家族信託をはじめとした、「生前にしておく、相続に関する対策(生前対策)」をどこにすればよいか迷っている方は多いと思います。多くの方が思い浮かべるのは、「専門家(士業)事務所」ではないでしょうか。
家族信託を扱っている主な士業は「司法書士・弁護士・税理士・行政書士」の4つです。最近は同様のサービスを不動産会社や金融機関なども提供しており、誰に相談すればいいのか悩んでいる方もいるかもしれません。まずは、それぞれの士業の特徴をつかみ、自分はどこに相談に行くのが一番良いのか、決める際の参考にしましょう。
今回の記事のポイントは下記のとおりです。
- 家族信託の相談先となる「4つの士業」 司法書士・弁護士・税理士・行政書士
~それぞれの士業には、専門分野があり何が得意で相談できるのか事前に確認が必要何が相談できるのか知っておこう~
~自分はどの士業に相談したらよいか、おすすめを見てみよう~ - 不動産会社や金融機関を相談窓口とする際の注意点とは
~基本的に自社商品の販売が最終目的である可能性がある。ことを知っておこう~
~法務、税務を見据えたトータルな多角的な提案が受けられない?手数料の上乗せがあるかもしれないので注意~ - これで失敗しない!相談先の士業事務所を選ぶポイントは4つ!
~コンサルティング可能か? 家族信託の実績があるか? 費用が明確か? 相談サポート体制は万全か?の4点を確認して、失敗しない事務所選びをしていく。 - チェックシートを使って、失敗しない事務所選びをしていく。
記事では、各士業と金融機関などが提供している家族信託サービスの違いと、相談する事務所選びで失敗しないポイントを伝授します。今、候補の事務所がある方も必見です。
目次
1.家族信託の相談先となる4つの士業
まだまだ実績があり、業務として取り扱っている専門家は少ない状況ですが、下記の4つの士業が取り扱っています。
・司法書士
・弁護士
・税理士
・行政書士
それぞれの士業が手がける家族信託業務の取り扱いについて、以下説明していきます。
1‐1.司法書士とは?
司法書士が独占的に行っている業務は、登記申請(名義変更)業務です。不動産登記だけでなく、商業登記も行います。
また、後見業務や、相続業務を行う司法書士も多く、不動産や相続に関する知識が豊富であるため、生前対策(家族信託)と親和性の高い士業だと言えるでしょう。家族信託を専門に行っている事務所も多いです。
こんな人におすすめ
信託財産(管理を任せる財産)に不動産がある場合は、必ず司法書士が関わってくることになるので、はじめから司法書士に相談するのが効率的です。
司法書士に相談できる生前対策
家族信託
・家族信託スキームの提案・相談
・家族信託契約書作成業務
・家族信託に伴う登記申請
土地・建物の登記(不動産登記)
・不動産の売買・生前贈与・信託による名義変更(所有権移転登記)
会社の登記全般(商業登記)
・登記・役員変更登記・増資の登記・解散・清算結了の登記
・議事録の作成・定款認証サポートなど
成年後見業務
・成年後見の申立書作成と提出代行、成年後見人への就任(財産管理)
・任意後見契約の締結
相続関係
・相続関係調査
・遺言書作成支援
1‐2.弁護士とは?
弁護士は、基本的に生前対策全般、どの業務もしてよいとされている士業です。ただし、専門分野が分かれているので、不動産や相続関係に詳しい弁護士を探すことが大事です。
弁護士の独占業務が、紛争解決です。これだけは、弁護士にしかできない業務です。一般的に、他士業よりも、費用が高額になることが多いです。
こんな人におすすめ
すでに推定相続人間(将来相続人になる人たち)で紛争が生じている場合や、生前対策の途中または相続開始後に紛争が生じそうな場合には弁護士に相談されるのがベストでしょう。
弁護士にできる相談できる生前対策
家族信託
・家族信託スキームの提案・相談
・家族信託契約書作成業務
紛争解決
・生前から争いになっている親族(相続人)関係についての相談
成年後見業務
・成年後見の申立書作成と提出、成年後見人への就任(財産管理)
・任意後見契約の締結
相続関係
・相続関係調査
・遺言書作成業務
1‐3.税理士とは?
税理士の独占業務は、税務相談、税務申告です。特に資産税を専門としている税理士に相談することで、相続税の試算や、生前贈与などを検討している場合の税務面のシミュレーションやアドバイスをしてもらえます。
司法書士・弁護士と連携する形で家族信託に携わることが多い士業と言えます。
こんな人におすすめ
将来的に多額の相続税が出る可能性が高い方は、一度相続税の試算をうけることをおすすめします。
税理士に相談できる生前対策
家族信託
・家族信託スキームの提案・相談
税務申告・税務相談
・相続税試算
・譲渡所得税・贈与税・不動産取得税の試算(生前贈与に関する税の相談)
1‐4.行政書士とは?
行政書士は、契約書や遺言書の作成や、官公署に提出する書類の作成を行う士業です。
相続関係の知識が豊富で、生前対策(家族信託)を専門に行っている行政書士も多く、身近な法律家として、相談の窓口とする人も多い士業です。
こんな人におすすめ
どこに相談してよいか、分からない。身近な専門家に聞いてもらいたいと思っている方。
行政書士に相談できる生前対策
家族信託
・家族信託スキームの提案・相談
・家族信託契約書作成業務
成年後見業務
・成年後見人への就任(財産管理)
・任意後見契約締結
相続関係
・相続関係調査
・遺言書作成
1‐5.司法書士、弁護士、税理士、行政書士のまとめ
ここで、どの士業に相談するのがおすすめか、こんな人におすすめとした部分を簡単にまとめましょう。
- 登記の専門家。不動産・相続に詳しい「司法書士」
管理を任せる財産として、不動産がある人におすすめ。 - 紛争解決は「弁護士」にしかできない
将来的にご家族(相続人)間で「争族」になる可能性のある方におすすめ。 - 税務の専門家「税理士」
相続税が出る可能性のある方、各種税金試算をしたい方におすすめ - 身近な法律家「行政書士」
家族信託を専門としている行政書士がおすすめ。
なお、弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、ご家族ごとにどのような形で家族信託を設計し、信託契約書を作成すればよいのか、無料相談をさせていただいております。信託契約書の作成をはじめ、信託登記手続き、信託口口座の開設、その後の相談などトータルでサポートさせていただきますので、お気軽にお問合せください。
2.不動産会社や金融機関に家族信託を相談すると・・・
家族信託を考えている人の中には、「不動産会社や金融機関」を「生前対策全般の窓口」にしようと考えている方も多いかもしれません。
その場合の注意点を見ていきましょう。
不動産会社に相談できる生前対策
顧客サービスとして
・家族信託活用方法のアドバイス
・生前贈与、遺言など活用方法のアドバイス
・不動産活用、資産組み換えのアドバイス
金融機関に相談できる生前対策
顧客サービスとして
・遺言書作成サポートとそれに伴う相続のアドバイス
・生命保険など金融商品の活用
・高齢者の預金管理用のサービスの提案、
このように、不動産会社や金融機関は、「顧客サービス」として「アドバイス」を行い、自社の商品を売ることが仕事ですので、様々な観点からお客様にあった提案をするとは限りません。
(※銀行なら、自社の投資信託や保険商品の販売、不動産業者なら、売却提案や不動産活用提案となるかもしれません。)
また、家族信託においては自ら手続きを手掛けることができないため、不動産会社や金融機関は、士業を手配する「窓口役」をすることになります。会社に紹介される士業は、その会社にとって何かメリットのある提案をすることが多いと言えます。
紹介元に利益を生むような提案を軸として考えがちになるのです。
こういった理由から、出来れば、士業事務所は自分で探すほうが様々な視点での提案を受けることができるということは認識しておくとよいでしょう。
4.失敗しない「家族信託の相談先(事務所)の選び方」ポイントは4つ!
比較ポイント1 家族信託のコンサルティングが可能か?
▪家族信託を含む生前対策を、中立的な立場から複数提案できる事務所か?
比較ポイント2 実績・専門性と信用力
▪家族信託をはじめとした生前対策全般を専門としている事務所か?
▪家族信託組成の実績はあるか?
▪客観的に信用できる事務所か?
比較ポイント3 価格・費用
▪明確な見積りを表示する事務所か?
▪専門事務所でない場合、外注手数料が上乗せされる可能性があるので注意。
▪アフターフォローが入っていない場合は、「安物買いの銭失い」になりかねない?
比較ポイント4 信託相談体制・サポート体制
▪代表1人だけではなく、資格をもった複数の所員が知識・経験を持っているか?
▪家族信託の関係者が遠方に離れていてもサポートできる事務所か?
▪打ち合わせや相談・質問が気軽にできる体制があるか?
▪アフターフォローが充実しているか?
▪自分と相性が合う相談職員(事務所)かどうか?
4‐1.比較ポイント1 家族信託のコンサルティングが可能か?
家族構成や財産の状況、依頼者の想いは、まさに十人十色で、一つとして同じ提案はありえません。それぞれに最適な家族信託の組成をしていく必要があります。
そこで、きちんと相談者の財産状況や家族関係を把握し、法律面だけでなく、税金のことも考えた対策を検討。家族信託ではなく、他の生前対策の方が依頼者に適している可能性も十分にあり得ますので、丁寧にヒアリングし、中立的な立場から、様々な生前対策の提案を行うことができるかが、非常に重要です。
前述のように、不動産会社や金融機関は、当然自社の商品販売(※)が主な目的となるので、多角的な視点からのコンサルティングを行うことはほぼないと思われます。(※銀行なら、自社の投資信託や保険商品の販売、不動産業者なら、売却提案や不動産活用提案となる。)
では、どのような士業事務所にコンサルティングを依頼するのが良いのでしょう。
前述したように、それぞれの士業には、職域・専門分野・得意分野があります。入り口としてどの士業の事務所を選んでも、『家族信託を専門として行っている事務所』ならば、しっかりしたコンサルティングが可能でしょう。
しかし、職域には限界がありますので、4士業の得意分野や専門分野の視点を集結してコンサルティングできる事務所から提案を受けることは非常に有益です。自分が検討している事務所が、多角的にコンサルティングをすることが可能か尋ねてみるのもおすすめです。
4‐2.比較ポイント2 実績・専門性と信用力
事務所選びを、病院選び・医者選びに置き換えてみましょう。
難しい手術であれば、その道の権威、少なくとも経験豊富な医師にお任せしたいと思います。
家族信託も同じです。士業事務所であっても、家族信託の専門ではなく、経験もない事務所に任せるのは非常に危険です。(もっとも、専門外だとして、受けない事務所も多いと思います。)
もちろん、士業事務所は、それぞれの国家資格を持った資格者が相談にあたることがほとんどですから、信用力の点では問題ないと思われます。
ただし、「家族信託を専門としているか?」「実績が多くあるか?」は別の問題ですので、ご自身が検討している事務所が専門性・実績をも兼ね備えているか、しっかり確認しましょう。
例えば、司法書士事務所だと不動産登記のみを専門に行う事務所、弁護士事務所だと紛争案件(訴訟案件)のみ専門に行う事務所…等、職域としては出来ても、経験や専門性のない事務所もあることをしっかり認識しておくことが大切です。
初回無料相談の際などに、「家族信託が専門分野なのか」「実績はどのくらいあるのか」を必ず確認しましょう。
ここで、大手の金融機関のブランド力=信用力に魅力を感じる方も多いと思います。
しかし、金融機関は民事信託(いわゆる家族信託)を専門とはしておらず、「信託」と名のつく商品は、「受託者が金融機関」となる商事信託の場合が多いです。よく聞く、「投資信託」「遺言信託」などは、金融機関(信託会社)が報酬をもらって行う「商事信託」であり、「家族信託(=民事信託)」とは別物です。(家族信託はあくまでも、「家族が報酬をもらわず(もらうことも可能)管理するための契約」です。)
家族信託については金融機関が自社で設計をすることは出来ないので、士業事務所へ逐一確認をとったり、外注したりすることも多いため、スピード感には欠けるかもしれません。
また、信託銀行をはじめとした金融機関の生前対策については、銀行の顧客(いわゆる上客)に対応していることがほとんどであり、総資産の額などの観点からも、選択肢から除外されることは十分あり得ます。
もちろん、大手のブランド力は魅力ですので、その点を重視される方にはあっていると言えます。
基本となる家族信託の手続きの手順やどのくらいかかるかといった期間について分かり易く解説している記事もありますので、チェックしてください。
4‐3.比較ポイント3 費用・価格
家族信託を検討している方にとって、費用はとても重要だと思います。
まず、不動産会社や金融機関に依頼する場合、外部の士業事務所への確認や外注費用を手数料として上乗せされる可能性がありますので、注意してください。
では士業事務所に直接相談する場合はどうでしょうか。費用には、ばらつきがあるのが現状です。
気を付けたいのは以下の点です。
▪報酬が、財産額の〇%など、客観的に決まっているかどうか。
▪見積書を出してくれるかどうか。
▪アフターフォローまで入った価格を出しているかどうか。
家族信託では、組成前だけでなく、組成後から信託終了まで、引き続き相談したいことが出てくるお客様も多いです。安物買いの銭失いにならないよう、しっかり見極めましょう。費用や報酬等の相場については詳しい記事が載っているので確認ください。
4‐4.比較ポイント4 信託相談体制・サポート体制
ここまで、コンサルができるか、家族信託専門の事務所か…等を判断ポイントとしてみてきましたが、相談できる所員が1人(例えば代表司法書士のみ)だけというのでは、心もとないと思います。
1人が対応できる件数は限りがありますので、相談への回答のスピードという面でも、難しくなってきます。
また、家族信託組成の関係者は複数人になることがほとんどです。地方や海外に離れて住んでいる方もいるでしょう。遠方の家族への対応はどのようにしてもらえるのか?高齢で出歩けない家族への対応はどうか?施設や病院にいる家族は?と心配している方も多いのではないでしょうか。
ここでの判断ポイントは
▪家族信託の専門の相談職員が複数いるか?
▪事務所に出向くばかりでなく、出張対応してくれるか?
▪電話やFAXのみならず、最新のITツールでの対応も可能な事務所か?
つまり、気軽にいつでも不安点を取り除いてくれる事務所なのか?
ITツールには対応していない事務所もまだ多いですので、事前に確認が必要です。聞きたいことを、聞きたいときにすぐに聞くことができるのは、安心感がありますから、そんなツールがあるかどうかも聞いておくといいでしょう。
そしてサポート体制も重要です。
家族信託は、はじめの相談から信託終了となるまで(委託者死亡など)の期間にわたり続きます。事務所との付き合いはそこまで続くと考えたほうが良いでしょう。
「組成ができたら終わり」というような事務所は要注意です。組成後も、不安点が生じたら、気軽に聞けるのか、万が一法務面や税務面で契約を変更したほうが良い場合、アナウンスしてくれるか。こういった点も、確認しておきましょう。
最後に、相性が合う事務所(相談職員)かどうかもポイントです。実際に初回無料相談等で話をしてみて、判断なさってくださいね。
5.どんな形で家族信託の仕組みをつくることができるか、無料相談受付中
当サイトでは、どんな形で預金や不動産を家族だけで管理できる仕組みを作ることができるか、無料相談が可能です。累計4000件を超える相続・家族信託相談実績をもとに、専門の司法書士・行政書士がご連絡いたします。
家族信託、任意後見、生前贈与の活用など、ご家族にとってどんな対策が必要か、何ができるのかをご説明いたします。自分の家族の場合は何が必要なのか気になるという方は、ぜひこちらから無料相談をお試しください。
6.まとめ
今回の記事では、下記をご案内しました。
- 家族信託の相談先となる「4つの士業」 司法書士・弁護士・税理士・行政書士
~それぞれの士業には、専門分野があり何が得意で相談できるのか事前に確認が必要何が相談できるのか知っておこう~
~自分はどの士業に相談したらよいか、おすすめを見てみよう~ - 不動産会社や金融機関を相談窓口とする際の注意点とは
~基本的に自社商品の販売が最終目的である可能性がある。ことを知っておこう~
~法務、税務を見据えたトータルな多角的な提案が受けられない?手数料の上乗せがあるかもしれないので注意~ - これで失敗しない!相談先の士業事務所を選ぶポイントは4つ!
~コンサルティング可能か? 家族信託の実績があるか? 費用が明確か? 相談サポート体制は万全か?の4点を確認して、失敗しない事務所選びをしていく。 - チェックシートを使って、失敗しない事務所選びをしていく。
さて、今回は、家族信託を考えている方へ、事務所選びの判断ポイントをお伝えしてきました。いかがだったでしょうか。以下に、まとめとして事務所の選び方のチェックシートを掲載します。1つずつ確認していきましょう。
皆様が最適な事務所と出会うことができることを願っています。