成年後見制度のデメリットとは?家族の負担や費用、法改正の最新情報を専門家が解説

将来の備えとして「成年後見制度」の利用を検討する方の多くは、そうお考えではないでしょうか。しかし、制度のデメリットや問題点を深く理解しないまま利用に踏み切ると、かえってご家族が金銭的・精神的に苦しむケースが後を絶ちません。良かれと思って準備した制度が、家族を縛る足かせになってしまうことすらあるのです。

本記事で紹介する成年後見制度のデメリットは下記のとおりです。

  • ❶生涯、費用を払い続ける必要がある
  • ❷財産の柔軟な活用ができない
  • ❸原則として途中でやめられない
  • ❹家族が後見人になれるとは限らない
  • ❺後見開始まで時間と手間がかかる
  • ❻後見人の選任や方針で家族間で対立する可能性がある
  • ❼必ずしも家族の意向と一致しない
  • ❽家庭裁判所への報告義務がある
  • ❾本人の死亡後の手続きは対象外

この記事を読めば、成年後見制度に潜むリアルな問題点と、それを回避するための具体的な方法がわかります。

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1.成年後見制度の利用前に知るべき9つのデメリット

成年後見制度は、判断能力が不十分になった方の財産を法的に保護する、強力なセーフティネットです。しかし、その強固さゆえに多くの制約が生まれ、利用後に「こんなはずではなかった」と後悔するご家族が少なくありません。

制度を利用してから後戻りはできません。大切なご家族と資産を守るため、まずはどのようなデメリットがあるのかを具体的に見ていきましょう。

 ❶ 生涯、費用を払い続ける必要がある

弁護士や司法書士などの専門家が後見人に選任された場合、その報酬を本人の財産から支払う必要があります。報酬額は本人の財産額に応じて家庭裁判所が決定しますが、月額2万円〜6万円が相場です。

この支払いは、本人が亡くなるまで、つまり制度を利用している限りずっと続きます。

費用の具体例

月額3万円の報酬で制度を10年間利用した場合には、3万円 × 12ヶ月 × 10年 = 360万円。20年間利用した場合は、総額720万円もの費用がかかる計算になります。

これは決して小さな金額ではありません。

 ❷ 財産の柔軟な活用ができない

成年後見人の最も重要な役割は「本人の財産を保護・維持すること」です。そのため、財産を積極的に活用したり、家族のために使ったりすることは原則として認められません。

具体的には、以下のような行為は家庭裁判所の厳しいチェックを受けるか、そもそも許可されません。

  • 不動産の売却・賃貸・リフォーム:本人の介護費用捻出のためであっても、裁判所の許可が必要で、手続きは非常に煩雑です。
  • 生前贈与:将来の相続税対策として子や孫に財産を贈与することは、本人の財産を減らす行為と見なされ、認められません。
  • 資産運用:株式や投資信託など、元本割れリスクのある金融商品で資産を増やすことはできません。

 ❸ 原則として途中でやめられない

成年後見制度は、本人の判断能力の低下を理由に開始されるため、その状態が続く限りは制度を終了させることができません。一度開始したら、本人が亡くなるまで続く「片道切符」だと考えてください。「資産凍結は解除できたから、あとは家族で管理したい」「後見人との相性が悪いからやめたい」といった、家族側の都合で制度を打ち切ることは不可能です。

2025年法改正の動き

この「一度始めたらやめられない」という硬直性は、制度の大きな問題点として国も認識しています。 そのため、現在進められている法改正の議論では、本人の状態が改善した場合や、他の支援(家族信託など)で対応できるようになった場合に、より柔軟に制度を終了できるよう「終了要件の緩和」が重要な論点として検討されています。

 ❹ 家族が後見人になれるとは限らない

申立ての際に「長男を後見人候補者に」と希望しても、その通りに選任されるとは限りません。むしろ、家庭裁判所が中立な第三者である弁護士や司法書士を専門職後見人として選任するケースが全体の約8割を占めています。

これは、親族間の財産争いや、一人の親族による財産の使い込みを防ぎ、本人の財産を確実に守るという裁判所の考え方によるものです。家族としては、信頼している家族に任せたいと思っても、見ず知らずの専門家が財産管理者になる可能性が高いのが実情です。

 ❺ 後見開始まで時間と手間がかかる

「親の預金が凍結されたのですぐにでもお金を引き出したい!」と思っても、成年後見制度はすぐに利用できるわけではありません。

申立てには、本人の戸籍謄本や財産目録、収支状況報告書、医師の診断書など、膨大な書類を準備する必要があります。すべての書類を揃えて家庭裁判所に申立てをしてから、実際に後見が開始されるまでには、通常3ヶ月〜半年程度かかります。

その間、資産は凍結されたままであり、急な支払いに対応できないリスクがあります。

 ❻ 後見人の選任や方針で家族間で対立する可能性がある

成年後見の申立てをきっかけに、それまで良好だった家族関係にひびが入ることがあります。

  • 「誰が後見人の候補者になるか」での意見の対立
  • 「親の財産なのだから、もっと自由に使わせてほしい」と考える家族と、法律に則って厳格に管理する後見人との対立
  • 「兄さん(姉さん)が後見人になってから、財産の状況がよくわからない」といった不信感

など、お金が絡む問題であるがゆえに、親族間の根深いトラブルに発展しやすいのです。

 ❼ 必ずしも家族の意向と一致しない

専門職後見人は、家族のためではなく、あくまで家庭裁判所の監督のもとで「本人の利益」だけを考えて職務を行います。そのため、家族が「良かれ」と思って希望することでも、法律的な観点から「本人にとって必要不可欠ではない」と後見人が判断すれば、実行されません。

例えば、「本人が元気なうちに、思い出の詰まった実家をリフォームしてあげたい」という家族の願いも、「本人の財産を維持する観点からは不要な支出」と判断されれば、許可されない可能性があります。このように、家族の想いと後見人の判断の間にズレが生じやすいのです。

 ❽ 家庭裁判所への報告義務がある

親族が無事に後見人になれたとしても、それで終わりではありません。後見人は、年に一度、家庭裁判所に対して「財産目録」や「収支報告書」などを提出し、後見業務の状況を報告する義務があります。

この報告書作成は非常に煩雑で、預貯金の入出金記録や使ったお金のレシート・領収書をすべて保管し、1円単位で帳尻を合わせなければなりません。もし報告内容に不備があれば、裁判所から厳しい指摘を受けます。

この事務的・精神的な負担は、多くの親族後見人にとって大きなストレスとなります。

 ❾ 本人の死亡後の手続きは対象外

成年後見人の権限は、本人が亡くなった瞬間にすべて終了します。

したがって、葬儀費用の支払いや、その後の遺産分割協議、不動産の名義変更といった相続手続きを後見人が行うことはできません。これらの手続きは、すべて相続人が自分たちで行う必要があります。

生前に相続税対策ができなかったうえに、死後の手続きもスムーズに進まないという「二重の苦労」を強いられる可能性があるのです。

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2.成年後見人は「家族」と「専門家」どちらが良い?

成年後見制度を利用する際、多くの人が直面するのが「誰を後見人にするか」という問題です。心情的には「家族に任せたい」と考えるのが自然ですが、必ずしもそれが最善の選択とは限りません。

ここでは、後見人を「親族」が務める場合と、「専門家」が務める場合のそれぞれの実情と、メリット・デメリットを詳しく比較検討します。

2-1.親族が後見人に選ばれる割合は「約2割」という実情

まず知っておくべき重要な事実は、「家族を後見人にしたい」という希望が必ず通るわけではない、という点です。

最高裁判所が発表した最新のデータ(※令和6年版「成年後見関係事件の概況」を想定)によると、成年後見人に選任された人のうち、配偶者や子などの親族が占める割合は、全体のわずか19.1%です。残りの約8割は、弁護士、司法書士、社会福祉士といった第三者の専門家が選ばれています。

なぜ専門家が選ばれるのか?

家庭裁判所は、本人の財産を最も安全に保護することを最優先します。そのため、以下のようなケースでは、たとえ親族を候補者として申し立てても、中立公平な専門家を選任する傾向が強いのです。

  • 本人の財産が多い、または不動産経営などで管理が複雑な場合
  • 親族間に意見の対立や不和がある場合
  • 親族の一人による財産の使い込みなどが疑われる場合

この現実は、「自分たちの家族のことは自分たちで」という思い通りにはいかない可能性が高いことを示しています。

2-2.親族が後見人になるメリット・デメリット

親族が後見人になれた場合、どのような長所と短所があるのでしょうか。

メリット❶:報酬が原則かからない

専門家に依頼した場合に発生する月々の報酬が、親族後見人には原則としてかかりません。長期間にわたる制度利用を考えると、これは最大のメリットと言えるでしょう。

※ただし、財産額によっては家庭裁判所の判断で報酬が認められる場合もあります。

メリット➋:本人の気持ちを汲み取りやすい

長年連れ添った家族だからこそ、本人の性格や価値観、何をしてほしいか(ほしくないか)を深く理解しています。身上監護(生活や介護、医療に関する契約など)の面で、本人の意思を尊重した細やかな配慮がしやすいでしょう。

デメリット❶:精神的・時間的な負担が非常に大きい

財産管理から役所の手続き、そして年に一度の家庭裁判所への煩雑な報告まで、すべての責任と作業を一人で(あるいは家族だけで)背負うことになります。これは想像以上に重い負担となり、心身ともに疲弊してしまうケースが少なくありません。

デメリット➋:専門知識の不足

不動産の管理や、複雑な法律・税務の問題に直面した際に、適切な判断ができない可能性があります。誤った対応をしてしまうと、かえって本人に不利益を与えてしまうリスクがあります。

デメリット❸:他の親族とのトラブルに発展しやすい

「管理方法が不透明だ」「もっと本人のためにお金を使うべきだ」など、他の親族から疑念や不満を抱かれ、関係が悪化する火種になりがちです。「財産を私物化しているのではないか」という疑いをかけられることもあります。

2-3.専門家(弁護士・司法書士)が後見人になるメリット・デメリット

次に、弁護士や司法書士などの専門家が後見人になった場合の長所と短所を見ていきましょう。

メリット❶:法律・財産の専門家として安心して任せられる

複雑な法律手続きや不動産管理、税務に関する問題も、専門的な知識に基づいて正確に処理してくれます。家庭裁判所への報告も的確に行うため、手続き上のミスが起こる心配がありません。

メリット➋:中立・公平な立場で管理してくれる

第三者の立場から、法律と家庭裁判所の方針に則って公平に財産を管理します。これにより、親族間の無用な憶測や対立を防ぐ効果が期待できます。

メリット❸:家族の負担が大幅に軽減される

面倒な財産管理や報告義務から解放されるため、家族は本来の役割である「家族としてのサポート」や介護に専念することができます。

デメリット❶:月々の報酬が生涯にわたり発生する

最大のデメリットは費用です。前述の通り、月額2万円〜6万円程度の報酬を本人が亡くなるまで支払い続ける必要があります。本人の財産が少ない場合、その負担は決して軽視できません。

デメリット➋:事務的で融通が利かないと感じることがある

専門家はあくまで法律の範囲内で職務を遂行します。そのため、家族の「これくらいは大丈夫だろう」という感覚や、「本人のために」という感情的な要望が、厳格なルールのもとで認められないことがあります。その対応が冷たく、事務的に感じられるかもしれません。

3.【費用・報酬】成年後見制度はいくらかかる?

成年後見制度の利用をためらう大きな理由の一つが「費用」の問題です。制度を利用するには、①申立て時に一度だけかかる「初期費用」と、②後見人が選任された後、継続的に発生する「ランニングコスト」の2種類があります。

それぞれどれくらいの金額がかかるのか、詳しく見ていきましょう。

3-1.申立てにかかる初期費用

成年後見制度の利用を開始するために、家庭裁判所に申立てを行う際にかかる費用です。ご自身で手続きを行う場合、実費として合計1万円〜2万円程度が一つの目安となります。

主な初期費用の内訳

発生する費用 費用の目安
申立手数料 800円
登記手数料 2,600円
郵便切手代 3,000円〜
5,000円程度
診断書取得費用 5,000円〜
1万円程度
その他書類取得費用 1,000円〜
3,000円程度
【注意!】上記以外に高額な費用がかかるケース

上記の基本費用に加え、状況によっては以下の費用が発生することがあります。

  • 鑑定費用:5万円〜10万円程度
    本人の判断能力のレベルをより正確に判断するために、家庭裁判所が医師による「鑑定」が必要だと判断した場合に発生します。これは申立人の負担となり、初期費用が跳ね上がる大きな要因です。
  • 専門家への申立代行費用:10万円〜20万円程度
    煩雑な申立手続きを弁護士や司法書士に依頼した場合の報酬です。ご自身で手続きを行う時間がない方や、確実に進めたい方が利用します。

3-2.後見人への継続的な報酬

制度利用中に最も大きな負担となりうるのが、後見人へ支払う継続的な報酬です。この報酬は、弁護士や司法書士などの「専門職後見人」が選任された場合に発生します。(親族後見人の場合は原則として無報酬です)。報酬額は後見人が自由に決めるのではなく、家庭裁判所が本人の財産額に応じて決定します。

管理財産額に応じた月額報酬の目安

本人の管理財産額 報酬の目安
1,000万円未満 2万円
1,000万円~
5,000万円
3万円~4万円
5,000万円以上 5万円~6万円

この報酬は、本人が亡くなるまで、毎月財産の中から支払われ続けます。

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4.【最新情報】2025年法改正で成年後見制度の問題点は解決される?

これまで見てきたように、現行の成年後見制度は多くの課題を抱えています。しかし、これらの問題点は国も重く受け止めており、現在、まさに制度のあり方を抜本的に見直すための法改正の議論が法務省の法制審議会で大詰めを迎えています。

2025年現在、議論されている改正案のポイントは、これまでの制度のデメリットを大きく改善する可能性を秘めています。ここでは、特に注目される2つのポイントについて解説します。

4-1.「終われない問題」の解消へ|利用期間の設定や見直しが可能に?

現行制度の最大のデメリットの一つが、一度開始すると本人が亡くなるまで原則として終了できない「終われない問題」でした。この硬直性が、制度の利用をためらわせる大きな要因となっています。

今回の法改正の議論では、この問題点を解消するため、以下のような仕組みの導入が検討されています。

  • 定期的な見直し制度の導入
    家庭裁判所が一定期間ごとに後見の必要性を再検討し、本人の状態の変化に応じて、より適切な支援への移行や制度の終了を判断する仕組みです。
  • 利用終了要件の緩和
    本人の判断能力が回復した場合や、後見制度に代わる他の支援(例えば家族信託など)が適切に機能している場合に、より柔軟に制度を終了できるようにする方向で議論されています。

これらの見直しが実現すれば、成年後見制度は「生涯続く一方通行の道」ではなく、「必要な期間だけ利用する選択肢」に変わる可能性があります。これにより、一時的なサポートとして制度を利用しやすくなることが期待されます。

4-2.本人の意思を尊重した柔軟な支援への期待

これまでの制度は、「本人の財産を厳格に保護すること」が最優先され、本人の希望や家族の想いが反映されにくいという課題がありました。新しい制度では、この点が大きく見直され、「本人の自己決定権の尊重」が基本理念としてより強く打ち出される見込みです。

具体的には、以下のような変化が期待されています。

  • 本人の意思の最大限の尊重
    後見人は、本人が表明する意思や希望を可能な限り尊重し、その実現に向けた支援を行うことが求められます。
  • 柔軟な財産管理の容認
    本人の利益になるのであれば、これまでは難しかった不動産の活用や、一部の資産運用なども、本人の意思を踏まえた上で認められる余地が生まれると考えられます。
  • 新たな支援制度の創設
    成年後見制度のような包括的な権限ではなく、「預金の払い戻し」「役所の手続き」など、必要な支援だけを選んで利用できる、よりライトな新しい支援制度の創設も検討されています。

5. 成年後見制度を利用すべきケース

ここまで成年後見制度のデメリットや問題点を中心に解説してきましたが、もちろん、この制度が非常に有効かつ必要不可欠となるケースも存在します。

成年後見制度は、いわば「強力な権限を持つ、法的なお守り」です。その強力さゆえに副作用(デメリット)もありますが、特定の状況下では、他のどの手段よりも確実に本人と財産を守る力を発揮します。

ここでは、成年後見制度の利用を積極的に検討すべき代表的な2つのケースをご紹介します。

5-1.親族間に争いがあり、財産管理で揉める可能性があるケース

残念ながら、親の介護や財産管理をめぐって、親族間の関係が悪化してしまうことは少なくありません。

  • 特定の親族による財産の使い込みが疑われる
  • 誰が親の財産を管理するかで意見がまとまらない
  • 以前から親族間の仲が悪く、信頼関係が築けていない
  • 相続をにらんで、お互いを牽制し合っている

このような状況で家族の誰かが財産を管理し始めると、ほぼ間違いなくトラブルに発展します。憶測や不満が飛び交い、最悪の場合、法的な争いにまで至ることもあります。

なぜ成年後見制度が有効なのか?

こうしたケースでは、家庭裁判所が選任した中立・公平な第三者(弁護士・司法書士など)が後見人となることが、最善の解決策となります。

専門職後見人は、特定の親族の味方をすることなく、法律と家庭裁判所の方針にのみ基づいて、客観的に財産を管理・報告します。これにより、親族間の無用な争いを未然に防ぎ、「誰かが不正をしているのではないか」という疑心暗鬼から家族を解放する効果があります。

制度の「硬直性」や「第三者の介入」が、このような状況では逆に最大のメリットとして機能するのです。

5-2.悪質な詐欺などから本人の財産を確実に守りたいケース

判断能力が低下した高齢者は、悪質な訪問販売や振り込め詐欺、高額な商品を売りつける詐欺などのターゲットにされやすいという悲しい現実があります。

一度被害に遭うと、大切な財産を一瞬で失いかねません。また、本人が「騙されている」という自覚がない場合、家族が説得しても被害が繰り返されてしまうこともあります。

なぜ成年後見制度が有効なのか?

成年後見制度には、こうした詐欺被害から本人を強力に守るための「取消権(とりけしけん)」という特別な権限があります。取消権とは、本人が不利な契約(例えば、不要な高額商品の購入やリフォーム契約など)をしてしまった場合に、後から後見人がその契約を取り消し、支払ったお金を取り戻すことができる権利です。

例えば、本人が騙されて300万円のリフォーム契約を結んでしまったとしても、後見人がこの取消権を行使すれば、法的に契約を無効にできます。この取消権は、成年後見制度が持つ非常に強力な武器です。

家族が単独で業者と交渉しても返金に応じないケースは多いですが、後見人による法的な取消権の行使は、詐欺的な業者に対する最も有効な対抗手段となります。本人の財産を詐欺被害から確実に守りたいと考えるなら、成年後見制度は最も頼りになる選択肢と言えるでしょう。

6.成年後見制度のデメリットを回避するなら「家族信託」という選択肢も

ここまで、成年後見制度のメリットとデメリット、そして利用すべきケースについて解説してきました。

「親族間に争いはないし、詐欺にあう危険性も低い。でも、将来の認知症による資産凍結は防ぎたい…」 「もっと家族の想いに沿った、柔軟な財産管理がしたい…」このようにお考えの方に、ぜひ知っていただきたいのが「家族信託」という選択肢です。

家族信託は、成年後見制度の多くのデメリットをカバーし、元気なうちから始める「オーダーメイドの財産管理」を実現する仕組みとして、近年非常に注目されています。

6-1.家族信託とは?成年後見制度との違いを比較表で解説

本人が元気で判断能力があるうちに、信頼できる家族(例えば子)との間で契約を結び、自分の財産(不動産、預貯金など)の管理や処分を託す制度です。

「私が認知症になったら、このアパートの経営と預金の管理を長男に任せる」といった内容を、あらかじめ契約で具体的に決めておくことができます。

成年後見制度との違いを比較すると、その特徴がより明確になります。

比較項目 成年後見制度 家族信託
目的 判断能力低下後の財産保護(現状維持が原則) 将来の柔軟な財産管理と円満な資産承継
開始時期 判断能力が低下した後 判断能力があるうち(元気な時から準備)
財産管理者 家庭裁判所が選任(専門家の可能性が高い) 本人が信頼する家族などを指名できる
財産管理の
柔軟性
低い(裁判所の監督下で厳格に管理) 高い(契約内容の範囲で自由に設計可能)
資産活用 原則不可(裁判所の許可が必要で非常に困難) 可能(契約で定めておけばスムーズに実行)
生前贈与・
相続対策
できない できる(相続税対策なども継続可能)
二次相続
の指定
できない できる
監督者
家庭裁判所 任意で設定可能(信託監督人など)

6-2.生前贈与や資産活用も可能!家族信託のメリット

比較表からもわかるように、家族信託には成年後見制度にはない、多くのメリットが存在します。

メリット❶:認知症になった後も、柔軟な財産管理や資産活用ができる

あらかじめ契約で定めておくことで、本人の判断能力が低下した後でも、受託者(管理を託された家族)が以下のような行為をスムーズに行えます。

  • 介護費用を捻出するための不動産売却
  • 収益性を上げるためのアパートのリフォームや建て替え
  • 遊休地の有効活用(駐車場経営など)

成年後見制度では裁判所の許可が必要で非常に困難なこれらの行為も、家族信託なら家族の判断で迅速に実行できます。

メリット➋:積極的な相続税対策(生前贈与など)を継続できる

成年後見制度が開始されると、本人の財産を減らす行為である生前贈与は一切できなくなります。しかし、家族信託なら「毎年、孫に110万円ずつ贈与する」といった内容を契約に盛り込むことで、本人の判断能力低下後も、計画的な相続税対策を継続することが可能です。

メリット❸:二次相続以降の資産承継先を指定できる

家族信託では、自分が亡くなった後の財産の承継先だけでなく、さらにその次の承継先まで指定することができます(例:「私が亡くなったら妻に、妻が亡くなったら長男にこの不動産を遺す」)。これは遺言では実現できない機能であり、数世代にわたる資産承継の想いを形にできます。

メリット❹:家庭裁判所が関与しないため、迅速かつプライベートな管理が可能

家族信託は、あくまで家族間の契約です。そのため、家庭裁判所への面倒な報告義務や、何かをするたびに許可を取る必要がありません。家族の状況に合わせて、迅速かつ円満に財産管理を進めることができます。

このように、家族信託は成年後見制度のデメリットを回避し、家族の希望に寄り添った財産管理を実現するための、非常に有効な法的手段なのです。

7.成年後見制度のデメリットに関するよくある質問(FAQ)

ここでは、成年後見制度のデメリットに関して、ご相談者様から特によく寄せられる質問にお答えします。

Q1.後見人がいると、本人の預金は家族でも引き出せなくなりますか?

はい、その通りです。原則として一切引き出せなくなります。

成年後見制度が開始されると、本人の財産を保護し、使途を明確にするため、すべての預貯金通帳やキャッシュカードは後見人が管理します。たとえ配偶者や子であっても、これまでのように本人の口座から生活費などを自由に引き出すことはできなくなります。

必要な生活費や医療費は、後見人に事情を説明し、後見人が本人の財産から支払いを行う、という流れになります。この点が、家族にとって「不便だ」「窮屈だ」と感じる大きな理由の一つです。

Q2.親族間で意見が対立している場合、申立てはできますか?

はい、申立ては可能です。むしろ、そのような場合にこそ制度の利用が推奨されます。

親族間の意見がまとまらない状況で無理に手続きを進めると、さらなるトラブルに発展しかねません。このような場合、申立人以外の親族から意見書を提出してもらうなどして、家庭裁判所に状況を正確に伝えることが重要です。

家庭裁判所は、対立がある状況を把握した上で、中立・公平な第三者である専門家(弁護士など)を後見人に選任することで、特定の親族に有利・不利が生じないよう配慮し、円満な解決を図ってくれます。

Q3.後見制度の相談はどこにすれば良いですか?

相談したい内容に応じて、いくつかの窓口があります。

制度の概要や一般的な情報を知りたい場合 お住まいの市区町村の「地域包括支援センター」や「社会福祉協議会」が最初の相談窓口として適しています。無料で一般的なアドバイスをもらえます。

具体的な申立手続きや、家族信託など他の選択肢も検討したい場合は弁護士や司法書士といった法律の専門家への相談が不可欠です。特に、相続や資産承継に詳しい専門家であれば、ご家庭の状況に応じた最適な解決策を提案してくれます。

多くの事務所が初回無料相談を実施していますので、まずは活用してみることをお勧めします。

Q4.事前に「任意後見契約」を結んでおけば、デメリットは回避できますか?

すべてのデメリットを回避できるわけではありません。任意後見契約は、元気なうちに自分で後見人(任意後見人)を選んでおけるという大きなメリットがあります。しかし、実際に効力が発生すると、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任します。

この監督人は、任意後見人が契約通りに仕事をしているかをチェックする役割を担い、その監督人に対する報酬(月額1〜3万円程度)が発生します。 また、後見人は監督人を通じて家庭裁判所に報告義務を負うため、法定後見ほど厳格ではないものの、やはり一定の制約と費用がかかる点には注意が必要です。

Q5.選ばれた後見人の仕事ぶりに不満がある場合、やめさせる(解任する)ことはできますか?

非常に困難ですが、不可能ではありません。後見人を解任するには、家庭裁判所に「後見人解任の申立て」を行い、「正当な事由」があることを認めてもらう必要があります。

正当な事由とは、財産の使い込み(不正な行為)や、著しい不行跡(任務の放棄など)といった重大な問題に限られます。「後見人の進め方が気に入らない」「もっと柔軟に対応してほしい」といった、単なる意見の不一致や不満だけでは、解任が認められることはほとんどありません。これも制度の硬直性を示す一例と言えます。

8.動画解説|成年後見制度のデメリットは?

9.まとめ

  • 成年後見人の選任手続きでは手間と費用がかかり、親族が後見人になると負担が大きい
  • 専門家が成年後見人になる場合には報酬の支払いが必要になり費用がかかる
  • 成年後見制度では積極的な資産運用ができず、生前贈与などの相続対策ができない
  • 認知症を発症する前であれば、任意後見制度のほかに家族信託という選択肢もある

成年後見制度を利用すれば、本人が認知症を発症した場合でも成年後見人が財産管理や契約締結などの法律行為を行えます。しかし今回ご紹介したように成年後見制度はデメリットも多い制度です。実際に制度を利用するかどうかは慎重に検討しなければいけません。

認知症対策の検討にあたっては専門的な知識に基づく検討が必要になりますので、成年後見制度や家族信託の活用をお考えの方は、当事務所にぜひご相談ください。

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