【司法書士監修】5分でわかる家族信託の手続き。手順と期間を日本一わかりやすく解説します

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに150件以上の家族信託や生前対策を取り組んでいる。年間50件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

家族信託は、子(など家族)が、高齢の親(ご本人)に代わり、契約に定めた内容の中で資産の管理・運用をすることができる制度であり、認知症対策や空き家対策として、メディアなどでも非常に注目されています。
今、まさに家族信託の導入を検討したいとお考えの方もいるかもしれません。

しかし、以下のような理由で決断できず、悶々とした時間を過ごしている方も少なくないようです。

家族信託の導入時の悩み

このような不安から家族信託の手続きに踏み込めない方に、実際の手続きの流れと押さえておくべきポイントをお伝えします。
今回の記事のポイントは下記のとおりです 。

  • 大前提として、家族信託開始までは、委託者の判断能力がなくてはいけない!
  • 家族信託開始までの手続きは、大きく分けて3段階1.家族信託の内容(スキーム)を決める、2.信託契約書を作成する、3.家族信託した財産の名義変更を行う)、9つのステップに分けられる
  • すべての手続きを自分でやると、非常に時間がかかる可能性がある。
  • 一般的なご家庭の家族信託手続きを専門家と一緒に行う場合、2~3カ月で信託を開始できることが多い!
  • 公正証書作成のため、公証人に自宅や施設に来てもらうことも可能!
  • 自分や親が最低限すべきこと、揃えるべき書類は意外と少ない!
  • 忙しい子世代、体力が心配な親世代にも、配慮しながら手続きを進めることができる!
  • 手続が複雑そうで迷っている人は、親の判断能力低下前に専門家に相談してみよう!

弊所でよく相談を受ける、一般的なご家庭で活用することが多い家族信託開始までの事例を参考に、解説していきます。

自分は実際に何をすればいいの?~家族でやらなければならないことは意外に多くない!~

例)以下のような、一般的なご家族から受ける相談事例で、手続きの流れを見てみましょう。

目 的)親の認知症対策。親の財産を、家族が管理できるようにしておきたい。
委託者)高齢の親
受託者)仕事をしている子
信託財産)現金預金と自宅

家族信託開始までの9つのステップ

家族信託開始までの過程を分けると下記の9ステップ(①~⑨)があります。

このうち、ご家族に主体として動いていただく必要があるのは4つ、更にそのうちご高齢の委託者に実際に動いていただくのは2回だけです!

家族信託開始までのステップは、以下9つです。
実際にご家族で決めていくのは①②の2つ、委託者・受託者(親・子)に実際に動いていただきたいのは⑦⑧(⑧の信託口口座の開設については受託者(子)だけで対応してもらえる金融機関もあります)だけです。
印の部分参照

●契約の内容を決めていく
①誰が(委託者:親)誰に(受託者:子)何のために(目的:認知症対策のため)何の(信託財産:現金預金・自宅)管理運用を任せるのか決める。
②信託財産の将来的な帰属先(相続先:子等)を決める。
③将来的に家族がもめてしまうことのないよう、家族全員で内容を確認し万全を期す。
(戸籍の収集で親族関係を正確に把握)
●契約書を作成していく
④家族信託の契約書案を作成する。
(専門家がチェック、本人の判断能力の確認を行う)
●信託財産を管理運用するための体制を整えるための下準備をする
⑤受託者が現金・預金(有価証券)を管理運用するための信託口口座を準備する。
(信託口口座を開設できる金融機関との調整)
⑥受託者が不動産を管理運用するために必要な登記の準備をする。
(司法書士との調整)
●公正証書を作成する
⑦公正証書の作成(公証人による公正証書化)
(④を踏まえ、公証役場にて作成。公証人の出張対応もあり。信託財産に不動産があれば、この場で司法書士による、登記の意思確認をします。)
●信託財産の管理運用のために「名義変更」をする
⑧信託口口座の開設と信託口口座への送金
(⑤⑥を踏まえ、受託者が金融機関に口座開設をし(通常の口座開設とほぼ変わらない)委託者が送金する)
⑨ 不動産を信託した場合には、不動産の信託登記手続(名義変更)をする。
(法務局に申請します。一般的には司法書士に依頼します。)

家族信託開始までの9つのステップ

これらのステップを経て、受託者が管理運用を開始できる状態になります。必要書類を揃えることも必要ですが、ご自分での用意が必要なものは、後述しますが意外と少ないです!
信託口口座については、別の記事で詳しく解説していますので、下記を確認してみてください。

本人(委託者)が最低限行うべきことは2つだけ!!

高齢の委託者(親)には、体調の不安もあるのでなるべく余計な負担をさせたくない場合も多くあります。実際に動いてもらうことを上記のとおり少なくすることができます。
委託者(高齢の親)が最低限すべきことは、基本的に、以下の2つです。

● 公正証書作成日に公証役場に行く!・・・⑦
行くことができなければ公証人に出張対応してもらう!
● 信託口口座の開設(金融機関によっては、親の関与不要)・・・⑧
信託口口座への送金を行う

高齢者の親が家族信託ですること

忙しい子世代の方や、体調の芳しくない親世代の方でも、十分に対応できるのが分かるかと思います。

ただし、親の判断能力が非常に低下した状態では、⑦の公正証書の作成ができません。最低限、親が自分の財産管理を家族に任せるということを自分の言葉で話せないと信託契約を行うことは難しいです。
私たちが実際にお手伝いをし、信託契約を行ったお客様からは、「思っていたよりもり意外と負担をかけずにできた」という声をたくさん頂きます。

家族信託ができるまでにかかる期間は?

以上の9つのステップ全てをご自分でやると、法律・税務関係を踏まえての契約書案作り、公証役場や金融機関との調整など、非常に時間がかかりますが、専門家に任せた場合、2~3カ月程度で家族信託を開始可能な状態にできることが多いです。

契約の内容の複雑さにもよりますが、例えば信託財産が金融資産のみの場合、2カ月ほどで開始できます。

ここまでのまとめ

専門家に相談した場合、委託者・受託者自身が実際にやるべきことは以下の通りです。

  • 委託者の財産の管理運用を誰に任せるか、管理を任せる財産の範囲も含め、家族で話し合う。
  • 委託者の他界後、最終的に誰にその信託財産を帰属(相続)させるか決める。
  • 公正証書作成の日に、公証役場に行く。(又は、公証人とご自宅や病院へ伺います。
  • 信託口口座の開前に金融設をする。(事機関と専門家でやり取りしますので、普通の口座開設のような気持ちで行えます)
  • 委託者が、個人口座から信託口口座に送金する。
  • 信託財産に不動産がある場合には、信託登記手続き(名義変更)を行う。(通常司法書士が代理して行います。)

家族信託の手続きの3つのポイントと注意点

先ほどお伝えした9つのステップの手続きにつき、具体的内容と注意すべき点を解説します。改めて、9つのステップを下記に掲載します。

この9つのステップのポイントを大きくわけると

1.家族信託の内容(スキーム)を決める
2.信託契約書を作成する
3.家族信託した財産の名義変更を行う

の3つです。

1.家族信託の内容(スキーム)を決める(①②③)

家族の対話

家族信託は「家族」と冠することからもわかるように、家族それぞれの希望を共有することが大切です。
財産を預けることになる本人と家族それぞれの「想い」を理解するために、家族会議をするところから始めていきます。

何を決めればよいでしょうか?まずは、以下の6項目をしっかり意見を出し合い決めていきましょう。

信託目的・・・なんのために、信託契約をするのか?(例:認知症対策=不動産管理・売却・銀行口座半凍結リスク回避)
委託者・・・財産を預ける人は?(例:父)
受託者・・・財産を預かる人は?(例:長男)
受益者・・・信託財産から経済的な利益を受ける人。受託者の管理運用の監督も行います。(=委託者とすることがほとんどです 例:父)※下記、受益者代理人も参照
信託財産・・・預ける財産は?(例:自宅、現金、預金、株など)
帰属権利者・・・信託終了後に、信託財産を取得する人。(例:長男が不動産を、長女が現金を取得する)

家族信託の設計

基本的な事項は上記のとおりですが、家族信託のスキーム設計においては上記の他に各家族の状況に応じて追加で設置するか否かを含めていくつか検討する事項があります。
以下に挙げていきますが、こちらは専門家に家族の想いを話し、家族に合った決定していくのがベターでしょう。

後継受託者・・・当初の受託者が財産管理をできない状態になった時に、次に管理運用を行う人
受益者代理人・・・本人(受益者)の代わりに、受益権の行使、受託者の監督を行う人。
(本人が高齢で受益者として権利を行使し、受託者を監督することが難しい場合に設定することがあります。)
第二受益者・・・当初の受益者の次に受益者となる人
(本人の財産管理後の相続だけでなく、本人亡き後配偶者や障害がある子のために管理を継続したいという場合には、その者を第二受益者として定めておき、本人亡き後は二次受益者のために財産管理を行うことができる)
信託期間・・・「本人が死亡するまで」とすることが多いが、第二受益者を定めた場合には、「本人及びその配偶者の死亡するまで」など他の定めも可能。

家族信託の設計

家族信託の設計のポイントについては下記の記事でも詳しく解説していますので、確認してみてください。

ちなみに、家族信託は選択肢の一つです。①~③で他の選択肢と比較しながら選ぶこともできるのです。

生前対策には「遺言」「生前贈与」「成年後見制度」と様々な制度を活用することができるので、希望をどう実現するのが得策なのか、多くの選択肢の中から考えていきます。場合によっては、その他の選択肢がご家族にとってベターであることもありますので、家族会議、そして専門家への相談をしていくことをお勧めします。

2.信託契約書を作成する(④⑦)

信託契約には、決められた条項や内容を入れなければ、後々問題が発生する可能性があります。

新しい制度であるからこそ、法律や税金の解釈が明確に定まっていない部分もあり、ご家族の要望に応じた内容を盛り込んでも、将来の実務の動向次第で想定外の問題が発生してしまうと、泣くに泣けません。
しっかりと専門家に依頼、又はチェックをしてもらうように心がけましょう。

また、信託契約書は基本的に公正証書で作成します。公正証書で作成しておくことのメリットは、主に以下の3点です。

公正証書作成のメリット

●公証人が本人の意思確認をするため、契約書作成時に本人に判断能力があったことの証明になる。(=紛争になりにくい)
●信託契約書の原本は公証役場で保管され、紛失した場合でも写し(正本・謄本)の再交付を受けることができるので安心。
●公正証書を提示することで、金融機関で正式な信託口口座を開設することができる。

ご家族の希望にそった信託契約書案を作成し、公証役場と文案の打合せを行い(④)、公証人の前で契約書に委託者と受託者の印鑑を押して、公正証書作成完了(⑦)となります。

3.家族信託した財産の名義変更を行う(下準備⑤⑥・名義変更⑧⑨)

信託契約書(公正証書)を作成しただけでは、実際に本人(委託者)の財産を管理・運用することはできません。その後、金融資産や不動産については、それぞれ管理・運用ができるように名義を変更する手続きが必要になってきます。
その際、信託口口座を開設する銀行との打ち合わせや、不動産の名義変更の準備は、司法書士など専門家に任せてしまうことができます。(公正証書を作成する準備③と並行して専門家が行います。一部の金融機関では専門家が作成に関与した信託契約書でなければ信託口座開設に応じてもらえないケースもあるので注意してください)。

金融資産の管理

銀行等の金融機関と調整して「委託者○○受託者○○信託口」というような信託専用の信託口口座が必要になります。ただ、この信託口口座を開設できる銀行は限られるので、開設のための調整が必要になってきます。

家族信託の金融資産の管理

信託口口座が開設したら、その信託口口座へ委託者の個人口座からの送金手続きをする必要があります。

※ちなみに、もし何らかの理由で信託口口座を開設できない場合は、受託者の個人名義の「信託専用口座」を開設し、そこで管理することになります。この場合は、その口座番号を、契約書の中に盛り込んでおくことで、その預金が委託者の信託財産であることを証明することになります。

信託口口座と信託専用口座については、別の記事で詳しく解説していますので、確認してみてください。

不動産の管理

家族信託の不動産名義変更

公正証書作成日に、司法書士が委託者と受託者に最終的な登記(受託者への名義変更)の意思確認を行い、登記申請をします 。これまでお伝えしたすべての手続きが完了するまでは、委託者本人の判断能力がないとダメです!

判断能力のあるうちに、信託契約の内容を決める、契約書を作成する、そして、名義変更を行うという手続きをすべて行う必要があるので注意をしましょう。こうして、預金・不動産共に受託者への名義変更が済み、実際に管理・運用を開始できる状態になるのです。

ここまでのまとめ

●家族会議で、家族信託スキーム(大枠)を決めよう。
●細かな契約内容は、専門家に家族の想いを伝える中で、決定していこう。
●必ず専門家に依頼するか、チェックを受けよう!
●信託契約は、後の争いを未然に防ぐためにも公正証書にしておこう。
●信託口口座の開設、不動産登記の下準備は、専門家に任せてしまおう。
公正証書の作成、信託口口座への送金、不動産登記の意思確認までは、委託者(親)に判断能力があることが必要であることに注意!!

家族信託に必要な書類とは?自分で用意しないといけない書類は多いの?

ご自身で用意する書類が多いとなると、気が滅入ってしまいますよね。でも、実はそんなに多くないのです。

家族信託に必要な書類

●実印
●印鑑証明書、数通ずつ
●不動産がある場合は、その権利証(登記済権利証又は登記識別情報)

ほとんどの場合、自分で用意するのはこの3点です。そのほかの書類は、専門家のほうで用意できます。

権利証をなくしてしまった場合は、司法書士にご相談ください。
また、公証役場で信託契約書を作成する際や、信託口口座開設、登記意思確認の際には、本人確認を求められるため、身分証明書を提示します。意外と少ないですよね。

まとめ

  • 大前提として、家族信託開始までは、委託者の判断能力がなくてはいけない!
  • 家族信託開始までの手続きは、大きく分けて3段階1.家族信託の内容(スキーム)を決める、2.信託契約書を作成する、3.家族信託した財産の名義変更を行う)、9つのステップに分けられる
  • すべての手続きを自分でやると、非常に時間がかかる可能性がある。
  • 一般的なご家庭の家族信託手続きを専門家と一緒に行う場合、2~3カ月で信託を開始できることが多い!
  • 公正証書作成のため、公証人に自宅や施設に来てもらうことも可能!
  • 自分や親が最低限すべきこと、揃えるべき書類は意外と少ない!
  • 忙しい子世代、体力が心配な親世代にも、配慮しながら手続きを進めることができる!
  • 手続が複雑そうで迷っている人は、親の判断能力低下前に専門家に相談してみよう!

今回は、一般的なご家庭の事例で、家族信託開始のための手続き・期間についてみてきました。
もちろんご家族皆さんの希望を形にする作業なので、主役は皆さんなのですが、実際の手続き自体は専門家のお膳立てによって、かなり簡略化できると思います。

最近では、「コロナ禍で高齢の両親に無理をかけるのではないか」と心配して、家族信託をあきらめようとしているといった話も聞きます。

何度も繰り返しお伝えしますが、家族信託開始までは、本人(委託者)の判断能力が必要です。
もし、手続きが難しそうだとか、時間がない、親に負担をかけられないという理由で、なかなか踏み込めない方は、一度専門家に相談されることをお勧めします。

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