相続放棄が受理されないケースとは?相続放棄の再申請は原則不可なので要注意

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに350件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

亡くなった被相続人が残した遺産のうち借金などマイナスの財産の方が多い場合、相続放棄をしないと借金の返済に追われることになるので、相続人にとって相続放棄の選択肢は非常に重要なものです。

相続放棄は家庭裁判所で手続きを取りますが、様々な事情から受理されないこともあります。その場合、やはり相続人は借金の返済に追われることになりますから、人生が大きく狂ってしまうことになりかねません。

この回では相続放棄が受理されない理由を解説し、ケース別の対処法や事前に準備できることを見ていきます。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

  • 相続放棄相続発生から3か月以内に手続きを取らなければならない
  • 預貯金の解約不動産名義変更など相続人が自分のために相続財産を使ったと認められる場合には、法定単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなる
  • 3か月間の熟慮期間では足りない可能性がある場合には、熟慮期間の伸長手続きをする
  • 熟慮期間を経過してしまった場合でも一定の事情があれば相続放棄が認められる可能性があるので、諦めない
  • 家庭裁判所に提出する相続放棄の回答書への記入は慎重に行うべき
  • 確実な相続放棄のためには相続発生後すぐに専門家に相談する

まずは相続放棄するための基本的な要件から見ていきます。

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1.相続放棄が受理される要件とは?

ここでは相続放棄が可能となる前提条件を押さえていきます。

相続放棄の手続きに関しては民法でルール化されていて、これに従わないと家庭裁判所で手続きを受け付けてくれません。
以下で相続放棄に関する原則的な要件を確認します。

要件1:熟慮期間内に家庭裁判所で手続きをすること

熟慮期間というのは、相続放棄する必要があるかどうか考えるための猶予期間のことをいいます。民法では915条に規定があり、熟慮期間は原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から三か月以内」となっています。

特別な事情がなければ、被相続人が死亡し相続が起きてから三か月間と考えて差し支えありません。

要件2:単純承認が成立していないこと

単純承認とは相続することを認めるという意味ですが、これには特に手続きを要しません。上述の熟慮期間の間に相続放棄または限定承認の手続きを取らなければ、自動的に単純承認したとみなされます。 

ただし、相続財産である預金を引き出して自分のために使ったり、売却処分したりする行為などがあると、単純承認をしたとみなされるルールもあります。これを法定単純承認といいます。
法定単純承認をした場合相続放棄が認められなくなるので注意が必要です。

2.相続放棄のチャンスは一度きり!書類不備や期限に要注意

もし、1章であったような要件を満たせずに家庭裁判所へ申請し却下されてしまった場合、基本的に改めて再申請を行うことはできません。
ですから、相続放棄は「3か月」という期限と厳密な書類作成が非常に重要です。

この一度きりの相続放棄が認められない場合、相続したくないと考えていた借金などのマイナスの財産も含めて法定相続分通りに引き継ぐ責任が生じます。

もし、家庭裁判所が出した審判に不服がある場合、高等裁判所に対して「即時抗告」をすることが可能ですが、結果を覆すための理由を明確に伝える必要があり、覆すことはなかなか大変な作業です。

それを踏まえてご自身で相続放棄をするか、専門家に依頼するかを検討する必要があります。少しでも不安があれば、専門家に依頼する方がいいでしょう。
では、次に具体的にどのような行為が法定単純承認となるのかについて、下の項で詳しく解説します。

3.相続放棄が受理されない4つのケースとは?

ここでは相続放棄が受理されない4つのケースを順に見ていきます。

3-1.相続放棄の期限や書類に不備があるケース

相続放棄は熟慮期間を過ぎると手続きができなくなるため注意を要するのは先述の通りです。期間内に手続きをする場合も、必要書類に不足があったり、必要事項の記載漏れがあると受理されません。

手続上、戸籍謄本類などの必要書類をもれなく収集し、相続放棄の申述書で必要事項に記載漏れがないように注意しましょう。また提出した書類に不備がなくてもまだ安心はできません。

申述手続きが済むと、後日家庭裁判所から相続放棄の照会書と回答書が届きます。これは相続放棄しようと思った理由や、相続財産の状況をどれだけ正確に把握しているか、また単純承認となるような行為がないかなどを尋ねるものです。

回答書でこれに答えるわけですが、回答の内容次第では家庭裁判所が相続放棄を認めないことがあります。回答に失敗するとやり直しがききませんので、回答内容をどうするかは慎重に考えなければいけません。

3-2.すでに相続を認めてしまったケース

相続財産を処分したり、隠したりする行為は法定単純承認となり、相続を承認したとみなされて相続放棄ができなくなると前項でお伝えしました。相続財産を隠して自らが搾取するという行為は分かりやすいですが、問題は財産を処分するという行為です。

「処分」には財産を廃棄処分する行為も含まれますが、処分の概念はもっと広く捉えられます。例えば遺産分割協議に合意し、遺産の分配を取り決める行為相続財産の処分について承認することになるので処分行為に該当します。

それだけでなく、故人の預金を解約したり、不動産の名義を変更するような行為は、相続財産に対して自らに権利があることを行動で示していることになります。

相続財産に何らかの形で手を付けると、「自分が相続人だ」と言っているとみなされ、法定単純承認の扱いになり、相続放棄ができなくなるのです。相続財産の処分にあたる行為は素人の方が考えるよりもずっと幅広く、「こんなことでも処分行為になってしまうのか」と驚かれる方がとても多くいます。

例えば被相続人の入院費や葬儀費用を相続財産から支払っただけで相続放棄ができなくなることもあるので、遺産の扱いには相当の注意を要することをぜひ理解してもらいたいと思います。

どのような行為が相続財産の処分行為となるのか、詳しい解説はこちらの記事で述べておりますのでぜひご覧ください。

3-3.詐欺や脅迫によって申し立てたケース

詐欺や脅迫によって無理やり相続放棄の手続きを取らされた場合、申述者本人の真意によらないものとして家庭裁判所側が手続きを受理しません。

詐欺や脅迫による場合、申述者本人側からも相続放棄の取り消しを求めることが可能です。

3-4.制限行為能力者が申し立てたケース

未成年者や認知症などで判断能力が低下した人が相続放棄を申し立てた場合も家庭裁判所で受理されないケースが出てきます。

まず未成年者や成年被後見人の場合、法定代理人となる親や成年後見人が代わって相続放棄の手続きを取る必要があります。被保佐人の場合は保佐人の同意を取ることで申し立てが可能です。

被補助人の方で相続放棄について補助人に同意権が付されていない場合は単独で申し立てできますが、補助人に同意権が付されている場合は同意を取ったうえで申し立てなければなりません。

4.相続放棄の期限に間に合わない時

相続放棄ができるのは相続開始から原則3ヶ月間の熟慮期間内に限られますが、例外的にこの期間を過ぎても、下記の方法により相続放棄を認めてもらえます。

  • 期限を伸長(延長)する申立てをする
  • 熟慮期間経過後に相続放棄を認めるべき一定の事情があるとき

4-1.期限を伸長(延長)する申立てをする

相続放棄の3か月の熟慮期間を延長することで相続放棄を認めてもらえます。

熟慮期間は相続放棄するべきかどうかを思案するための猶予期間ですので、相続人はこの間に相続財産の調査をし、プラスの財産と借金などマイナスの財産のどちらが大きいかをはっきりさせ相続放棄するかしないか検討します。

例えば故人が事業を営んでいた場合などは通常よりも財産の把握に時間がかかることがあります。そのような時には、家庭裁判所で手続きをとることで熟慮期間の延長を認めてもらえる可能性があります。

5.受理されなかった場合は「即時抗告」をする

期限内に手続きを取らなかった場合でも、特別な事情がある場合には期限後の相続放棄が認められたケースもあります。

過去の裁判例では、相続開始日(死亡日)以後に初めて、被相続人が死亡したことを知り自分が相続人であることを知ったり、全ての相続手続き終了後、初めて債権者から債権回収の連絡が届き、その段階で初めて相続財産の中に借金など債務があることを知ったなどの一定の事情があるときには、相続放棄が認められる可能性があります。

期限内に手続きができなかった、あるいは別の理由で相続放棄が受理されなかった場合でも、申し立てが却下されてから二週間以内に高等裁判所に即時抗告することで相続放棄を認めてもらえる可能性があります。

ただし即時抗告することについてしっかりとした理由を説明できないといけません。

熟慮期間を過ぎてしまっているのであれば、それでも相続放棄を認めるべき事情があることを説明できないといけませんから、即時抗告による救済は一般的にハードルが高いと考えてください。

熟慮期間経過後に相続放棄が認められる事情は、家庭裁判所に提出する回答書に詳細を記載する必要があります。誤った対応をしてしまうと相続放棄が認められない可能性もでてくるので、3か月の熟慮期間経過後の申立てについては専門家と相談しながら進めていくようにしてください。

なお、弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、相続放棄に必要な書類の収集、書類の作成、申立書の提出代行など、無料相談をさせていただいております。相続放棄に必要な一連の手続きのアドバイスとサポートをさせていただきますので、お気軽にお問合せください。

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6.相続放棄を受理されるために知っておくこと

多くの方は、「相続放棄さえしてしまえば、被相続人の借金の問題や煩わしい人間関係から解放される」という理解されていると思います。
確かにそうなのですが、家庭裁判所に相続放棄を確実に認めてもらうには、相続人自らが相続放棄のルールや手続きの仕方をしっかり学ぶ必要があります。

熟慮期間という期限があることや、相続財産に手を付けてしまうことで法定単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるなど大きな落とし穴もあります。

また形式的な手続き面でも、家庭裁判所からの照会に対して適当に回答してしまうと、相続放棄が受理されず、結果として相続を承認させられてしまうこともあります。これらのリスクを避けるには、相続人自身が相続放棄に関して正しい知識を持つことと、事前に専門家に相談して確実に相続放棄が受理されるように前々から準備しておくことが肝要です。

どのような回答書を作成すれば相続放棄を認めてもらえるのか、また相続財産調査をどのように進めればよいのか、相続が発生したら速やかに専門家に相談しましょう。

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 特に借金などマイナスの財産調査は独特のノウハウや経験が求められる作業ですので、素人の方では漏れが出やすくなります。可能であれば財産調査を丸ごと専門家に依頼するのが安心です。

7.相続放棄するか悩んでいる方は、無料相談を活用してみてください

当サイトでは、お客様の現時点での状況を整理して、3ヶ月という申請期限のある相続放棄ができるかどうか、無料相談が可能です。累計4000件を超える相続・家族信託相談実績をもとに、専門の司法書士・行政書士がご連絡いたします。

また、相続放棄を進めていくにあたって、必要な手続きや費用についてご説明いたします。自分の家族の場合は、相続放棄を選択した方が良いのか、相続放棄をするのであればどのような手続きになるのか気になるという方は、ぜひこちらから無料相談をお試しください。

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8.まとめ

今回の記事では相続放棄するための要件や、家庭裁判所が相続放棄を受理しないケースとその理由を解説しながら、事前の準備の重要性や対処法などを一緒に見てきました。

本章の内容をまとめてみましょう。

  • 相続放棄相続発生から3か月以内に手続きを取らなければならない
  • 預貯金の解約不動産名義変更など相続人が自分のために相続財産を使ったと認められる場合には、法定単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなる
  • 3か月間の熟慮期間では足りない可能性がある場合には、熟慮期間の伸長手続きをする
  • 熟慮期間を経過してしまった場合でも一定の事情があれば相続放棄が認められる可能性があるので、諦めない
  • 家庭裁判所に提出する相続放棄の回答書への記入は慎重に行うべき
  • 確実な相続放棄のためには相続発生後すぐに専門家に相談する

相続に関するルールは複雑ですが、なぜか相続放棄に関しては割と簡単に考えている方が多い印象です。しかし、説明してきたように実務上は大きな落とし穴もあるので、簡単に考えず一度は専門家に相談するようにしましょう。

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