相続対象は誰?相続人調査の概要や手順、相場について知っておこう

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに150件以上の家族信託や生前対策を取り組んでいる。年間50件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

相続人調査の実施は、スムーズな相続手続きや相続分配が可能になるなど、相続人(相続権を持つ人)や被相続人(死亡した人)の親族にとって大きなメリットがあります。

とはいえ、中には「具体的に何をするのかよくわかっていない」「本当に調査する必要があるの?」など、相続人調査についてさまざまな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。結論からいえば、相続人調査は相続という流れの中でも重要な役割を担うため、必ず実施するようにしてください。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

  • 相続人調査は「相続人が何人いるのか」を確定させる作業を意味する
  • 相続人がはっきりしないと遺産分割協議や相続手続きの進捗が遅れる
  • 調査には戸籍謄本の情報が非常に重要となる
  • 専門知識と労力が必要なので司法書士や行政書士などの専門家に依頼すべきである

この回では相続人調査の概要や必要性、手順、相場などの「相続人調査って何?」という疑問にお答えしています。

相続人調査とは?なぜ調査が必要になるのか

相続人調査の目的は、その名称のとおり「相続人に関する調査」というシンプルなものです。しかし「相続」という高い専門性が必要な分野かつデリケートな話題になるため、調査の重要性は想像以上に大きいといえます。まずは「相続人調査とは」という基礎部分や、調査の必要性について確認していきましょう。

相続人調査の概要

相続人調査とは、被相続人には「相続人が何人いるのか」「相続人とはどのような関係なのか」などを調べることです。被相続人が生まれてから死亡日に至るまでの家族関係を戸籍で調査し、関係性を確定させます。

相続人を確定させて遺産分割協議や金融機関等への手続きを進められれば、相続関係の申請や財産の分配などのスムーズな進行が可能です。

相続人調査が必要な理由とは?

「家族関係はすぐ把握できるからわざわざ調査しなくてもよいのでは?」と思われるかもしれませんが、相続人調査は必要です。なぜなら、被相続人の配偶者や子ども、両親でさえ把握しきれていない家族関係が存在する可能性があるからです。具体例を見ていきます。

・養子縁組としていた甥や姪
・被相続人が密かに認知・養子縁組していた愛人との子ども
・養子縁組の後に生まれた代襲相続の権利を持った孫 など

また、相続人がはっきりしない状態の場合、次のようなトラブルの発生が考えられます。

・「相続人全員参加」が条件である遺産分割協議がやり直しになる恐れがある
・相続税の基礎控除額(3,000万円+相続人×600万円)が大きく変わる

とくに遺産分割協議は早めに終わらせなければ、遺産分割協議書が必要になる金融機関・相続登記での名義変更や、そのほかの相続関係の申請が進められません。スムーズな相続手続きのためにも、相続人調査は必要だといえるでしょう。

どこまでが相続人になれるの?相続人になるための条件とは?

相続人調査では、法定相続人の範囲の確認が非常に重要になります。まず相続人に必ず該当するのは配偶者です。そして、相続人は基本的に「配偶者+相続の優先順位が上位の人」になります。被相続人から見た優先順位は次のとおりです。

相続順位 被相続人との関係
第1順位 子もしくは代襲相続人になった直系卑属
第2順位 直系尊属(両親や祖父母など)
第3順位 兄弟姉妹もしくは代襲相続人になった甥姪

被相続人の配偶者と子が存命であれば、「配偶者+第1順位」という形での相続です。第2順位以降に相続権はありません。もし子が全員亡くなっている、もしくは元々いない場合は第2順位の直系尊属へ、直系尊属が全員亡くなっていれば第3順位の兄弟姉妹へという形になります。

ただし、次の事項に当てはまる場合は相続人になれません。

相続欠格:相続人の意思や遺言書に関係なく相続人の権利が永久に剥奪されること
相続廃除:被相続人の申請によって相続人の権利を剥奪されること
相続放棄:相続人自ら相続権を放棄すること

もし相続人全員の死亡や相続権の剥奪などがあり、相続人が一人もいない場合は、相続財産を特別縁故者や国庫へ帰属させます。

また、被相続人と親密な関係にあった者のことを「特別縁故者」と呼び、法定相続人が1人もいない場合に、遺産相続を申し出る権利を持ちます。特別縁故者として認められるには、民法958条の3に規定されている以下の条件に当てはまる必要があります。

・被相続人と生計を一にしていた人
・被相続人の介護等の世話をしていた人
・その他被相続人と特別な関係にあった人

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の三 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

(引用:e-Gov:民法)

こうした事由があるかどうかを調べるのも、相続人調査の一環です。

相続人調査はどんな手順で進めるの?

相続人調査の手順としては、まず「相続人調査に必要なもの」を理解し、その後「必要な書類を収集する」と「集めた書類を読み解いてく」という作業になります。ここでは相続人調査の手順の全体図や、調査に必要な戸籍謄本について見ていきましょう。

1)相続人調査に必要なものを知る

相続人調査で必要なものは「戸籍関係の書類」です。いわゆる戸籍謄本や戸籍抄本などが該当します。

まず戸籍とは、個人の一生について記載されている身分証明書のことです。「3代戸籍の禁止の原則」という考えもあり、夫婦と未婚の子の2世代のみ記録されています。なお、保存されているのは次の記録です。

・戸籍の筆頭者の氏名と本籍
・戸籍に記載ある全員の氏名・出生年月日・出生地
・父母の氏名・続柄
・出生事項や婚姻事項
・現在の戸籍に入る前の戸籍情報
・戸籍の改製日

戸籍謄本の種類

・戸籍謄本
・戸籍抄本(こせきしょうほん)
・除籍謄本
・改製原戸籍謄本

戸籍謄本とは、戸籍に記載されている情報をすべて写し、市町村長名と公印等を押して証明したものです。一方、戸籍謄本から1人分、もしくは複数人だけの情報を抜粋したものが戸籍抄本になります。
除籍謄本は婚姻や養子縁組、死亡などの要因で戸籍から人がすべて除外され、閉鎖状態になった戸籍の書類です。

改製原戸籍とは、法令の改正によって変わる前の様式や書き方で記録された戸籍を意味します。改製原戸籍謄本は、その改製原戸籍が記載されたものです。2021年現在までで改製原戸籍は、次の6種類が存在しています。

・明治5年式戸籍(保存期限超過により不可)
・明治19年式戸籍
・明治31年式戸籍
・大正4年式戸籍
・昭和23年式戸籍(実際に変更されたのは昭和32年より)
・現行戸籍(平成6年)

とはいえ人間の寿命を考えると、相続人調査においては昭和23年式からの取得が現実的です。

また昭和32年に改製された縦書きの「昭和改製原戸籍」と、平成6年に改製された「平成改製原戸籍」の2様式が存在します。さらに平成改製原戸籍で電子化されたものは横書きに変更され、様式も一新されました(2020年9月をもって全国自治体の電子化が完了)。被相続人が出生事項によっては、2種類の改製原戸籍が必要になるケースがあるため注意してください。

必ず使うのは被相続人・相続人全員分の戸籍謄本です。そのほかの書類は必要に応じて発行を申請しましょう。

2)被相続人の戸籍から収集する

まずは被相続人の死亡時の本籍地で戸籍謄本を取得します。もし婚姻や転籍によって戸籍が変わっていた場合は、一つ前の戸籍も探し、その戸籍謄本も申請して取得しましょう。

例えば、この戸籍謄本で言うと赤で囲った部分に着目して調べてみます(拡大して確認したい方はファイルをクリックすると表示されます)

「改製日:平成15年12月12日」「改製事由:平成6年法務省令第51号付則第2第1項による改製」と記載されていることがわかります。これは何を意味するかというと、平成15年12月12日に法律の規定(平成6年法務省令第51号付則第2第1項)によってこの戸籍が新たにつくられたことがわかります。

つまり、この戸籍謄本は平成15年12月12日からこの戸籍謄本の発行日(戸籍謄本の末尾に記載されている日付)である令和3年2月1日までの期間の婚姻、出生、死亡などの事実関係を証明したものであるということを意味します。そのため、平成15年12月12日以前については、この戸籍謄本以前の情報である、改製原戸籍(平成15年12月12日改製以前のもの)や除籍謄本を取得しないとその他の情報がわからないということなのです。

平成15年12月12以前の情報はどこに記載されているかというと、上記の改製原戸籍が該当します。この改製原戸籍の赤で囲った部分を確認してみてください。「平成6年法務省令第51号付則第2第1項による改製につき平成15年12月12日消除」と記載されていることがわかります。そして、青でくくった部分を見てみると、「横浜市神奈川区●番地から転籍昭和38年2月1日受付」と記載されています。つまり、この改製原戸籍は、転籍をした日である昭和38年2月1日から改製された平成15年12月12日までの事実関係を証明しているのです。

このように、出生の戸籍までを数珠つなぎのように辿っていき、出生から死亡までの戸籍を調べていきます。

被相続人の戸籍情報が揃ったら、次は相続人の確認です。取得した被相続人の戸籍情報から親族関係を洗い出し、「誰が相続人に当てはまるのか?」を見ていきます。その後は前述の相続順位を参考に、相続人に該当する人物の戸籍謄本も収集しましょう。

戸籍謄本の取得は、本籍地のある市区町村役場にて申請書を提出して行います。もし足を運ぶのが困難であれば郵送で受け取ることも可能です。委任状なしで取得できるのは戸籍に記載がある本人や配偶者、直系尊属までになります。それ以外の人が戸籍謄本を請求する場合は委任状が必要です。
窓口の場合は役場にある交付申請書を、郵送の場合は各役所ホームページからダウンロードできる申請書の書式を使用します。

申請書の他に必要なものは次のとおりです。

・請求者の顔写真がついた身分証明書の写し
・印鑑
・手数料
・郵送の場合は切手や返信用封筒 など

また、対応さえしていればコンビニでの取得も可能です。ただし、マイナンバーカードが必要になります。対応コンビニは以下のサイトで確認してみてください。

参考サイト:コンビニエンスストア等における証明書等の自動交付

3)取得した情報を読み取る

取得した戸籍謄本から、相続人かどうかを判断するために必要な情報を読み取ります。読み取った情報から、実際に相続人が誰なのかを確定していきましょう。
とくに改製原戸籍謄本には現在の戸籍にも載っていない情報があるかもしれません。入念にチェックした後、必要な作業を進めてください。

・過去の婚姻関係や養子縁組の有無、認知した隠し子の存在などを確認する
・合併や消滅が要因で現在は存在していない地名がある場合は現在の保存役所を探す
・「改製」と記載あれば改製前後の戸籍謄本も調べる
・手書きの戸籍謄本も存在するため読み取りには注意する 

など親族の数が多ければ多いほど、チェックする戸籍謄本の数は膨大になります。すべての情報を正確に確認するには根気と時間が必要です。

相続人調査は専門家に依頼!その理由は?

相続人調査は必要な知識と時間さえあれば、専門家に頼らずとも1人で進めることが可能です。しかし結論からいえば専門家への依頼をおすすめします。以下では相続人調査を専門家に依頼すべき理由や、依頼時の費用相場について見ていきましょう。

相続人調査を専門家へ依頼すべき理由

相続人調査を専門家へ依頼すると効果的なのは、相続人調査には、専門知識が必要になったり大量の労力がかかるからです。

相続人調査に限らず、相続関係の手続きや調査には、相続税法や民法などの法律知識が必要不可欠です。とくに相続の分野の専門性は非常に高いため、経験や知識の少ない人が無理に進めると正しい申告ができなくなります。

また、労力面も問題です。戸籍謄本の収集と読み取りには体力と時間が必要になります。金融機関や役所とのやり取りの手間も考えると、仕事や家事を並行しながら作業を進めるのは困難であると言わざるを得ません。

以上のことから、相続人調査は士業の専門家への依頼をおすすめします。メリットは次のとおりです。

1)法律の専門知識と実務経験から漏れのない調査が期待できる
2)自分が仕事や家事をしているときも代わりに調査してくれる
3)相続関係で疑問がある場合はすぐに相談できる

相続人調査を依頼できる士業は司法書士・行政書士・税理士・弁護士です。相続関係に強い司法書士をおすすめします。

相続人調査の費用相場

相続人調査の費用は、士業事務所によってそれぞれ変化します。「どこまで対応してくれるのか」「プランはどうなっているか」の事前確認が必要不可欠です。例えば次のような料金設定がよく見られます。

・30,000円(一定の人数以上で値上げ1人につき数千円プラス)
・50,000円+戸籍取り寄せ料や手数料などの実費
・28,000円(一定人数以上の戸籍収集で数千円プラス) など

以上のことから、相続人調査の費用相場として50,000円前後を見込んでおくことをおすすめします。

正しい相続人調査でスムーズな相続手続きを!

この回では相続人調査の概要や手順について見てきました。本章の内容をまとめてみましょう。

  • 相続人調査は「相続人が何人いるのか」を確定させる作業を意味する
  • 相続人がはっきりしないと遺産分割協議や相続手続きの進捗が遅れる
  • 調査には戸籍謄本の情報が非常に重要となる
  • 専門知識と労力が必要なので司法書士や行政書士などの専門家に依頼すべきである

相続人調査を怠ってしまうと、相続で揉めたり手続きがうまくいかなかったりなどの大きなトラブルの引き金になります。今回解説したポイントで相続人調査の重要性を頭に入れた上で、相続関係の作業の参考にしてください。

長年相続問題に携わってきた当事務所であれば、ご相談者様の親族関係や日々の予定を考慮のうえ、適切な相続人調査の実施を提供できます。相続人調査ならび相続対策をご検討中であれば、ぜひお気軽にご相談ください。

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