【ご存知ですか?】相続対策で生命保険を活用し非課税枠を効果的に利用する5つの方法

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに350件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

相続税対策には色々な方法がありますが、比較的検討しやすいものに生命保険があります。現金を不動産化するような対策はリスクも難度も高くなりますが、生命保険を利用した対策はリスクもほとんどなく、難度としてもそれほど高くありません。

ただ、仕組みをしっかり理解しないと効果的な対策とすることができないので、相続における生命保険の扱いや利点をしっかり理解しておくことが大切になります。
今回の記事では、相続税対策で効果的に生命保険を利用するための方法について解説していきます。

1.相続対策として活用される生命保険

生命保険は、「定期保険」「養老保険」「終身保険」と3つの基本型がありますが、基本的に相続対策として用いられるものは保証が一生涯続く「終身保険」です。
被保険者である本人の死亡により、受取人である相続人に死亡保険金として財産を承継させることができます。

相続対策として活用される生命保険

この受取人指定という仕組が、遺産分割協議を経ることなく特定人に財産を承継させることができるという遺言と同じ財産承継機能となります。
遺言で定めた財産と異なり、生命保険金は受取人固有の財産となり、遺産分割、遺留分減殺請求の対象とならないことが、平成16年に最高裁の判決によって決まったため、相続対策でよく活用される仕組みです。

また、生命保険金という言葉の通り、対象財産が金銭のみであることから、不動産や自社株式などを対象にすることはできないため、遺言や家族信託などの制度と併用する必要がありますので要注意です。

2.相続事案における生命保険の一般的な利用目的

相続事案における生命保険の一般的な利用目的

生命保険は相続事案において以下のような目的で検討されます。

2-1.相続税の納税資金対策

日本の相続事案では相続財産全体に占める不動産の割合が多いのが特徴です。現預金が少ないケースでは相続税の納税資金が十分に確保できないことも多く、残された遺族を悩ませることになります。
そのようなケースでは現金を速やかに確保できる生命保険が有効です。

①相続税の納税資金対策

2-2.遺産分割対策

複数の相続人がいる事案では、遺産の分割が上手くいかずに揉めるケースも多くなります。不動産など換金性の低い遺産が多いと公平な分割に支障が出ますが、代償分割に用いる資金として生命保険金が活躍します。生命保険の受取金は原則として遺留分侵害額請求の対象とならないため、特定の相続人に金銭を確実に渡したいというニーズに対応することができます。

2-3.節税対策

そして生命保険は相続税の節税対策としても有効です。
まず、被相続人となる人の生前の財産から生命保険の掛け金を拠出することで、将来の相続財産を減らす作用があります。また、支給される生命保険金には一定の非課税枠を適用できるので、相続税の負担を軽減することができます。
この非課税枠のうまみを享受しながら上記①②のメリットも得られるので、上手に活用できれば効果的な相続対策とすることが可能です。

3.生命保険金を受け取る際の税金の扱い

色々な活用法がある生命保険ですが、契約の仕方によって税金の扱いに違いが出てくる点には注意が必要です。契約の形態によっては相続税以外の課税対象になり、税率が低い相続税よりも税負担が重くなってしまうこともあります。
生命保険では契約者(保険料の負担者)、被保険者(保険を掛けられる人)、保険金の受取人の三者が誰になるかで課税される税金が変わってきます。

分かりやすいように、父、母、子の家庭を想定して、パターン別に見てみます。

パターン①では父が自分を被保険者として保険料を負担しています。
被保険者であり被相続人ともなる父が死亡することで、相続人が受け取る保険金は相続税の対象になります。

②は父が拠出した資金によって子が保険金の恩恵を受ける形となるため、生存している父→子に贈与が行われたとして扱われ、贈与税の対象になります。

③は父が自分で掛け金を拠出し、被保険者の死亡によって自分自身に保険金が入るので、一種の儲けとみなされて所得税の対象になります。

相続税対策では税率の低い相続税の対象になるように設定する必要があるので、保険契約者となる者が自身を被保険者として保険を掛け、保険金の受取人を相続人となる者に設定することになります。

4.保険金受取人の指定にはルールがある

保険金受取人の指定にはルールがある

ここで、生命保険金の受取人指定についてのルールを確認しておきます。

生命保険会社によって多少違いがありますが、一般的に生命保険金の受取人は被保険者の戸籍上の配偶者もしくは二親等以内の血族のみに限定されるのが原則です。二親等以内の血族とは、具体的にはその被保険者の両親、祖父母、子、兄弟姉妹、孫があたります。これ以外の者については、一定の条件のもとに受取人となることができるという規定にしている保険会社がほとんどです。

最近は世の中の声を受けて少しずつ柔軟な設定も可能になってきており、例えば配偶者については従来であれば戸籍上の配偶者だけが対象でしたが、昨今は一定条件のもとで事実婚のパートナーも保険金の受取人に指定できることもあります。さらに異性の事実婚パートナーだけでなく、同性のパートナーでも条件次第では受取人に指定できることもあります。

受取人は一人でなく複数人を指定することもできるので、例えば配偶者が50%、子が50%の割合で保険金の受取人に指定することも可能です。複数人を設定する場合は、保険金が支払われる際に全員分の印鑑証明書など必要書類をそろえなければなりません。

5.どのように契約するのがいいの?

どのように契約するのがいいの?

では生命保険契約をどのように契約するのがいいのか考えてみます。

まず、支払われる保険金は税率の高い所得税や贈与税ではなく、相続税の対象になるようにします。相続税の対象にすることで、生命保険金の非課税枠だけでなく相続税の基礎控除の適用まで受けることができます。生命保険金の非課税枠は「500万円×法定相続人の数」で、この限度で相続財産に算入しなくてもよくなります。

ただし、保険金の受取人が相続放棄をするなど相続権を失うと、上記の非課税枠の適用がなくなることに注意してください。

さらに相続税には基礎控除もあり、基礎控除枠は「3000万円+600万円×法定相続人の数」ですから、この枠内に収まれば相続税の申告納税も不要になります。相続税は所得税や贈与税と比べて税率が低めであることに加え、上記のような控除措置があるので有利になります。

では、前述の父、母、子の家庭を想定して、誰を受取人に指定するといいのか考えてみます。父が被相続人になると仮定すると、相続税の課税対象とするには以下のパターンが考えられます。

問題は受取人を母と子のどちらにするかですが、これは各家庭の事情を考慮して考える必要があります。

相続税の納税資金の確保のために生命保険を利用するのであれば、受取人は配偶者ではなく子に設定する方が有効なことが多いです。配偶者は最大1億6千万円までの大きな配偶者特別控除の枠があるので、多くのケースでは相続税の支払いの心配は要らないでしょう。
ですから保険金は子を受取人とする方が有意に活用できそうです。

一方で、遺産分割上の問題を回避するために配偶者に現金を残したいなどの事情があれば、配偶者を受取人に指定することも考えられます。ケースバイケースでどのような契約形態が望ましいか変わってくるので、相続に関する法務、税務に明るい専門家に相談して最も有効な形態をとれるようにしてください。

ちなみに、すでに契約済みの生命保険契約でも、被保険者が死亡する前であれば保険金の受取人は変更することが可能です。受取人を変更するには被保険者の同意が必要ですが、受取人となる者の同意は不要です。
上記の例のように契約者と被保険者が同じであれば、自分で自由に受取人を変更することができます。

6.まとめ

まとめ

本章では相続対策で生命保険を効果的に利用するための方法について見てきました。以下でポイントをまとめてみましょう。

  • 生命保険には3つの活用目的(納税資金、遺産分割、節税)がある
  • 保険金は相続税の対象になるように契約形態を考える
  • 相続放棄をすると非課税枠の適用が受けられなくなる点に注意
  • 各家庭の事情を考慮して誰を受取人に指定するのが有効か、専門家と相談する

税金面の考慮については個別具体的な計算が必要になりますから、法律面だけでなく税務面に明るい専門家の助力も必要になります。法務・税務両面で対応できる体制を取っている専門家であれば、ワンストップで相談できるので便利です。


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