相続対策のすべて|分割・納税・節税・財産管理まで専門家が徹底解説

相続対策は、資産の多寡にかかわらず、誰にでも起こりうる人生の一大イベントです。「まだ先のこと」「うちは揉めるほどの財産はないから大丈夫」といった考えが、残された家族に思わぬ負担や争いを招くおそれもあります。

相続対策は、単に相続税を軽減するためだけのものではありません。大切な家族が円満に財産を引き継ぎ、安心して暮らしていけるよう備える「思いやりの準備」です。

本記事では、相続を「遺産分割」「財産管理」「節税」「納税」の4つの柱から捉え、専門家がそれぞれのポイントを徹底解説します。来るべき日に備え、今からできることを一緒に考えていきましょう。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

記事のポイントは以下のとおりです。

  • 相続対策は資産の多少にかかわらず必要であり、遺族の負担軽減や円満な財産承継を目的としている
  • 遺言書の作成や財産の整理、家族信託の活用は、円満な相続につながる
  • 生前に話し合いを行い、遺言書を作成することで相続争いを未然に防げる
  • 相続手続きを円滑に進めるために、財産目録やエンディングノートを作成しておく
  • 分割しにくい財産は、生前に現金化するなどして整理する
  • 生前贈与や各種特例の活用により、相続税の負担を軽減するための節税対策を講じておく
  • 納税資金を確保するため、保険の活用や不動産の売却などを検討する
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1.相続対策の概要と重要性

相続対策とは、将来の相続に備え、相続人の負担やトラブルを軽減するために行う準備です。主な目的は、相続税の負担軽減、遺産分割時の争いの回避、財産の円滑な承継にあります。

こうした問題を未然に防ぐには、「分割」「財産管理」「節税」「納税」の4つの柱に沿って、生前からバランスよく備えておくことが重要です。対策を怠ると遺産分割協議がまとまらず、相続税の納付遅延や財産の損失につながるおそれがあるため、早めの準備が欠かせません。

相続は、財産の多寡にかかわらず、誰にとっても起こり得る重要な出来事です。遺言の作成や生前贈与、資産の見直しなどを通じて、家族が安心して引き継げる環境づくりを始めましょう。

2.相続遺産の分割(相続争い)に関する対策・ポイント

相続における深刻な問題の一つが、相続人同士の対立、いわゆる「争続」です。家族が財産を巡って争い、関係が壊れてしまうことは、多くの人にとって望ましいことではありません。

このようなトラブルを避け、円満な相続を実現するには、生前から計画的に準備を進めておくことが重要です。相続遺産の分割に向けた主な対策は、以下のとおりです。

  • 生前から相続に関して話をしておく
  • 生前のうちに遺言書を作成してもらう
  • 分割しにくい財産の組み換えを行う

以下では、それぞれの対策とポイントについて解説します。

2-1.生前から相続に関して話をしておく

相続トラブルを避けるには、生前に家族全員で相続について話し合うことが重要です。財産の内容や分け方について意見をすりあわせることで、認識のズレや誤解が生じにくくなります。

不動産のように分けにくい財産がある場合は、誰が取得するかを事前に決めておくことで、争いを未然に防げるでしょう。

さらに、話し合いを通して家族の意向を確認できるため、遺言書作成の方向性が明確になります。円満な相続の実現には、早い段階で話し合いの場を設けることが有効です。

2-2.生前のうちに遺言書を作成してもらう

遺言書は、相続トラブルを未然に防ぐ有効な手段です。被相続人の意思を文書で明確に残すことで、相続人同士の認識の違いや争いを回避しやすくなります。

遺言書にはいくつかの方式があります。なかでも確実とされているのが公正証書遺言です。公証人が作成に関与するため、形式不備の心配がなく、家庭裁判所での検認も不要です。自筆証書遺言書保管制度の場合には、自筆の遺言書であっても法務局に預けることで検認を省略できます。

ただし、相続人の中には「遺留分」として法律で最低限の取り分が保障されている人もいるため、財産の配分には慎重な配慮が必要です。また、遺言書の作成には法律や税務の専門知識が求められる場面も多いため、司法書士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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遺言の作成は場合によってはトラブルの元に。手遅れになる前に6000件以上の相談実績のある専門家へ相談し、円満相続の実現を目指しましょう。まずはお気軽にご相談を。

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2-3.分割しにくい財産の組み換えを行う

分割が難しい財産は、生前に整理しておくことが有効です。不動産や自社株は相続トラブルの主な原因となります。

不動産は、利用していない土地や建物をあらかじめ売却し現金化しておくことで、納税資金の確保や相続人間での公平な分配がしやすくなり、遺産分割を円滑に進められます。

自社株は、複数の相続人に分散して承継されることを避け「少数の後継者に集中させる」か「法人を分割して承継させる」方法が望ましいでしょう。法人を分割して承継させる方法の場合は、不動産ごとに法人を分けることで評価額を分散できるため、相続税の負担軽減も期待できます。

3.相続遺産の財産管理に関する対策・ポイント

相続手続きを円滑に進めるためには、まず被相続人の財産の所在と内容を正確に把握することが大前提となります。ただし、生前に財産が整理されていなければ、相続人はその調査に多大な時間と労力を要し、手続きの遅延や申告漏れといったリスクも懸念されます。

さらに高齢化社会においては、認知症などによる判断能力の低下に備えた財産管理も重要な課題です。相続財産の管理に関する主な対策・ポイントは、以下のとおりです。

  • 生前での財産の整理
  • 財産目録・エンディングノートの作成
  • 遺言信託の活用
  • 家族信託の活用

それぞれについて、確認していきましょう。

3-1.生前での財産の整理

生前の財産整理は相続対策の基本です。資産を明確に把握し、不要なものを処分することで、相続人の負担を大幅に軽減できます。

まず、預貯金を整理することが重要です。複数の金融機関に分散している口座を集約し、休眠口座を解約しましょう。通帳やカードの保管場所も、一元化しておくと便利です。

不動産は、賃貸契約書や土地の権利書、固定資産税の納税通知書、登記簿謄本などをまとめて保管します。利用していない土地や建物がある場合は、売却や活用を検討しましょう。

有価証券や保険契約も、対象に含めましょう。証券会社の取引報告書や保険証券を確認し、不要なものは解約します。デジタル資産の管理方法についても、あらかじめ方針を定めておくと安心です。

資産の整理にあわせて、負債の有無も把握しておきましょう。住宅ローンや借入金があれば、返済計画を明確にすることが重要です。

3-2.財産目録・エンディングノートの作成

財産目録とエンディングノートの作成は、遺族の精神的・事務的負担を軽減し、相続手続きを円滑に進めるための有効な手段となります。

財産目録には預貯金や不動産、有価証券、保険といったプラスの財産を記載します。加えて、借入金や未払金などのマイナス財産も漏れなく記載しましょう。各財産の種類・所在地・評価額を明記することで、相続財産の全体像を正確に把握できます。相続人は財産目録を確認することで、遺産分割や相続放棄などの判断もしやすくなります。金融機関の口座情報や権利証の保管場所なども明確にしておくことが重要です。

エンディングノートは法的効力こそありませんが、財産目録の補完資料として有用です。まずは、財産情報や重要な連絡先などの事務的事項から記入します。そのうえで、葬儀や埋葬に関する希望やご家族へのメッセージも記しておくとよいでしょう。エンディングノートにより、残された家族が故人の意思をくみ取りやすくなり、精神的な支えにもなります。

財産目録やエンディングノートを事前に作成しておくことで、情報の整理と可視化が進み、相続手続きの混乱を回避できます。

3-3.遺言信託の活用

遺言信託は、信託銀行や証券会社が提供している遺言書の作成支援から保管や遺言執行までを担うサービスです。遺言に関する手続きを一括して専門家に任せられる安心感が、メリットといえるでしょう。

ただし、遺言信託は富裕層を主な対象としているため、費用が高額になることも少なくありません。さらに、身分行為に関する内容は対応の対象外とされており、遺言の内容によっては受託を断られることもあります。加えて、親族間で争いが生じている場合には、対応してもらえない可能性もあります。

より現実的な選択肢として、司法書士や税理士への直接依頼を検討してみましょう司法書士や税理士などの専門家に直接相談したほうが、柔軟かつ実務的な対応が期待できます。費用対効果を重視する場合は、専門家への依頼を優先するほうが望ましいでしょう。

3-4.家族信託の活用

家族信託は、認知症などで本人の判断能力が低下した際に財産管理が困難になるリスクに備える制度です。本人(委託者)が信頼できる家族など(受託者)に財産管理を任せる仕組みであり、本人が受益者として利益を受け続けられることが大きな特徴です。家族信託は、成年後見制度よりも柔軟に資産運用や処分が可能であり、資産凍結を回避しつつスムーズな財産管理に役立ちます。

家族信託には、以下のメリットがあります。

  • 認知症発症後の資産凍結を防止できる
  • 投資や不動産売却など柔軟な資産運用ができる
  • 受益者連続型信託」を利用すれば、孫世代以降の財産承継先も指定可能

実際の活用例には、以下のケースがあります。

  • 認知症になった時のための通帳やお金の管理
  • 自分が施設に入った後の空き家になる家の管理
  • 体力の衰えにより、アパートの運営を子に任せたい
  • 遺言では対応が難しい、配偶者の死後に子や孫などへどのように財産を引き継ぐかといった、二次相続以降の承継計画の設定

さらに、障がいのある子どもの生活を守る「福祉型信託」としても利用されており、信託財産から得られる収益を生活費や医療費に充てることが可能です。加えて、親が所有する不動産を信託財産に含めておくことで、将来介護費用が必要になった際に受託者である子どもがスムーズに売却し、資金に充てることもできます。

ただし、家族信託には身上監護(介護や医療契約の代理)が認められていません。そのため、任意後見制度との併用を検討することが望ましいでしょう。受託者には大きな責任が伴うため、契約内容は慎重に検討し、司法書士など専門家の助言を受けながら状況に応じた利用方法を検討することが重要です。

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あなたの意思をしっかり残すために、元気なうちからの準備が大切です。遺言作成や家族信託から相続まで、手遅れになる前に6000件以上の相談実績のある専門家へ相談し、円満相続の実現を目指しましょう。まずはお気軽にご相談を。

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4.相続税の節税に関する対策・ポイント

相続税は、亡くなった人から財産を相続または遺贈によって取得し、その金額が一定の基準(基礎控除額)を超える場合に課される税金です。基礎控除額は、以下の式で算出されます。

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続税には累進課税が適用されるため、財産が多いほど税率も高くなります。ただし、法律で認められた制度や特例の活用により、相続税負担の軽減が可能です。相続税の節税に役立つ代表的な対策として、以下の制度が挙げられます。

  • 生前贈与
  • 配偶者控除
  • 不動産の活用
  • 小規模宅地等の特例
  • 資産管理会社の設立

これらの対策について、順に見ていきましょう。

4-1.生前贈与

相続税の節税には、生前贈与の活用が効果的です。生前に財産を計画的に移転することで、相続時の課税対象を減らすことも可能です。

贈与税には年間110万円までの非課税枠があります。非課税枠を活用し、複数年にわたって家族に贈与する(暦年課税)ことで、税負担を抑えつつ財産の移転が可能です。ただし、毎年同じ金額を同じ時期に贈与し続けると、定期贈与と見なされる可能があり、贈与全体が課税対象になる場合もあります。そのため、各年で贈与契約書を作成し、銀行振込で記録を残すことが重要です。

相続時精算課税制度では、累計2,500万円までの贈与が特別控除として非課税となります。さらに、2024年以降は年間110万円の基礎控除が新設され、この範囲内の贈与については贈与税が課されず、累計2,500万円の特別控除に含める必要がなくなりました。ただし、相続時精算課税制度を選択すると、以後は前述の暦年課税に戻れないため、慎重な検討が必要です。

そのほか、以下の非課税措置もあります。

  • 教育資金の一括贈与(要件を満たすことで最大1,500万円まで非課税)
  • 結婚・子育て資金の一括贈与(要件を満たすことで最大1,000万円まで非課税)
  • 20年以上連れ添った夫婦の間での居住用不動産、またはそれを取得するための金銭の贈与(暦年贈与の基礎控除110万円とは別に、最大2,000万円の配偶者控除が可能)

制度の選び方によっては、かえって不利になる可能性もあるため、計画的に進めることが大切です。贈与を検討する際は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

4-2.配偶者控除

相続税法には、亡くなった人の配偶者が相続によって取得した財産について、税負担を大幅に軽減する配偶者控除(配偶者の税額の軽減)という制度があります。配偶者が取得した財産のうち、次のいずれか多い金額までは相続税が課されません。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

配偶者控除は多くの場合、一次相続では配偶者の相続税負担がゼロになるか、軽減されます。

ただし、一次相続で配偶者に財産の大部分を集中させた場合には、相続した配偶者が亡くなった際の二次相続で税負担が結果的に重くなる可能性もあります。一次相続で配偶者が法定相続人に含まれていた場合、二次相続では相続人の数が減少するためです。

配偶者控除の適用にあたっては、目先の一次相続における節税効果だけではなく、二次相続まで見据えた長期的な視点から財産の配分バランスを検討することが重要です。

なお、配偶者控除の適用を受けるには、相続税の申告期限までに遺産分割が確定しており、申告書に所定の事項を記載して提出する必要があります。

4-3.不動産の活用

不動産は現金と異なり、相続税評価額は時価より低く算出されるため、課税対象を抑えられます。賃貸物件の場合は利用が制限されるため、評価額がさらに下がり、借家権割合や賃貸割合が高いほど評価額の減額幅が大きくなります。

ただし不動産は流動性が低く、管理には手間やコストがかかるため、節税効果にとどまらず長期的な収益性や相続後の運用計画も視野に入れておくようにしましょう。

4-4.小規模宅地等の特例

相続税の節税を図るうえで、小規模宅地等の特例は有効な手段です。この制度を活用すると、相続税評価額を最大80%減額できます。

対象は被相続人の居住用や事業用に使われていた宅地で、一定の要件を満たさなければなりません。

居住用宅地は330㎡まで、事業用宅地は400㎡まで80%の減額が認められています。一方で、貸付事業用宅地については、200㎡まで50%の減額にとどまるため注意が必要です。これらの特例を適用することで、相続税の負担を大幅に軽減できます。

4-5.資産管理会社の設立

不動産収入や配当収入が多い場合、財産を法人に集約することで将来の相続税の増加を抑える効果が期待できます。資産管理会社で収入を受け取ることで、役員報酬や給与として親族への分配が可能です。贈与よりも税率の低い所得税や住民税で、財産を移転できるメリットがあります。

さらに、法人で不動産を保有すると、相続時の課税対象は不動産そのものではなく会社の株式です。この株式の評価では法人税相当額が控除されるため、相続税の負担を抑えることにつながるでしょう。

ただし、設立や運営にかかるコストや法人税の負担に役員報酬の適正額、株式評価の複雑さ、将来的な会社の扱いなど考慮すべき点は多岐にわたります。判断を急がず、税理士などの専門家に相談して、個々の状況に応じた詳細なシミュレーションとアドバイスを受けることが重要です。

5.相続税の納税に関する対策・ポイント

相続税の節税対策を講じたとしても、基礎控除額を超える財産がある場合には相続税が発生します。相続税の申告・納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内であり、原則として現金で一括納付しなければなりません。

納税資金を確保するための対策も、相続対策の重要な柱の一つです。主な対策として、以下のものが挙げられます。

  • 保険や退職金を活用する
  • 暦年贈与を活用する
  • 必要に応じて一部の不動産を売却し現金化する
  • 期限内の納税が難しい場合は延納・物納を活用する

こでは、それぞれのポイントについて解説します。

5-1.保険や退職金を活用する

生命保険は相続税対策として有効です。法定相続人1人あたり500万円までが非課税となるため、税負担を抑えられます。受取人が指定されている保険金は遺産分割の対象外となり、他の相続人の同意を得ずに手続き可能です。

小規模企業共済も同様に、死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。

これらの制度を活用することで、納税資金の確保と節税の両立が可能です。相続税は原則として現金での一括納付が求められるため、原則として遺産分割の対象とならない保険金や共済金は即時に使える資金として役立ちます。

5-2.暦年贈与を活用する

暦年贈与は、年間110万円までの贈与を非課税で行える制度です。主に現金などを計画的に贈与することで、相続財産を減らしつつ、相続人の資金形成を支援できます。

ただし、2024年1月1日以降に行われた贈与については、相続開始前7年以内(改正前は3年以内)のものが相続財産に加算されることになりました。そのため、早期から継続的な贈与を始めることが重要になるでしょう。

この新しいルールによる影響は2027年1月1日以降に発生する相続から出始め、相続財産に加算される期間は段階的に長くなっていき、2031年1月1日以降に発生する相続で完全に7年分が対象となります。なお、今回の改正で延長された期間(相続開始前3年超7年以内の期間)に受けた贈与に関しては、総額100万円までは相続財産に加算されないという経過措置が設けられています。

年間の贈与額が110万円を超えた場合、その超過部分に対して贈与税が課され、税率は10~55%です。なお、父母や祖父母などの直系尊属から18歳以上の子や孫へ贈与する場合には「特例税率」が適用され、一般税率よりも税負担が軽減されます。

5-3.必要に応じて一部の不動産を売却し現金化する

不動産が相続財産の大部分を占める場合、相続税の納付に必要な現金を確保できず、相続人が困るケースもあります。そのため、生前に一部の不動産を売却して現金化しておくことは、有効な相続対策です。

売却で得た資金は納税に充てられるだけでなく、手続きの簡素化や相続トラブルの防止にも役立ちます。不動産の相続には相続人全員の同意が必要なため、時間や労力がかかる場合もあります。一方、生前売却であれば所有者が主導して処分でき、遺言書や複雑な書類の準備が不要です。

5-4.期限内の納税が難しい場合は延納・物納を活用する

相続税を期限内に現金で納付することが困難な場合は、延納や物納の制度を検討する必要があります。

延納は分割払いの制度であり、相続人が生活資金を確保しながら納税できる利点があります。ただし、利子税の負担や担保の提供が求められるには注意が必要です。

物納は不動産などの財産で納税する方法ですが、申請条件が厳しく土地の境界確定の手続きも伴います。

いずれも相続税の申告期限までに申請書を提出し、税務署の許可を得なければ利用できません。これらは現金一括での納付が困難と判断された場合にのみ認められる制度です。そのため、早めに状況を整理し、申請に必要な書類を準備しておくことが大切です。納税方法の選択は将来の資金計画にも影響するため、専門家への相談も視野に入れて対応しましょう。

6.まとめ

本記事では、相続対策について「遺産分割」「財産管理」「節税」「納税」4つの側面から解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

  • 相続対策は資産の多少にかかわらず必要であり、遺族の負担軽減や円満な財産承継を目的としている
  • 遺言書の作成や財産の整理、家族信託の活用は、円満な相続につながる
  • 生前に話し合いを行い、遺言書を作成することで相続争いを未然に防げる
  • 相続手続きを円滑に進めるために、財産目録やエンディングノートを作成しておく
  • 分割しにくい財産は、生前に現金化するなどして整理する
  • 生前贈与や各種特例の活用により、相続税の負担を軽減するための節税対策を講じておく
  • 納税資金を確保するため、保険の活用や不動産の売却などを検討する

相続対策は、一朝一夕にできるものではありません。ご自身の財産状況、家族構成、そして何よりも「誰に何をどのように遺したいのか」という想いを明確にすることから始まります。そして、その想いを実現するためには、早期からの計画的な準備と、司法書士や税理士など専門家の適切なアドバイスが不可欠です。「まだ早い」と思わずに、まずは現状を把握し、家族と話し合うことから始めてみましょう。

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに400件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間60件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

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