雑誌や新聞、セミナーなどで一般の方でも、認知が増えてきた家族信託・民事信託ですが、家族信託・民事信託を行うことによって、親が託した金銭を受託者が管理できるようになります。
しかし、家族信託契約をしたしても、それだけでは親名義の預金を管理することはできません。信託で金銭を管理する口座の開設手続きが必要です。
今回の記事で伝えるポイントは下記のとおりです。
- 家族信託・民事信託契約をしても受託者である子が親の口座を管理することはできない
- 信託契約後に、信託した金銭を管理する口座に資金移動することによって受託者の管理がスタートする
- 信託した金銭を管理するため方法として、信託口口座と信託専用口座の2つがある
- 信託専用口座は、受託者個人名義の口座であるため、受託者が先に死亡、受託者個人のローンの滞納、破産などによる差押えリスクがある
- 信託口口座と謳っていても、“名ばかり信託口口座”があるので注意
- 信託口口座開設にあたっては、金融機関の法務チェックと公正証書化のハードルがある
家族信託後、どのようにして親の預金を信託契約で定めた受託者である子が管理できるようになるのでしょうか?今回の記事では、事例に基づき、信託した金銭を管理するための口座開設手続きと管理方法、そして信託口口座を開設できる金融機関についてお伝えします。
目次
高齢の母の預金口座と実家を管理するため家族信託・民事信託を活用した事例
事例 高齢の親の預金を管理したい
現在、古い一軒家に一人暮らしをしている母(84歳)が心配な長女からの相談でした。父は他界しており、母には、長女と次女がいます。
母の足腰が最近悪くなってきており、将来高齢者施設への入居を考えております。財布や預金通帳がどこにあったか分からなくなったりするなど、母の物忘れが最近増えており、認知症が心配です。
何もしなかった場合
認知症などで母の判断能力が喪失した場合には、預金や実家の売却、管理をすることができなくなります。
成年後見制度を活用すると、母の金融資産の状況にもよりますが、専門家など第三者後見人がつく可能性があること、家庭裁判所への定期的な報告を行う必要性がでてきます。
認知症になってしまった後の口座の引き出しなどリスクについては下記の記事に詳しくまとめていますので確認してみてください。
家族信託・民事信託を活用した場合
母の年齢と現在の状態を鑑みると、数年後に認知症など、意思判断能力が失われる状態になってしまう可能性があり、その場合には、預金の管理や、施設へ入居するための自宅の管理・処分などができなくなるリスクがあると説明しました。
現在、近くに住んでいる長女が母の様子を見に、週1、2回訪問していること、今後、母の介護をしていく長女に任せる意向が母にあることから、長女に母の財産を託す家族信託を提案しました。
家族信託を利用することで、徐々に意思判断能力が低下し、判断できなくなりつつある状態でも、数年にわたっての預金口座からの日常生活費の送金、自宅の管理や修繕、高齢者施設へ入所後の処分などの行為も信託契約で決めた目的に従い、長女の判断で母の財産を自由に処分、活用することができます。
信託スキーム設計
委託者 母
受託者 長女
受益者 母
信託財産 自宅、金銭
終了事由 母の死亡
帰属権利者 母の法定相続人
結果
円満な相続対策、とりわけ家族信託は、家族全員の理解と協力が必要なため、その仕組みと今後の母の介護のこと、生前対策のことを母、長女、次女を交えて説明し、家族会議を経て、今回の対策を実行することになりました。
家族信託・民事信託後の金銭の取り扱い
家族信託は信託契約(信託契約書の作成)により効力が生じます。受託者は信託された財産を受託者自身の個人の財産とは分けて、管理する分別管理義務があるため、金銭については信託口口座等で管理します。
上記で取り上げた事例のように、成年後見制度の代わりに家族信託・民事信託を活用して高齢の親の預金や実家を管理することができます。信託契約を作成することで家族信託・民事信託の効力は発生しますが、親名義の預金口座のままでは、受託者として定めた子供が管理を行うことができません。信託した金銭を管理するための受託者名義の金融機関の口座を用意する必要があるのです。
成年後見制度と家族信託・民事信託を似たような制度として間違えてしまう運用をしてしまう専門家もいるので、注意が必要です。こちらについては、下記の記事で詳しく解説していますので、確認してみてください。
信託後の金銭を管理する信託口口座と信託専用口座とは
信託された金銭は、信託法上、受託者が死亡したとしても受託者の相続人へ相続されません。また、受託者個人の借金(債務)の滞納や受託者個人が破産した場合であっても、信託された金銭に対して差し押さえなど強制執行の対象となりません。
信託管理用の口座で金銭を管理することによって、受託者が負う分別管理義務(金銭については、個人財産と信託財産は分別して管理し、その計算を明らかにしなければならないという点)を果たすという側面もあり、信託された金銭が受託者個人の財産ではなく信託財産であることを第三者に対して主張できるようになります。
家族信託・民事信託した金銭を管理するための、口座としては下記の2種類があります。
・信託口口座
・信託専用口座
それぞれの違いについて、以下、説明していきます。
委託者から信託された金銭を管理する「信託口口座」とは
信託口口座とは、信託法に基づき、受託者が、委託者から信託された金銭を管理するための口座です。この口座は、委託者のものでもないし受託者のものでもありません。そして、信託法に則り、下記の機能を有します。
・受託者個人への債権者は信託財産に対して差押えはできない
・委託者、受益者の死亡により口座は凍結しない
信託口口座は受託者の個人財産ではないので、受託者が亡くなった際にも受託者の相続財産を構成しません。
そのため、下記の要件を持つ信託口口座を用意する必要があります
(1) 受託者が管理できる口座であること
受託者自身が管理できる口座であり、親名義の口座など、受託者以外の第三者が実質的に管理する口座ではないこと
(2) 預金口座が信託財産であることが明示されているものであること
口座名義については、例えば「委託者○○受託者□□信託口」、「○○信託受託者○○」、「受益者○○信託受託者○○」、「家族信託口A 受託者○○」などがあります。
(3) 受託者個人の口座とは分別されている
受託者の死亡や破産、差し押さえなどにより口座が凍結されないよう金融機関内部で受託者個人口座と紐づけされていない口座であること。具体的には、金融機関内の内部で顧客を管理するための顧客管理番号CIF(Customer Information File)が受託者個人口座のCIFとは分けられた口座であることが必要です。
「信託口」と口座名は表記されていても、後述する“名ばかり信託口口座”も存在するため、上記の要件を満たしている口座を金融機関が提供しているか、事前に確認をしてください。
また、家族信託・民事信託は当事者で内容を自由に作れるのが魅力なのですが、口座を開設して管理する金融機関にとっては、信託法と信託契約の内容に従って、金銭の入出金、信託終了後の払い戻しの手続きなどを行う必要があります。そのため、金融機関で定まった要件を満たす信託契約書でなければ口座開設に応じてもらえないので、その口座開設要件を確認する必要があります。
受託者個人名義の口座を活用する「信託専用口座」とは
信託した金銭を管理するために、受託者個人名義の口座を活用する場合の口座をいいます。
本来であれば、上記機能を有する信託口口座を作成したいところですが、令和2年1月現在、信託口口座開設に対応できる金融機関が少ないのが現状です。
そこで、地域に信託口口座を開設できる金融機関がない場合には、代替手段として受託者個人名義の新たな普通口座を開設し、信託契約書にその口座の口座番号を明記して実務的に代用することがあり、この代用した口座のことを信託専用口座といいます。
信託契約書には、具体的に下記のように口座番号等を明示します。
委託者は、信託金融資産について、受託者名義の信託専用口座(〇〇銀行〇〇支店・店番123・普通・口座番号123456)への移動等を行い、受託者はこの信託口口座又は信託専用口座において、信託財産より生じる果実等について適切な管理を行う。
信託専用口座のリスク
信託専用口座として使用していることを信託契約書で明示しているため、相続税や贈与税上の問題は生じません。
ですが、あくまで上記の通り、信託専用口座は信託口口座とは異なり、受託者個人名義の口座であるため、受託者が先に亡くなってしまった場合には、通常の相続と同様の金融機関での手続きが必要となります。
そのため、法定相続人が受託者の相続財産として払い戻して手続きをして、受託者死亡後の後継受託者に金銭を引き渡す必要があります。また、受託者個人の債務(借金等)についての預金口座への差押えが入ってしまうなどのリスクがあるので注意が必要です。
万が一、受託者が死亡した場合に、その相続人が払い戻した金銭を引き渡してくれない、また、信託専用口座が差押えを受けた場合には、裁判などを通じて、金銭の返還請求、差し押さえの解除を主張をしなければならなくなってしまいます。
信託専用口座は、通常の個人口座であるため、インターネットバンキングの利用など、普通口座と同様の金融機関のサービスを受けられるというメリットがありますが、上記で述べたようなリスクを押さえた上で、信託専用口座の利用を検討してください。
名ばかりの信託専用口座もあるので注意が必要
金融機関で「信託口口座を開設できます」と謳っていても、よくよく話を聞いてみると相続で凍結されてしまう、という預金口座も少なくありません。「信託口」という名前が付いた口座名であっても、実際には、受託者個人名義の口座の可能性もあります。そのため、事前に金融機関に対し、上記で述べた信託口口座の要件を満たしているのか(特に、委託者、受益者の死亡により口座は凍結しない、差し押さえはされないか)を確認することをオススメします。
信託口口座開設に必要な手続き
当事者間で作成済みの信託契約書を持ち込んでも、金融機関の法務チェックを経ていない契約書では信託口口座の開設の対応をしてもらうことは難しいです。
先ほども述べた通り、信託口口座は、受託者死亡により凍結しないなど、信託法上に対応する口座であるため、受け入れ側の金融機関においても、口座開設に当たって信託法上問題がないか法務チェックを行っています。そのため、信託契約書作成前に、金融機関に確認が必要です。
・信託契約書案の作成
・金融機関の法務チェック
・公証役場での信託契約書の作成
・信託口口座の開設
上記の流れに沿って信託口口座を開設していく必要があります。
信託口口座開設の流れ
実際の家族信託・民事信託契約の作成において、どのタイミングで金融機関と交渉をしていくのか、一例を紹介します。
信託口口座開設できる金融機関の選定
家族信託・民事信託契約案の検討と同時に、地域で信託口口座の開設ができる金融機関を調べる必要があります。金融機関によって取り扱いが異なり、キャッシュカードが発行できるか、どのATMで利用できるか(他行のATMでも相互利用可能か)、振込手続や口座振替、定額送金、預入れ金額の制限などあるかなど、確認したうえで、どの金融機関で開設するか決めていきます。
そして希望する金融機関が決まったら、契約書のアウトラインが完成した段階で信託口口座を開設したい旨のアプローチを金融機関の支店に対して行います。金融機関によっては、信託口口座の開設に限っては窓口でなく専門の担当者がいる場合もあります。
金融機関での口座開設のチェック事項について詳しくは下記の記事をご参考ください。
金融機関の法務チェック
信託口口座の開設に当たっては、事前に信託契約書案を金融機関に送りチェックを行うことが必要です。金融機関によっては、信託口口座開設や融資に伴うリスクを回避するため、金融機関指定の信託契約の条項を追加するよう求めてきたり、その金融機関がつくった信託契約書や金融機関指定の専門家のチェック、もしくは指定専門家作成の信託契約書でなければ口座開設に応じなかったりするなど、信託口口座開設にあたって条件がある金融機関もあります。
信託口口座の開設にあたっての基準
ここでは、金融機関が求められることがある信託口口座開設の要件についてお伝えします(2020年2月現在)。
- 信託契約書は公正証書で作成すること
信託法上では信託契約書は私文書で作成する必要がありますが、信託口口座開設するには、公正証書で作成する必要があります。 - 専門家(士業、場合によっては金融機関が指定する士業)が作成に関与した信託契約書であること
ご家族のみで作成した信託契約書では受付をせず、家族信託・民事信託に精通した専門家や金融機関が指定した専門家が関与した信託契約書でなければ口座開設に応じてもらえない場合があります。 - 一定金額の金融資産を預け入れること(例.3000万円以上など、金融機関によって金額は異なります)
- 受託者を監督する立場である信託監督人や受益者代理人を設置していること
- 後継受託者の定めがあること
委託者本人よりも先に受託者が死亡した場合に備えて、受託者の任務を引き継ぐ後継受託者の定めがない場合には利用できないことがあります。 - 受託者が1名であること
金融取引の相手方が複数名となると、金融機関にとって事務負担が大きいため - ご家族(委託者の法定相続人に該当する方など)の同意がとれていること
信託契約の内容について、将来の紛争性を排除するため、委託者のご家族の同意が求められるケースがあります。
上記の他、金融機関によって、個別で定められている要件があるため、実際に信託口口座開設をする場合には、開設を希望する金融機関や信託を相談する専門家に相談の上、各金融機関の定める要件を確認しながら、開設を進めてみてください。
融資がある収益不動産を信託する場合は注意
既存融資がある収益不動産がある場合には、特に注意が必要です。信託による不動産の名義変更に伴う信託登記手続きは金融機関の承諾がなくても法務局は申請を受け付けてくれますが、金融機関と交わしている既存融資の金銭消費貸借契約書等には、所有権を移転する場合には金融機関の承諾が必要な旨の条項もあります。説明や了承を何もとらず名義変更をしてしまうと後々問題となってしまう可能性があるため、融資をしている金融機関へのコンタクトを早めにとり、信託口口座開設とローンの取扱いについて相談をし、了承をとっておく必要があります。
既存ローンがあるアパートなどを信託する際の手続きについては、下記の記事で詳しく解説していますのでそちらを確認ください。
既存融資機関の承認が得られない場合には、最終の手段として信託に対応できる金融機関へのローンの借換えも検討材料ですが、依頼者と金融機関との今までの付合いと信頼関係もあるのでこれは最終手段だと考えて、なるべく既存の融資機関の了解を得られるよう進めていくべきです。
特に信託に伴い新規融資が発生するとなると、金融機関としては債権回収リスクがあるので、指定の条項を入れてほしいといった指示に伴う信託契約書の手直しや、金融機関の顧問弁護士の契約書チェックの時間もかかるため、その分の金融機関との打合せにかかる期間も考慮して、スケジュールを調整していきます。
信託口口座開設に当たっては公正証書が必須
金融機関の意向を反映させて契約書を作成します。信託契約書については公証役場での公正証書等によることなく、私文書でも信託契約を行うことはできます。しかし、信託口口座開設に当たっては、金融機関によっては公正証書でなければ受付けはできないなど、公証人の関与が必須の場合があり、将来的に当初の金融機関のみならず他の金融機関でも信託口口座を開設する可能性もあるので、信託契約書は公正証書によって作成したほうがいいと思われます。
信託契約後の口座開設後の資金移動
契約書作成後、いよいよ信託口口座開設のため、実際に金融機関に出向きます。信託口口座作成当日の流れとしては、午前中に公証役場等で契約書を作成し、午後に口座を開設するというタイムスケジュールも可能です。
信託口口座の開設には受託者のほか委託者の来店が必要な場合もあり、当事者が会社員などの場合には平日に休みを調整するなどが必要となるため、一日ですべて済むよう調整が必要です。ただし現時点では信託口の口座開設は初めてという金融機関の担当者も多く、口座作成だけで数時間かかることもあります。
また、契約書が停止条件付で効力発生する場合や、始期を付与している場合には、効力発生後でなければ信託口口座は開設できませんので、その場合は信託契約の効力発生後に金融機関での手続きを行います。
信託口口座開設後、委託者の個人口座から信託財産として定めた金額を出金し、信託口口座へ入金することで受託者が信託金融資産として管理することができます。
金銭の入出金の手続きですが、信託契約書が完成すれば、受託者が委託者の個人口座から出金できるわけではありません。受託者は信託財産に関する財産管理等を行うことができますが、委託者の代理人ではありません。出金手続きと受託者名義の信託口口座への振込みなどによる入金手続きは、あくまで委託者が行う必要があるので注意をしてください。
上場株式、投資信託などを信託する場合の証券会社での信託口口座開設については、下記の記事で詳しく解説していますので、興味ある方は確認してみてください。
信託口口座が開設できる金融機関(2020年4月時点)
2020年4月時点で、信託口口座を開設できる金融機関を紹介いたします。
各金融機関の本店所在地を基準に地域ごとにまとめてみましたので、ご自身の地域でどの金融機関で信託口口座を開設できるか、確認してみてください。
金融機関ごとに口座開設基準やキャッシュカード、ATMの利用条件、インターネットバンキングの利用の可否など異なること、信託金融の実務の動向が変わる可能性があることから、実際に信託口口座を開設する際には各金融機関の支店に直接確認したうえで、手続きを進めるようにしてください。
地 域 | 金融機関 |
北海道・東北地方 | 秋田銀行 |
北海道・東北地方 | 仙台銀行 |
北海道・東北地方 | 七十七銀行 |
北海道・東北地方 | 山形銀行 |
関東地方 | オリックス銀行 |
関東地方 | かながわ信用金庫 |
関東地方 | 京葉銀行 |
関東地方 | 埼玉懸信用金庫 |
関東地方 | さわやか信用金庫 |
関東地方 | 芝信用金庫 |
関東地方 | 城南信用金庫 |
関東地方 | 常陽銀行 |
関東地方 | 巣鴨信用金庫 |
関東地方 | 西武信用金庫 |
関東地方 | 世田谷信用金庫 |
関東地方 | 千葉銀行 |
関東地方 | 千葉興業銀行 |
関東地方 | 東和銀行 |
関東地方 | 栃木銀行 |
関東地方 | みずほ信託銀行 |
関東地方 | 三井住友信託銀行 |
関東地方 | 武蔵野銀行 |
関東地方 | 横浜信用金庫 |
関東地方 | 共和証券 |
関東地方 | 大和証券 |
関東地方 | 野村證券 |
関東地方 | 楽天証券 |
中部地方 | 北國銀行 |
中部地方 | 北陸銀行 |
中部地方 | 十六銀行 |
中部地方 | 福井銀行 |
近畿地方 | 池田泉州銀行 |
近畿地方 | 紀陽銀行 |
近畿地方 | 第三銀行 |
近畿地方 | 百五銀行 |
近畿地方 | 福井銀行 |
近畿地方 | 三重銀行 |
中国・四国地方 | 四国銀行 |
中国・四国地方 | 中国銀行 |
中国・四国地方 | 広島銀行 |
中国・四国地方 | 広島信用金庫 |
中国・四国地方 | もみじ銀行 |
中国・四国地方 | 山口銀行 |
九州・沖縄地方 | 沖縄銀行 |
九州・沖縄地方 | 福岡銀行 |
九州・沖縄地方 | 肥後銀行 |
九州・沖縄地方 | 宮崎銀行 |
九州・沖縄地方 | 琉球銀行 |
まとめ
- 家族信託・民事信託契約をしても受託者である子が親の口座を管理することはできない
- 信託契約後に、信託した金銭を管理する口座に資金移動することによって受託者の管理がスタートする
- 信託した金銭を管理するため方法として、信託口口座と信託専用口座の2つがある
- 信託専用口座は、受託者個人名義の口座であるため、受託者が先に死亡、受託者個人のローンの滞納、破産などによる差押えリスクがある
- 信託口口座と謳っていても、“名ばかり信託口口座”があるので注意
- 信託口口座開設にあたっては、金融機関の法務チェックと公正証書化のハードルがある
これまで説明してきた通り、信託契約により、家族信託・民事信託の効力が発生しますが、信託された金銭を管理するための口座開設が必要です。
法務面から考えると信託口口座で管理すべきと考えられますが、信託口口座は信託法にのっとった口座であるが反面、インターネットバンキングが利用できない、キャッシュカードが発行されないといった金融機関もあり、利便性に欠ける面もあります。そのため、信託口口座、信託専用口座ともにそれぞれメリット・デメリットを考え、ご家族にあった管理方法を検討が必要です。
信託は新しい制度でもあり、家族に適した設計が必要です。信託に詳しい専門家を交えて、我が家にとってどのような財産管理方法がよいのか、是非相談してみてくださいね。