管理する方法

認知症の親の預金口座を堂々と引き出し・管理する方法
この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに350件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

近年、認知症による判断能力の低下によって、金融機関で払出等の取引ができなくなるケースが多くなっています。親が認知症になった時に事前の対策ができていないと、預金の引き出しに制限がかかってしまい、生活費や医療費用などの支出ができなくなってしまう可能性があります。親の判断能力が著しく低下して引き出しができなくなった口座のために、成年後見人の選任申立てをせざるを得なくなってしまった事例は後を絶ちません。こうした口座凍結の事態を未然に防ぐ方法があります。
認知症の親の口座から、法定後見人を就けることなく堂々と現金を引き出せる仕組みづくりをしておくことです。

仕組みづくりができるのは、親の判断能力が「著しく低下するまで」ですので、早めの対策をお勧めしますが、認知症と診断されたからと言ってあきらめるのはまだ早いかもしれません。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

  • 銀行口座が凍結されるタイミングは、口座名義人の死亡時と銀行取引の中で認知症により本人の判断能力が著しく低下したことを銀行が知ることにより凍結される可能性がある
  • 死亡による口座凍結は銀行全取引が停止するが、認知症による判断能力低下は一部の取引が制限され、入出金、振込、口座解約などができなくなる
  • 判断能力の著しい低下によって引き出しができなくなった口座(口座凍結)を解凍するには、法定後見制度を使うのが原則
  • 成年後見制度には法定後見制度任意後見制度の二つがある
  • 口座凍結を未然に防ぐ方法がある!
    ・銀行のシステムの中での対策
    ・任意後見制度の利用
    ・家族信託制度の利用
  • 口座凍結を予防し、本人のために適切に使う仕組みづくりができるのは、本人の判断能力が「著しく低下していない」段階のみ。認知症だから・・・とあきらめるのはまだ早いかも!?

今回の記事では、認知症で口座凍結するとどのような状態になるのか?、そして、どんな方法で口座凍結に備えることができるのか、親の口座を引き出し、管理するために最善の対策方法をお伝えします。

■関連記事
今まで通り”家族だけ”で親の預金口座を管理できる家族信託・民事信託の仕組みとは?

1.銀行口座の凍結とは?

銀行が口座を凍結する要因として、”口座名義人が死亡した場合”と”認知症などによる判断能力が著しく低下した場合”があります。凍結といっても、それぞれの要因ごとに銀行取引が制限されるタイミングと制限の内容が異なります。

1‐1.口座名義人が死亡した場合

預金の口座名義人が死亡した場合、銀行は死亡の事実を知ったタイミングで、その口座名義人の同銀行内にある全ての口座を凍結します。ATMでの入出金、振り込みや口座引き落とし、通帳の記帳など、全ての銀行取引ができなくなる「凍結」です。

口座名義人について相続が発生すると、故人の預金口座は相続人全員の共有財産となります。その後、相続人全員による遺産分割協議を経て誰が預金口座を相続するのか決める手続きを経て預金口座の名義人が定まります。そのため、亡くなった口座名義人の戸籍収集や法定相続人全員による遺産分割協議等の全ての相続手続きを済ませ必要書類を提出しなければ、預金口座の解約、相続人への払い戻しが出来ません。

1‐2.認知症などによる判断能力が著しく低下した場合

すでに認知症が進み、判断能力がかなり低下している場合、銀行がその事実を知れば「口座取引を大幅に制限」します。これがよく言われる、認知症による口座凍結という問題です。

認知症による判断能力が低下した場合には、銀行口座の不正使用、横領、詐欺などから財産を失うリスクを防ぐために取引が制限されます。

口座を凍結されると、預金の引き出し、入金、定期預金の解約など口座を使った銀行取引ができなくなります。しかし、死亡時のように、全取引の停止=「口座凍結」とはなりません。口座からの自動引き落としや他口座からの振り込み(家賃の支払いを受け取る、配当金を受け取るなど)はそのまま続けられますが、払い戻しや契約内容の変更はできなくなる、というイメージです。

取引が制限されると、以後出金、契約内容の変更(定期預金の解約など)は、原則、家族であってもすることはできません。

銀行の判断で口座取引の制限をされてしまったら、原則名義人が亡くなり相続手続きが終わるまで、払い戻しができないことになります。年金振込口座などは、振込は続きたまっていくが払い戻しできないという状況が続いてしまいます。

判断能力が低下してから亡くなるまでの介護期間が長くなることも多く、その間名義人本人の口座から年金や貯金が下ろせないのは非常に困ります。そのため、親の認知症が進んでいることを銀行に知らせず、親のキャッシュカードと暗証番号で引き出しを継続しているケースも見受けられます。しかし、その行為は親族間のトラブルや窃盗罪などの成立のリスクにつながる可能性があります。

親の認知症に伴う口座をそのまま利用してしまうことによるリスクと年金の管理対策については、下記の記事に詳しく解説していますので、興味ある方は是非確認してみてください。

ここでは、すでに認知症がかなり進んでおり、口座取引が実際に制限されてしてしまった場合と、まだ認知症ではない(又は判断能力の低下が著しくない)場合に分けて、採りうる対策を説明します。

■関連記事
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2.認知症の親の口座取引が制限された!凍結!?どうしたらよい?

すでに認知症が進み、判断能力がかなり低下している場合、銀行が事実を知れば口座取引に制限がかかります。以後払い戻し、契約内容の変更(定期預金の解約など)は、家族であってもすることはできません。

2‐1.成年後見制度の利用

この制限を解除するには、基本的には、成年後見制度を使う以外方法がありません。つまり、本人のために、本人の財産を管理する法定代理人として成年後見人の選任の申立てをするのです。最高裁判所事務総局家庭局の統計では、令和3年の成年後見人の選任の申立ての動機第一位は断トツで預貯金の管理・解約をするためとなっています。


裁判所HP:成年後見関係事件の概況令和3年1月から12月までより引用)

2‐2.成年後見人には誰が選ばれるのか?

成年後見人の選任は、民法で定める欠格事由に該当しない者の中から家庭裁判所が決定します。

【後見人の欠格事由】
民法第847条
次に掲げる者は、後見人となることができない。
1. 未成年者
2. 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
3. 破産者
4. 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
5. 行方の知れない者

成年後見人になるための特別な資格はありません。家庭裁判所が法定後見人の候補者の中から、誰が相応しいかを判断し、選任する仕組みです。そのため、たとえ親族であっても、家庭裁判所が相応しくないと判断すれば法定後見人にはなれません。

親の財産を管理するために親族を成年後見人に選任したいと考え申し立てをしても、成年後見人に親族が就けるとは限りません。裁判所の統計資料によると、親族以外の専門家等が全体の8割就任しています。金融資産が多い方などは仮に親族が就任できた場合でも、後見監督人として専門職を就任させる、または、日常生活に必要な預貯金以外は全て家庭裁判所の指示がないと引き出しができない「成年後見制度支援信託」や「成年後見制度支援預金」の制度の利用を求められることが多いです。

これは、本人の財産の適切な管理と相続人間での争いを未然に防ぐため、中立な第三者による管理とご家族が自由に引き出しができないような仕組みをつくることを目的にしています。

仮に専門職後見人が就任した場合、報酬が発生し、月2~5万円(総資産による)となり、本人が亡くなるまで続きます。また、法定成年後見人の選任の申立てから選任までに通常数か月かかるので、凍結解除までにはそれなりに時間を要します。

そのため、出来れば、この段階に至る前に(判断能力がまだ、ある段階で)何らかの対策を講じておくことが望ましいと言えます。

なお、弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、預金が凍結されてしまいお金の管理ができなくなった方、現在キャッシュカードで認知症の親の預金管理を行っている方へ、今後どのように財産管理の仕組みをつくればいいのか、無料相談をせていただいております。どのような対策が今ならできるのかアドバイスと手続きのサポートをさせていただきますので、お気軽にお問合せください。

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2‐3.金融機関の内部ルールでの対応

成年後見制度の利用者総数は 2020年 12 月末で約23万人にとどまっており、成年後見制度の煩雑さから利用がすすまず、財産が凍結してしまっている事例が多いのが現状です。そういったなか、2021年2月18日に全国銀行協会は認知症患者の預金引き出しについての対応における金融取引の考え方に対する方針を発表しています。

原則的な考え方としては、認知症による判断能力が低下した場合の取引については、基本として成年後見制度の利用を従来通り求められ、成年後見制度を利用していない親族からの払い出し請求には限定的に応じることがあるという考えを示しました。

口座名義人本人の判断能力低下後、医療費など本人の利益が明らかな使途についてであれば、親族が代わりに引き出せるとの考え方です。
確認する方法として、本人の診断書の提出のほかに複数の行員による面談、医療介護費の内容の確認、ビデオ会議など非対面ツールの利用などによる取引対応方法を示しています。

この考え方は、くまで全国銀行協会に加盟する金融機関が参考とするための情報であり、加盟する金融機関に一律の対応を求めるものではありません。各金融機関の個別の状況等により本考え方と異なる対応が取られるケースもあり、支払いを親族から求めても必ずしも対応してもらえるとは限らない点に注意してください。

この全国銀行協会の発表については、下記の記事で詳しく解説していますので興味ある方は確認をしてみてください。

3.成年後見制度とは?

後見 登記事項証明書

では、この成年後見制度とは一体どのような制度なのか見ていきましょう。

3-1.成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度の二つがある

成年後見制度とは認知症になってしまった方や知的障害のある方など、判断力が十分でない方々を保護・支援する制度です。家庭裁判所が選任した人物(=成年後見人)が認知症や知的障害のある本人(=被成年後見人)のために契約や財産管理などをすることができます。

そして、この成年後見制度には法定後見制度任意後見制度の2種類があります。

3-2.法定後見制度|後見・保佐・補助の3つ分けられる

法定後見制度は本人の判断能力に応じて「後見」、「保佐」、「補助
の3つの種類があります。それぞれの違いを押さえておきましょう。

  • 後見日常生活のことが一人ではできず、判断能力が完全に欠けている人が対象
    →成年後見人には本人に代わって契約を締結できる「代理権」と取り消すことができる「取消権」が与えられる。
  • 保佐日常生活のことは本人ができるが、大きな財産の購入や契約などの判断が難しい人が対象
    →保佐人には「同意権」と「取消権」が与えられる。家庭裁判所に申し立てれば必要な範囲の「代理権」が
    付与される場合もある。
  • 補助日常生活のことは本人ができ、大きな財産の購入や契約などの判断も可能だがサポートが必要な人
    →補助人には、家庭裁判所に権限付与の申し立てをしたのち
    必要な「代理権」、「同意権」、「取消権」が個別に与えられる。

3-3.任意後見制度

任意後見制度とは、本人の判断能力が低下する前に、自分の意思で代理人(任意後見人)を選び、その代理人に財産管理や介護などの代理権を与える契約を結ぶ制度です。

本人が決めたことを後見人に依頼する制度のため、本人が本当に望む支援を受けることができ、自由度が高いことが特徴の一つに挙げられます。

法定後見制度との違いは、下記の通りです。

任意後見制度について詳しくは下記の記事で解説していますので、こちらの記事も確認してみてください。

3‐4.任意後見制度の手続きの流れ

では、続けてこの任意後見制度を利用するための手続きの流れを見ていきましょう。

契約内容の決定と契約締結、公正証書作成

任意後見を利用するためには、あらかじめ支援してくれる任意後見人と契約内容を決め、任意後見契約を締結して公正証書を作成することが必要になってきます。
その後、公正証書を作成した公証人から法務局へ後見登記の依頼が行われ、事前の準備が終了となります。

では、いざ本人の判断能力が衰えてきた時にはどのような手続きを踏むようになるのでしょうか。

家庭裁判所への任意後見監督人選任の申立て・選任

任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が発生します。

そのため、まずは家庭裁判所にて任意後見監督人を選任してもらうための申立てをします。

任意後見監督人とは、任意後見人の後見事務をチェックし、正しく支援が行われているかを確認して、定期的に家庭裁判所に報告する責務がある人です。

任意後見監督人については、基本申し立てる側が任意の人物を定めることができます。但し、実際に誰が選任されるかはあくまで裁判所の裁量となることに注意が必要です。

この任意後見監督人が家庭裁判所の審査を経て選任されたことをもって、任意後見契約の効力が発生して、本人の支援が開始されることになります。

その他、任意後見人・任意後見監督人の報酬について下記の記事に記載していますので、確認してみてください。

また、任意後見監督人選任に必要な書類や費用については「任意後見監督人選任の申立ての手引」をご確認ください。

4.まだ認知症ではない親の口座、将来に備えて今からできる3つの方法

まだ認知症になっていない、または認知症の診断を受けていても判断能力の著しい低下がない場合、事前に口座を凍結させないために採れる有効な手段があります。

4‐1.銀行のシステムの中での対策を講じる

親族による取引

まず考えられるのは、各銀行のシステムの中で対策を講じておくということです。先ほど紹介した2021年2月18日に全国銀行協会から発表された「考え方」も踏まえてみていきましょう。

キャッシュカードの在りかと暗証番号を教えておいてもらう

一番簡単なのは、親本人に定期預金の解約など、将来考えうる契約内容の変更を予めしておいてもらい、キャッシュカードの在りかと暗証番号を教えておいてもらうことでしょう。

判断能力が落ちた後でも、ATMから本人の代わりにお金を下ろすことは物理的には可能です。ただし、この方法だと、キャッシュカードの紛失や磁気不良のような場合には、親本人が直接銀行とやり取りする必要があるため、認知症が進んだ後にリスクが残ることがあります。
また、兄弟間で1人だけがキャッシュカードを持つことで後々争いの原因にならないとも限りません。

代理人カードの利用

家族が持つことのできる代理人用のキャッシュカード(複数枚作成できることも多い)を作っておくのもよいでしょう。
ただし、金融機関によって異なりますが、家族ができるのは払い戻し(出金)のみであり、親本人が認知症になった後に使用することを想定していない為、やはりカードの紛失・磁気不良の問題など認知症が進んだ後にリスクは残ります。

ただし、あくまで出金のみに関する対策であることに注意が必要です。

一番簡単なのは、親本人に定期預金の解約など、将来考えうる契約内容の変更を予めしておいてもらい、キャッシュカードの在りかと暗証番号を教えておいてもらうことでしょう。

しかし、この方法だと、キャッシュカードの紛失や磁気不良のような場合には、親本人が直接銀行とやり取りする必要があるため、認知症が進んだ後にリスクが残ることがあります。
兄弟間で1人だけがキャッシュカードを持つことで後々争いの原因にならないとも限りません。

そこで、代理人カード(家族が持つことのできるキャッシュカード。複数枚作成できることも多い)を作っておくのもよいでしょう。
ただし、こちらも家族ができるのは出金のみであり、親本人が認知症になった時に使用することを想定していない為、やはりカードの紛失・磁気不良の問題など認知症が進んだ後にリスクは残ります。

代理人指名システムの利用

銀行によっては、「代理人指名」のシステムがあり、本人の判断能力のあるうちに出金の代理人をあらかじめ指名しておき、指名された家族は本人の判断能力低下後も窓口で出金ができるシステムを作っています(出金限度額あり)。
判断能力の低下後も、出金ができる制度なので、検討するのもよいでしょう。

ただし、あくまでできることは窓口出金のみであり、その際本人の通帳と届出印の提示が必要であるため、これらの紛失があると、以降指名された受取人でも出金はできなくなるので注意が必要です。

4‐2.任意後見制度を利用する

任意後見制度とは先ほど3章で説明した通り、まだ判断能力があるうちに、将来認知症などで判断能力が著しく低下した時に備えて、信頼できる家族(任意後見人となる人)との間で、財産の管理や身上監護をしてもらえるよう予め契約を結んでおく制度です。本人の判断能力が著しく低下した段階で、家庭裁判所へ後見監督人の選任の申立てをし、そこから任意後見人の権限が発動します。

任意後見人は、本人の財産管理ができるので、銀行に届け出れば本人の口座を本人のために使い続けることができます。任意後見契約で予め定めた範囲の代理権を持つことになり、入出金はもちろん、口座の契約内容の変更、貸金庫の契約に関することなどもできることになります。

任意後見人への報酬は無償として契約をすることも可能です。ただし、第三者である専門職が任意後見監督人に就任するため、任意後見監督人への報酬は発生しますが、報酬額は法定後見人のおおむね半分程度であることが多いようです。

また、任意後見人には任意後見監督人への報告が義務付けられているため、後々相続人間で使途不明金等の問題は出にくく、その点も安心だと言えますが、定期的な任意後見監督人への生活費の支払、預貯金の管理状況などの報告など、任意後見人となるご家族に負担感が残ってしまうことはやむを得ません。

任意後見契約の締結にあたっては代理権の範囲や、見守り契約や財産管理委任契約とセットで締結するかなど、検討すべき点がいくつかあるので、締結前に一度専門家に相談されることをお勧めします。

財産管理委任契約とセットで任意後見契約を締結する

前述の通り、任意後見人の権限は、任意後見監督人が選任されることで発動します。
これまでも、任意後見契約とセットで財産管理委任契約を結んでおき、権限発動までは財産管理委任契約の受任者として、現時点から本人の財産の管理を代理させることがはよくありました。

財産管理契約

その場合でも、まだ権限の発動していない段階(財産管理委任契約の受任者)では、銀行によっては、預貯金の引渡しや定期預金の解約などの代理を認めることに消極的であるのが現状のようです。

ただし、今回の全国銀行協会発表の「考え方」では、財産管理契約ある場合の「任意後見監督人が選任される前(任意後見発動前)における、代理人との取引」についても可能とする見解を述べています。そのため、任意後見人の権限発動までの間は、財産管理委任契約の受任者(任意代理人)として「代理行為」=銀行取引が可能となる運用に変わる可能性はありそうです。

任意後見制度の進め方や注意点についてもっと知りたい方は、下記をご参照ください。

4‐3.家族信託(金銭信託)制度を利用する

口座の名義人(親)が、信頼できる家族(子)に、認知症になる前から、信託財産として現金の管理を任せることができる契約です。家族を「信じて」「託す」制度なので、「家族信託」と呼ばれています。具体的には、親(委託者)の口座から、子(受託者)名義の信託口口座に現金を移し、子は信託契約で定められた目的に従ってその現金を使うことになります。

親の認知症が進んでしまった後も信託口口座は凍結しない為、引き続き子供が口座取引をすることができます。(親の独自の口座=信託財産ではない口座は凍結するので、定期預金の解約、年金口座からの送金等、できることはあらかじめ済ませておく必要があります)

契約締結時から子に金銭の管理を任せることになりますが、少額から始め、判断能力の不安が出てきた時に全ての現金を信託口口座に移動させることもできます。認知症になった時のために対策をしておきたいが、全財産の管理を子に任せるのは嫌だという方も、比較的抵抗感なく利用できる制度と言えるでしょう。

受託者には金銭を信託管理用口座で管理し、帳簿を作成する義務があるので使途不明金を未然に防ぐことも可能です。また、信託契約では親が亡くなった後の信託財産(ここでは信託口口座内の預貯金)の帰属権利者を定めるので、遺言機能もあり相続手続きもスムーズに行えます。

家族信託は最近普及し始めた制度ですので、聞きなれない方もいるかもしれません。信託契約には、複雑な点も多く、また銀行によって信託口口座を開設する条件や内容も異なります。

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6.認知症による銀行口座に関するよくある質問

6‐1.認知症で銀行が口座を凍結するタイミングは?

口座が凍結されるタイミングは、具体的にはいつなのでしょうか?
それは、「口座の名義人の判断能力に著しい低下があることを知った時」です。

よく誤解されているのですが、認知症と診断されたからといって、銀行口座が即凍結されるわけではありません。
銀行側が認知症の発症などにより口座名義人の「判断能力が著しく低下していることを知った時点」で、銀行取引に大幅な制限がかかること(よく言われる認知症での口座凍結)となります。つまり、本人が暗証番号を記憶しており、ATMでキャッシュカードを使って入出金をしている状況では、銀行側は口座名義人の判断能力がどの程度のものであるか、知りようがありません。

しかし、暗証番号を忘れてしまったり、通帳やキャッシュカードを紛失してしまったような場合には、窓口での手続きが必要となります。また、他のご家族から認知症であることを銀行に伝えるといった事実があった場合に、ここで、銀行に「知られる」という事態が発生する可能性が出てくるわけです。

では、銀行側は何をもって、判断能力が著しく低下していると判断するのでしょうか。
多くの場合、手続きの意思確認の際、「本人が窓口まで来られるか。名前、生年月日を言えるか。直筆で署名ができるか。」を一つの判断基準としているようです。

つまり、認知症の診断を受けていても、本人が銀行に出向き、名前や生年月日を答えること、直筆で名前を書くことができれば、銀行側から積極的に凍結を促すということはできないと言えるでしょう。

※2021年2月18日に全国銀行協会から金融機関での認知症高齢者や親族が代わりに行う金融取引の指針が発表されました。後見制度の利用を基本としつつも、親族などが代わりに行う場合における金融機関の対応の考え方を示しています。詳細は別の記事で詳しく解説していますので、興味ある方は確認してみてください。

6-2.認知症の親の預貯金、銀行に黙って引き出したら犯罪になる?

「銀行に知られなければ、認知症の親のキャッシュカードで下ろしたお金を使っていてもよいですよね?犯罪になりませんか?」という質問を受けます。死亡後や判断能力がない中での家族による引き出しは、本人の意思によるものではない為、本来ならいけない事ですが、事実上黙認されているケースは多いです。

では、実際に窃盗罪や横領罪等、刑法上の罪に問われる可能性はあるのでしょうか。親の介護をしている子供が、親の口座から勝手に介護費用を引き出した場合を例にとって考えてみましょう。

確かに、実体上は窃盗罪や横領罪が成立し得ます。介護費用として使うためであっても同じです。
しかし、刑法244条1項は、「配偶者、直系血族又は同居の親族」との間でこれらの罪又はその未遂罪を犯した者については、刑を免除する」と規定しています。


また、上記の例ですと親のために介護費用として使用しており、損害が生じていない為、親が被害届を出すことは考えにくく、警察の捜査が入る可能性も低いと言えます。
ただし 、子供が、親のためではなくて、例えば自分のための生活費や遊興費として使ってしまった場合、実体上は窃盗罪や横領罪が当然成立する可能性があるので、誤解はないようにしてください。

6-3.認知症を銀行に知らせず親のキャッシュカードを使用する大きなリスク

認知症を銀行に知らせず親のキャッシュカードを使用すると、将来相続人間の争いに発展するリスクがあります。

判断能力が著しく低下した親の口座を子供の1人が管理し、キャッシュカードで引き出しをしているケースで、使用用途が不明確なものがある場合、他の兄弟が納得できずトラブルになることがあります。不信感が募り、その後の関係性が悪くなるのは明らかでしょう。
他の兄弟から口座凍結依頼の連絡を受けた銀行は争いのリスクを回避するため、凍結措置(口座取引に制限をかける措置)をとる可能性があります。

将来の相続人間(家族間)でも揉めてしまうと、その後の相続手続きが思うように進まず、非常に苦労します。家族としても、他の相続人からあらぬ疑いをかけられないよう、銀行に連絡し、取引に制限をかけてもらった方が良い場合もあるのです。

7.まとめ

  • 銀行口座が凍結されるタイミングは、口座名義人の死亡時と銀行取引の中で認知症により本人の判断能力が著しく低下したことを銀行が知ることにより凍結される可能性がある
  • 死亡による口座凍結は銀行全取引が停止するが、認知症による判断能力低下は一部の取引が制限され、入出金、振込、口座解約などができなくなる
  • 判断能力の著しい低下によって引き出しができなくなった口座(口座凍結)を解凍するには、法定後見制度を使うのが原則
  • 成年後見制度には法定後見制度任意後見制度の二つがある
  • 口座凍結を未然に防ぐ方法がある!
    ・銀行のシステムの中での対策
    ・任意後見制度の利用
    ・家族信託制度の利用
  • 口座凍結を予防し、本人のために適切に使う仕組みづくりができるのは、本人の判断能力が「著しく低下していない」段階のみ。認知症だから・・・とあきらめるのはまだ早いかも!?

すでに認知症がかなり進んで凍結してしまった親の口座凍結(取引制限)を解除するには、法定後見人を就ける以外、方法がなくなってしまいます。今回はこれを防ぐ仕組みづくりを中心に、口座凍結の予防対策についてお話してきました。口座凍結=口座の取引制限(引き出しができない状態)を予防し、本人のために適切に使う仕組みづくりができるのは、本人の判断能力が著しく低下していない段階のみです。

そして、親のために適切にお金を使うことができるようにするための仕組みであることを忘れてはいけません。今からでも遅くない!と思われた方、ぜひ自分に合った仕組みづくりをしていきましょう。

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