認知症の家族の後見人になれる?成年後見人に選ばれる基準や注意点を解説

認知症の家族が判断能力を失った場合、成年後見制度を利用して後見人を選任することが考えられます。多くの方は、「家族だから自分が後見人になれるのではないか」と考えるかもしれません。しかし、実際には家族が成年後見人に選ばれるケースは限られています。

記事のポイントは下記のとおりです。

  • 認知症の家族の成年後見人になるには、家庭裁判所の審判が必要
  • 家族が成年後見人に選ばれる割合は全体の約18%程度だが、家族が候補者として申し立てを行った場合の選任率は高い
  • 成年後見人の主な仕事は財産管理と身上監護、家庭裁判所への報告
  • 家族が成年後見人になるメリットには、本人の希望が叶った財産管理などができ、コスト削減されること
  • 成年後見人になると辞任が難しく、長期的な責任を負う
  • 成年後見制度以外の選択肢として、家族信託の活用がある

成年後見制度は、認知症の家族の財産と生活を守るための仕組みです。制度の内容と家族後見人の役割について解説します。

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1.成年後見制度の基礎知識

成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な人を法律的に保護し、支援するための制度です。この制度の主な特徴を4つに絞ると、以下のようになります。

  • 成年後見制度には、判断能力低下後に利用する法定後見制度と、将来に備えて事前に契約を結ぶ任意後見制度の2種類ある。
  • 成年後見人等は、本人の財産管理だけでなく医療・介護等の身上保護も行える。
  • 成年後見人等は、本人の状況を考慮して家庭裁判所が選任する。親族以外にも、専門家や法人が選ばれる可能性もある。
  • 成年後見人等には、定期的に家庭裁判所に報告する義務がある。

この制度により、判断能力が不十分な人の権利を守り、適切な生活環境を維持することが可能になります。詳しくは以下の記事をご参照ください。

1-1.法定後見制度と任意後見制度の違い

法定後見制度は、すでに判断能力が低下している人のための制度です。家庭裁判所が本人の状況を考慮して後見人を選任します。法定後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があります。

一方、任意後見制度は、将来の判断能力低下に備えて、判断能力があるうちに自分で後見人を選び、契約を結んでおく制度です。本人が健康なうちは通常の生活を続け、判断能力が低下した際に、家庭裁判所で任意後見監督人を選任することで、任意後見人によるサポートが始まります。

法定後見制度と任意後見制度の主な違いは以下の通りです。

法定後見制度 任意後見制度
開始時期 判断能力が低下した後 判断能力があるうちに契約
後見人の選任 家庭裁判所が選任 本人が選定
後見人の権限 法律で定められた広範な権限 契約で定めた範囲内の権限
取消権 あり なし

2.成年後見人になれる人

法定後見制度では、家庭裁判所が成年後見人を選任します。基本的に、未成年者や破産者、被後見人に対して訴訟をしている者、またはした者とその配偶者および直系血族などの欠格事由に該当しない成人であれば、誰でも成年後見人になる資格があります。

家庭裁判所は、本人の財産管理や身上保護を適切に行える人物を成年後見人として選任します。多くの場合、以下のような人物が選ばれます。

  • 本人の配偶者や子、兄弟姉妹などの親族
  • 弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家
  • 法人(社会福祉法人や弁護士法人など)

一方、任意後見制度では、本人が判断能力のあるうちに、将来の成年後見人(任意後見人)を自由に選ぶことができます。任意後見人になれる人の条件も、法定後見制度の欠格事由に該当しないことです。この制度を利用すれば、本人が信頼する家族を任意後見人に指定することができます。

3.家族が後見人になるための判断基準

成年後見制度において、家族が認知症の人の後見人になることは可能ですが、実際に選ばれる割合は近年減少傾向にあります。最高裁判所の統計によると、2022年の時点で親族が成年後見人等に選任されたケースは全体の約18.1%にとどまっています。この傾向は2012年から続いており、専門職が後見人に選ばれるケースが増加しています。

しかし、家族が積極的に後見人候補者として申し立てを行う場合、選任される可能性は比較的高くなります。データによると、家族が候補者として申し立てを行った場合の選任率は約80%に達しています。このことから、家族が後見人になりたい場合は、積極的に候補者として申し立てを行うことが重要だと言えます。

3-1.家庭裁判所が見るポイント

家庭裁判所は、後見人を選任する際に様々な要素を考慮します。家族が後見人として選ばれるためには、以下の判断基準を意識しながら、本人の最善の利益を考えて行動することが重要です。

◆本人との関係性
家庭裁判所は、本人と候補者の関係が良好で信頼関係があるかを重視します。日頃から本人の介護や身の回りの世話をしている家族は、後見人として選ばれやすい傾向にあります。
◆財産管理能力
本人の財産を適切に管理できる能力があるかどうかが重要です。特に、本人の財産が多額である場合や複雑な管理が必要な場合は、より高い能力が求められます。
◆身上保護の適性
本人の生活や療養看護に関する事務を適切に行える能力があるかどうかも判断基準となります。介護の経験や知識がある家族は、この点で評価されやすいでしょう。
◆公平性と中立性
複数の親族がいる場合、特定の親族に偏らず公平に後見事務を行えるかどうかも考慮されます。親族間に対立がある場合、中立的な立場の第三者が選ばれることもあります。
◆年齢と健康状態
後見人候補者の年齢や健康状態も考慮されます。長期にわたって後見事務を遂行できる見込みがあるかどうかが重要です。
◆職業や生活状況
候補者の職業や生活状況が、後見事務を適切に行える環境にあるかどうかも判断材料となります。多忙すぎて十分な時間を割けない場合は、選任されにくい可能性があります。
◆本人の意思
本人に意思表示能力がある場合、本人の希望も考慮されます。本人が特定の家族を後見人として希望している場合、その意思が尊重されることがあります。
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4.後見人の仕事内容は?

成年後見人の仕事は、大きく分けて「財産管理」「身上監護」の2つに分類されます。また、これらの業務を適切に行っていることを証明するため、「家庭裁判所への報告業務」も重要な責務となります。

 ❶ 財産管理

財産管理は、本人の財産を適切に管理し、本人の利益を守ることを目的とします。主な業務内容は以下の通りです。

預貯金と収支の管理
成年後見人は、本人の預貯金口座を適切に管理し、定期的な通帳記帳と残高確認を行います。また、年金や給与などの収入を確認し、公共料金、税金、医療費などの支払いを滞りなく行います。必要に応じて新規口座の開設や不要な口座の解約手続きも行います。
不動産と保険の管理
本人が所有する不動産がある場合、その維持・管理を行い、必要に応じて修繕や改修の手配をします。また、生命保険や医療保険などの契約内容を確認し、必要に応じて契約の見直しや保険金の請求手続きを行います。
相続と税務関連の手続き
本人が相続人となる場合、遺産分割協議に参加し、本人の利益を代弁します。また、確定申告の準備と提出、各種税金の納付など、適切な税務処理を行います。

 ➋ 身上監護

身上監護は、本人の生活や健康、福祉に関する事項を管理し、本人の生活の質を維持・向上させることを目的とします。主な業務内容は以下の通りです。

生活環境の整備と医療対応
本人の居住環境を定期的に確認し、必要な改善を行います。また、医療機関との連絡調整、入退院の手続き、治療方針の決定への関与など、本人の健康管理に関する業務を行います。
介護と福祉サービスの利用
介護保険の申請や更新、ケアプランの確認、各種福祉サービスの申請など、本人が適切なサービスを受けられるよう手続きを行います。必要に応じて施設入所の手続きも行います。
関係者や本人との意思確認
定期的に本人と面会し、可能な限り本人の意思を尊重し、希望や好みを確認します。また、家族や親族、介護サービス提供者、施設職員などと密に連携し、情報を共有しながら最適な支援を提供します。
行政手続き
障害者手帳の申請・更新、生活保護の申請など、必要な行政手続きを行い、本人が受けられる支援を最大限に活用します。

 ❸ 家庭裁判所への報告業務

成年後見人には、家庭裁判所への定期的な報告義務があります。この報告業務は、後見人の職務が適切に行われているかを確認するための重要な手続きです。主な報告業務は以下のようにまとめられます。

就任時の報告
成年後見人に選任されてから1ヶ月以内に、本人の財産状況を調査し、財産目録と年間の収支予定表を作成して家庭裁判所に提出します。これにより、後見業務の基礎となる本人の財産状況を明確にします。
定期報告
通常、年に1回程度、後見等事務報告書を提出します。この報告書には、本人の現在の財産状況、収支状況、生活状況などを記載します。報告の時期や頻度は家庭裁判所の指示に従います。
臨時報告
本人の生活環境に大きな変化があった場合(例:施設入所、住所変更)や、重要な財産処分を行った場合には、その都度家庭裁判所に報告します。特に、本人の居住用不動産を処分する際には、事前に家庭裁判所の許可を得る必要があります。

5.家族が成年後見人になると大変?

成年後見人の選択は、本人の生活と財産を守る重要な決定です。専門家と家族、それぞれの特徴を理解し、本人の状況に合わせて最適な選択をすることが大切です。以下の表は、専門家後見人と家族後見人の主な違いを示しています。

項 目 専門家後見人 家族後見人
費用 月額2~6万円の報酬が必要 基本的に無報酬で可能
専門性 法的手続きや財産管理の専門知識あり 専門知識不足で適切な処理が困難な場合も
信頼関係 一から構築が必要 既存の信頼関係があり安心感がある
対応の柔軟性 手続きが必要で融通が利きにくい 迅速で柔軟な対応が可能
負担 事務手続きを専門的に処理 報告義務や管理業務の負担大
中立性 公平な判断が可能 家族間のトラブルに発展する可能性
プライバシー 第三者に情報開示が必要 家族内で情報管理が可能
財産管理 適切な管理と不正リスクが低い 横領など不正リスクあり

成年後見人の主な業務は財産管理身上監護です。これらには法律・財務知識、医療・福祉制度の理解が必要となります。また、家庭裁判所への定期報告義務があり、継続的な事務作業も発生します。

特に注意すべき点として、一度選任されると特別な理由がない限り辞任が困難です。そのため、自身の生活や仕事との両立を慎重に検討する必要があります。

5-1.後見人を選ぶ際のポイント

後見人を専門家に依頼するか、家族が担うかの判断は、本人の状況や家族の環境によって異なります。以下の表を参考に、ご自身のケースに最適な選択を検討してください。

専門家後見人が望ましい場合

  • 財産規模が大きい(預貯金3,000万円超)
  • 不動産取引など複雑な管理が必要
  • 親族間で意見対立がある
  • 相続問題が関係している

家族後見人が適している場合

  • 預貯金が比較的少額で管理が単純
  • 本人との意思疎通が円滑
  • 日常的な支援が必要
  • 専門家への報酬負担が困難
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6.家族が成年後見人になるための手続き

認知症の家族の成年後見人になるためには、法定後見制度または任意後見制度を利用する必要があります。ここでは、それぞれの制度における手続きの流れと、かかる費用について詳しく解説します。

6-1.法定後見制度の場合の申立手続き

法定後見制度を利用して家族が成年後見人になるためには、まず申立ての準備から始めます。本人の状況を慎重に確認し、後見・保佐・補助のどの類型が適切かを検討します。同時に、申立書、診断書、戸籍謄本、財産目録などの必要書類を揃えます。

準備が整ったら、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。申立ては本人、配偶者、4親等内の親族などが行うことができます。

申立てを受けた家庭裁判所は、本人の判断能力を審査します。審査の結果、家庭裁判所が適任者を成年後見人として選任します。裁判所は本人の最善の利益を考慮して選任を行います。

最終的に、後見開始の審判が下され、確定すると後見が正式に開始されます。同時に、法務局で成年後見登記がなされ、第三者に対しても後見人の権限が公示されます。この一連の手続きには通常、申立てから2~3ヶ月程度かかります。認知症の進行状況によっては、早めに手続きを開始することが重要です。

6-2.任意後見制度の場合の手続き

任意後見制度を活用する際は、本人と任意後見人になる予定の家族が公証役場に出向き、公正証書による任意後見契約を締結するところから始まります。この契約では、任意後見人の権限や報酬などについても取り決めます。

契約締結後は、法務局で任意後見契約の登記を行います。この時点では、まだ任意後見は開始されません。本人の判断能力が低下し、後見の必要性が生じた時点で、任意後見人や親族が家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てを行います。

裁判所は本人の判断能力や状況を確認し、適切と判断した場合に任意後見監督人を選任します。任意後見監督人が選任されると同時に、任意後見契約が発効し、任意後見が正式に開始されます。

6-3.後見制度にかかる費用

法定後見制度、任意後見制度ともに、以下のような費用がかかります。

●申立て費用
・申立手数料:800円
・登記手数料:2,600円(法定後見)、1,400円(任意後見)
・郵便切手代:3,000~5,000円程度
●書類取得費用
・診断書作成料:5,000~10,000円程度
・戸籍謄本、住民票等の発行費用:1通につき数百円程度
●鑑定費用(必要な場合)
・5~10万円程度
●後見人等の報酬
・家族が後見人になる場合は無報酬も可能
・専門職後見人の場合:月額2~6万円程度
●任意後見契約締結費用(任意後見制度の場合)
・公正証書作成費用:1~3万円程度

これらの費用は、原則として本人の財産から支払われます。ただし、本人に十分な資産がない場合は、成年後見制度利用支援事業などの公的支援制度を利用できる場合があります。

7.家族が成年後見人になる際の注意点

認知症の家族の成年後見人になることを検討している方は多いでしょう。しかし、家族が成年後見人になる際には、いくつかの重要な注意点があります。ここでは、特に重要な3つの点について詳しく解説します。

7-1.他の親族からの同意を得る

家族が成年後見人になる際、他の親族からの同意を得ることは非常に重要です。これは法的な要件ではありませんが、後々のトラブルを防ぐために欠かせない手順です。

他の親族から反対意見が出た場合は、丁寧に話し合いを重ね、合意形成を図ることが大切です。場合によっては、専門家を交えた話し合いの場を設けることも検討してください。親族間で合意が得られない場合、家庭裁判所が後見人を選任する際に、専門職後見人が選ばれる可能性が高くなります。

また、後見開始後に親族間でトラブルが生じると、成年後見監督人が選任されたり、最悪の場合、後見人が解任されたりする可能性もあります。

7-2.成年後見監督人が選任される可能性

家族が成年後見人になった場合でも、状況によっては成年後見監督人が選任される可能性があります。成年後見監督人は、成年後見人の職務を監督し、必要に応じて家庭裁判所に後見人の解任を請求する権限を持つ重要な役割です。

成年後見監督人が選任される主な場合は以下の通りです。

  • 本人の財産が高額または複雑な場合
  • 親族間で対立がある場合
  • 後見人の職務遂行に不安がある場合
  • 本人の権利擁護のために特に必要と認められる場合

成年後見監督人が選任されると、後見人は定期的に監督人に報告を行う必要です。成年後見監督人の選任を避けるためにも、適切な後見事務の遂行と、親族間の良好な関係維持が重要です。

7-3.辞任の難しさ

成年後見人に選任された後、その職務を辞任することは非常に難しいという点も重要な注意点です。成年後見人の辞任には家庭裁判所の許可が必要であり、正当な理由がない限り認められません。

辞任が認められる正当な理由としては、以下のようなケースが考えられます。

  • 後見人自身の健康状態の悪化
  • 仕事や転居などによる生活環境の大きな変化
  • 本人との関係の著しい悪化

しかし、単に「負担が大きい」「思っていたより大変だった」といった理由では、辞任は認められません。

このため、成年後見人になることを決意する前に、その責任の重さと長期的な関わりが必要になることを十分に理解しておく必要があります。特に、認知症の家族の場合、症状の進行に伴い介護の負担が増大する可能性も考慮しなければなりません。

8.認知症発症して困るタイミングとは?

家族が認知症になると、症状の程度にもよりますが、周囲の人によるサポートが必要になります。支える側が自身の仕事と介護の両立で苦労する場合や家族も高齢で老老介護になり負担が大きい場合があり、認知症の発症が家族に与える影響は決して小さくありません。

日常生活におけるサポートだけでなく、認知症を発症したときに特に困るのが預金の引き出し、契約の締結、相続における遺産分割協議のタイミングで、対応が必要となることが多いです。

こうした事態に対処するためには、成年後見制度の利用が有効です。前述したとおり、すでに判断能力が低下している場合は法定後見制度を、まだ判断能力がある場合は任意後見制度を検討するとよいでしょう。
また、家族信託も有効な選択肢の一つです。これらの制度を活用することで、本人の財産を守りつつ、必要な契約や手続きを行うことができます。

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8-1.銀行口座から預金を引き出せなくなる

認知症の症状が進行すると、本人の判断能力が低下し、銀行取引に支障をきたすようになります。具体的には以下のような問題が発生します。

  • ATMの操作ができなくなる
  • 銀行窓口での本人確認ができない
  • 口座凍結のリスクが高まる

銀行は顧客の判断能力に疑義が生じた場合、口座を凍結する可能性があります。これは、本人や家族の財産を守るための措置ですが、生活に必要な資金が引き出せなくなるという深刻な事態を招きかねません。

8-2.不動産売却時や施設入所時に契約を結べない

認知症により判断能力が低下すると、法律行為を行う能力(意思能力)が失われます。これにより、以下のような重要な契約行為ができなくなります。

  • 不動産の売買契約
  • 介護施設への入所契約
  • 医療行為の同意

特に実家の売却は、認知症の人の財産管理において重要な選択肢の一つですが、本人の意思能力がないと契約自体が無効となってしまいます。また、介護施設への入所や医療行為の同意など、本人の生活に直結する重要な決定ができなくなることも大きな問題です。

8-3.相続開始後に遺産分割協議ができない

認知症の人が相続人となった場合、遺産分割協議に参加することができません。これは以下のような問題を引き起こします。

  • 遺産分割協議が成立しない
  • 相続財産の管理や処分ができない
  • 他の相続人との関係が悪化する可能性がある

遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。認知症の相続人がいる場合、その人の意思を確認できないため、協議自体が成立しません。その結果、相続財産の管理や処分が滞り、他の相続人との間でトラブルが発生する可能性が高まります。

9.成年後見制度以外の選択肢

認知症の家族の財産管理や身上監護を考える際、成年後見制度以外にも選択肢があります。これらの選択肢を理解することで、家族の状況に最適な方法を選ぶことができます。

9-1.家族信託

家族信託は、認知症に備えた財産管理の方法として注目されています。この制度では、財産の所有者(委託者)が信頼できる家族(受託者)に財産管理を任せることができます。

家族信託のメリット

  • 柔軟な財産管理:成年後見制度と比べて、より自由度の高い財産管理が可能です。
  • 継続的な管理:委託者が認知症になっても、受託者が継続して財産管理を行えます。
  • 相続対策:遺言と同様に、財産の承継先を指定できます。

家族信託のデメリット

  • 身上監護ができない:財産管理のみで、介護や医療に関する契約はできません。
  • 契約時の判断能力が必要:委託者に十分な判断能力がない場合、契約できません。

家族信託は、認知症の進行が軽度の段階であれば締結できる可能性があります。ただし、契約の可否を決めるのは公証人であり、医師の診断だけでは判断されません。

9-2.任意後見制度と家族信託の併用

任意後見制度と家族信託を併用することで、それぞれの制度のメリットを活かし、デメリットを補完することができます。信託財産以外に管理が必要な財産がある場合や、財産管理と身上監護の両方が必要な場合に有効な手段となります。

併用のメリット

  • 財産管理と身上監護の両立:家族信託で柔軟な財産管理を行いつつ、任意後見制度で身上監護をカバーできます。
  • 相互補完:家族信託で管理できない財産(農地や債務など)を任意後見人が管理できます。
  • 安全性の向上:任意後見人が家族信託の受託者を監督することで、不正防止につながります。

併用のデメリット

  • 手続きの複雑化:二つの制度を利用するため、手続きが煩雑になる可能性があります。
  • コストの増加:それぞれの制度に関連する費用が発生します。

任意後見制度と家族信託を併用する際は、受託者と任意後見人を別々の人物にすることで、利益相反のリスクを減らすことができます。

10.動画解説|成年後見制度を利用する前に必要な知識を総まとめ

11.まとめ

本記事は、将来の認知症に備えたい場合や実際に認知症になった場合に利用できる成年後見制度について解説しました。内容をまとめると以下のようになります。

  • 認知症の家族の成年後見人になるには、家庭裁判所の審判が必要
  • 家族が成年後見人に選ばれる割合は全体の約18%程度だが、家族が候補者として申し立てを行った場合の選任率は高い
  • 成年後見人の主な仕事は財産管理と身上監護、家庭裁判所への報告
  • 家族が成年後見人になるメリットには、本人の希望が叶った財産管理などができ、コスト削減されること
  • 成年後見人になると辞任が難しく、長期的な責任を負う
  • 成年後見制度以外の選択肢として、家族信託の活用がある

成年後見制度は、認知症を発症するなど判断能力が低下した人を支えるための制度であり、認知症になった本人だけでなくその家族にとっても支えとなる制度です。親が認知症を発症した場合や、万が一認知症を発症した場合に備えたい場合には、成年後見制度の利用を検討してみましょう。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

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