生前に相続放棄ができない理由と事前に取れる4つの対策

生前に相続放棄ができない理由と事前に取れる4つの対策
この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

相続放棄は被相続人の借金から逃れたい場合にも選択されますが、それ以外にも様々な意図で利用されることがあります。
例えば事業承継が関係するケースで特定の人物に相続財産を集中させたい理由がある時など、他の相続人が相続放棄することで確実に事業承継者に遺産を集中させることができます。
計画的な相続対策を練る中では、被相続人となる方の存命中の相続放棄を希望される方もいらっしゃるので、今回の記事では相続放棄と、相続放棄を視野に入れた生前にできる相続対策について詳しく見ていきます。
以下に本章の内容をまとめておきます。

  • 被相続人の生前に相続放棄はできない
  • 相続放棄は被相続人の死亡後3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを取る
  • 親に負債がある時は生前に債務整理を検討する
  • 生命保険や生前贈与、遺留分の放棄などで生前でも一定の対策が可能
  • 特定人に相続させたくない場合は遺言書の準備と遺留分の放棄を検討する
  • 生前の相続放棄の念書は無効
  • 生前の相続対策は専門家に早めに相談する

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1.相続放棄は生前にできない?その理由とは

理由があって被相続人の生前に相続放棄を確定させたい希望があったとしても、残念ながら法律上できないルールになっています。ですから家庭裁判所で手続きを取ろうとしても受け付けてもらえません。
相続放棄は相続が起きてからでないと手続きができないルールになっているので、諦めるしかないのです。

なぜこのようなルールになっているのかというと、不当な干渉によって当人の真意によらず相続の放棄を強要されてしまう恐れがあるからです。

例えば兄弟間で借金がある場合に、借金を返せない相手に対して将来の相続権を放棄させるように強要したり、その他何らかの弱みを握って相続放棄を強要するようなことがあるかもしれません。

そうすると本来認められる相続権を不当に侵害されることになるので、こうしたことにならないよう、生前の相続放棄は認められていないのです。

2.相続放棄で事前に取れる4つの対策

生前の相続放棄ができないとしても、親に多額の借金があって相続放棄をすることが確実である場合、できる範囲で何か対策を取っておきたいと思うのは自然なことです。
ここでは生前にとれる対応策について見ていきます。

2-1.自己破産等の債務整理をする

親に多額の借金がある場合、まずは借金問題の解決を考えるのが得策です。借金問題の解決方法はいくつかあるので、本項でそれぞれ見ていきます。

①任意整理

任意整理は各債権者と個別に話し合い債務負担の軽減を図るものです。負担の軽減度合いは以下二つと比べると小さく、将来利息のカットや返済期限を伸長する程度に止まります。
ただ過払い金が発生している場合は別途返還請求が可能ですので、過払い金の額によっては債務額を大きく圧縮したり、完済したうえで残った過払い金を取り戻すこともできるかもしれません。
交渉相手とする債権者を個別に選択できる自由性があり、借金の額がそれほど大きくないケースでは一番に検討される手法です。

②個人再生

任意整理では返済が追い付かないほど借金の額が大きい場合は個人再生も検討対象に入ります。任意整理と違って裁判所の関与を受けて進めなければならない厳格な制度のため、自由度がなく難度はかなり高くなります。

大きな利点として、法律上のルールに則り借金の額を大きく減らせるので、自力では完済が望めないケースでも借金完済の道を開くことができます。どれだけ借金を減額できるかは債務額によりますが、概ね負債を五分の一程度にまで減らした上で、残った債務について3年ほどかけて返済していきます。
個人再生にはもう一つ大きな利点があり、住宅ローンを抱えた自宅がある場合、自宅を処分することなく借金整理ができる住宅ローン特則を利用できます。
下記の自己破産では、自宅については強制的に処分されてしまいますが、個人再生の住宅ローン特則を利用すれば換価処分を免れます。
ただし住宅ローンの残債は減額対象とならないので、引き続きの返済が必要です。

③自己破産

個人再生によっても借金の完済が望めないほどに負債が大きい場合は自己破産も視野に入ってきます。自己破産は損害賠償債務など一定の債務を除き、一般的な借金を全て帳消しにできる強力な手段です。


全ての借金を帳消しにしたうえで、人生の再出発を図る手段となります。債権者の利益を大きく害するため、債務者側も自宅を含めて全ての財産を換価処分し債権者の配当に充てなければならないなど負担が大きくなります。
ただし生活に必要な最低限のお金や生活財産は手元に残すことができます。

2-2.生命保険に加入して家族に財産を残す

多額の借金があるため相続人が相続放棄をしなければならないと分かっていても、何らかの財産を残してやりたいと望むのが親心かもしれませんね。
このような時は生命保険を利用することで望みを叶えることができます。

相続放棄すると相続財産を承継できないので、借金など負債も承継せずに済みますがプラスの財産も一切承継できません。
しかし、被相続人が生前に生命保険に加入し死亡後に相続人に支払われた保険金については、相続財産とは切り離して考えるため、相続放棄しても受け取れるという性質があります。

これを利用することで、相続人は相続放棄をしたうえで、保険金という財産を手にできます。
ただし受け取る保険金は保険の契約形態によって相続税や贈与税、所得税の対象になります。相続税の対象になる場合は一定の非課税枠も用意されているので、生命保険を使った生前対策をする場合は専門家と相談の上不利にならないように配慮しましょう。

なお、弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、相続放棄に必要な書類の収集、書類の作成など、無料相談をさせていただいております。相続放棄に関連する税金については、提携している税理士と共に手続きのアドバイスとサポートをさせていただきますので、お気軽にお問合せください。

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2-3.生前贈与を活用する

多少強引な手段として、生前贈与を行って将来の相続財産を減らす、あるいは無くしておくという方法も考えられます。
こうしておけば相続が発生した時、プラスの財産は0ですから相続放棄をしてもダメージはありません。

ただし、生前贈与の一部は遺留分の請求対象になるので、遺留分の権利者から遺留分侵害額請求を受けてしまう可能性があります。 また債権者から見ると、上記のような生前贈与は債権回収の権利を害する行為となるので、民法上の詐害行為取消権の対象となり、生前贈与が取り消される可能性があります。

詐害行為取消権を主張されないためには生前贈与を行うタイミングに注意します。借金などマイナスの財産よりもプラスの財産の方が大きい段階で実行することで、詐害行為取消権の対象にされるリスクを避けられます。 マイナス財産の方が大きい段階で生前贈与をしてしまうと、債権者を害することを知って行った贈与行為と捉えて取消しの対象にされてしまう可能性があるので注意してください。

2-4.遺留分の放棄をする

生前の相続放棄はできませんが、遺留分の権利については家庭裁判所で手続きをとることで生前の放棄が可能です。
ただし家庭裁判所で遺留分の放棄を認めてもらうには以下のように一定の基準があります。

①本人の自由意志に基づく申請であるか

他者による強制ではなく本人の意思に基づくものでなければ認められません。

②合理性があるか

遺留分を放棄する理由についても問われます。遺留分を放棄する人に生活に困らないだけの資産があり、他方で生活に困る相続人がいてその人に多くの遺産を分けてあげたいなどの事情があれば認められやすくなります。

③代償の有無

遺留分を放棄する人に対し、見返りとして生前に何らかの財産給付がされている場合は認められやすくなります。
代償の給付が無かったとしても絶対に遺留分の放棄が認められないわけではありませんが、代償の給付があることで遺留分の放棄が認められやすくなります。

3.特定の兄弟に相続させたくない、その場合の対処法は?

特定の相続人に相続させたくないという場合、事情に応じて取りうる方法が変わってきます。

もし相続させたくない人物に酷い非行歴があったり、相続人となる人を虐待したなどの事実がある場合、その者の相続権をはく奪する方法として相続人の廃除を検討できます。

排除は生前に家庭裁判所で手続きを取るか、遺言書に排除について記載することで可能になります。遺言書に排除の記載をする場合、相続発生後(被相続人の死亡後)に家庭裁判所に申し立てが必要ですので、実務を行うための遺言執行者を遺言書内で指定しておきましょう。

排除とは別に、遺言書で相続分を0とすることで実質的に相続財産を渡さないということもできます。ただし遺留分の権利を有する相続人は、遺言書で遺産の取り分が0となっていても、遺留分侵害額請求を行うことで遺留分を手にすることができてしまいます。

遺留分の権利を有するのは配偶者と子(代襲相続人含む)、直系尊属のみで兄弟姉妹には遺留分がありません。従って相手が兄弟姉妹の場合は遺言書内で相続分を0にしておくことで遺産を渡さずに済みます。

それ以外の遺留分権利を有する者に対しては、確実に相続財産を渡さないようにするには生前に遺留分の放棄をさせたうえで、遺言書内で遺産の取り分を0に指定することが必要です。

生前に遺留分の権利を放棄させるには相手の同意が必要ですので簡単にはいきませんが、何らかの財産の交付を条件にして納得させるなどの工夫で上手くいくこともあります。

4.生前の相続放棄を約束した念書は有効か?

生前に家庭裁判所で相続放棄の手続きを取ろうとしても受け付けてくれないことはお話ししましたが、関係者間で念書を取るなどして相続放棄を約束した場合は有効なのでしょうか?

生前に当事者間で相続放棄をする旨を約束した念書があるとしても、これは法律的に有効な効力を持たないため意味がありません。
念書があっても、相続発生後に「やっぱり相続する」と相手が言い出せば相続放棄を強制することはできないのです。相続放棄は、相続発生後に当人の自由意志に基づいて3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを取る必要があります。
特定人に財産を渡したくないなどの事情がある場合、ケースに応じて考えられる対応策が代わってくるので、早めに専門家に相談することをお勧めします。

5.被相続人が亡くなった後の相続放棄手続き

では、実際に被相続人が亡くなった後の相続手続きはどのような流れで行われるのでしょうか?本章では相続放棄の手続きの流れと期限について見ていきます。

5-1.相続放棄の手続きの流れ

後述しますが、まず相続放棄は、相続の開始があったことを知った日から「3か月以内」という期限があることを念頭に置いて手続きを進める必要があります。(民法915条1項本文)。

手続きの手順は以下の通りです。

①財産調査を行う|1か月以内に調査を終えられると望ましい

相続開始後に、まず故人の遺産にどのような財産が含まれているかを確認します。
不動産や預貯金などプラスの財産の他にも、借金などのマイナスの財産がないか確認します。多額の借金がある場合などは相続放棄を検討すべきでしょう。

遺品整理の際に、遺言書や故人の金融機関の通帳・カード、固定資産税の納税通知書があるかを確認しましょう。ただし、遺言書については自筆証書遺言が自宅で発見された場合など検認手続きが必要な場合があるので、取り扱いに注意してください。

②相続放棄に必要な書類の収集と作成|1日~数週間

相続放棄手続きでは戸籍謄本を集める必要があります。
転籍が多い場合などは複数の役所に戸籍の請求をする必要があるため、想像以上に日数がかかる場合があるので注意しましょう。

③裁判所に申述書を提出|1日

相続放棄の申述書を作成します。申述書を相続放棄に必要な書類と共に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。

④照会書を返送する|約2週間

相続放棄の申立てをすると、約10日後に家庭裁判所から照会書が送付されてきます。照会書には、本当に自分の意思で相続放棄の手続きをしているのか、確認のための質問事項がいくつか記載されています。照会書を記入し家庭裁判所に返送してください。

⑤相続放棄受理通知書の確認|約10日

家庭裁判所から「相続放棄受理通知書」が送付されます。この相続放棄受理通知書を受け取れば、正式に相続放棄が認められたことになります。

手続きの詳しい流れや必要書類については、下記の記事で詳しく解説していますので気になる方はご確認ください。

https://legalestate-kazokushintaku.com/inheritance-waiver/inheritancewaiverprocedurehouki/

5-2.相続放棄の期限について

前項でも説明しましたが、相続放棄の手続き期限は「相続が開始したことを知ったときから3ヶ月後」です。
この3ヶ月の期限を過ぎると、相続人が遺産を相続することを承認したものと見なされます。このことを単純承認と言います。

相続放棄をした方が良いなと少しでも思う場合には、相続開始後に財産調査をできる限り早く行い、3か月の期限内に相続放棄の手続きを終えられるようにしましょう。

但し、財産の把握に時間がかかりそうな場合には、家庭裁判所で手続きをとることで熟慮期間の延長を認めてもらえる可能性があります。
財産調査が難航しそうな場合には熟慮期間延長の手続きも視野に入れて、相続放棄の手続きを進めましょう。

また、亡くなった方との親族関係がなく、期間を置いて債権者から亡くなった方の借金の支払いをするよう督促を受けたなど事情がある場合には、督促を受けた時点を起算点として認められる場合があります。

相続放棄の期限については下記の記事でも解説していますので、気になる方はチェックしてみてください。

https://legalestate-kazokushintaku.com/inheritance-waiver/inheritancewaiverprocedurehouki/

https://legalestate-kazokushintaku.com/inheritance-waiver/not-accepted-houki/

https://legalestate-kazokushintaku.com/inheritance-waiver/inheritance-abandoned-house-houki/

6.相続放棄するか悩んでいる方は、無料相談を活用してみてください

当サイトでは、お客様の現時点での状況を整理して、3ヶ月という申請期限のある相続放棄ができるかどうか、無料相談が可能です。累計4000件を超える相続・家族信託相談実績をもとに、専門の司法書士・行政書士がご連絡いたします。

また、相続放棄を進めていくにあたって、必要な手続きや費用についてご説明いたします。自分の家族の場合は、相続放棄を選択した方が良いのか、相続放棄をするのであればどのような手続きになるのか気になるという方は、ぜひこちらから無料相談をお試しください。

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7.まとめ

本章では生前に相続放棄ができるかどうかを取り上げ、生前から可能な相続対策と絡めながら取りうる対応策について詳しく見てきました。
本章の内容をまとめて見ましょう。

  • 被相続人の生前に相続放棄はできない
  • 相続放棄は被相続人の死亡後3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを取る
  • 親に負債がある時は生前に債務整理を検討する
  • 生命保険や生前贈与、遺留分の放棄などで生前でも一定の対策が可能
  • 特定人に相続させたくない場合は遺言書の準備と遺留分の放棄を検討する
  • 生前の相続放棄の念書は無効
  • 生前の相続対策は専門家に早めに相談する

遺産絡みの問題は遺留分が絡むケースが多く、相続人間に深い溝を作ってしまうこともよくあります。余計な火種を残さないためにも、ぜひ専門家の知恵を活用して生前対策に取り組んでいきましょう。

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