【応用編】見落としがちな家族信託契約書作成の4つの盲点とは?

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに100件以上の家族信託や生前対策を取り組んでいる。年間50件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

家族信託を自分で作成しようと考えている人にとって、信託契約書をどのように作成し、どのような条項をいれるかは一番悩むポイントでしょう。
そのために、まず必要なことは、あなたの希望や要望、信託を行う目的を明確にすること。そして家族構成、家族との関係性等を明確にしていくことです。詳しくは、こちらをご参照ください。

>>自分で家族信託契約書をつくるための5つのポイントとリスクとは?家族信託100件組成している司法書士が解説します

そのうえで、家族信託の契約書を作成していくことになりますが、作成時見落としがちなのが「信託の終わらせ方」です。この記事では「終わらせ方」を基準にして、契約書の作成を見ていきたいと思います。

今回の記事のポイントは下記の通りです。

  • 信託契約書は「最終的に信託財産を、①誰に②どのように帰属させたいか(=終わらせ方)」が重要。
  • 信託契約書を作成する段階で、信託財産をだれに帰属させるかを今判断できない場合は「協議型」がオススメ!ただ、リスクがあることを知っておこう!
  • 信託契約書数を、当事者ごと・財産ごとにするか等いくつにするか要検討
  • 「終わらせ方」を考える際は、事前にいくつかのチェック項目を考慮して設計することが必要。

下記の方に特におススメの記事です
・ご自身で契約書を作成したい
・「ご自身の要望を実現する契約書が作れているか判断できるようになりたい」

「終わらせ方」から考える家族信託契約書4つの型

家族信託は、「終わらせ方」が非常に重要です。
どうしても家族信託の目的である「認知症対策」や「財産管理対策」に意識がいってしまいます。しかし、家族信託で可能になる財産管理権限がいつまで続くのか、どのように終わらせるのが適切かを考えることは、何年後かわからない未来を考えた設計をするわけですから、ご家族間の考え、調整が必要不可欠なのです。

また、その終わらせるタイミングの多くは、委託者兼受益者の死亡時になります。それは、死亡時に信託財産をだれが受け取るのか、という相続の分野にもなってきますね。

そうなると「親が認知症になってしまうと、財産管理ができなくなってしまうから困るからやってみよう」で家族信託に手をつけた人にとっては、信託を行うのが難しく感じるでしょう。

「終わらせ方」=「信託財産の相続の仕方」を考えるために、以下4つの型を参考にしていただきたいと思います。

(1)基本型
(2)遺言代用型
(3)協議型
(4)契約複数型

※これらのパターンは、1つの型のみ使用する場合もありますし、組み合わせて使用する場合もあります。

(1)基本型、(2)遺言代用型については、下記の記事をご参照ください。今回の記事では「協議型」「契約複数型」をご紹介していきます。

>>【基本編】見落としがちな家族信託契約書作成の4つの盲点とは?

事例 高齢アパートオーナーの資産管理

自宅とアパートを複数所有している佐藤父郎さん(父・87歳)がいます。子供は佐藤一郎さん(長男・64歳、父と同居)、山田花子さん(長女・60歳)の2名です。
父郎さんは自分でアパートの管理を行っていますが、先日も外出先で急に倒れ、数日間入院するなど、体調や具合も悪くなってきました。今は無事退院しましたが、物忘れが出始めており、認知症の症状が生じています。

今後認知症の程度が進んだ場合、アパートに入居希望者が出た場合や退去者がでた場合の契約手続きなどのアパート賃貸管理や修繕、相続の問題が心配です。父郎さんは、自宅、アパート2棟(AアパートとBアパート)のほか、金融資産を所有しています。同居する一郎さんに自宅とAアパートを、花子さんにはBアパートを相続させたいと考えています。

認知症対策・財産管理対策を速やかに行いたい方は「協議型」を活用!

「協議型」とは、その名の通り信託終了時に相続人間で話し合って決めるという方法です。

この型の特徴として、今はだれがどの財産を相続するかは決められないが、認知症対策・財産管理対策速やかに行いたい方が活用する傾向があります。認知症対策として活用する成年後見制度の代用として、財産管理機能のみを家族信託で用いることができるのがメリットです。
その場合、委託者兼受益者の法定相続人、特定の複数人などを帰属権利者とします。

では、事例から家族信託を協議型で設計してみましょう。

信託スキーム設計
委託者    父郎さん
受託者    一郎さん
受益者    父郎さん
信託財産   自宅、一郎さん相続予定のAアパート、花子さん相続予定のBアパート、金銭
信託終了事由 父郎さんの死亡
帰属権利者  法定相続人(協議で帰属先及び帰属割合を定める )

協議がまとまらない場合のリスクも想定しておこう!

当然、資産承継先を具体的に定めていないので、帰属権利者間の協議がまとまらない可能性は大いにあります。その場合、いつまでも信託を終了し、財産の引き渡し手続き等をすることができず、相続税申告期限に間に合わないなど、相続財産が確定しないリスクがあるので、注意と対策が必要です。

そのため、協議型を用いる場合には、ご家族の関係性が重要です。ご家族の関係が良好であれば、協議型を活用しても問題ないと思いますが、不仲の場合で協議型を活用する場合は、いつまでたって協議がまとまらず信託財産を取得する者を定められない、相続税の納税期限(被相続人が死亡したことを知った日から10か月以内)までに協議がまとまらず、小規模宅地の特例など、相続税上の軽減特例を活用することができない、といった問題が発生する可能性もあります。

そのため、必ず協議をまとめるために、協議に期限を信託契約書上に設ける等の対策を考えておくとよいでしょう

資産管理方針、承継先が複数ある場合は「契約複数型」だと効果的!

信託財産の目的に応じて信託契約を複数にする方法が「契約複数型」です。これは、資産の管理方針、または承継先などを考慮したうえで複数の契約書にわけていきます。

父郎さんの事例においては、結果からお伝えすると「契約複数型」を使い、一郎さんと花子さん、それぞれの資産承継先ごとに信託契約書をつくりました。
長男一郎さんが承継する自宅とAアパート(受託者一郎さん)、長女花子さんが承継するBアパート(受託者花子さん)の2つに信託契約を分け、それぞれが受託者として信託財産を管理し、父郎さんの亡き後は、それぞれに信託財産が帰属する方法です。

それぞれの契約内容をわかりやすく見ると、下記の通りです。

信託スキーム設計1
委託者    父郎さん
受託者    一郎さん
受益者    父郎さん
信託財産   自宅、一郎さん相続予定のAアパート、金銭
信託終了事由 父郎さんの死亡
帰属権利者  一郎さん

信託スキーム設計2
委託者    父郎さん
受託者    花子さん
受益者    父郎さん
信託財産   花子さん相続予定のBアパート、金銭
信託終了事由 父郎さんの死亡
帰属権利者  花子さん

契約を承継先ごとにつくると、「父郎さんと一郎さん」「父郎さんと花子さん」がそれぞれ話し合って、それぞれの要望がしっかりと反映された信託契約をつくることができます。
このように、「契約複数型」は、それぞれが受託者兼帰属権利者として承継予定の財産を管理できるので、契約内容が複雑にならないのが大きなメリットです。

「信託複数型」をすると、損益通算ができない!

契約が複数になるとそれぞれの信託財産の「損益通算ができない」というデメリットがあります。

例えば、ある年にAアパートの所得は600万円となり、Bアパートについては大規模修繕を行い、その年の所得は経費を支払った結果、-300万円となりました。本来ならば、Aアパートの所得600万円と合算することができ、不動産所得は+300万円。課税も300万円に対しておこなわれます。

しかし、事例のように信託複数型にした場合、Aアパートの利益である+600万円とBアパートの-300万円の損失を損益通算できないので、Aアパートの600万円の不動産所得に対して課税されるのです。一つの信託契約であれば、信託財産内での通算はできるので、+300万円に対する課税となりますが、上記のとおり信託複数型では、異なる信託としての取り扱いとなってしまいます 。

また、Bアパートの損失は通常であれば翌年以降への繰越しが認められますが、信託財産の場合は、損失を翌年へ繰越すこともできません。この損失の繰り越すことができないという論点は、信託複数型のみならず、1つの信託契約で複数の収益物件を信託した場合にも適用され、複数物件の利益と損失を通算し発生した赤字部分も同様に翌年に損失を繰り越しすることができません。

損益通算の禁止については、アパートなど収益が発生する物件を信託する際には重要な論点になるので、信託に強い専門家に相談しながら進めていってください。

信託契約書で「終わらせ方」を考える際は・・・

これまで4つの型を見てきました。
「終わらせ方」によって、メリットデメリットがそれぞれあります。

また、ご家族との合意の上で契約書を設計が必要不可欠です。
家族信託には、新しい制度ですので、判例がありません。もし、後から問題になり争族になった場合には、どの程度契約書が反映されるかが明確に言えません。
ですから、お互いが合意の上で、家族信託を行うことが最も効果的な契約書になります。

他にも、

・信託終了時に登録免許税、不動産取得税などの軽減措置は使えるのか
・相続になるか
・贈与にならないか
・死亡で終了させるか
・受益者連続にして合意終了にするか

など事前にチェックして設計するといいでしょう。

前述でも述べた通り、家族間での合意の上で家族信託契約書を作成する際には、第三者が入ると効果的です。そういった意味でも、家族信託の専門知識におる専門家に任せるのが安心の手段です。

まとめ

  • 信託契約書は「最終的に信託財産を、①誰に②どのように帰属させたいか(=終わらせ方)」が重要。
  • 信託契約書を作成する段階で、信託財産をだれに帰属させるかを今判断できない場合は「協議型」がオススメ!ただ、リスクがあることを知っておこう!
  • 信託契約書数を、当事者ごと・財産ごとにするか等いくつにするか要検討
  • 「終わらせ方」を考える際は、事前にいくつかのチェック項目を考慮して設計することが必要。

ここまで見てきた通り、「終わらせ方」によって、契約書の作成方法は異なります。ご家族のご希望をそれぞれ鑑みて、どのように設計するか集約していくのは、やはりご自身でやるというリスクを考えると専門家に依頼することをオススメします。

ただ、これまでの情報を知っておくことで、家族信託を自らチェックして指摘できる視点を身に着けることができます。家族信託契約書を作成する際は、「終わらせ方は重要だ」ということをしっかりと念頭において作成しましょう。

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