【2020年4月司法書士が解説】家族信託で上場株式や投資信託を管理するには!?|有価証券の信託口口座とは

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに100件以上の家族信託や生前対策を取り組んでいる。年間50件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

家族信託・民事信託を活用することで、高齢の親の認知症対策を行っていきたいという相談を多く受けます。信託したい財産とすることで多いのが、預貯金のほか、実家、不動産などが多いですが、親が株や投資信託など証券会社で取引をしており、上場株式や投資信託を管理できるようにしたいという相談を受けることが増えてきました。

家族信託・民事信託が普及し始めた当初は、上場株式・有価証券を管理するための信託口口座開設に対応できる証券会社がほとんどなかったのですが、2019年頃から野村證券、大和証券、2020年4月27日からは楽天証券など大手証券会社でも信託口口座が開設ができるようになってきました。

今回の記事のポイントは下記のとおりです

  • 高齢の親の有価証券を管理する方法としては、①代理人届を提出する方法②家族信託・民事信託を活用する方法がある
  • 2019年頃から上場株式・投資信託など金融商品を信託財産とする信託口口座の開設ができるようになってきた
  • 上場株式など有価証券を管理するための信託口口座開設は必須
  • 有価証券の信託口口座を開設するには、証券会社が定める信託口口座開設要件を満たす必要があり、事前の確認が必要
  • 有価証券の信託口口座開設にあたっては、証券会社が取り扱いしている金融商品の種類や口座の運用方法など、証券会社によって取り扱いが異なり、株式の保有期間もリセットされるので注意が必要

上場株式、投資信託など上場している有価証券を信託財産とする家族信託・民事信託の事例と取り扱いについて詳しく解説していきます。

上場株式・投資信託など金融資産を信託するには

事例 高齢の親の株式を子供が管理したい

高齢の父(86歳)がいる長男からの相談です。

父が先日、倒れ入院しました。現在体調は回復しているが、再発の恐れがあります。
父には、金融資産として預貯金と上場株式、投資信託を有しています。上場有価証券の配当を生活費に利用していること、父自身も配当を楽しみにしていることからこのままの状態で管理を継続したいと考えていますが、状況に応じて売却など株取引を子が代わりにできるようにしておきたいと考えています。

何もしなかった場合

認知症など父の判断能力が喪失した場合には、有価証券の売却、管理をすることができなくなります。
成年後見制度を活用すると、父の金融資産の状況にもよりますが、専門家など第三者後見人がつく可能性があります。

そして、原則、株の取引など投機的な取引は成年後見制度では認められていないことから、日常生活に必要がない金融資産については、家庭裁判所の「報告書・指図書」がないと引き出し等ができないという「後見制度支援信託」か「後見制度支援預金」の利用を求められる可能性が高くなります。
認知症になってしまった後の口座の引き出しのリスクや成年後見制度支援信託の詳しい話については下記の記事に詳しくまとめていますので確認してみてください。

≫金融機関に認知症と知られなければ使っていいの?~親の預貯金~|死亡や認知症による銀行の口座凍結のタイミングと勝手に使うリスク

≫成年後見|最高裁の親族後見人を認める方針変更の影響は!?|司法書士の立場から見る後見解決事例

代理人届を証券会社に提出する場合

認知症になっていない、または認知症の診断を受けていても判断能力の著しい低下がない場合、事前に口座を凍結させないためにとれる有効な手段として、証券会社にご家族の方で子などを代理人とする代理人届を提出するという方法があります。

ただし、原則は父の正常な判断能力に基づく委任の元で、代理人が取引を行うという制度であるため、判断能力の低下後に判断能力がない状態の父の代理人として取引を継続するとなると、兄弟間の1人が代理人として株取引を継続することになるので、後々争いの原因にならないとも限りません。また、証券会社において、口座名義人である本人の判断能力が喪失したことと判断された場合には、代理人制度での取引ができなくなる可能性もあるので注意してください。

家族信託・民事信託(有価証券信託)制度を利用する場合

口座の名義人(親)が、信頼できる家族(子)に、認知症になる前から、信託財産として現金の管理を任せることができる契約です。
具体的には子(受託者)名義の信託口口座に親(委託者)の口座から上場株式など有価証券を移し、子は信託契約で定められた目的に従ってその有価証券の管理や取引を行うことができます。

親が認知症になった後も信託口口座は凍結しない為、引き続き子供が取引をすることができます。また、信託契約では親が亡くなった後の信託財産(ここでは信託口口座内の預貯金)の帰属権利者を定めるので、遺言機能もあり相続手続きもスムーズに行うことができます。

信託スキーム設計
委託者   父
受託者   長男
受益者   父
信託財産  上場株式、投資信託
終了事由  父の死亡
帰属権利者 長男

家族信託・民事信託を活用することで、受託者である長男の判断の元、上場株式、投資信託などの上場有価証券の取引を継続することができます。

信託を活用する場合、有価証券を管理するための信託口口座開設は必須

金銭においては、地域で口座開設が対応できない場合には、受託者個人名義の信託専用口座で代用での管理方法を行うという方法もありますが、有価証券においては、配当や取引に伴う確定申告が必要となるため、信託口口座で管理をすべきです。

信託した金銭を管理するための口座開設方法については、下記の記事で詳しく解説していますので、興味ある方は確認してみてください。

≫親の認知症後でも管理できる信託口口座と信託専用口座とは!?口座開設方法をお伝えします

有価証券の信託口口座の開設方法とは?

上場株式、投資信託など有価証券を管理するためには、証券会社での信託口口座開設手続きが必要です。これは、金銭管理用の銀行・信用金庫など信託口口座とは別に有価証券管理用の信託口口座を開設する必要があります。

証券会社で開設できる大手証券会社として、2020年4月時点で野村證券と大和証券、楽天証券、共和証券があります。ですが、信託口口座は信託法にのっとった口座であることが必要なため、金銭管理用の信託口口座と同様に、有価証券管理用の信託口口座も家族の間で内容を取り決めた信託契約書で開設できるとは限りません。

家族信託・民事信託は当事者で内容を自由に作れるのが魅力なのですが、口座を開設して管理する証券会社にとっては、信託法と信託契約の内容に従って、株取引、金銭の入出金などを行う必要があるため、証券会社で定まった要件を満たす信託契約書でなければ口座開設に応じてもらえません。そのため、口座開設にあたっては、証券会社が定める要件を満たす信託契約書を作成する必要があります。

上場有価証券を信託できる信託口口座については、一部の証券会社で開設をすることができますが、金銭の信託口口座と同様に全ての証券会社で開設できるわけではありません。そして、信託口口座を開設できる証券会社においても、信託口口座開設のための要件があり、その要件を満たす必要があります。

金銭を信託する場合はどうなるの?

預貯金や有価証券などを管理するためには、管理するための金融機関の口座開設が必要です。金銭については、金銭を管理するための信託口口座を開設できる銀行、信用金庫などの金融機関が増えてきました。

金銭を管理するための口座開設手続きについては、下記の記事に詳しく記載していますのでこちらを確認してみてください。

≫家族信託で金銭の管理はどうやって行う!?信託口口座とは?

有価証券を管理する信託口口座の開設にあたっての基準

ここでは、証券会社が求める一般的な信託口口座開設の要件についてお伝えします(2020年4月現在)。

  • 有価証券を管理する信託口口座の他に、同一支店で受益者である親の個人口座、受託者である子の個人口座の口座を開設すること
    信託口口座を開設するにあたっては、委託者父と受託者子のそれぞれの個人の証券口座の開設が必要です。
  • 信託契約書は公正証書で作成すること
    信託法上では信託契約書は当事者間の私文書で作成することができますが、信託口口座開設するには、公正証書で作成する必要があります。
  • 専門家(士業、場合によっては金融機関が指定する士業)が作成に関与した信託契約書であること
    ご家族のみで作成した信託契約書では受付をせず、家族信託・民事信託に精通した専門家が関与した信託契約書でなければ口座開設に応じてもらえない場合があります。
  • 委託者と受益者が同一人(委託者兼受益者)の自益信託であること
    委託者父、受託者子、受益者父の父の財産管理を行う認知症対策の家族信託・民事信託で活用することができます。委託者父、受託者子、受益者障害ある子のような障害がある子のために父の財産を信託財産とする他益信託では活用することができません。
    ※自益信託、他益信託の違いについては改めて別の記事で解説します。
  • 当初の受益者死亡により信託が終了する旨の定めが契約書に記載されていること
    父の一代限りで死亡する信託契約が対象です。父から母、そして子へと家族信託・民事信託を継続する受益者連続型信託は対象外です。
  • 委託者、受託者、受益者が“個人”であること
    家族信託・民事信託においては、受託者を法人とすることも可能ですが、法人を認めていない証券会社がある場合があるので注意が必要です。
  • 委託者、受託者、受益者が日本国内に居住していること
    当事者が海外居住の場合には利用できません。
  • 受託者が委託者兼受益者の配偶者・近親者であること
    父と子(1親等)、長男と次男(2親等)、甥と叔父(3親等)など一定の範囲内の親族であることが必要です。証券会社によっては、2親等まで、3親等までなど範囲を制限していることが多いです。
  • ご家族(委託者の法定相続人に該当する方など)の同意がとれていること
    信託契約の内容について、将来の紛争性を排除するため、委託者のご家族の同意が求められるケースがあります。

上記の他、証券会社によって、個別で定められている要件があるため、実際に有価証券の信託口口座開設をする場合には、開設を希望する証券会社や信託を相談する専門家に相談の上、各証券会社の定める要件を確認しながら、開設を進めてみてください。

有価証券を管理する信託口口座の運用上の注意点

信託口口座は通常の証券会社の口座と異なるため、通常の取引上の運用方法とは異なります。証券会社ごと取り扱いが異なるケースがありますが、一般的に注意が必要な点は下記のとおりです。

信託財産とすることできる有価証券の種類

他の証券会社で保管している国内株式を基本的に信託口口座に移管する(信託財産とする)ことはできますが、投資信託については、信託口口座を開設する証券会社が取り扱いをしている金融商品でなければ、移管する(信託財産とする)ことはできません。そのため、移管したい投資信託など金融商品の取り扱いをしているか、事前に信託口口座を開設する証券会社に確認が必要です。

株主名簿には、受託者名義で登録される

株主名簿には、委託者ではなく新規で、受託者名義で登録されるので、保有期間がゼロからスタートします。そのため、長期で保有してきた上場株式の株主優待の保有期間などもリセットされます。

信託財産の損益通算について

不動産を信託する場合には、不動産取得について、信託財産と信託をしない委託者(父)の財産間や信託契約を複数結んだ場合の信託契約ごとの黒字と赤字を通算する損益通算を行うことはできませんが、有価証券については通常通り、損益通算を行うことができます。

特定口座、NISAの利用ができない可能性がある

信託口口座について、証券会社によっては、証券会社が年間の売買取引を計算して納税をしてくれる特定口座の利用ができず、自ら確定申告をする必要がある一般口座の開設する可能性があります。また、NISAも利用できない可能性もあります。

信託計算書の提出が必要

毎年の確定申告手続きの他に、有価証券の配当について信託の受託者は「信託の計算書」「信託の計算書合計表」を、毎年1月31日までに税務署長に提出する必要があります。どのような場合に提出が必要か、事前に税理士に確認しておく必要があります。

まとめ

  • 高齢の親の有価証券を管理する方法としては、①代理人届を提出する方法と②家族信託・民事信託を活用する方法がある
  • 2019年頃から上場株式・投資信託など金融商品を信託財産とする信託口口座の開設ができるようになってきた
  • 上場株式など有価証券を管理するための信託口口座開設は必須
  • 有価証券の信託口口座を開設するには、証券会社が定める信託口口座開設要件を満たす必要があり、事前の確認が必要
  • 有価証券の信託口口座開設にあたっては、証券会社が取り扱いしている金融商品の種類や口座の運用方法など、証券会社によって取り扱いが異なり、株式の保有期間もリセットされるので注意が必要

これまで説明してきた通り、信託契約により、家族信託・民事信託の効力が発生しますが、信託された有価証券を管理するためには、信託口口座の開設が必要ですが、2019年頃から運用が始まっているため、証券会社ごとの口座開設の要件や運用上の注意点など、確認しなければならない点が多々あります。

信託は新しい制度でもあり、家族に適した設計が必要です。場合によっては代理人届で代用するなど、信託に詳しい専門家を交えて、我が家にとってどのような財産管理方法がよいのか、是非相談してみてくださいね。

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