家族信託の手続きを自分でやるには?契約書作成から口座の準備、登記までの方法を解説

家族信託は、家族内で財産を効率的に管理・継承する仕組みとして注目されています。多くの方が弁護士や司法書士、税理士などの専門家に依頼して手続きを進めますが、一方で「自分でできる範囲で手続きをしたい」と考える方も少なくありません。専門家に依頼することで確実な手続きが可能ですが、それにはそれなりの費用がかかります。

今回の記事のポイントは次の通りです。

  • 家族信託は自分でやることも可能だが、専門的な知識と手続きが必要
  • 自分でやる場合には、公正証書での信託契約書作成や不動産の信託登記に一定のコストがかかり、具体的な費用は信託財産の種類や評価額によって変わる
  • 自分でやる際のステップとしては、①家族信託の内容を決める、②信託契約書を作成する、③信託した財産の管理の準備、④家族信託契約後に行う手続きがある
  • 家族信託を自分で手続きする場合には、事前に他の資産管理・相続対策と比較して最適な選択であるかを確認する点、最新の法的情報をしっかりとチェックする点、自分で手続きする際のリスクと専門家に依頼する場合のメリット・デメリットをしっかりと比較すべき

今回の記事では家族信託の手続きを自分で行う方法について、契約書の作成から信託に必要な口座の準備、不動産が関わる場合の登記手続きまで詳しく解説します。

目次

1.家族信託の手続きは自分でやってもよい?

家族信託の手続きは、基本的には専門家に依頼することが一般的です。
しかし、法律により専門家でなければ作成することができないルールはありません。そこで、相続や家族信託に関する知識やスキルがあれば、自分で行うことも可能です。それでは、自分で手続きをする場合のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

1‐1.家族信託を自分でやるメリット

家族信託を自分でやるメリットとしては、次の通りです。

費用の節約

専門家に依頼する場合にかかる費用を抑えることができます。
自分で手続きができれば、専門家報酬の節約ができ、家族信託に関する実費(公正証書作成費用、信託登記に関する登録免許税)のみの負担で手続きができます。家族信託に関する実費については、後述します。

家族信託契約の内容を秘匿できる

外部の第三者を交えて家族信託をするとなると、司法書士、行政書士などの専門家のほか、公証人、金融機関などに資産状況や家族構成などを伝えなければなりません。守秘義務があるのでそこまで不安に感じる必要はないかもしれませんが、人によっては第三者に伝えたくないと感じる方もいます。自分でやれば、個人の情報を最低限の人に限定して伝える形で信託契約を作れます。

家族信託の仕組みを学びながら、契約内容を自由につくれる

家族信託手続きを自分で行うことで、家族信託の仕組みについて深く理解することができます。また、自分で信託契約書を作成し管理するため、契約条項の細かな調整や変更がスムーズに行えます。

1‐2.家族信託を自分でやるデメリット

家族信託を自分でやるデメリットとしては、次の通りです。

専門的な知識と経験が求められる

法的な要件や税制に関する深い知識とスキルが必要です。家族信託の手続きは、民法、信託法、相続税法などの専門知識が求められます。自分一人で誤った信託契約書をつくってしまうと、下記のような問題が発生する可能性があります。

  • 本来支払う必要がない贈与税や相続税などん税金が課税されてしまう
  • 家族信託した財産の管理や処分、資産承継ができない
  • 金融機関など取引相手に信託契約書を提示しても受け付けてもらえない
  • 信託変更や信託終了ができない信託契約書にしてしまったため、間違いがあっても訂正できない

インターネットや書籍で公開されている契約書の見本や雛形も、そのご家族の事情ごとに作られています。見本や雛形の内容を打ち換えて作成する方法だと、そのご家族にとっては間違った契約書になっている可能性もあり、問題が生じるリスクがあります。

家族信託には専門的な知識や経験が必要なため、専門家に相談して進めるのがベストです。

時間と労力

家族信託における適切な手続きを行うためには、念入りに専門的知識と情報収集にかける時間が必要です。
実際の手続きも必要書類の収集、契約書案の作成のほか、公証役場や金融機関の手続きなど多くの時間と労力が必要になります。信託契約の内容に不備があると、契約自体が無効とされてしまう可能性があります。また、不動産を信託財産とした場合、信託登記が必要です。登記の方法や信託の登記事項は法律で規定されており、法務局への対応にも時間と労力が多くかかります。

信託契約後に発生するリスク

専門家に依頼するよりも、手続きの過程でのミスのリスクが高まります。

信託契約書作成だけでは家族信託は完了しません。家族信託の効力は長期間にわたりご家族の財産管理・資産承継に影響を及ぼします。その後の財産管理のほか、後の信託財産の売却などの処分や、本人死亡後の信託変更、終了などを将来見据えた対策内容を信託契約書の条項に盛り込む必要があります。条項が一部漏れている、誤っていることにより法的・税務的な問題が発生するリスクがあります。

自分で家族信託の手続きを行う場合には、以上のようなメリットとデメリットをしっかりと理解した上で進めることが重要です。

2.家族信託の手続きを自分でやる方法と注意点

家族信託を専門家に依頼せず、自分でやる際の手順は次の通りです。手続きの内容と注意点を解説します。

2‐1.家族信託の内容を決める

家族信託を自分で手続きする際には、まず、家族信託の内容を設計することです。
家族信託は契約内容を自由に定めることができます。そのため、それぞれの家庭状況や財産の状態に合わせて、契約内容を決めていく必要があります。、家族信託を導入する場合、委託者と受託者だけでなく、その他の子供など、関わる方と意見調整することが必須です。

家族信託の目的

家族信託を考える際、一番最初にすべきなのはその目的を明確にすることです。

何のために家族信託を設定するのかが明確でないと、その後の手続きが曖昧になり、結果的には本来の目的を達成できない可能性が高まります。さらに、目的が明確であれば、それに応じた最適な手段や契約内容が見えてくるため、家族全員が安心して進めることができます。

家族信託でよく設定される目的
  • 認知症対策
    親や配偶者が認知症になった場合でも、事前に設定された家族信託によって、財産管理や生活費の確保がスムーズに行えます
  •  相続のトラブル回避対策
    遺言が存在しない場合や、将来的に相続トラブルが予想される場合、誰に信託財産を引き継ぐのか、家族信託は事前に資産承継先を示す有力な手段となります
  • 障害を持つ子どもの将来の生活費支援
    障害を持つ子どもがいる場合、その将来を確実にするためにも家族信託が役立ちます
  • 自社の事業承継対策
    自分が経営する企業をスムーズに次世代に引き継ぐための自社株式の承継、資金確保や計画にも、家族信託は有用です。

例えば、親が高齢で認知症の可能性が高まってきた場合、その親の医療費や介護費を安心して供給できるように家族信託を設定することは目的を達成する良い手段となります。一方で、「親の財産を生前から子供に渡したい」という目的が主であれば、生前贈与など他の方法が適しているかもしれません。

家族信託の目的を明確にするためには、家族全員での話し合いが不可欠です。
特に、長い期間にわたり影響を受ける可能性があるため、皆が納得できる目的とそれに応じた計画を立てることが重要です。
このように家族信託の目的を明確に設定する作業は、後の手続きを円滑にし、家族全員が安心して未来を迎えるための基盤となります。家族信託が目的に合った最適な手段であるかどうかを確認した上で、具体的なプランを練っていくことが求められます。

信託財産

信託の目的が明確になった後、次に取り組むべきは信託財産の選定です。どの財産を管理するのかを決めます。

家族信託では、財産は基本的に「信託財産」と「信託財産以外」の二つに分かれます。

この段階でどの財産を信託に組み込むのか、またどの財産を組み入れないのかを明確にすることが重要です。信託に託された財産は、受託者が契約に基づき管理や処分の権限を持つものとなります。それ以外の財産に関しては、受託者は一切の権限を持ちません。非信託財産については民法の一般原則に従い、その管理や処分には他の手段(任意後見、遺言、生命保険など)を考慮する必要があります。

一般的な信託財産

家族信託には一般的に以下のような財産が含まれます。

  • 金銭
  • 不動産
  • 株式、有価証券
信託できない財産

一方で、すべての財産が信託できるわけではありません。

  • 農地
    法律により、家族信託の対象とすることが難しく、農業委員会の許可が必要であり、多くの場合、許可が下りないことが多くあります
  • 年金
    本人の名義の預金口座が受け取る口座が限定されており、信託対象にすることはできません
  • 借地権
    借地権の対象が土地の賃借権の場合、地主の承諾がないと借地契約を解除されるリスクがあります。

受託者の権限

信託契約において、受託者の権限範囲は極めて重要な要素です。この権限は具体的な信託目的に基づいて設定され、それにより受託者は委託者の財産を管理または処分します。

信託財産ごとの権限範囲

信託財産ごとに、どのような権限を受託者に与えるか決めておきます。

  • 金銭
    施設費用、日常生活費、ローンの返済など、金銭に関する権限を詳細に定義する必要があります
  • 不動産
    不動産の管理は多岐に渡ります。管理修繕、賃貸、売買、建替え、測量・分筆、担保設定など、どのような活動を受託者に許可するのか明確にしなければなりません
  • 自社株式
    オーナーが持っている自社株についても、議決権の行使など、何を受託者に許可するのかが重要です
受託者の権限の制限

 受託者の権限は、必要に応じて制限を加えることも可能です。家族であっても、他人の財産を管理することには責任と義務が伴います。そのため、どのような行動を受託者が取ることができるのか、制限を設けることで安全性を高めることができます。

権限の範囲設定は家族の目的に密接に関連しています。例えば、不動産を継承させたいが売却は避けたい場合、受託者には管理と賃貸の権限のみを与えるという選択もあります。受託者に与える権限は、信託契約がスムーズに運用されるための重要な要素です。その設定に当たっては、信託する財産の種類、目的、そして家族のニーズに応じて、検討していきましょう。

家族信託の当事者

家族信託においては、「委託者」、「受託者」、「受益者」という三つの主要な役割が存在します。自分で手続きをするためには、それぞれの役割が何であるのか、どのように選定するのかを理解することが重要なポイントです。

委託者

委託者は、自分の財産を管理・運用・処分する任務を受託者に委ねる人です。

受託者

受託者は、委託者から信託された財産を実際に管理・運用・処分する人です。
受託者は通常、配偶者、子ども、兄弟姉妹、甥姪などの親族が選ばれることが多いですが、親族関係がなくても信頼できる人であれば選定することが可能です。

受益者

受益者は、受託者の管理・運用・処分によって発生した利益を受け取る人です。多くの場合、信託契約時に贈与税がかからないように、委託者自身を設定していることがほとんどです。

その他の関係者

加えて、長期間の家族信託を継続することが想定される場合には、「後継受託者」「信託監督人」や「受益者代理人」を設定することもあります。万が一、受託者が先に死亡した場合財産管理を引き継げるように予備的な受託者(後継受託者)を定めておく、受託者の業務が適切になされているか監督するために信託監督人をつける、信託契約の変更や受託者の解任が必要になった時に、本人の代わりに受益者代理人を決めておくなどの対策も検討します。

受託者の選定が重要

受託者は、財産を管理・運用する重要な役割を果たすため、特に信頼性が求められます。もし適切な受託者がいなければ、家族信託の設定自体が困難となり、成年後見、任意後見制度や遺言など他の手段を探る必要が出てきます。

家族信託の期間

家族信託の設定には期間が関わってきます。
何事も、始まりがあれば、当然終わりもあり、信託契約においてもその期間と終わらせ方は非常に重要な要素となります。多くの家族信託は「委託者兼受益者(親)の死亡まで」となる場合が多いです。しかし、特定の状況、例えば認知症の親がいる場合には、「父及び母の死亡」まで信託を続けるといった柔軟な契約設定も考慮されます。

長期間の信託は得策か?

自分で期間を設定できるとはいえ、数十年以上にわたる長期の信託契約はリスクがあります。家族の状況や信託の運用状況、法的な変更など、長い期間で多くの要素が変わる可能性があります。これを考慮しないで長期契約を結ぶと、想定外の事項の発生や問題が起きる可能性が高まります。

信託終了事由の設定

信託契約の終了事由も設定できます。例として、「受益者が死亡するまで」や「受託者及び受益者の合意」などがあります。これにより、信託の目的や家族の状況に合わせて、最も適切な期間と終了条件を設定することが可能です。

信託終了後の財産の帰属先

家族信託が終了した際に、どのように信託財産が分配されるかは、信託契約の締結段階で明確にする重要な事項です。

家族信託の終了は「委託者兼受益者の死亡」によって終了させることが一般的です。その場合、信託財産は通常、信託契約に定めた内容に従って契約で定めた”帰属権利者”に帰属します。万が一、信託終了後の財産帰属先が信託契約締結時点で明確でない場合、信託契約に「相続人で協議する」といった条項を含めることも可能です。

事前に家族信託の内容を決めることは、家族信託を円滑に進め、潜在的な紛争を防ぐために必要不可欠です。この点においては、信託財産だけでなく、その他の財産についても慎重な計画と調整が求められます。信託契約を締結する際は、これらのポイントを十分に考慮し、必要であれば専門家のアドバイスを求めることも検討してみてください。

2‐2.信託契約書の作成と締結

信託契約書の作成は家族信託の重要なステップです。
この契約書には、委託者、受託者、受益者の役割、財産の管理と運用方法、信託の期間と財産の帰属先など、多くの重要な項目があります。契約書の形式も大変重要で、その選択にはいくつかの方法があります。

公正証書で作成する方法

家族信託は公正証書で作成しなけれならないという法律の規定はありません。しかし、安全性を考慮すると公正証書で家族信託契約を作成する方法が一般的です。公正証書で作成するメリットは次の通りです。

本人の判断能力、意思の確認がされる

 公証人が契約者本人の意思を確認するので、契約が本人の意思に基づいていると主張することができます。これが私文書では証明しきれない場合があり、紛争の際に不利になる可能性もあります。

法律のプロである公証人が作成する

法律のプロである公証人が作成するので、様式が整った契約書が作成されます。また、公証役場で契約書の原本が保管されるため、紛失や盗難に遭っても簡単に再発行できます。この点も私文書では難しいです。しかし、公証人は家族や財産関係までは詳しく踏み込まないことが多く、家族関係、作成された背景、税務上のリスクを踏まえたことになっていないこともあるため、その点は注意してください。

信託口口座の開設ができる

公正証書による契約でないと、多くの金融機関で信託口口座を開設できない場合があります。信託口口座は信託財産であると明確に区別し管理されるため、受託者個人の破産や差押、相続の際にも安心です。

これらのメリットを考慮すると、初期費用はかかりますが、公正証書での家族信託契約は、安全性を求める場合に特に推奨されます。

公正証書で作成する際の必要書類

公証役場での手続きでは下記の書類が必要です。

  • 委託者及び受託者の住民票
  • 委託者及び受託者の印鑑証明
  • 委託者及び受託者の実印
  • 委託者及び受託者の身分証明書
  • 信託財産の資料(不動産登記事項証明書、評価証明書など)

そのほか、公証役場によって求められる書類が異なるケースがあります。詳細は公証役場に確認してください。

私文書で作成する方法

家族信託はご家庭のパソコンを活用し、信託契約書(私文書)を作成することもできます。
しかしながら、私文書での作成は、紛失や盗難に備える手段が限られています。さらに、親族や第三者からの本当に本人の意思に基づいて作成したのかとということを主張される訴訟リスクも高まります。信託口口座を開設することも一般的には難しいです。万が一、受託者が破産すると、信託財産を失う可能性が高くなります。

私文書での家族信託契約書は、短期間かつ低コストで設定できる一方で、その後の管理や法的保証に課題が多いです。そのため、契約の内容や信託財産の大きさ、リスクを慎重に考慮した上で選択する必要があります。

家族信託の内容を信託契約書に盛り込む

家族内で決めた家族信託の目的や内容を、書面にして信託契約書を作成します。
公正証書で作成する場合もまずは、信託契約書の案を作成してみましょう。公正証書で作成する場合は、できあがった文案を公正証書であれば公証役場に持ち込みをしましょう。私文書で作成する場合であれば、委託者及び受託者間で署名捺印して作成します。

なお、委託者と受託者が契約者であり、その他の受益者代理人、信託監督人、後継受託者は契約者ではないため、これら第三者を設定する場合には就任候補者の就任承諾書が別途作成し、就任候補者に署名捺印してもらいます。

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2-3.信託契約書の記載内容

信託契約書に記載する内容として、主なものを解説します。

信託契約の趣旨

信託契約の成立の事実を記載します。

サンプル
第〇条(契約の趣旨)
委託者は、第〇条記載の財産を受託者に信託し、受託者はこれを引き受けた(以下「本契約」又は「本件信託」という。)。

家族信託の目的

家族信託の内容として定めた、家族信託により実現したい信託目的を記載します。下記は認知症対策、資産承継目的の場合のサンプルです。

サンプル
第〇条(信託の目的)
本件信託は、委託者の体調変化があったとしても、信託した財産を受益者のために管理・運用・処分を行うことによって財産管理を継続し、受益者の生活・介護・療養・納税等に必要な住まい及び資金を給付し、佐藤家の資産を次代へ円滑に承継させることを目的とする。

家族信託の当事者

家族信託の当事者として決めた「委託者」「受託者」「受益者」を明記します。その他、長期間の家族信託を継続することを想定して、「後継受託者」「信託監督人」や「受益者代理人」を設定した場合は、それらの当事者も記載します。

サンプル
第〇条(受託者)
本件信託の当初受託者は、次の者とする。
氏名
住所
生年月日 昭和  年  月  日生
2 本件信託の受益権は、受託者の同意を得ない限り、譲渡、質入れその他の処分をすることができないものとする。

信託財産

家族信託により受託者が管理等を引き受ける信託財産を明記します。
財産が特定できるように具体的に記載する必要があります。金銭に関しては、具体的な金額を明記します。また、不動産については登記事項証明書に記載されているとおりに記載し、詳細を明らかにします。このようにして、受託者が管理・運用する財産を特定可能にする必要があります。

サンプル
第〇条(信託の目的財産)
本契約で定める財産は、第1号及び第2号に掲げるもの(以下、総称して「信託財産」という。)とする。
(1) 後記記載の不動産の所有権(以下、信託を受けた不動産を「信託不動産」という。)
(2) 金500万円
※契約書の末尾部分において、不動産の登記事項証明書を元に、土地については所在、地番、地目、地積で、建物については所在、家屋番号、種類、構造、床面積等で物件を特定します。

信託財産の管理方法

信託財産をどのように管理、運用するのかを記載します。

サンプル
第〇条(信託財産の管理、運用及び処分の方法)
受託者は、本契約に特段の定めがある場合を除き、次の方法により、信託財産を管理・運用及び処分をする。
(1)委託者及び受託者は、本契約の効力発生以降、速やかに信託不動産について受託者名義に信託を原因とする所有権移転及び信託登記申請手続きを行う。
(2)委託者は、信託金融資産について、信託口口座への移動等を行い、受託者はこの信託口口座において、適切な管理を行う。
(3)受託者は、信託財産の管理を行い、信託金融資産をもって、公租公課、保険料、管理費及び修繕費、敷金保証金等の預り金の返還金、管理委託手数料、登記費用、不動産売却・購入、建物建設・建物解体等に要する費用、その他の本件信託に関して生ずる一切の必要経費等を支払う。
(4)受託者は、受益者の要望又は必要に応じて、受託者が相当と認める受益者の生活・介護・療養・納税等に必要な費用を信託金融資産の中から受益者に随時又は定期的に給付し、受益者の医療費、施設利用料等を銀行振込み等の方法で支払う。
(5)受託者は、信託不動産の維持・保全・修繕を受託者が適当と認める方法、時期及び範囲において行う。
(6)受託者は、信託の目的に照らして相当と認めるときは、信託不動産を換価処分し、又は新たな土地・建物の購入、開発、建設、建替え、解体、土地の境界確定作業等を行うことができる。また、受託者は、これらの土地の地目変更・分筆・合筆及び建物に係る滅失・建物表題等の表示に関する登記、所有権保存・移転等の権利に関する登記その他一切の登記手続きを行うことができる。
(7)受託者は、信託財産につき必要があれば火災保険等の損害保険契約の変更等の手続きを速やかに行う。
(8)受託者は、信託事務遂行に当たり、信託財産を受託者の固有財産と分別して管理し、両財産を混同させてはならない。

受託者の権限及び義務

受託者にどのような権限及び義務を負わせるのか記載します。

第〇条(受託者の権限及び義務)
受託者は、信託事務の一部を受益者の指図に基づき、又は受託者の責任において選任する第三者に委託することができる。
2 受託者は、信託事務に必要な諸費用を立替払いしたときは、信託財産から償還を受けることができる。
3 受託者は、本件信託開始後速やかに、①信託財産目録、②信託財産に関する帳簿等を作成し、本契約期間中、受益者の請求に応じて閲覧に供することができるように保管するものとする。
4 受託者は、受益者に対し、1年ごとに前項①②のほか信託事務に関する事項について書面又は電磁的記録をもって報告するほか、受益者の請求があるときは、速やかにその求められた事項につき報告するものとする。
5 本件信託に係る計算期間は、毎年1月1日から同年12月31日までとし、計算期間の末日を計算期日とする。ただし、最初の計算期間は、本件信託の効力発生日からその年の12月31日までとし、最終の計算期間は、直前の計算期日の翌日から信託終了日までとする。

信託の終了事由

信託の期間、終了事由を記載します。

サンプル
第〇条(信託の終了事由)
本件信託は、次の事由によって終了する。
(1)当初受益者が死亡したとき
(2)受託者及び受益者が合意したとき
(3)その他信託法に定める終了事由が生じたとき(ただし、信託法第164条第1項を除く)

信託財産の帰属先

信託終了後、誰に財産を引き継ぐのかを記載します。財産を引き継ぐ人が先に死亡してしまった時などを想定し、予備的帰属権利者を定めます。また、合意解約など信託を途中で終了した場合を想定して、その際は誰に帰属させるのかも含めて記載しておきましょう。

サンプル
第〇条(終了に伴う残余財産の帰属)
本件信託終了時の残余の信託財産については、下記の者に帰属させる。
帰属権利者 〇〇〇〇
2 前項の場合において、帰属権利者が既に死亡している場合、帰属権利者の権利を放棄した場合その他帰属権利者となることができない場合には、以下に定める者に帰属させる。
予備的帰属権利者 〇〇〇〇
3 前2項の規定にかかわらず、第〇条第〇号又は第〇号により本件信託が終了した場合には、信託終了時の受益者に帰属させる。

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2-4.信託財産管理用の口座を準備する

信託した金銭などの金融資産の管理には専用の口座が必要です。選択肢としては、信託口口座と信託専用口座があります。

信託口口座を利用する方法

信託口口座は、公正証書で契約を結んだ場合に通常選択されます。
この口座は、信託財産を明確に分けて管理でき、受託者の個人資産とは混同されにくいです。また、受託者が破産した場合や死亡した場合でも、信託口口座内の資産は適切に管理を継続できます。

金融機関によっては、信託口口座開設の条件や手数料が必要な場合があるので、事前に条件や手数料を確認しておきましょう。

信託口座開設にあたっての必要書類

金融機関での手続きでは下記の書類が必要です。

  • 信託契約書公正証書案
  • 身分証明書
  • 銀行印

信託口口座開設にあたっては、金融機関の定める条件に信託契約書案の内容が合致しているか確認することがほとんどです。そのため、作成した信託契約書公正証書を持ち込しても口座開設を断られるケースがあります。そのため、信託契約書公正証書案の段階で、金融機関に口座開設の打診をするようにしてください。また、金融機関によって求められる書類が異なります。詳細は金融機関に確認してください。

信託専用口座を利用する方法

信託専用口座は、受託者名義の個人の口座を信託した金銭の管理口座として利用する方法です。
信託専用口座であることをわかるようにするために、管理用口座の口座番号を信託契約書などに明記しておきます。この方法は、公正証書がない場合や、すぐに口座を開設したい場合に便利です。信託口口座は特定の金融機関でしか開設できない場合が多いですが、信託専用口座は一般的な銀行でも設定可能です。ただし、この口座は受託者の名義で用意されるため、先に受託者が破産や死亡した場合、その財産管理ができなくなってしまうなど、法的な保護が少ないため、リスクも高まります。

どちらの口座を選ぶかは、信託の目的、信託財産の規模、受託者と委託者の関係性、さらには時間や費用にかかる制約等を考慮して決定することが重要です。選択した口座タイプによって、信託財産の安全性や管理の容易さが大きく影響を受けるため、慎重な選択が求められます。

用意した信託金銭管理用口座に信託金銭を送金する

口座の選定と開設が完了したら、次は信託する金銭を該当口座に送金します。このステップは、信託の実際の運用を始めるために不可欠です。信託契約書を作成しただけでは、受託者は財産管理をスタートできません。

委託者本人が受託者が準備した信託金銭管理口座に金銭を送金して管理がスタートします。

株式・有価証券管理用口座を準備する

株式や有価証券を信託する場合、そのための管理口座が必要になります。具体的には、委託者が持っている有価証券を管理するための信託口口座を証券会社で開設します。この手続きは、金銭を管理するための通常の信託口口座とは別に必要となります。

証券会社で信託口口座を開設できるのは一部の会社に限られています。2023年8月時点での例としては、野村證券、大和証券、楽天証券、共和証券などがあります。そのため、信託契約を締結する前に、所持している有価証券を管理できる証券会社が存在するか、またその証券会社で信託口口座を開設できるかを事前に確認することが重要です。口座を開設する際には、証券会社が定める条件に合致するような信託契約書を用意する必要があります。上場有価証券を信託できる信託口口座は一部の証券会社でしか開設できない点、そしてその証券会社でも特定の要件を満たす必要がある点に注意が必要です。事前の調査と信託契約書の作成には十分な注意を払い、信託の内容目的と証券会社の要件が一致するように作成する必要があります。

このように、株式・有価証券を信託する場合には、通常の金銭管理とはまた異なる手続きと注意が求められます。適切な証券会社と口座を選び、信託契約をしっかりと作成することで、安全かつ効率的な資産管理が可能となります。

2-5.不動産があれば信託登記をする

信託財産に不動産が含まれる場合には、「所有権移転登記」と「信託登記」の2つの登記が必要です。登記手続きは、不動産の所在地に応じて管轄する法務局で行う必要があります。

この登記手続は、不動産の所有者が委託者から受託者に変更される際に行います。この登記によって、受託者が財産の管理権と処分権を有することが公示されます。所有権移転登記は、法務局に提出する権利証などの書類と、受託者と委託者(通常は親)の関与が必要です。

信託登記の登記事項

信託登記の登記事項は法定されており、特に家族信託の場合には7項目が主要な登記事項となります。

  • 委託者
  • 受託者
  • 受益者
  • 信託の目的
  • 信託財産の管理方法
  • 信託終了の事由
  • その他の条項

登記事項は信託契約書の記載事項から必要な部分を取捨選択して登記します。
登記された内容は、誰でも閲覧できるため、慎重な取り扱いが必要です。特に、将来にわたって信託がどのように運用されるか、その可能性を考慮に入れた上で何を登記するかが重要です。例えば、信託財産としての不動産の将来的な売却を考慮する場合、その条件や制限、受益者代理人の同意が必要な場合などを登記しておくことが求められます。

さらに、プライバシーについても注意が必要です。
「その他の信託の条項」に財産の帰属先など、第三者に見せたくない事項を登記すると、それが公開されてしまいます。そのような場合には、記載内容を工夫して一部を公開しない方法を選択すべきです。

信託登記の必要書類

信託登記には様々な書類が要求されるため、何が必要なのかをしっかりと把握しておく必要があります。以下に、主な必要書類とその詳細を説明します。

  • 固定資産評価証明書または固定資産税課税明細書
    これは不動産の価値を評価するための公式な書類であり、不動産が所在する地域の市区町村役場で発行されます
  • 不動産の権利書(登記済証)または登記識別情報
    権利書が既に発行されている場合はそれを、それ以外の場合は登記識別情報通知書を用意します
  • 登記原因証明情報(信託契約書など)
    信託登記の理由、すなわち「原因」を証明する書類です。一般的には、必要事項が全て記載され、当事者が署名及び押印をしている登記原因証明情報を司法書士が書面で作成します。信託契約書を提出しても構いません
  • 信託目録に記載する情報(CD-Rなど)
    信託契約の登記事項の内容を記載する信託目録が必要です。どのような情報を記載すべきかには専門知識が必要な場合が多く、司法書士への依頼が推奨されます
  • 委託者の印鑑証明書
    3ヶ月以内に発行されたものが必要です
  • 受託者の住民票
    受託者の現住所を証明する書類です。有効期限はありません
  • 委託者の実印と受託者の認印
    各種書類に押印するための印鑑です。委託者は実印、受託者は認印を用います。

手続きが複雑な場合は、専門家である司法書士に依頼することもあります。その際は、委任状も必要になる場合がありますので注意が必要です。

信託登記は司法書士に依頼したほうがおすすめ

このように信託登記は多くの繊細な要点を考慮する必要があり、そのためには専門的な知識と経験が不可欠です。一般の方が自分で登記作業を行うのはリスクが高く、司法書士に相談することをお勧めします。特に、家族信託は家庭内の財産管理や相続、そして登記する内容などが密接に関連するので、家族信託の多くの実績がある司法書士などの専門家の意見を得ることでより適切な登記が可能となります。

当サイトでは、どんな形で預金や不動産を家族だけで管理できる仕組みを作ることができるか、無料相談が可能です。累計4000件を超える相続・家族信託相談実績をもとに、専門の司法書士・行政書士がご連絡いたします。

家族信託、成年後見制度の活用など、ご家族にとってどんな対策が必要か、何ができるのかをご説明いたします。自分の家族の場合は何が必要なのか気になるという方は、ぜひこちらから無料相談をお試しください。

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2‐5.家族信託後に行う手続きと注意点

家族信託が正式に成立した後、受託者は多くの重要な手続きを行う責任を負います。これには、信託財産に関する契約や管理業務が含まれます。

受託者が行う契約は肩書付きで行う

一般的に、個人が契約を行う場合と受託者が契約を行う場合は、その性質が大きく異なります。
受託者として契約を結ぶ場合、その契約は信託財産に対するものであり、受託者個人の財産には影響を与えません。の点を明確にするため、受託者が信託財産の処分行為として締結する契約書やその他の文書では受託者の名前の隣に「受益者〇〇 受託者〇〇」という肩書を明記する必要があります。

信託用管理口座で公共料金等を引き落としする場合は、口座振替手続きをする

信託契約後に、信託財産を管理するための専用の預貯金口座(信託用管理口座)を開設することが一般的です。
この口座は信託財産の明確な分離と適切な管理を目的としており、受託者が責任を持って運用します。水道光熱費や固定資産税など信託用管理口座から引き落としをする場合には、支払い先のサービス提供者に連絡を取り、口座振替の手続きをする意向を伝え、口座からの自動引き落とし設定の手続きをします。

不動産を信託した場合には火災保険の名義変更が必要か確認する

火災保険は、不動産の持ち主、すなわち名義人に対する保険です。信託が成立すると、信託財産(この場合、不動産)の法的な管理者が受託者に移るため、火災保険の名義も変更する必要がある場合があります。名義変更が必要かどうか、保険会社に連絡を取ってください。そして、名義変更が必要であれば、具体的な手続きや必要な書類についても確認することが重要です。

収益物件は入居者へ賃貸人が代わったことを通知する

信託不動産である収益物件を持っている場合、信託が成立した際には、法的な管理者が受託者に変わります。入居者全員に対して新しい賃貸人(受託者)の名前や連絡先、賃貸料の振込先など、変更があるすべての項目を知らせましょう。

信託財産の帳簿作成と収益があれば、毎年信託計算書の提出が必要

信託契約後、受託者は受益者への報告義務などを負います。特に、信託財産から年間3万円以上の収益が得られた場合、次年度の1月31日までに税務署に信託計算書を提出する必要があります。信託不動産からの収益がある場合、確定申告時に関連する明細書も提出する必要があります。

受益者への報告義務

信託期間中、受託者は「信託帳簿」と「信託事務処理に関する書類」を定期的に作成・保管する義務があります。また、最低でも年に1回は「財産状況開示資料」を作成し、受益者に報告する必要があります。

3.家族信託を自分で手続きする際にかかる費用

家族信託を自分で行う場合に係る費用としては、私文書で作成し、金銭のみを管理するといったケースでは、かかる費用は信託契約契約書に貼る収入印紙が1通当たり200円だけです。収入印紙は郵便局、法務局などで購入できます。

実際に家族信託を自分で行う際には、公正証書で信託契約書をつくり、自宅など不動産を信託財産とするケースが多くあります。その場合には、公正証書作成費用と信託登記の際の登録免許税がかかります。以下、上記2つの費用について解説します。

3-1.公正証書で信託契約書を作成する際の費用

信託契約書の作成は、基本的には当事者間の合意で十分ですが、特定のケースでは公正証書の作成が必要となる場合があります。特に、金融機関で正式な信託口口座を開設する際には、公正証書化された信託契約書が必須となることが多いです。

公正証書作成費用相場:3.3万円〜11万円

信託契約書を公正証書化する際の費用は、信託財産の内容や評価額によって変動します。一般的な相場としては、3.3万円から11万円の間が多いようです。この費用には、公証人の手数料が含まれます。

信託財産の内容と評価額が多くなればなるほど、公証人の手数料も増加する可能性があります。そのため、信託契約をする前には、どのような財産を信託に入れるのか、その評価額はいくらになるのかをしっかりと計算する必要があります。

引用元:日本公証人連合会HP

詳細な費用は、信託契約書案と必要書類を提示の上、公証役場に問い合わせしましょう。

3‐2.不動産がある場合の信託登記費用

不動産を家族信託の対象とする場合、信託登記にはいくつかの費用が発生します。ここでは、その詳細と計算方法について解説します。

登録免許税と不動産取得税

不動産の家族信託では、登録免許税は発生しますが、不動産取得税はかかりません。これは、受託者への所有権の移転が形式的なもので、実質的な不動産取得とはみなされないためです。

登録免許税の税率と計算方法

登録免許税の税率は0.4%です(土地については令和8年3月31日まで0.3%)。税額は、固定資産評価証明書に記載された固定資産評価額(千円未満切捨て)にこの税率を掛けて計算します。

例:土地が2,500万円、建物が1,500万円の場合
2,500万円 × 0.3% + 1,500万円 × 0.4% = 13.5万円
登録免許税の税額は13.5万円となります。

4.家族信託に必要な費用を安くするには

家族信託は自分でやる場合にも、実費はどうしてもかかります。実費を抑えるためのポイントを以下で詳しく解説します。

4‐1.受託者が管理する信託財産を減らす

信託する財産の金額が多ければ、それに伴う費用も高くなります。信託財産を最小限に抑えることで、公正証書の作成手数料、登記における登録免許税など、各種費用を低く抑えることができます。

しかし、信託財産の範囲を少なくしすぎると、管理できる財産が減ってしまい、結果、本人名義の財産が増えてしまうことになります。本人が認知症になった場合には信託財産は受託者が管理できますが、本人名義のままの財産は管理できません。適切な財産を選定する必要があります。

4‐2.信託契約書を私文書で作成する

公正証書の作成はコストがかかりますが、家族信託の信託契約書は、公正証書でなく、パソコンで作成すること(私文書)もできます。このため、信託契約書を私文書で作成することで、公証人の手数料をなくすことができます。

ただし、注意が必要です。信託財産に金銭が含まれる場合、公正証書なしでは、金融期間は信託口口座の開設やに対応しないことがほとんどです。そうなると、受託者個人名義の普通口座で金銭を管理する必要があります。

公正証書でなく、司法書士など専門家が関与した信託契約書でないとなると、自宅やアパートなどの信託不動産を売却する際、取引の相手方が一般の人が作成した信託家役所で不動産取引に応じてもよいのか、不安に考え、取引に応じてもらえないという可能性もあります。

自分で作成した私文書の信託契約書では、実際の取引において制約がかかってしまう可能性があることは注意しておいたほうが良いです。

5.家族信託を自分でやる場合のリスク

家族信託は財産の管理や相続対策として重要な役割を果たしますが、自ら進める場合には様々なリスクが潜んでいます。それでは、具体的なリスクを詳しく見ていきましょう。

5‐1.信託契約書の条項に漏れがあり、想定外の問題が生じてしまう

自分で信託契約書を作成する場合、専門家のアドバイスを受けずに進めるため、条項の漏れや不備が生じる可能性が高まります。例えば、受託者が先に亡くなる、事故に遭ってしまうなどの予期せぬ事態に備える条項が欠けていると、信託契約が続けられなくなるリスクが発生します。

5‐2.信託登記で何を登記すべきか判断が難しい

家族信託に関連する不動産の登記は、専門的な知識が要求される作業です。正確な登記事項の選定や手続きの手順に自信がないと、登記の不備や過ちが生じ、後々のトラブルの元となり得ます。

信託の登記はできても、その後、信託不動産を売却など処分する、信託契約を変更する、神託を終了するという時点において、当初登記された内容を基準にその後の手続きが処理されます。登記された事項に不足や不備があった場合にその後の手続が煩雑になる、できなくなるリスクがあります。

5‐3.家族内で揉める可能性がある

自分一人で家族信託手続きをしていまい、家族信託の趣旨や条項内容を十分に家族全員で共有せず、進めてしまうと、認識のズレからトラブルが生じる恐れがあります。

家族信託は内容が難しく、メリット、デメリットを家族間で共有しながら勧めていく必要があります。家族信託が開始された後の家族間の対立は、修正が困難となるため、慎重なコミュニケーションが不可欠です。

5‐4.公証人との公正証書作成の打ち合わせが進まない

公正証書の作成は、公証人と相談しながら勧めていく必要があります。公証人によっては、家族信託の理解や経験が少ない可能性もあります。作成した契約条項についての説明や、公証人から示された契約条項修正案について、どのような法的効果があるのか理解しながら、最終的に公正証書という形に仕上げます。そのため、家族信託によって実現したいことと、契約書の内容をきちんと理解して公証人に伝える必要があります。

公証人との打ち合わせや予約手続きがスムーズに進まないと、契約の成立が遅れる恐れがあります。

5-5.信託口口座の開設ができない

家族信託を利用する際の注意点として、信託口座の開設に関する問題が挙げられます。信託財産としての金銭を適切に管理するため、信託口座の開設は不可欠です。しかしその過程で、どの銀行や金融機関が最適かの判断が求められ、更に口座開設の手続きにはさまざまな細かい点をクリアする必要があります。

金融機関によっては、専門家が関与する信託契約書でなければ受け付けないケースもあります。このように銀行ごとに提供している信託サービスの内容や手数料が異なるため、比較検討することが必要となります。自分一人での判断では、最適な選択を見落とす可能性が高まります。

5‐6.本来支払う必要がない贈与税が課税されてしまう

自益信託以外のスキームではみなし贈与が課税される

家族信託は、その信託法上、財産管理を託す委託者と、信託契約により権利を取得する受益者を同一人に設定します。

例えば、父親の財産管理を子に任せるケースの場合、「委託者(父)=受益者(父)」という形で契約書を作成するのです。
受益者は、家族信託で信託した財産に関する権利をもっています。そのため、信託財産である金銭を活用して受託者から「生活費の支出」「施設費用の支払い」「信託財産である自宅の利用」「アパートなどの収益物件から発生する家賃」などの信託財産から生じる利益を受けることができます。利益を受ける人は変わらないので、贈与税などの税務の負担はありません。

しかし、もし、「委託者(父)≠受益者(母)」としてしまった場合には、税務上の問題が発生します。例えば、生前から障害のある妻のために子に財産管理を託すケースが挙げられるでしょう。この場合、財産の利益を受ける人が所有者から母に移行しています。ですから、受益権の価格(信託財産の価格)に対して贈与税が課税されることになるのです。

例えば、自宅(3000万円)と金銭(3000万円)を信託財産として場合には、6000万円を贈与したものとみなされ贈与税(要件によって異なりますが、2500万円~2900万円)が課税されることになるのです。

上記のようなケースだと、受益者を安易に委託者以外の第三者に設定してしまいがちです。その場合は、税務上みなし贈与とならないような仕組みづくりが必要なのです。

損益通算ができないので、支払う税金が増える

たとえば、自営業の事業主が事業とは別に不動産から所得を得ている場合、確定申告の際に自営業による事業所得と不動産所得とを合算して所得を計上できます。不動産所得で赤字が計上されている場合には事業所得の黒字と合算することができ、結果的に所得が低くなり支払う所得税も少なくなります。

これが損益通算です。

ただし、不動産を信託した場合、その受益者は、租税特別措置法41条の4の2により不動産所得で赤字が計上されていても、所得税の計算では赤字はなかったものとみなされます。このため信託財産以外に所得がある場合に、その所得と信託不動産の損益通算できませんし、純損失の繰越控除もできません。

このことは、信託契約を複数作成し、信託契約ごとに不動産を分けている場合も同様です。

そのため、家族信託をしても税務上不利益がないかをきちんと検証する必要があります。

5-7.家族信託以外の選択肢に気づけない

家族信託は相続や資産の管理に関する対策の一つに過ぎません。そのため、家族信託だけを選択することのリスクも考慮する必要があります。例えば、遺言や生前贈与、成年後見制度など、他の多くの選択肢や制度が存在します。自分だけで手続きを進めると、これらの選択肢を見落とすことが容易となり、後々最適ではなかったと気づくことも考えられます。

家族信託の手続きは多岐にわたる知識や経験が求められるものです。自分での手続きはコストを節約する一方で、さまざまなリスクを伴います。それらのリスクを理解し、慎重に進めるか、専門家の助けを借りるかを検討することが重要です。

6.家族信託を自分で手続きする際の注意点

家族信託は、資産管理や相続対策の一つとして近年注目されています。しかし、この手続きには多くの要件やリスクが伴うため、自分で行う場合は以下の注意点をしっかりと検討することが必要です。

6‐1.家族信託以外の方法はないか検討する

家族信託が家族の目的に合致する唯一の手段であるかどうかを確認してください。遺言、贈与、生命保険、任意後見制度など、他にも多くの資産管理・相続対策が存在します。それらの方法と家族信託とを比較検討することで、最も適した手段を選ぶことができます。

6‐2.家族信託の最新の情報収集を怠らない

税制改正や法改正によって、信託に関するルールは変わる可能性があります。最新の情報を常にチェックすることで、不都合やリスクを未然に防ぐことができます。信託に関する書籍、専門のセミナー、またはオンライン情報など多くの情報源がありますので、利用してください。

6‐3.自分で手続きするリスクと専門家に依頼するメリット・デメリットを比較する

家族信託は専門的な知識が求められるため、自分で手続きする場合にはリスクが伴います。特に法的な手続きに不慣れな場合、手続きにミスが生じると後で大きなトラブルにつながる可能性があります。一方で、専門家に依頼する場合のメリットとしては、確実性と専門的なアドバイスが得られる点が挙げられます。しかし、それには費用が発生しますので、費用対効果をしっかりと考慮する必要があります。

以上のポイントを総合的に検討することで、自分にとって最も適した家族信託の設定方法を見つけることができるでしょう。注意深く検討し、必要であれば専門家の意見も取り入れながら進めていくことがお勧めです。

7.家族信託を依頼する場合、誰に頼むべき?

これまで見てきた通り、家族信託はご自身で作成するとなるとそれ相応のリスクが伴います。それを考えて専門家に相談しようと考える際、だれに相談したらいいのでしょうか?

ただ、ひとえに専門家といっても様々いますので、誰に依頼すると効果的かを一緒に見ていきましょう。

7-1.弁護士に依頼する場合のメリット・デメリット

皆さんの弁護士の印象は、法律のことならなんでもござれというように、とりあえず弁護士に依頼しておけば間違いないと思う方も多いかもしれません。その通り、弁護士には法律行為に対して制限がなく、広範囲の仕事ができます。

そのため、最近法整備されつつある家族信託を含む、相続分野に特化した弁護士を見つけることは至難の業になるかもしれません。また、基本的になんでも法律行為ができる弁護士は、報酬もそれ相応に支払うことが多くあります。

7-2.税理士に依頼する場合のメリット・デメリット

家族信託は、税務も大きく絡みます。ですから、税理士に依頼するというのも一案でしょう。ただし、税理士は法律の専門家ではありませんから、家族信託の法務に関して強いかどうかを確認する必要はありそうです。

司法書士などしっかりと家族信託に強い事務所と提携している場合もありますので、それを確認すると効果的でしょう。

7-3.司法書士に依頼する場合のメリット・デメリット

家族信託を依頼するのは、司法書士が一般的です。
信託財産に不動産を入れようと考えている方は、不動産に関係する登記や法務について強い司法書士に依頼すると効果的でしょう。また、家族信託業務に強い司法書士も徐々に増えてきていますので、相談時に確認してみるといいと思います。

しかし、税務に関して強い司法書士はなかなかいないので、税務については税理士と一緒に進める必要があります。含めて、家族信託をこれまでに何件やってきたかをしっかりと確認して依頼する必要があります。

具体的にどの専門家に依頼すると効果的なのかというのは、別の記事でも詳しく解説していますので、是非チェックしてください。

8.家族信託を司法書士に依頼した場合の費用相場

上記の通り、司法書士に依頼するとなるといったい、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。ご自身で契約書を作る場合でもかかる費用とかからない費用、それぞれで確認していきましょう。

自分で手続きをしてもかかる費用
項  目 費用  (相場)
信託契約書を公正証書化する際の費用 3.3~11万円
不動産の信託登記にかかる登録免許税 固定資産評価額の0.3~0.4%
専門家への報酬
項  目 報酬  (相場)
コンサルティング報酬 信託財産評価の1.1%程度(最低33万円)
信託契約書作成報酬 11~16.5万円
信託登記報酬 11~16.5万円

家族信託手続きの費用・報酬・相場について、詳しく知りたい方は以下の記事をチェックしてください。費用、報酬について、それぞれ詳しく解説しています。

9.依頼する司法書士を選ぶときのポイント

もし専門家に依頼するとなったら、多くの専門家からどの専門家を選ぶといいのでしょうか。安心して任せられる専門家を選ぶポイントを見ていきましょう。

9-1.専門性が高いかどうか

司法書士は、主に不動産に関する登記や相続などを中心に仕事をしています。司法書士だからといって、家族信託に強い人ばかりではなく、登記のみを行っている事務所もありますので、しっかりと家族信託について専門的に取り扱っているかどうかは確認すべきです。

9-2.費用は予算内で収まるか

前章でもお伝えした通り、家族信託を依頼するとなると、それなりの費用がかかります。他の制度との比較検討して、ご自身のご家族にとって何を活用すると効果的でかつ想定する費用に収まるかを考える必要があります。

9-3.実績や経験は十分にあるか

実務において、法務局や銀行、公証役場などとの調整や、そのほか失敗事例や回避方法などを知っているかどうかは、どれだけ場数をこなしているかに他なりません。

ですから、基本的には専門性という形で「これまで何件の信託実績があるか」「所長以外のスタッフも熟達しているか」などを聞いてみるとよいでしょう。

9-4.家族信託以外のサポートも行ってくれるかどうか

専門家に依頼する際、家族信託契約書の作成や登記のほうを重視しがちですが、ご家族が運用を始めた後のフォローも重要です。

信託契約書に基づいて不動産の管理や売却などをしたり、また、運用していく中で信託契約書の目的や権限を変更したいということもあるでしょう。その際にフォローしてくれるかどうか、相談にのってくれるかどうかは、選ぶ際の重要なポイントになります。

10.まとめ

  • 家族信託は自分でやることも可能だが、専門的な知識と手続きが必要
  • 自分でやる場合には、公正証書での信託契約書作成や不動産の信託登記に一定のコストがかかり、具体的な費用は信託財産の種類や評価額によって変わる
  • 自分でやる際のステップとしては、①家族信託の内容を決める、②信託契約書を作成する、③信託した財産の管理の準備、④家族信託契約後に行う手続きがある
  • 家族信託を自分で手続きする場合には、事前に他の資産管理・相続対策と比較して最適な選択であるかを確認する点、最新の法的情報をしっかりとチェックする点、自分で手続きする際のリスクと専門家に依頼する場合のメリット・デメリットをしっかりと比較すべき

自分で家族信託の手続きをする場合には、費用を節約できる反面、専門的な知識、経験不足による思わぬリスクが発生する可能性が高いです。我が家にとってどんな対策が必要なのか、専門家と是非相談しながら進めていくことをおススメします。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに350件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。


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