【2020年8月最新】え?!相続登記が義務化される?いまさら聞けない相続登記義務化について

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに100件以上の家族信託や生前対策を取り組んでいる。年間50件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

不動産関係の話題で最近よく聞かれるのが「所有者不明土地」の問題。
この問題は、有効な国土利用ができないということで国レベルで大きな課題となっているだけでなく、国民一人一人の権利にも大きく関わることです。

背景には相続登記の問題も絡んでおり非常に根が深いものですが、本章では「所有者不明土地」とはどういうものか、問題点やリスクなどについて詳しく解説したいと思います。またこれに絡めて相続登記の義務化の話題についても取り上げます。

今回の記事のポイントは、下記の通りです。

  • 登記簿に正しい所有者が反映されていないと土地の利用・活用に支障が出る
  • 不動産の相続登記(名義変更)が済んでいなければ専門家の助力を得てできるだけ早く相続登記を行うこと
  • 「所有者不明土地法」が整備され、手続きを取ることで所有者が分からない土地を自治体等が利用しやすくなった
  • 2021年頃には、相続登記が義務化される可能性が高い

記事内では、もしあなたの親が所有者不明土地を保有していたらどうすべきかについてもお話ししますので、ぜひ参考になさってください。

所有者不明土地とはどういうもの?

まず所有者不明土地の概念ですが、国土交通省によれば「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」を所有者不明土地と定義しています。

通常、土地など不動産の所有者は「不動産登記簿」で確認することができますが、様々な理由で登記簿に正しい情報が反映されないケースが多くなっています。これによって土地の所有者がだれであるのか分からない、名前が確認できたとしても居所がつかめないという事案が多発しているのです。

登記簿に正しい情報が反映されなくなる理由はいくつかありますが、一番の理由は相続登記がされないケースが多いためと考えられています。現状では相続登記は義務ではないので、手間や登記費用の出費を嫌ったり、遺産分割協議が面倒、法定相続人間の話し合いがまとまらないなどの理由で登記されないまま放置されるケースが多くなっています。
その状態で所有者が死亡し、代替わりが続いていけば相続人は鼠算式に膨れ上がり、もはや誰に所有権があるのか分からないということになってしまうのです。

この問題を国や自治体から見た場合、例えば公共用地として土地を取得したいのにその交渉相手が判明せず国土として利用できない、災害対策の工事が必要だが対象土地の権利者が不明で話を進められないということになり、実際に現実の問題として起きている状況です。

また民間同士でも、例えば、空き家となっている不動産を売却したい、街の賑わい創出のために土地を利用したいなど公共性のある事業の話が持ち上がっても、土地所有者が不明では話を進められません。国土交通省の報告によれば、日本全体で所有者不明土地は約410万ヘクタールに相当するとされており、これは九州の土地面積を上回る数値です。

国や自治体からすれば、国土の有効利用を妨げられることになり経済や国力の維持など多方面への影響が危惧されているのです。

所有者不明の土地になってしまうと何が困るのか?

では国民一般から見た場合、所有者不明土地を保有することで具体的にどんなことで困るのか考えてみましょう。

①土地の売却ができない

不動産の売買では対象不動産の所有者を確認しなければならないので、必ず登記簿を取って所有者を確認します。相続登記が放置されていて登記簿で売主の名義が確認できなければ、購入希望者は危険を感じて取引に応じてくれないでしょう。

②利用・活用ができない

例えば相続対策でアパートを建てて運用したいといったとき、ハウスメーカーは土地の権利者を正確に知るために登記簿で確認します。所有者の名義が確認できなければ、やはり業者側が危険を感じて取引には難色を示すはずです。
このため売却だけでなく不動産活用も難しくなります。

③抵当物件として利用できない

融資を受ける場合には、一般的に建設予定地を金融機関に担保として提供します。相続対策で建築するために土地を担保に出したい場合も、金融機関は必ず登記簿で土地の名義人を確認します。正確な所有者を確認できなければ、金融機関は抵当物件として利用することを拒絶するはずです。

④正しい相続ができない

数代にわたって相続登記が放置されているケースでは、被相続人となる人が相続登記が放置されている物件の共有持ち分を仮に保有していたとしても、どれくらいの持分なのか不動産登記簿から確認できませんし、実際にはそもそも持分を保有していない可能性もあります。

遺言書を書くにしても、相続対象となる財産を正しく指定できないことから、遺言の内容の一部が無効になってしまったり、場合によっては遺言全体が無効になってしまう可能性も出てきます。

親が所有している土地に「所有者不明土地」があった場合どうする?

もしあなたの親が保有する土地が代々相続登記が放置されているなどで正しい所有者が確認できない場合、前項のような問題が生じ困ってしまうことになるでしょう。
ですから、できるだけ速やかに、正しい所有者を登記簿に反映させる必要があります。

相続登記の放置がまだ1世代程度で、過去の相続権利者が生存しているのであれば、遺産分割協議を行って所有者を確定し、正しい登記内容に変更することは十分可能です。ただし、素人で進めるには非常に手間と時間がかかる作業ですから、司法書士などの専門家の助力を得て進めるのが無難です。

もし何世代にもわたって相続登記が放置されている場合、遡って問題を処理するのは非常に困難になります。実際に当事務所でも取り扱った相談事例では、明治時代から相続登記がされていない事例もあり、世代を追って相続人を調査した結果100名超の相続人が登場し、その合意をとるために個別の合意や裁判手続きを経て2年超の期間を経て名義変更手続きを行ったこともあります。このように、相続登記を怠ってしまった結果、専門家でも対処しきれないことがあるので、相続登記の放置は気づいた時点でできるだけ早く問題の処理に動く必要があります。

なお、売却を考えているケースで他の共有者が確認できない場合、権利者の追跡を行うことになります。専門家に依頼するなどしても共有者の存在が確認できないときは、不在者財産管理人を選任して手続きを進める道もあります。

裁判所が関与するので手間と費用が掛かりますが、この点は仕方がありません。

所有者不明土地を減らすために国はどんな対策をしているの?

さて、これまで見てきたように所有者不明土地は国レベルでも、また民間レベルでも問題の種となっていることから、これに対応するため、いわゆる「所有者不明土地法」(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法)が作られ、すでに2018年6月に施行されています。

ただし、この法律の大枠の性質としては、国や自治体、あるいは民間の事業者が国土としての土地を有効利用しやすくするために作られた法律です。その土地を今現在所有している人が抱える問題を解決するという性質のものではないので、この点は理解しておく必要があります。

つまり、売却や利活用、抵当物件として土地を利用できないといった問題を解決するためではなく、国や自治体が行う様々な施策に所有者不明土地を利用できるようにしたり、民間の事業者が公共性のある事業について、所有者不明土地の所有者を探し出す手間なく利用できるようにするのが目的です。

この法律によって可能となった取り組みを以下に上げて確認します。

【2018年11月15日施行分 】

民法の特例として、所有者不明土地の管理のために特に必要がある場合に、地方公共団体の長が家庭裁判所に対して財産管理人の選任等を請求することができるようになりました。

【2018年11月15日施行分 】

土地所有者の探索を合理化する仕組みとして、固定資産税課税台帳や地籍調査票などの公的な情報を行政機関が利用できるようになり、また法務局の登記官が長期間相続登記等がされていない土地について、長期相続登記等未了土地である旨を登記簿に記録することができるようになりました。

【2019年6月1日施行分 】

反対する権利者がおらず、建築物(一定の簡易小規模なものを除く)がなく、現状で利用されていない土地を「特定所有者不明土地」と位置づけ、以下の仕組みが構築されました。

①土地収用法に基づき特定所有者不明土地を収用する場合、これまでよりも手続きが簡略化され、知事の決済で土地を取得できるようになりました。

②自治体だけでなく民間事業者も含めて、公共性の高い事業(地域福利増進事業)を行うために土地を使用したい場合、知事の裁定を受けることで最長10年の使用権を設定することができるようになりました。
公園や広場を整備する事業や、住民の共同の福祉や利便性の増進に寄与する事業を行いたい場合、土地の所有者が分からず交渉ができなくても、手続きを取ることで一定期間土地を使用することができます。ただし使用後には土地を原状回復する義務があります。

国が進める「相続登記の義務化」

所有者不明土地が発生する大きな原因が、相続登記が適正になされないためであることは国も承知しています。そこで、兼ねてから相続登記を義務化することが検討されており、法案の議論もかなり進んでいます。

所有者不明土地の問題の大きさから、将来的に相続登記の義務化は避けられないと思いますが、以下の点で細かい調整が行われています。

・相続発生から相続登記を行うまでの期間
・相続登記を行わないことの罰則
・義務化する以前の相続登記未了土地に対する制度適用の可否
・登記費用の負担軽減
              etc

一応、2020年秋の臨時国会に法案を提出できるように進められていますが、所有者不明土地以外にもコロナ問題など様々な問題が山積する中で、どこまで順調に進められるかは分かりません。

早ければ今年2020年に法案が成立し、翌2021年あたりに施行という予測ができますが、1年程度はずれる可能性もあります。いずれにしても近い将来の話ですので、今後も所有者不明土地の課題対応については注視していく必要があります。

まとめ

今回の記事では増え続ける「所有者不明土地」について、当該土地を保有する人に生じる問題点や対応方法、国による対応策などを見てきました。内容をまとめてみましょう。

  • 登記簿に正しい所有者が反映されていないと土地の利用・活用に支障が出る
  • 不動産の相続登記(名義変更)が済んでいなければ専門家の助力を得てできるだけ早く相続登記を行うこと
  • 「所有者不明土地法」が整備され、手続きを取ることで所有者が分からない土地を自治体等が利用しやすくなった
  • 2021年頃には、相続登記が義務化される可能性が高い

本記事の内容は2020年8月14日時点のものですが、毎日新聞の報道によれば政府は9月下旬以降に臨時国会を召集する調整に入ったとのことです。
早ければ今年秋にも法案が提出されることになるので、報道等に注視していきましょう。

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