【2019年12月司法書士監修】家族信託でアパートローンの債務控除ができる!?|信託融資(信託内借入・信託外借入)の活用方法とは

家族信託でアパートローンの債務控除ができる!?|信託融資(信託内借入・信託外借入)の活用方法とは

雑誌や新聞、セミナーなどで一般の方でも、認知が増えてきた家族信託・民事信託ですが、相談事例の中でも、高齢の親の認知症対策として家族信託・民事信託を活用してアパート管理、相続対策を行っていきたいといった相談が増えてきました。

家族信託・民事信託を活用した融資を考慮する場合に検討しなければならないのは、親相続後のローンについて債務の取り扱いと相続時の債務控除として活用できるかという点です。

今回の記事では事例を元に、下記をお伝えします。

  • 信託内借入と信託外借入でローンの取り扱いと相続時の債務控除について取り扱いが異なるので注意が必要
  • 信託外借入ではローンと受益権が紐づかないので親他界時にローンと受益権(信託財産)を引き継ぐ者が異なってしまう
  • 信託内借入では受益権とローンが紐づくので、受益権(信託財産)を引き継ぐ者がローンを引き継ぐ
  • 相続時における債務控除について適用するためには、信託内借入の場合には受益者連続型信託にすべき

この記事を読むことで、どのようにローンと信託を組み合わせていけばいいかわかるはずです。
まずは、事例に基づきどのように家族信託・民事信託を活用して融資を行っていくのかという点について検討していきます。

なお、既にアパートローンがあるオーナーの家族信託・民事信託の活用のポイントについては、別の記事で詳しくまとめていますので、興味ある方は下記の記事をご確認ください。
>>アパートローンを組んで建築した収益物件を家族信託するには?|抵当権付不動産の信託手続のポイント

事例 収益物件建築のため家族信託を活用して融資を受けたい

高齢の父(88歳)の相続対策のため、実家を建替計画を検討している長男(60歳)からの相談です。実家が老朽化しており、駅から近いこともあり、金融機関からの融資を受けて自宅兼アパートへと建て替えを予定しています。完成後は、父と長男夫婦とで同居予定です。建築計画から完成まで時間がかかることもあり、その間に父の認知症等が進み、建築計画を遂行できなくなるリスクを心配しています。

事例の家族関係図

何もしなかった場合

認知症などで父の判断能力が喪失した場合には、実家の建て替え計画を遂行することができなくなります。

成年後見制度を使った場合

父に資産があるため、親族は成年後見人になれず、司法書士、弁護士等の専門家が成年後見人になる可能性が高く、その場合、父にとって意味のある合理的な理由のある支出しか認められません。また、融資を活用した収益物件の建築などをすることができなくなります。

このように何もしないでいると、上記のリスクが発生するため、家族信託・民事信託を活用した対策を検討する必要があるのです。

家族信託・民事信託を使った融資の仕組みとは?(信託内借入・信託外借入)

家族信託・民事信託を使った融資の仕組みとしては、信託契約で定めた受託者である子の権限により、受託者が借入を行う信託内借入と、信託契約の枠外で親(委託者本人)が金融機関で融資手続きを行う信託外借入(しんたくがいかりいれ)という二つの方法があります。
信託内借入では借入した金銭は、受託者が管理する信託財産となるため、以後の建築手続き等は全て受託者が行えるのに対して、信託外借入では、親自身が借入をしていることから、親の金銭であり、親が建築計画を遂行し、建物完成後に受託者に信託するという違いがあります。

信託内借入と信託外借入の違い

それぞれの詳しい手続きの内容は、別の記事で詳しく紹介していますので、下記の記事を確認してみてください。
>>家族信託を活用したアパート建築・融資の方法|信託内借入と信託外借入とは!?

信託内借入と信託内借入では親他界後のローンの取り扱いが異なる

ローンの取り扱い

信託内借入と信託外借入とでは、信託契約の定めに従い受託者が融資を受けるのか、それとも委託者個人が融資を受けるのかという違いがあるため、親の相続後のローンの取り扱いが異なります。

信託内借入をした後のローンの取り扱い

信託内借入では、受託者が借入権限をもっていることから、受託者名義で融資、建築手続き、返済手続きまでを一貫して行うことができます。
そして、親が信託した財産は、すべて受益権(信託財産)に代わり、受益権の中に不動産やローンなど全ての財産が含まれることになります。そのため、受益権を有する親の相続などが発生しても、信託財産に組み込まれている収益物件など積極財産とともに借入金などの負債も受益権として移動するので、親他界後に受益権を引き継いだ相続人が以後、不動産もローンも引き継ぎます。

信託内借入後の債務の相続

信託外借入をした後のローンの取り扱い

信託外借入では、信託財産ではなく、委託者である親本人がローンを負担しています。
不動産など信託財産は受託者が管理、ローンは親が負うというように信託財産とローンが紐づいていません。
そのため、親の相続が発生した場合には、信託契約で定めた相続人が財産を引き継ぎますが、ローンは親の法定相続人全員に引き継がれてしまいます。
財産とローンを引き継ぐ者が異なってしまう結果になるため、親の相続後に金融機関と協議の上、財産を引き継いだものに一致させるための手続きが必要です。

信託外借入後のローンの相続

信託を活用したローンの相続時における債務控除の考え方

受益権を相続税評価する

家族信託をした親の他界後には、相続税を計算していく必要があります。

家族信託をすると親は受益権を有しますが、相続時において、親が有していた受益権の相続税評価が必要です。相続において収益物件建築のためのローンがある場合、相続財産からそのローン相当額を差し引いて計算(債務控除)することができます。同様に、家族信託を活用したローンが相続時に残っている場合に、そのローンを負債として相続財産から控除して計算できるのかという点について、信託内借入と信託外借入とで考え方が異なります。

信託内借入におけるローンの債務控除

信託内借入においてはローンの取り扱いを、父の死亡で終了する一代限り信託と父死亡で終了せず継続する受益者連続型信託の場合とで分けて考える必要があります。

親他界後も信託を継続する受益者連続型信託の場合

信託内借入を検討する際には、相続税法第9条の2第2項、第4項及び第6項が重要なポイントです。

相続税法
第九条の2
2 受益者等の存する信託について、適正な対価を負担せずに新たに当該信託の受益者等が存するに至つた場合(第四項の規定の適用がある場合を除く。)には、当該受益者等が存するに至つた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の受益者等であつた者から贈与(当該受益者等であつた者の死亡に基因して受益者等が存するに至つた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
4 受益者等の存する信託が終了した場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となる者があるときは、当該給付を受けるべき、又は帰属すべき者となつた時において、当該信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となつた者は、当該信託の残余財産(当該信託の終了の直前においてその者が当該信託の受益者等であつた場合には、当該受益者等として有していた当該信託に関する権利に相当するものを除く。)を当該信託の受益者等から贈与(当該受益者等の死亡に基因して当該信託が終了した場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
6 第一項から第三項までの規定により贈与又は遺贈により取得したものとみなされる信託に関する権利又は利益を取得した者は、当該信託の信託財産に属する資産及び負債を取得し、又は承継したものとみなして、この法律(第四十一条第二項を除く。)の規定を適用する。ただし、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第二十九号(定義)に規定する集団投資信託、同条第二十九号の二に規定する法人課税信託又は同法第十二条第四項第一号(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)に規定する退職年金等信託の信託財産に属する資産及び負債については、この限りでない。

第2項では、委託者兼受益者の自益信託において、受益者が死亡し、信託が終了せず、次順位受益者に受益権が移動した場合の税務の取り扱いを規定しています。これは、当初の受益者である親が死亡し、第二受益者に引継ぎ信託を継続していくという受益者連続型信託の場合の規定です。

第2項の規定により、受益者である親の死亡により、受益権を受け継ぐ第二受益者は受益権を相続により取得したものとみなされます。そして、第6項の規定により、受益権を相続により取得したものとみなされた者は、当該信託の受益権(信託財産)を構成する資産および負債を取得し、又は承継したものとみなされることから、受益者連続型信託の信託内借入にもとづくローンは承継されたものとみなされ、相続時の債務控除が可能という解釈ができるのです。

親他界で終了する一代限りの信託の場合

一代限りの信託の取り扱いについては、同条第4項で規定しています。

第4項では、信託終了時における受益権の取り扱いを規定していますが、信託受益権の負債を承継したものとみなす第6項において、第1項から第3項については触れていますが、第4項には触れていません。信託終了後においては、信託終了時の受託者(清算受託者)が清算手続きを行い、残った債務の弁済を経た後、信託契約で定めた帰属権利者等へ信託財産を給付するという信託法(信託法177~184)の規定から信託終了時には債務がないことを前提として相続税法を規定していると考えられるからです。

清算手続き

同条第6項において、受益者連続型信託のように負債を承継されたものと明確に規定がされていないのです。そのため、一代限り信託における信託内借入でのローンは親の相続時に債務控除ができないと解釈されるリスクがあります。

相続時において家族信託・民事信託を活用した融資において、債務控除ができないというリスク回避を重視するのであれば、受益者死亡を信託終了事由とする一代限り信託とせず、受益者連続型信託とし、信託を継続させる設計にすべきす。

信託外借入におけるローンの債務控除

信託外借入においては、委託者個人が借入を行っているため、これまで述べてきた信託内借入における債務の取り扱いではなく、通常の相続手続きと同様に考えることができるため、通常通り債務控除ができると考えられます。既に説明したとおり、ローンは法定相続人全員に相続されてしまうので、受益権(信託財産)を引き継ぐ相続人に一致させるための手続きが必要です。

アパートローンの相続と債務控除の適用を考慮した上での家族信託設計方法とは?

冒頭で述べた事例について、具体的にどのように設計をしていくべきか、検討します。

信託内借入を活用する場合

受益者連続型信託とします。
父の判断能力の低下に関わらず、受託者である長男が実家の解体、自宅兼アパートの建築計画、融資、完成後の不動産管理会社、入居者との一連の手続きを行います。そして、父他界後は信託財産を受益権として第二受益者である長男に移動します。その後、適切な時期で信託を合意終了させ信託財産及びローンを長男に帰属させます。受益者連続型とすることで、ローンと財産の帰属先を一致させ、第二受益者に受益権として移動させることができ、債務控除を活用することができます。

信託スキーム設計
委託者   父
受託者   長男
受益者   父
第二受益者 長男
信託財産  実家、金銭 →(建物完成後)自宅兼アパート、金銭
終了事由  受託者及び受益者の合意
帰属権利者 最終の受益者

信託外借入を活用する場合

父死亡で終了する一代限り信託とします。
当初は建築予定地のみを信託し、父名義で借入及び建築を行い、建物完成後に新築建物を追加で信託するスキームです。ローンは父個人が負担しているため、相続時における債務控除を通常の相続通りに活用することができます。しかしながら、父他界後、信託契約に基づく自宅兼アパートの長男への帰属とは別に、法定相続したローンを金融機関と協議の上、長男に引き継ぐ必要がでてきます。

信託スキーム設計(当初信託)
委託者   父
受託者   長男
受益者   父
信託財産  建築予定地(土地)、金銭
終了事由  父の死亡
帰属権利者 長男

信託スキーム設計(追加信託後)
委託者   父
受託者   長男
受益者   父
信託財産  建築予定地(土地)、金銭、自宅兼アパート(建物)
終了事由  父の死亡
帰属権利者 長男

上記は一例です。
実際の設計は、ご家庭の状況、信託する財産の内容によって異なるため、専門家と相談しながら進めていく必要があります。

まとめ

  • 信託内借入と信託外借入でローンの取り扱いと相続時の債務控除について取り扱いが異なるので注意が必要
  • 信託外借入ではローンと受益権が紐づかないので親他界時にローンと受益権(信託財産)を引き継ぐ者が異なってしまう
  • 信託内借入では受益権とローンが紐づくので、受益権(信託財産)を引き継ぐ者がローンを引き継ぐ
  • 相続時における債務控除について適用するためには、信託内借入の場合には受益者連続型信託にすべき

信託内借入と信託外借入とでは、信託の進め方がご家族の置かれた状況によって異なってきます。また、これまで説明してきたように受益権と債務の取り扱い、信託融資に伴う債務控除の取り扱いなど、借入方式におけるメリット・デメリットも考慮する必要があります。

家族信託・民事信託はまだまだ新しい制度のため、法務・税務、そして、金融機関の取り扱いなど最新情報を入手しながら進めていく必要があります。しかも融資については、経験したことがない士業・専門家がほとんどです。実際に進めていく際には、家族信託・民事信託と融資の経験が多い専門家と相談しながら進めていってください。

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