親が遺してくれた、思い出の詰まった実家。それは、家族にとってかけがえのない資産です。その大切な資産を相続するにあたって、多くの人が「手続きを順番に進めていけば、問題なく終わるだろう」と考えています。
確かに、手続きのフロー自体は存在します。しかし、その各ステップには、税法や民法が複雑に絡み合う「落とし穴」が無数に潜んでいます。
記事のポイントは以下のとおりです。
- 親の家を相続した際の選択肢は「持ち続ける」か「手放す」かの2つに大別され、初動の判断が最も重要であること
- 相続手続きは5つのステップで進めるが、「相続登記の義務化」と「10ヶ月の相続税申告期限」が二大重要ポイントであること
- 4つの税金特例を正しく活用すれば、相続税を数百万円~数千万円単位で圧縮できる可能性があること
- 安易な「共有名義」は将来のトラブルの元凶であり、円満な分割には「代償分割」「換価分割」が有効であること
- 住まない実家を放置すると「特定空き家」に指定され、固定資産税が最大6倍になるリスクがあること
この記事では、実家の相続において、自己判断で大きな損をしないために不可欠な、法律と税金の知識、そして具体的な節税策まで、専門家が徹底的に解説します。
目次
- 1.まず決めるべき!実家を「持ち続ける」か「手放す」か
- 「持ち続ける」場合の3つの選択肢
- 「手放す」場合の3つの選択肢
- 2.【5ステップ】実家を相続する手続きの全流れ
- 3.知らないと大損!2つの税金と4大節税策
- そもそも実家の相続でかかる税金は2種類
- 知らないと損する節税策4選
- 4.兄弟で揉めない!円満に実家を分割する3つの方法
- ❶ 代償分割:誰か一人が相続し、他の兄弟にお金を支払う
- ❷ 換価分割:売却して現金で分ける
- ❸ 共有分割:兄弟全員の名義にする
- 5.住まない実家を放置するリスクと賢い活用法
- 空き家放置は危険!「負」動産になる3つの理由
- 負の資産にしないための活用アイデア
- 6.親の家を相続する際によくあるご質問
- 7.まとめ
1.まず決めるべき!実家を「持ち続ける」か「手放す」か
親の家を相続することが決まったら、最初に最も重要な決断を下さなければなりません。それは、その実家を「持ち続ける」のか、それとも「手放す」のかという、根本的な方向性を定めることです。
この初動の判断を誤ると、後々の手続きで「こんなはずではなかった」という事態に陥りかねません。まずは冷静に、以下の3つのポイントからご自身の状況を整理してみましょう。
- 立地や周辺環境:
駅からの距離、周辺の商業施設、将来的な地域の発展性など - 家の状態:
築年数、老朽化の度合い、修繕が必要な箇所の有無など - 家族の意向:
あなたや他の相続人(兄弟など)が、その家に住みたいか、どのように活用したいと考えているか
これらの状況を総合的に判断した上で、具体的な選択肢を検討します。それぞれのメリット・デメリットを正しく理解することが重要です。
「持ち続ける」vs「手放す」比較表
「持ち続ける」場合の3つの選択肢
「持ち続ける」と決めた場合、その活用方法は主に3つ考えられます。それぞれにメリットと注意点が存在します。
❶自分で住む:思い出と共に暮らし、税負担を最も軽減
ご自身やご家族が実家に移り住む、最もシンプルな選択肢です。住み慣れた家や地域で思い出と共に暮らし続けられるほか、住宅を新たに購入・賃貸する必要がないため経済的負担も抑えられます。
税制上も非常に有利で、後述する「小規模宅地等の特例」の適用を最も受けやすいため、相続税額が数千万円単位で変わる可能性もあります。ただし、ご自身の勤務先や生活圏から離れている場合はライフスタイルが大きく変わる点や、家の維持管理費・固定資産税が継続的にかかる点には留意が必要です。
❷賃貸に出す:資産を活かして、継続的な収入源に
実家を他人に貸し出し、家賃収入を得る方法です。家を手放すことなく、継続的な収益を生む資産として活用できます。
ただし、人に貸せる状態にするにはリフォーム等の初期費用がかかる場合が多く、入居者募集や家賃回収、トラブル対応といった管理業務が発生します。不動産管理会社に委託もできますが、その場合は管理手数料がかかります。
また、常に満室とは限らず、空室期間も維持費はかかり続けるというリスクも念頭に置く必要があります。
❸更地にして活用する:土地として新たな可能性を探る
建物が古すぎて居住・賃貸が難しい場合、建物を解体して更地にし、駐車場や資材置き場などとして活用する方法です。建物の管理や倒壊のリスクからは解放されますが、数百万円にのぼる解体費用がかかります。
しかし、この選択肢には税金に関する重大な注意点があります。
【最重要注意点】更地にすると固定資産税が大幅に上がります
住宅が建つ土地は「住宅用地の特例」により、固定資産税が最大6分の1に軽減されています。しかし、家を解体して更地にすると、この特例の対象外となります。その結果、翌年から固定資産税が最大6倍になる可能性があるため、解体費用だけでなく、その後の税負担の増加も踏まえた慎重な判断が不可欠です。
「手放す」場合の3つの選択肢
様々な理由から「手放す」と決断した場合、その方法は主に3つです。特に「相続放棄」は他の財産もすべて手放すことになるため、慎重な判断が求められます。
❶売却する:現金化し、公平な分割を目指す
最も一般的で、多くの場合で最善の選択肢となり得る方法です。まとまった現金を手にすることができ、その現金を兄弟で分ける「換価分割」を行えば、物理的に分けられない不動産を巡るトラブルを避け、公平な遺産分割が実現できます。
売却して利益が出た場合でも、「相続空き家の3,000万円特別控除」などの特例を使えば、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。ただし、買主探しに時間がかかる場合があることや、不動産会社への仲介手数料などの諸経費がかかる点は考慮しておきましょう。
❷相続放棄する:負債が多い場合に有効な最終手段
家庭裁判所に申し出て、相続に関する一切の権利・義務を放棄する手続きです。この方法が有効なのは、親に多額の借金があるなど、明らかに負債が資産を上回るケースです。
注意点として、相続放棄をすると、実家だけでなく預貯金等のプラスの財産もすべて相続できなくなります。また、相続の開始を知った時から「3ヶ月以内」という非常に短い期間内に家庭裁判所へ申述する必要があり、迅速な判断が求められます。
❸国に返す(相続土地国庫帰属制度):新しいが、ハードルの高い選択肢
「実家は要らないが、預貯金は相続したい」という場合に利用できる、2023年4月に始まった新しい制度です。相続放棄と違い、不要な土地だけを手放せるのが特徴ですが、そのハードルは非常に高いと言えます。
国による厳格な審査があり、事前に自費で建物を解体して更地にしなければならないなど、多くの条件をクリアする必要があります。さらに、審査に合格しても数十万円の負担金を国に納めなければなりません。
手続きが非常に複雑なため、利用を検討する場合は、まず司法書士などの専門家へ相談することが必須です。
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2.【5ステップ】実家を相続する手続きの全流れ
実家の相続は、以下の5つのステップで進めるのが基本です。特に、STEP5の相続登記は2024年4月1日から義務化されており、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料が科される可能性があるため、絶対に忘れてはなりません。
STEP1:遺言書の有無を確認する
まず最初に行うべきことは、親が遺言書を遺しているかどうかの確認です。遺言書がある場合、原則としてその内容に従って遺産を分けることになるため、その後の手続きが大きく変わります。
- 探し場所
自宅の仏壇、金庫、書斎の引き出し
銀行の貸金庫
公証役場(公正証書遺言の場合)
法務局(自筆証書遺言保管制度を利用している場合)
生前に依頼していた可能性のある信託銀行や専門家(弁護士、司法書士など)
自分で保管されていた遺言書(自筆証書遺言)を見つけた場合、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所で「検認」という手続きを経る必要があります。これを怠ると5万円以下の過料に処せられる可能性がありますのでご注意ください。
STEP2:相続人を確定させる
遺言書がない場合、または遺言書で指定されていない財産がある場合は、法律で定められた相続人(法定相続人)全員で遺産の分け方を話し合う必要があります。そのために、「誰が法的な相続人なのか」を公的に証明しなければなりません。
具体的には、亡くなった親の「出生から死亡までの一連の戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本も含む)」を取得します。これにより、離婚歴や認知している子の有無などがすべて明らかになり、法的な相続人全員を確定できます。
専門家からのアドバイス
この戸籍謄本の収集は、相続手続きの中で最も時間と手間がかかる作業の一つです。2024年3月1日の戸籍法改正により、本籍地が何度も変わっている場合でも、最寄りの市区町村役場の窓口でまとめて戸籍証明書等を請求できるようになりました。これにより以前に比べて手間は軽減されていますが、それでも時間がかかる作業であることに変わりはありません。早めに着手するか、難しい場合は司法書士などの専門家に依頼することをお勧めします。
STEP3:相続財産を調査する
次に、親がどのような財産をどれだけ遺したのか、その全体像を正確に把握します。実家(不動産)以外にも、預貯金、有価証券、自動車などのプラスの財産だけでなく、借金やローンといったマイナスの財産も調査の対象となります。
すべての財産をまとめた「財産目録」を作成しておくと、この後の遺産分割協議や相続税の申告がスムーズに進みます。
不動産の調査
市区町村役場で「名寄帳(なよせちょう)」を取得すると、その人が所有している不動産の一覧を確認できます。その後、法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得し、正確な地番や面積、権利関係を把握します。
STEP4:遺産分割協議を行い、協議書を作成する
相続人と相続財産が確定したら、相続人全員で「誰が、どの財産を、どれだけ相続するか」を話し合います。これを遺産分割協議と呼びます。
協議がまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」という書面に残します。この書類は、後のSTEP5で行う不動産の名義変更(相続登記)や、預貯金の解約手続きなどで必要となる非常に重要な公的書類です。
作成のポイント
- 相続人全員が内容に合意した証として、全員が署名し、実印を押印します。
- 後々のトラブルを防ぐため、どの財産を誰が取得するのか、誰が見ても分かるように具体的に記載します。
- 印鑑証明書も人数分用意します。
STEP5:不動産の名義変更(相続登記)を行う
遺産分割協議書に基づき、実家の名義を亡くなった親から、新たに家を相続する人へ変更する手続きです。これを相続登記と呼びます。法務局に申請することで行います。
⚠️ 【重要】2024年4月1日から相続登記は「義務」です
法改正により、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。これにより、相続の開始を知った時から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。過去の相続で名義変更をしていなかった不動産も対象となりますので、必ず手続きを行いましょう
3.知らないと大損!2つの税金と4大節税策
実家の相続において、お金の話は避けて通れません。特に税金については、「知っているか、知らないか」で、手元に残る金額が数百万円、場合によっては数千万円単位で変わることもあります。
この章では、まず相続の際に発生する「2種類の税金」について解説し、続いて、その負担を劇的に軽減できる可能性を秘めた「4つの強力な節税策」を具体的にご紹介します。
※本記事は2025年8月時点の情報に基づいています。税制は改正される可能性があるため、最新情報にご注意ください。
そもそも実家の相続でかかる税金は2種類
実家を相続した際に、直接関係してくる税金は主に以下の2つです。それぞれが「いつ」「何に対して」かかる税金なのかを正しく理解しましょう。
① 相続税:遺産全体にかかる税金
相続税とは、亡くなった親から受け継いだ財産の総額に対して課される税金です。実家(不動産)だけでなく、預貯金、株式、生命保険金など、すべてのプラスの財産から借金などのマイナスの財産を差し引いた、正味の遺産額が課税対象となります。
ただし、すべての相続で相続税がかかるわけではありません。
相続税には「基礎控除」という非課税枠があり、遺産の総額がこの範囲内であれば、相続税の申告も納税も不要です。
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
例えば、相続人が配偶者と子供2人(計3人)の場合、基礎控除額は 3,000万円+(600万円×3人) = 4,800万円 となります。遺産総額が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。
② 登録免許税:不動産の名義変更時にかかる税金
登録免許税は、実家の名義を亡くなった親から相続人へ変更する「相続登記」の際に、法務局へ納める税金です。
税額は、その不動産の固定資産税評価額に基づいて計算されます。
登録免許税額 = 固定資産税評価額 × 0.4%
例えば、実家の固定資産税評価額が2,000万円の場合、登録免許税は8万円となります。これは、相続税とは全く別のタイミングで、不動産を取得した人が支払う税金です。
知らないと損する節税策4選
相続税の基礎控除を超えてしまう場合でも、ご安心ください。国は特定の条件を満たす相続に対して、税負担を大きく軽減する特例を設けています。ここでは、実家相続で特に影響の大きい4つの特例をご紹介します。
これらの特例は適用条件が非常に複雑なため、最終的な判断は必ず税理士などの専門家にご相談ください。
【居住・保有向け】小規模宅地等の特例
一言で言うと、実家の土地の評価額を最大80%も減額できる、最も強力な節税策です。例えば、5,000万円と評価された土地が、この特例を使えば1,000万円の評価額で相続税を計算できることになり、税額に絶大なインパクトを与えます。
| 主な適用条件 |
| 亡くなった親の配偶者が相続する場合 |
| 亡くなった親と同居していた子供などの親族が相続し、申告期限までその家に住み続ける場合 |
| 家なき子(過去3年間、持ち家に住んでいない子供など)が相続する場合(※適用条件は非常に厳しい) |
【配偶者向け】配偶者の税額軽減
一言で言うと、亡くなった方の配偶者が遺産を相続する場合に、税額が大幅に軽減される制度です。
この制度により、配偶者は「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」の、どちらか多い金額まで相続税がかかりません。多くのケースでは、配偶者が相続する分には相続税がゼロになります。
| 主な適用条件 |
| 法律上の婚姻関係にある配偶者であること |
| 相続税の申告期限までに遺産分割が完了していること |
【売却向け①】相続空き家の3,000万円特別控除
一言で言うと、相続した空き家を売却した際に、売却益から最大3,000万円を控除できる制度です。
通常、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)には所得税と住民税がかかりますが、この特例を使えば税負担をゼロ、あるいは大幅に軽減できます。
| 主な適用条件 |
| 1981年5月31日以前に建築された家屋であること |
| 相続開始直前まで親が一人で居住していたなど、空き家であったこと |
| 相続開始から3年が経過する年の年末までに売却すること |
| 売却代金が1億円以下であること |
【売却向け②】取得費加算の特例
一言で言うと、相続した財産を売却した際に、支払った相続税の一部を売却時の経費(取得費)として計上できる制度です。
これにより、売却益(譲渡所得)が圧縮され、結果的に所得税・住民税が安くなります。
| 主な適用条件 |
| その財産を相続した際に、相続税を納税していること |
| 相続開始から3年10ヶ月以内にその財産を売却していること |
4.兄弟で揉めない!円満に実家を分割する3つの方法
親が遺してくれた大切な実家。それは家族の思い出が詰まったかけがえのない場所であると同時に、相続においては兄弟間のトラブルの最大の原因になり得ます。
特に、主な相続財産が「実家」しかない場合、物理的に分産をどう分けるかという非けられない不動常に難しい問題に直面します。「誰かが家を継ぐべきだ」という意見と、「法定相続分どおりの現金を公平にもらう権利がある」という意見が対立し、話し合いが難航しがちです。
しかし、どのような分割方法を検討する上でも、絶対に忘れてはならない大前提があります。それは、残された親(例えば、父が亡くなった場合の母)の生活と居住権を最優先で確保することです。長年住み慣れた家を失うことがないよう、配偶者の生活基盤を守った上で、兄弟間の分割方法を冷静に検討していきましょう。
ここでは、具体的な3つの分割方法を解説します。
❶ 代償分割:誰か一人が相続し、他の兄弟にお金を支払う
代償分割(だいしょうぶんかつ)とは、兄弟のうちの一人(例えば長男)が実家をすべて相続する代わりに、他の兄弟(次男や長女)に対して、それぞれの法定相続分に相当するお金(代償金)を自己資金で支払う方法です。
この方法は、実家に住み続けたい相続人がいる場合に有効で、家を売却せずに残せるという大きなメリットがあります。
ただし、最大の課題は、実家を相続する人に他の兄弟へ支払うだけの十分な自己資金(預貯金など)が必要になる点です。代償金が数千万円にのぼることもあり、この資金を準備できないために利用できないケースが非常に多いのが実情です。
❷ 換価分割:売却して現金で分ける
換価分割(かんかぶんかつ)とは、実家を第三者に売却して現金に換え、その現金を相続人全員で法定相続分どおりに分配する方法です。
兄弟の誰も実家に住む予定がない場合や、代償分割に必要な資金がない場合に、最も適した方法と言えます。
1円単位で公平に分割できるため、最もトラブルになりにくいのが最大のメリットです。また、将来の家の維持管理や固定資産税の負担から解放されます。一方で、思い出の詰まった実家を手放すことになる点や、希望の価格で売れるとは限らない点がデメリットとなります。
❸ 共有分割:兄弟全員の名義にする
共有分割(きょうゆうぶんかつ)とは、実家を兄弟2人なら「持分2分の1ずつ」、3人なら「持分3分の1ずつ」というように、全員の共有名義で相続する方法です。
一見すると、全員が平等に権利を持つため公平に思えるかもしれません。しかし、専門家としては将来のトラブルを先送りするだけの、最も避けるべき選択肢だと考えています。
⚠️ 解説:将来の活用を困難にする「共有名義のリスク」
共有名義の最大のリスクは、共有者「全員」の同意がなければ、売却や賃貸といった重要な活用が一切できなくなる点です。
- 活用の停滞:兄弟の一人が反対するだけで、家全体の売却や賃貸はできなくなります。
- 権利者の増加:さらに相続が起きると、権利は甥や姪へと分散します。関係者が増えるほど、全員の意見をまとめるのは絶望的に困難になります。
その場の「公平感」で安易に共有名義を選ぶと、将来、子供たちの代まで続く深刻な問題になりかねません。「とりあえず共有」は避けるべき選択です。
「とりあえず共有名義」が一番危険
その選択は、問題を解決したのではなく、最も厄介な形で問題を先送りしただけです。相談実績6000件超の専門家がご家族に最適な資産管理の解決策をご提案いたします。
5.住まない実家を放置するリスクと賢い活用法
「すぐにどうこうする予定はないから、とりあえずそのままにしておこう」遠方に住んでいたり、仕事が忙しかったりすると、実家の管理を先延ばしにしてしまうのは無理もないことかもしれません。
しかし、その「とりあえず放置」という選択が、思い出の詰まった実家を、経済的にも精神的にも重荷となる「負動産(ふどうさん)」に変えてしまう最も大きな原因なのです。
この章では、空き家を放置することで現実に起こり得る3つの深刻なリスクと、それを回避し、実家を価値ある資産として活かすための賢いアイデアを解説します。
空き家放置は危険!「負」動産になる3つの理由
空き家を「何もしない」という選択は、現状維持ではありません。時間の経過と共に、資産価値は下落し、リスクとコストだけが増加していく、明確な「マイナスの選択」です。
理由①:固定資産税が最大6倍になる「特定空き家」とは
空き家に関する最大の金銭的リスクが、「特定空き家」への指定です。これは、倒壊の危険性が高い、衛生上有害である、景観を著しく損なう、といった状態にある空き家を、自治体が指導・勧告の対象とする制度です。
もし、あなたの所有する実家が「特定空き家」に指定され、自治体からの改善勧告に従わなかった場合、住宅用地の特例(固定資産税を最大6分の1に軽減する制度)が解除されてしまいます。その結果、土地にかかる固定資産税が、翌年から最大で6倍に跳ね上がるという、極めて重いペナルティが科されるのです。
さらに、最終的には行政代執行により強制的に解体され、その費用(数百万円)が所有者に請求される可能性もあります。
理由②:維持管理費や将来の修繕費という継続的な負担
たとえ特定空き家に指定されなくても、空き家を所有しているだけで、お金は静かに出ていきます。
- 税 金:固定資産税・都市計画税
- 保険料:火災保険料(空き家は割高になる傾向)
- インフラ費用:電気・水道の基本料金、浄化槽の管理費など
- メンテナンス費用:庭の草刈り、定期的な清掃、換気のための交通費など
- 突発的な修繕費:台風による屋根の破損、給排水管の凍結・破裂など
これらの費用を合計すると、年間で数十万円の負担になることも珍しくありません。誰も住んでいない家のために、お金を払い続けることになるのです。
理由③:維持管理費や将来の修繕費という継続的な負担
金銭的なリスク以上に深刻なのが、周辺住民とのトラブルや、法的な責任問題です。
- 安全上のリスク:老朽化した家屋の倒壊、瓦や外壁の落下による通行人の負傷事故
- 防犯・防災上のリスク:不審者の侵入、放火、ゴミの不法投棄
- 環境上のリスク:雑草の繁茂による景観悪化、害虫・害獣の発生
もし、あなたの所有する空き家が原因で隣家に損害を与えたり、通行人にケガを負わせたりした場合、所有者として損害賠償責任を問われることになります。これは、金銭だけでなく、社会的信用も失いかねない重大なリスクです。
負の資産にしないための活用アイデア
では、実家を「負動産」にしないためには、どうすれば良いのでしょうか。ここでは、具体的な3つの活用アイデアをご紹介します。
❶ リフォームして賃貸・売却価値を上げる
家自体に価値があり、立地も悪くないのであれば、適切なリフォームを施すことで、資産価値を大きく向上させられる可能性があります。
賃貸に出す場合
水回り(キッチン、バス、トイレ)などを現代のライフスタイルに合わせてリフォームすることで、より高い家賃で、安定した入居者を見つけやすくなります。
売却する場合
購入希望者が魅力を感じるような内装の刷新やクリーニングを行うことで、売却価格がリフォーム費用を上回ることも少なくありません。
➋ 空き家バンクに登録する
空き家バンクとは、主に地方自治体が運営する、空き家を「売りたい・貸したい人」と「買いたい・借りたい人」をマッチングさせるための情報サイトです。
空き家バンクを使うと以下のようなメリットがあります。
- 自治体が運営しているため、無料で登録できる場合が多い。
- 田舎暮らしや古民家での生活を希望する、都心部とは異なる層の購入希望者に見つけてもらえる可能性がある。
- 自治体によっては、空き家の改修に対する補助金制度が利用できる場合もある。
通常の不動産市場では買い手がつきにくいような物件でも、思わぬ希望者と出会える可能性があるため、特に郊外や地方に実家がある場合には有効な選択肢です。
❸ リースバックを利用する
リースバックとは、自宅をリースバック会社に一旦売却し、売却後は賃貸契約を結んで、そのまま同じ家に家賃を払いながら住み続けることができるサービスです。
これは、相続した子供たちが利用するというよりは、「実家に一人残された親が、生活資金や介護費用を確保しつつ、住み慣れた家で暮らし続けたい」といったケースで非常に有効な手段となり、以下のようなメリットがあります。
- 引っ越すことなく、まとまった売却資金を早期に得られる。
- 家の所有権がなくなるため、固定資産税の負担や維持管理の責任から解放される。
ただし、売却価格は市場価格より低くなる傾向があり、毎月の家賃負担も発生するため、利用にあたっては将来の収支計画を慎重にシミュレーションする必要があります。
実家の相続、手遅れになる前に
実家の分け方は、ご家族の未来の関係性を左右する重要な問題です。相談実績6000件超の専門家がご家族に最適な資産管理の解決策をご提案いたします。
6.親の家を相続する際によくあるご質問
この記事では実家相続の全体像を解説してきましたが、ここでは、読者の皆様から特によく寄せられる具体的な質問とその回答をご紹介します。
Q1.実家は要りませんが、預貯金は相続したいです。実家だけ相続放棄することはできますか?
いいえ、それはできません。相続放棄とは、預貯金などのプラスの財産も、借金などのマイナスの財産も、すべてを放棄する手続きです。特定の財産だけを選んで放棄することは認められていません。
もし実家が不要で、かつ親に多額の借金もない場合、「相続土地国庫帰属制度」の利用も考えられますが、ハードルは非常に高いです。相続放棄をすべきかどうかの判断基準については、下記の記事で詳しく解説しています。
Q2.兄弟で話し合い、とりあえず公平に共有名義で相続しました。何か問題はありますか?
はい、その状態は将来的に非常に大きなリスクをはらんでいます。共有名義の不動産は、共有者「全員」の同意がなければ売却も賃貸もできません。さらに、将来兄弟の誰かに相続が発生すると、権利がその子供たち(甥や姪)へと分散し、関係者が増えることで、合意形成は絶望的に困難になります。
すでに共有名義にしてしまった不動産でも、問題を解決する方法はあります。詳しくは下記の記事をご覧ください。
Q3.相続登記が義務化されたと聞きましたが、具体的にいつまでにやればいいのですか?
相続登記は、「相続で不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」に申請することが法律で義務付けられています。この法律は2024年4月1日からスタートしましたが、それ以前に発生した過去の相続も対象となりますので注意が必要です。
正当な理由なく期限内に登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。ご自身のケースの具体的な期限や、もし期限が迫っている場合の対処法については、下記の記事で詳しく解説しています。
Q4.誰も住む予定がなく、実家が空き家になります。まず何から手をつければよいですか?
まずは、火災保険の見直し(空き家であることを保険会社に通知)、電気・ガス・水道の契約の要否の確認、そして定期的な管理(通風、庭の手入れなど)の計画を立てることが急務です。
空き家を放置すると、税金が最大6倍になる「特定空き家」に指定されるリスクや、急速な老朽化、近隣トラブルの原因になります。具体的な管理方法や、売却、賃貸、解体といった選択肢のメリット・デメリットについては、空き家問題に特化した下記の記事が参考になります。
7.まとめ
- 親の家を相続した際の選択肢は「持ち続ける」か「手放す」かの2つに大別され、初動の判断が最も重要であること
- 相続手続きは5つのステップで進めるが、「相続登記の義務化」と「10ヶ月の相続税申告期限」が二大重要ポイントであること
- 4つの税金特例を正しく活用すれば、相続税を数百万円~数千万円単位で圧縮できる可能性があること
- 安易な「共有名義」は将来のトラブルの元凶であり、円満な分割には「代償分割」「換価分割」が有効であること
- 住まない実家を放置すると「特定空き家」に指定され、固定資産税が最大6倍になるリスクがあること
このように、親の家の相続には税金、法律、そして家族の感情が複雑に絡み合います。良かれと思って選択したことが、かえって将来のトラブルの火種になることも少なくありません。
この記事をお読みになり、ご自身の状況に合わせた最善の策を知りたい、あるいは手続きに少しでも不安を感じる場合は、決して一人で抱え込まないでください。専門家への相談が、あなたとご家族の未来を守る、最も確実な一歩となります。お気軽にご相談ください。












司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士




















































































































































