成年後見人の選任手続き費用|自分でやる場合と代行を頼む場合の相場

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに200件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間50件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

法定後見制度・任意後見制度いずれの制度を利用する場合であっても、成年後見制度を利用するためには、ある程度の費用が必要になります。

成年後見制度は無料で利用できるわけではありません。制度の利用にあたっては、費用の支払いに充てるお金を事前に準備しておく必要があるのです。

実際の手続きにはいくら必要なのか、具体的な金額はケースごとに異なりますが、鑑定費用だけで10万円程度必要な場合もあります。成年後見人の選任手続きをする段階になってから慌てないためにも、どれくらいの費用が必要なのか確認しておきましょう。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

  • 法定後見制度で成年後見人を選任するときや任意後見制度で任意後見監督人の選任申立てをするときには申立手数料や後見登記手数料が必要
  • 任意後見制度を利用する場合は事前に任意後見契約を結ぶ必要があり、公証役場で公正証書を作成するときに手数料が必要
  • 弁護士や司法書士などの専門家が成年後見人になる場合は報酬の支払いが必要になり、基本報酬の目安は月額2~6万円
  • 家族だけでの管理をしたいのであれば、本人が判断能力があるうちに家族信託契約を作成しておくのも対策の一つ
  • 成年後見人の選任手続きで必要な費用を払えない場合は、成年後見制度利用支援事業や法テラスの利用を検討する

本記事では、成年後見人の選任手続き後見を開始した後に一体いくら必要なのか法定後見制度・任意後見制度それぞれの制度を利用するときの費用について解説します。

1.法定後見制度を利用する場合

法定後見制度を利用する場合にかかる費用は、大きく分けると「裁判所で成年後見人の選任手続きをするときにかかる費用」と「成年後見を開始した後にかかる費用」の2つです。

選任の手続きでかかる費用は「必ず必要な費用」と「ケースに応じて必要な費用」に分かれ、後見開始後に必要な費用は月額としては高くない場合でも、累計では金額が大きくなることがあります。

1-1.成年後見人の選任手続きでかかる費用

法定後見制度を利用するには家庭裁判所に申立てをする必要があり、申立手数料や手続きで提出する書類を揃えるための費用などが必要になります。主な費用は次のとおりです。

【必ず必要な費用】

  • 申立手数料800円
  • 後見登記手数料2,600円
  • 郵便切手代3,000~5,000円程度
  • 診断書の作成料数千円程度
  • 本人の戸籍謄本住民票または戸籍附票の発行費用1通につき数百円程度
  • 本人について成年後見等の登記が既にされていないことの証明書の発行費用300円

【ケースに応じて必要な費用】

  • 鑑定費用:5~10万円程度
  • 後見人候補者の住民票または戸籍の附票の発行費用:1通につき数百円程度
  • 登記事項証明書の発行費用(未登記の場合は固定資産評価証明書):1通につき数百円程度(本人が不動産を所有している場合)
  • 専門家への支払報酬:10~30万円前後(手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合)
  • 専門職後見人への支払報酬:20万円前後(後見制度支援信託を利用する場合)

上記以外にも書類が必要になる場合があるので、実際に手続きをする際には管轄の家庭裁判所に確認が必要ですが「必ず必要な費用」の額としては合計で2万円前後になります。

鑑定が行われる場合には5~10万円程度の費用がかかることもある

「ケースに応じて必要な費用」のうち、鑑定費用は裁判所が鑑定を必要と判断した場合に必要な費用です。なお、成年後見関係事件の終局事件のうち、鑑定が実施される割合は例年1割未満とそれほど多くありません。成年後見制度の「補助」「保佐」「後見」の3つのうち、本人がどの類型に該当するかを最終的に判断するのは家庭裁判所ですが、その判断材料になる資料として医師の診断書の提出が求めらます。この医師の診断書で本人の状態がどの程度なのか明らかな場合には、鑑定は不要とされるからです。診断書だけで判断が出来ない場合には、鑑定が必要となります。その場合、鑑定費用が10万円を超えるケースもありますが、約半数のケースでは鑑定費用が5万円以下となっています。

後見制度支援信託を利用する場合には、専門家の費用が必要

後見制度支援信託とは、日常的な支払をするのに必要な金銭を預貯金等として後見人が管理して、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する(預ける)制度です。

(出典:裁判所|後見制度において利用する信託の概要

後見制度支援信託を利用すると,信託財産である金銭を払い戻したり,信託契約を解約したりするにはあらかじめ家庭裁判所が発行する指示書が必要となり、自由に引き出しができなくすることで本人の財産を後見人等の横領のリスクから守ることができます。後見制度を管轄する家庭裁判所によって運用のルールが異なりますが、例えば、本人が有する金融資産が1,500万円ある場合には、1,000万円を成年後見制度支援信託として信託銀行等に信託されます。この制度を利用する場合には、弁護士や司法書士などの専門職後見人が手続きをするため報酬(約10~30万円程度)の支払いが必要になり、信託銀行等に支払う費用が別途必要になります。

1-2.成年後見を開始した後に必要になる費用

後見を開始した後に必要になる主な費用は「後見事務にかかる費用」「成年後見人への報酬」「成年後見監督人への報酬」の3つです。

親族が成年後見人になり無報酬で後見を行う場合には報酬は発生しませんが、司法書士や弁護士、社会福祉士等が後見人になる場合は報酬の支払いが必要になります。成年後見監督人は選任される場合とされない場合があり、選任された場合には報酬の支払いが必要です。

成年後見人の基本報酬額の目安は月額2~6万円で、身上監護等に特別困難な事情があった場合には、基本報酬額の50%の範囲内で付加報酬が支払われます。成年後見監督人への報酬額は月額1~3万円が目安です。

なお、成年後見制度では基本的に被後見人が亡くなるまで後見が続き、途中でやめることは原則としてできません。認知症を発症して成年後見制度を利用し始めてから亡くなるまでの期間が長いと、長期間に渡って成年後見人に報酬を支払うことになり、結果的に費用の総額が大きくなる場合があります。

2.任意後見制度を利用する場合

成年後見人になる人を事前に決めておいて、将来の認知症に備える任意後見制度を利用する場合、まずは後見人を定める任意後見契約を結ぶときに費用が必要となります。任意後見契約は公正証書によって結ぶ必要があり、公証役場で作成するときに手数料などが必要になるからです。

そして、実際に任意後見を開始する際、裁判所で手続きをするときに費用が発生し、後見が開始すると任意後見監督人へ支払う報酬などの費用が必要になります。

2-1.後見人を定める任意後見契約を結ぶ費用

任意後見人を定める任意後見契約を締結するにあたり、公証役場で公正証書を作成するときに主に次の費用が必要になります。

    • 公証役場の手数料:11,000円
    • 法務局に納める印紙代:2,600円
    • 法務局への登記嘱託料:1,400円
    • 書留郵便料:540円
    • 正本謄本の作成手数料:1枚250円
    • 専門家への支払報酬:10万円前後(手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合)

専門家に依頼せず、自分で手続きを行う場合は2万円程度の費用が必要です。一方、弁護士や司法書士に手続きを依頼する場合は、専門家への支払報酬が発生します。弁護士事務所や司法書士事務所によって金額に差がありますが、実際に依頼すると10万円前後の費用相場であると考えておけばよいでしょう。

また、任意後見契約とあわせて財産を管理してもらうための財産管理の委任契約を締結することがありますが、その場合は財産管理委任契約についても手数料が必要になります。

2-2.任意後見を開始するときに必要な費用

認知症を発症するなど判断能力が低下して任意後見を開始する場合、本人や配偶者、任意後見人になる人などが任意後見監督人の選任申立てを行います。

手続きの際、申立手数料・後見登記手数料・郵便切手代・診断書作成料・戸籍謄本等の発行費用などが必要な点は、法定後見制度における成年後見人の選任手続きと同じで変わりません。それぞれの費用の額は基本的に法定後見制度のところで紹介した額と同じ(但し登記手数料は1,400円)で、裁判所が必要と判断した場合には鑑定を行うため費用が発生します。

任意後見人に報酬を支払うのか、また報酬額をいくらにするのについては当事者が自由に決められるため、任意後見契約を結ぶときに記載することが一般的です。一方、任意後見制度においては、法定後見制度とは異なり、後見監督人が必ず選任され、任意後見監督人の報酬額として月額1~3万円程度が必要になります。

なお、弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、どのような形で任意後見制度を利用をすればいいのか無料相談をさせていただいております。任意後見契約書の作成やその後の運用の相談などトータルでサポートさせていただきますので、お気軽にお問合せください。

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3.弁護士や司法書士に依頼する場合の費用相場

法定後見制度における成年後見人の選任手続きや、任意後見制度における公正証書の作成・任意後見監督人の選任申立ての手続きは、自分でやらずに専門家に任せることもできます。

弁護士や司法書士に依頼すれば自分で必要書類を揃える手間がかからずに済み、ミスなくスムーズに手続きを終えられる点がメリットです。慣れない手続きを自分でやると時間がかかることがあるため、手続き方法がよく分からない場合は、費用を払ってでも専門家に代行を依頼するべきでしょう。

また、成年後見人に就く人のうち、親族と親族以外の割合を見ると実に8割が親族以外で、その中でも後見人に就任することが多いのが司法書士です成年被後見人が所有している不動産の管理が必要になるようなケースでは、不動産の専門家である司法書士が成年後見人になることが多く、その場合には報酬の支払いが必要になります。

3-1.成年後見人の選任手続きの代行を頼む場合

法定後見制度を利用する際、成年後見人の選任手続きの代行を頼む場合の費用相場は10~30万円前後です。また、任意後見制度の場合、任意後見契約を締結するための公正証書の作成を依頼すると10万円前後、任意後見監督人の選任申立ての手続きを依頼すると20万円前後の報酬の支払いが必要になります。

ただし、具体的な報酬額は弁護士や司法書士ごとに異なるため、依頼する事務所に対して直接確認するようにしてください。

3-2.専門家に成年後見人になってもらう場合

既に解説したとおり、専門家に成年後見人になってもらう場合の費用相場は月額2~6万円です。管理財産の金額に応じて目安額が異なり、管理財産額が1,000万円以下であれば月額2万円、1,000万円超5,000万円以下であれば月額3~4万円5,000万円超であれば月額5~6万円が目安になります。

またケースによっては、基本報酬額の50%の範囲内で付加報酬額が発生するため、付加報酬額まで考慮した費用としては月額2~9万円が目安です。

なお、後見開始後は基本的に被後見人が亡くなるまで後見が続くことになります。本人の判断能力が回復したと認められる場合を除いて、途中でやめられません。

仮に認知症を発症して成年後見制度の利用を開始して、被後見人が亡くなり後見が終了するまでの期間が10年だった場合、月額2万円であっても10年間で240万円かかる計算になります。

最終的にいくら必要になるかについては、結果を見た後でなければ分かりませんが、ケースによっては成年後見人への支払報酬の累計額がかなり大きくなる点に注意が必要です。

3‐3.親が元気な時に家族信託契約ができれば家族だけの管理ができる

親の認知症対策として「家族信託」が注目されています。家族信託は国の制度である「成年後見制度」と比べてこれまで説明してきた家庭裁判所の監督を受けず、家族だけで柔軟な財産管理・運用が可能であり、認知症対策として非常に有効です。

家族信託では、自分の家族へ財産を信託する「委託者(いたくしゃ)」、実際に財産を管理・運用する「受託者(じゅたくしゃ)」、財産の運用によって発生した利益を受け取る「受益者(じゅえきしゃ)」の3者の関係で成り立ちます。

家族信託は民法や任意後見契約に関する法律にもとづく「成年後見制度」「任意後見制度」よりも、柔軟な財産管理ができる制度として注目度が高まってきました。トラブルの中でも多い「親の預金が引き出せない」「不動産を売却できない」などの財産関係の問題も、あらかじめ家族信託で権限を受託者に移しておけば解決可能です。

しかし、本人がすでに認知症を患っており判断能力がない場合は家族信託契約が結べなかったり、信託財産以外の管理ができなかったりなど、事前に留意しておくべき注意点が存在します。

家族信託と成年後見制度の違いについては、別の記事で詳しく解説していますので確認してみてください。

4.どのような形で任意後見、家族信託の仕組みをつくることができるか、無料診断受付中

当サイトでは、どのような形で預金や不動産を家族だけで管理できる仕組みを作ることができるか、無料診断が可能です。累計3500件を超える相続・家族信託相談実績をもとに、専門の司法書士・行政書士がご連絡いたします。

家族信託、任意後見の活用など、ご家族にとってどんな対策が必要か、何ができるのかをご説明いたします。自分の家族の場合は何が必要なのか気になるという方は、ぜひこちらから無料診断をお試しください。

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5.成年後見人の選任費用を払えない場合は?

成年後見制度を利用するためにはある程度の費用が必要になるため、成年後見人の選任手続き費用を払えない人もいるでしょう。また、成年後見人に報酬を支払う場合は、一般的に成年被後見人の財産から報酬を拠出するため、財産をほとんど持っていないような場合にはそもそも報酬の支払いができません。

費用の支払いが難しい人が使える制度として「成年後見制度利用支援事業」と「法テラス」の2つがあります。利用要件が決まっているため必ず使えるわけではありませんが、費用の支払いが難しい場合には、これらの制度の利用を検討してみましょう。

5-1.成年後見制度利用支援事業を利用する

成年後見制度利用支援事業とは、身寄りがないなど親族による後見等開始の審判の申立てができない場合に、市長が代わって申立てを行う制度です。成年後見制度を利用するための費用を負担することが困難な人に対して、申立てに必要な費用や後見人への報酬の助成を行います。

当支援事業は自治体が運営を行い、助成金額や助成の対象となる費用、利用できる人の要件は自治体ごとに異なりますが、費用の支払いが難しい場合には、助成を受けられないかお住まいの自治体に確認するようにしてください。

5-2.法テラスを利用する

法的トラブルを解決するための情報やサービスを全国どこでも受けられる社会を実現するため「総合法律支援法」に基づき設立されたのが法テラス(日本司法支援センター)です。

収入が一定額以下であるなど一定の要件を満たす場合、弁護士や司法書士に支払う書類作成費用などを立て替えてもらう制度を利用できます。ただし、あくまでも法テラスが利用者に代わって弁護士や司法書士へその費用を支払って立て替える制度になるため、利用者は分割で法テラスに費用を返済しなければいけません。

なお制度の詳細な内容や相談窓口については以下のサイトで確認できます。
法テラスホームページ

まとめ

本記事では成年後見制度を利用するときに必要な費用について見てきました。本章の内容をまとめてみましょう。

  • 法定後見制度で成年後見人を選任するときや任意後見制度で任意後見監督人の選任申立てをするときには、申立手数料や後見登記手数料が必要
  • 任意後見制度を利用する場合は事前に任意後見契約を結ぶ必要があり、公証役場で公正証書を作成するときに手数料が必要
  • 弁護士や司法書士などの専門家が成年後見人になる場合は報酬の支払いが必要になり、基本報酬の目安は月額2~6万円
  • 家族だけでの管理をしたいのであれば、本人が判断能力があるうちに家族信託契約を作成しておくのも対策の一つ
  • 成年後見人の選任手続きで必要な費用を払えない場合は、成年後見制度利用支援事業や法テラスの利用を検討する

成年後見制度を利用するためには、ある程度の費用がどうしても必要です。また、専門家に依頼した場合は、さらに費用がかかってしまいます。

費用を抑えることを優先して専門家に相談せず自分で手続きをする方もいます。しかし、成年後見制度を利用する場合には専門的な知識が必要になるため、司法書士や弁護士に相談したほうが賢明でしょう。

家族信託や成年後見制度、相続など多くの事案を扱ってきた当事務所では、ご家族が置かれた状況にあわせたサポートを行っています。将来認知症になった場合に備えて対策を検討したい方や、ご家族が認知症を発症して成年後見制度の利用を検討している方はお気軽にご相談ください。

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