家族信託の信託登記とは?不動産登記手続きの方法を司法書士が詳しく解説

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに200件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間50件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

家族信託をうまく活用すれば、認知症対策や争族対策として役立ちます。しかし、家族信託は仕組み自体がイメージしにくく、必要な手続きがよく分からないという方もいるはずです。

例えば、信託財産に不動産が含まれる場合には登記を行いますが、そもそもなぜ登記が必要なのか疑問に感じる方もいるかもしれません。「家族に財産を預けるイメージで考えていたが、所有権が移転して登記が必要になるのか?」「所有権移転登記とともに必要になる信託登記とは何なのか?」不動産の家族信託で生じるこれらの疑問にお答えします。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

  • 不動産の家族信託では信託契約の開始時や終了時などに登記が必要になる
  • 家族信託を開始するときの登記には「所有権移転登記」「信託登記」の2種類ある
  • 信託登記は法律で義務化されており、信託契約によっても免除することはできない
  • 信託契約書の内容をそのまま登録するわけではなく、専門家の持つ技量が必要になる
  • 登記の手続きは不動産の所在地の法務局で行い、登録免許税を納付する必要がある

この記事では、不動産の家族信託で知っておくべき知識のひとつとして、登記の重要性や手続き方法、登記費用について解説します。

1.家族信託で登記が必要になる場面とは?

登記とは権利関係などを登録して社会に公示するための制度です。土地や建物をはじめとした不動産についても、権利関係に変更が生じた場合には登記を行います。不動産の家族信託で登記が必要になる場面にはいくつかあり、主なケースを挙げると以下の3つです。

  • 不動産の家族信託を開始するとき
  • 不動産の家族信託が終了したとき
  • 信託財産である不動産を途中で売却したとき

まず信託契約を結んで家族信託を開始した際に登記が必要になります。信託契約を結ぶことで受託者が財産の管理権や処分権を持つことになり、権利関係に変動が生じるからです。

また、委託者が亡くなり信託契約が終了したときや、委託者である親の介護施設入居費を捻出するために不動産を売却したときなども、法務局で登記の手続きを行います。不動産の所有者が変われば新たな所有者の名義に変える必要があり、信託が終了して財産の管理権や処分権がなくなれば、信託の抹消登記も必要です。

なお、受益者や受託者が変更された場合も登記は必要ですが、実際に家族信託を活用する際に受益者や受託者が途中で変わるケースはそれほど多くありません。そのため、不動産の家族信託における登記としては、上記で挙げた3つのケースをまず押さえましょう。

2.家族信託を開始するときの登記は2種類

不動産の家族信託で必要になる登記は「所有権移転登記」「信託登記」の2種類です。実際の手続きではこの2つの登記の申請を同時に行うことになります。

2-1.所有権移転登記は共同で申請する必要がある

家族信託で必要になる登記の1つ目が所有権移転登記です。登記簿上は財産の管理権・処分権がある受託者が所有しているものと見なされ、形式的な所有権移転登記を行うことになります。

権利に関する登記は不動産登記法で共同申請が規定され、原則として登記権利者・登記義務者が共同で申請しなければいけません。そのため、家族信託における不動産の登記でも、委託者と受託者(一般的に親と子)が共同で申請を行います。

なお、所有権移転登記をする法的な義務はなく、手続きの期限も特に決まっていません。しかし次に説明する信託登記が法律で義務化されているので、信託登記と一緒に行う所有権移転登記も実質的に必須となっています。登記は不動産の権利者として登録する重要な手続きですので、少しでも早く手続きを終えることが大切です。

そして所有権移転登記が完了すると、上記の記載例のように「権利者その他の事項」の欄に登記原因として信託と記載され、受託者に関する情報として住所や氏名が記載されます。

2-2.信託登記には信託法に基づく登記義務がある

家族信託で必要になる登記の2つ目が信託登記です。所有権移転登記と違って信託登記は受託者が単独で申請できますが、信託法によって義務化されているので必ず行わなければいけません。仮に登記手続きを不要とする旨を信託契約に記載しても、登記義務は免除できないことになっています。

信託登記における登記事項は法律で規定されており、具体的には以下の11項目の登記が必要です。

1.委託者、受託者及び受益者の氏名又は名称及び住所
2.受益者の指定に関する条件又は受益者を定める方法の定めがあるときはその定め
3.信託管理人があるときはその氏名又は名称及び住所
4.受益者代理人があるときはその氏名又は名称及び住所
5.受益証券発行信託であるときはその旨
6.受益者の定めのない信託であるときはその旨
7.公益信託であるときはその旨
8.信託の目的
9.信託財産の管理方法
10.信託の終了の事由
11.その他の信託の条項

つまり裏を返せば、上記以外の項目は登記義務がないので登記しなくても構いません。信託契約書に記載された事項であっても、上記に該当しなければ登記をしないことも可能です。

信託登記完了後の記載例は上記の画像の通りで、権利部(甲区)の所有権移転登記の下に信託という登記が入り、信託の目的や信託財産の管理方法などが記載された信託目録が作成されます。
この信託目録のなかには、委託者と受託者間で作成した信託契約書のすべての契約条項を登記する必要はなく、不動産について、将来的に行う可能性がある不動産の売却や処分などの受託者の権限などを考慮して何を登記するか判断します。

例えば、信託不動産の売却について受益者代理人の同意を要すると定めた場合には、将来、信託不動産を売却し、その登記手続きを行う際には、受益者代理人の同意書がないと登記が受理されなくなるので必要な処分制限事項を登記事項として盛り込むことといった対応です。また、信託した金銭を用いて、アパートを建設することなどを想定される場合にはその権限を登記しておく必要があります。

家族信託は「現在」だけでなく「将来」まで効力が及ぶので、将来必要と想定されることを信託契約書から登記へと反映させていくことが必要となります。

「その他の信託の条項」への記載事項は専門的な知識と経験が必要

また、「その他の信託の条項」については、どこまで記載すべきか判断が必要です。信託終了後の財産を誰に帰属させるのかなどを記載してしまうと、不動産の登記事項証明書は誰でも取得できることから、財産を誰に遺したいのかといったプライバシー情報について公開してしまうことになります。場合によっては「〇〇の条項については、○○年○○月○○日○○法務局○○公証役場公証人○○作成の第○○号「信託契約公正証書」によるものとする」として、公正証書の記載を引用する方法をとることも考慮したほうがいいでしょう。

このように信託契約書の記載内容のうち何が登記すべき項目なのか、この点を正しく判断するためには専門的な知識と経験が必要です。一般の方が専門家に依頼せずに登記申請を行い、登記する項目をご自身で考えるのは決しておすすめできません。

なお、弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、ご家族ごとにどのような形で家族信託を設計し、信託契約書を作成すればよいのか、無料相談をさせていただいております。信託契約書の作成をはじめ、信託登記手続き、信託口口座の開設、その後の相談などトータルでサポートさせていただきますので、お気軽にお問合せください。

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3.家族信託における不動産の登記手続きの流れ

続いて家族信託を開始する際の登記の手続きの流れを解説します。登記の手続きは一般的に司法書士に依頼するのでご自身で理解しておく必要は必ずしもありませんが、自分がどんな手続きを司法書士に依頼するのかが分かれば、より納得感を持って依頼できるはずです。

3-1.固定資産評価証明書などの必要書類を揃える

家族信託で不動産を信託財産とする場合には、登記の手続きで主に次のものが必要になります。

  • 固定資産評価証明書(または固定資産税課税明細書)
  • 不動産の権利書(登記済証)または登記識別情報
  • 登記原因証明情報(信託契約書など)
  • 信託目録に記載する情報(記載情報を記録したCD-Rなど)
  • 委託者の印鑑証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)
  • 受託者の住民票
  • 委託者の実印と受託者の認印

固定資産評価証明書は不動産がある地域の市区町村役場で発行できます。不動産を取得した際に委託者が権利書を受け取っていれば権利書を用意し、権利書ではなく登記識別番号が発行されたケースでは登記識別情報通知書を用意してください。

登記原因証明情報は、文字通り「何が理由で登記をするのか原因を証明する書類」です。信託契約書を登記原因証明情報として提出すれば問題ありませんが、必要事項を記載して当事者が署名押印した書面を作成して提出しても構いません。

信託目録に記載する情報は、そもそも信託目録に何を記載するか判断する際に専門知識が必要なので、記載項目の選定からCD-Rなどの媒体の作成まで司法書士へ依頼したほうが良いでしょう。

また委託者の印鑑証明書、受託者の住民票はそれぞれの住所地の市区町村役場で取得でき、司法書士に依頼する場合は委任状も必要になります。

3-2.管轄の法務局で登記申請書を提出する

必要書類が準備できたら登記申請書とともに法務局に提出します。登記申請書の用紙は法務局に行けばもらえますが、以下の法務局HPからダウンロードすることも可能です。

法務局|不動産登記の申請書様式について

家族信託の登記では所有権移転登記と信託登記の2つを1つの申請書で申請します。上記のサイトから用紙をダウンロードした場合は、「登記の目的」を「所有権移転及び信託」に、「原因」を「信託」に書き換えて使うようにしてください。
「課税価格」に記入する額は固定資産評価証明書に記載された金額、「登録免許税」に記入する額は後述する計算方法で求めた税額です。

また登記申請書には所在地など不動産に関する情報も記載する必要があるので、登記事項証明書を確認しながら記入していきます。手元に登記事項証明書がない場合は、固定資産評価証明書記載の地番や家屋番号を使って法務局で証明書の発行申請を行ってください。

なお不動産登記は不動産の所在地の法務局で行う必要があり、管轄の法務局以外では登記の手続きはできません。

法務局|管轄のご案内

郵送申請も可能ですが、窓口申請の場合は管轄の法務局に行く必要があります。法務局が開いている平日に行くとなると、手間も時間もかかり大変です。司法書士はオンライン申請に対応していることも多いので、登記の手続きは専門家への依頼をぜひ検討してください。

家族信託に関する一連の流れを知りたい方は以下の記事からチェックできます。

4.どんな形で家族信託の仕組みをつくることができるか、無料診断受付中

当サイトでは、どんな形で預金や不動産を家族だけで管理できる仕組みを作り、信託契約書の作成及び信託登記手続きをすることができるか、無料診断が可能です。累計3500件を超える相続・家族信託相談実績をもとに、専門の司法書士・行政書士がご連絡いたします。

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5.信託登記の費用は?手続きにいくらかかる?

登記の手続きをする際に登録免許税の納付が必要になるなど、家族信託を開始するときにはある程度費用がかかります。事前に費用の額を計算して必要な資金を用意しておかなければいけません。以下では登録免許税の税額の計算方法や、登記の手続きを司法書士に依頼した場合の報酬相場について紹介します。

5-1.登録免許税はかかるが不動産所得税は非課税

不動産の家族信託における登記では、登録免許税はかかりますが不動産取得税はかかりません。受託者への所有権の移転はあくまで形式的なものであり、実質的に不動産を取得したとは見なされないからです。

登録免許税の税率は0.4%(土地については令和3年3月31日まで0.3%)で、固定資産評価証明書に記載された固定資産評価額(千円未満切捨て)に税率を掛けて税額を計算します。(計算結果に百円未満の端数が生じた場合は端数を切捨てた額を記入してください)

例えば土地2,500万円・建物1,500万円を信託登記する場合、「2,500万円×0.3%+1,500万円×0.4%=13.5万円」となるため登録免許税の税額は13.5万円です。

なお不動産を売却した場合や信託契約そのものが終了した場合は、信託登記の抹消のために不動産1個につき1,000円の登録免許税がかかります。また委託者である親が亡くなって信託契約が終了した際も登録免許税がかかりますが、誰が不動産の新たな所有者になるかによって税率は変わるので、ケースごとに確認が必要です。

5-2.司法書士に頼む場合は報酬の支払いが必要

専門知識が求められる家族信託の登記は司法書士に依頼することが多く、専門家へ支払う報酬も実質的に必要な費用のひとつといえます。費用の設定方法は司法書士事務所ごとに異なりますが、信託登記1件あたりの相場は11~16.5万円程度です。

ただし家族信託の手続きを司法書士に依頼する場合、一般的には登記の手続き単体ではなく信託契約書の作成から依頼することになります。通常はコンサルティング報酬や信託契約書作成報酬もかかるので、登記報酬以外のこれらの費用も含めて考えたほうが良いでしょう。

コンサルティングは信託契約書を作成するためのヒアリングを行うもので、報酬の相場は信託財産評価額の1.1%(最低33万円)程度です。信託契約書の作成では1通あたり11~16.5万円程度かかります。

家族信託を専門家に依頼した場合にかかる費用や誰に依頼したらいいのかについては以下の記事でも解説しているので、司法書士に相談する際の参考にしてください。

6.複雑な家族信託の登記は司法書士に相談を!

家族信託の登記では信託契約書の内容をそのまま申請・登録するわけではなく、専門家の持つ技量が必要になります。一般の方がご自分で登記の手続きをすると、後々にトラブルが起きることにもなりかねません。
専門家に依頼した場合には報酬の支払いが必要になりますが、後悔のない家族信託・納得のいく相続を実現するためにも、家族信託の登記は司法書士に相談するようにしてください。

また家族信託は事例や判例の蓄積が十分とはいえず、専門家の持つ知識と経験に基づく判断、そしてケースによっては法務局への個別の確認が必要になります。

家族信託・生前対策などの相談件数年間300件超を誇る当事務所であれば、豊富な経験に基づく適切な家族信託サポートが可能です。家族信託や生前の相続対策でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

7.まとめ

この記事では家族信託の信託財産に不動産が含まれるケースにおいて、登記が必要になる場面や手続きの流れ、費用について見てきました。本章の内容をまとめてみましょう。

  • 不動産の家族信託では信託契約の開始時や終了時などに登記が必要になる
  • 家族信託を開始するときの登記には「所有権移転登記」「信託登記」の2種類ある
  • 信託登記は法律で義務化されており、信託契約によっても免除することはできない
  • 信託契約書の内容をそのまま登録するわけではなく、専門家の持つ技量が必要になる
  • 登記の手続きは不動産の所在地の法務局で行い、登録免許税を納付する必要がある

不動産の家族信託を開始するときには所有権移転登記と信託登記の2つの登記を行いますが、信託契約書の記載事項をそのまま申請するわけではありません。どの項目を登録するのか適切な判断が求められ、専門家の持つ知識と経験が必要となります。

家族信託の様々な事例に携わってきた当事務所であれば、ご相談者様の置かれた状況にあわせたご提案が可能です。信託後のアフターフォローも含めてサポートを行っていますので、家族信託をご検討中の方はぜひご相談ください。

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