【司法書士が教えます】家族信託を活用したアパート建築・融資の方法|信託内借入と信託外借入とは!?

雑誌や新聞、セミナーなどで話を聞く機会が増えて生きた家族信託・民事信託。
認知症対策のみならず、高齢のご両親の相続対策について時間をかけて行っていくために活用してきたいというご相談も増えてきました。

「両親所有の貸アパート老朽化が進んできている」
「今後、改築をする時が来た場合、銀行借入も必要かもしれない」
「高齢の親が融資の契約内容を理解できなかった、借入はできないのだろうか?」
「成年後見制度ではできない高齢の両親に代わって、財産管理を託された子供が融資を受けアパートを建築することで、アパート建築を行い、相続税評価を下げたいが、どうすればいいのだろうか?」
といった家族信託・民事信託を活用した融資の利用の相談を受けることも増えてきました。

今回の記事を読むことで、家族信託・民事信託を利用した融資手続きの概要について理解ができ、両親所有の貸アパートの建築のほか、管理修繕改築を検討することができます。

遺言・成年後見制度では、相続対策を実行できない!?

生前の相続対策として、遺言の作成や成年後見制度の利用が多くの方が考える手段です。ですが、遺言は相続時に効力が生じるため、遺言で特定の子に財産を相続させる内容として作成しても両親がご健在であれば効力は生じず、代わりに財産管理を子が行うことはできません。また、成年後見制度もあくまで“本人の保護”のための制度なので、成年後見人が積極的に融資を受け相続対策を行っていくといったような行為は行うことはできません。

詳しくは、遺言と成年後見制度、家族信託・民事信託の違いについては、事例とともに下記の記事にまとめておりますので確認してみてください。
>>成年後見・遺言と家族信託って具体的にどう違うの?|信託実績100件超の司法書士が事例を遺言と成年後見制度の限界を解説します!

家族信託・民事信託を活用する際の融資には2つのパターンがある

よく誤解を受ける部分ですが、家族信託・民事信託は成年後見制度のような代理人制度ではありません。
受託者は信託された財産(信託財産)の管理権限しかありません。

成年後見人は本人の法定代理人であるため、成年後見人が行った手続きは本人に当然に効果が及びますが、受託者は信託された財産についての管理処分権限しかないのです。そのため、融資についても、どのように対応していくのか検討していく必要があります。

そこで、現在の実務上取られている方法が①信託内借入(しんたくないかりいれ)と②信託外借入(しんたくがいかりいれ)という2つの方法です。

受託者が行う融資手続きである信託内借入とは!?

信託内借入とは受託者が信託契約で定めれた借入権限をもとに、融資を行う方法です。

受託者が借り入れた金銭は、信託財産の中に組み込まれることから信託内借入(しんたくないかりいれ)といいます。受託者が借り入れた借入金は、委託者である親に帰属するのではなく、信託財産の中に融資(借入金)が帰属します。

信託財産の中に融資(借入金)が帰属

そして、受託者は信託財産に組み込まれた借入金(金銭)を活用して、アパート建築手続きを行っていきます。信託財産である金銭を元に建築しているので、完成後のアパートは当然、信託財産となります。

信託内借入

信託財産の中にアパートと借入金が組み込まれているため、信託財産である建築後のアパート収入を原資として、信託財産から借入金の返済をおこなっていきます。受託者が借入権限をもっていることから、受託者名義で融資、建築手続き、返済手続きまでを一貫して行うことができます。

信託内借入した借入金の相続時の取り扱いに注意

信託財産として組み込まれた融資・借入金が、親(委託者兼受益者)死亡後、信託を終了する際にどのように、信託財産を引き継ぐ帰属権利者に引き継いでいくのか、そして、相続時に借入金を活用した相続税の計算上の債務控除についてどのように取り扱うのかといった部分について、見解が不透明な部分もあるため、そのあたり問題ないように専門家と打ち合わせしながら信託外借入の設計を行う必要があります。
相続時における借入金の取り扱いについては改めて別の記事で解説をします。

委託者本人が借り入れる手続き信託外借入とは!?

受託者が信託契約で定めた権限で借り入れを行う信託内借入に対して、信託外借入は親(委託者本人)が借入を行う方法です。つまり、受託者が信託契約に基づいて借入をするのではなく、信託の枠外で親(委託者本人)が金融機関で借入手続きを行い、借り入れた金銭は信託財産として構成されず、親本人に帰属することから、信託外借入(しんたくがいかりいれ)といいます。

親本人に帰属する

そして、親(委託者本人)が借り入れた融資金を活用して、アパートを建築し、親名義でアパート建築後、受託者である子供に建物を信託します。これが信託外借入です。
場合によっては金融機関と事前相談が必要ですが、債務は親に残したまま、親が借り入れた金銭にみを先に受託者に信託し、信託された金銭を活用して受託者が建築し、新築アパートをそのまま信託財産とするというスキームも検討することができます。

いずれにしても、信託の枠外で融資はあくまで親(委託者本人)が行うということがポイントです。信託内借入と異なり、信託外借入では、新築アパートとアパート収入は信託財産となりますが、借入金は親の名義のままの状態となります。そのため、仮池金の返済は親(委託者本人)が行っていく必要があるため、信託財産として入ったアパート収入を随時、借入金の返済のため親(委託者本人)に送金するという手続きが必要となります。

信託外借入

借入手続きを親(委託者本人)が行う必要があることから、親が元気な時に建築・融資計画を遂行していく必要があります。

信託外借入した借入金の相続時の取り扱い

信託内借入に対して、信託外借入においては、親(委託者兼受益者)死亡時の考え方がシンプルです。信託財産に借入金が組み込まれていないことから、借入金は一般の相続財産として他のアパート建築に伴う借入金と同じように考えればよいからです。
そのため、相続時における借入金の処理のリスクを軽減したいのであれば、信託内借入と異なり、受託者の元での一貫した融資、建築、管理を行うことはできないですが、親(委託者本人)が借入を行う信託外借入を敢えて検討するということも選択肢の一つです。

家族信託・民事信託を活用して、融資・アパート建築を行うスキームの流れ

信託契約の締結

信託契約書案の作成

父が元気なうちに資産組換予定の物件を信託財産とする家族信託契約を結びます。
信託契約の内容として下記の内容を設けます。

  • アパートの売却、購入、ビルの建築など資産組換をする権限を長男に持たせます。
  • 信託財産として遊休地及び建築計画に必要な現金(場合によっては融資も活用)を設定ます。
  • 信託契約の終了は「父の死亡」等により終了とします。
  • 父が亡くなったあとは、家族信託が終了し、長男を財産の帰属権利者として定めます。

融資の活用と建物建築

建築請負契約、融資を進めていきます。信託内借入の場合は、受託者が融資・建築計画を行い、信託外借入の場合には委託者が行います。

融資の活用と建物建築

アパート完成後の財産管理

完成後のアパートは信託財産として受託者が管理します。信託内借入の場合は、受託者が借入した金銭で建築するので新築アパートは当然に信託財産となります。
信託外借入の場合は、父(委託者兼受益者)が借り入れた金銭で建築することになるので、父(委託者兼受益者)名義のアパートが完成するため、その後、新築アパートを受託者に追加信託契約で追加信託します。追加信託後、受託者名義での財産管理がスタートします。

アパート完成後の財産管理

親他界後の財産の引継ぎ

父が亡くなった後は信託契約が終了し、帰属権利者である長男へ残余残産として、信託終了時の財産が引き継がれます。

親他界後の財産の引継ぎ

信託融資に対応できる金融機関は少ない

信託融資に対応できる金融機関は少ない

2019年8月現在では、まだまだ、家族信託・民事信託に対応した融資や信託で管理する金銭管理口座の開設に対応できる金融機関がまだまだ少ない状況です。実際に上記で紹介したような家族信託・民事信託を活用した融資、アパート建築手続きを行おうと考えていても実際に相談した金融機関では取り扱いができなかったり、たとえできたとしても融資のための融資条件が通常のアパートローンなどよりも厳格に審査され、通常の融資よりも多くの担保や保証人を求められる可能性があります。
また、実務の取り扱いもまだ少ないため、地域で家族信託・民事信託に精通している専門家と相談しながら融資手続きを進めていくことが肝要です。

まとめ

まとめ

  • 遺言・成年後見制度では、積極的な相続対策を行うことはできない
  • 家族信託・民事信託を活用した融資には、①信託内借入と②信託外借入の2つの方法がある
  • 信託内借入は受託者が借入を行い、信託財産に借入金が帰属し、一貫して受託者名義で財産管理を行うことができるが、信託終了時の取り扱いが不透明な部分がある
  • 信託外借入は、親(委託者本人)が借入を行い、建築手続きを行う必要があるため、親が元気な時に融資などを行う必要がある
  • 信託融資に対応できる金融機関も実務の取り扱いもまだ少なく、不透明な部分が多い

雑誌や新聞、テレビなどの特集で説明されているように家族信託・民事信託を活用すれば、融資や建築なども受託者の権限で自由にできると思われている方が多くいらっしゃいますが、実際に融資などを伴う金融実務の実例数は少なく、実務動向も不透明な部分があるのが現状です。

ですが、家族信託・民事信託を活用することにより、従来できなかった積極的な融資を伴う相続対策を実行することも可能となります。信託内借入と信託外借入についても、それぞれメリット・デメリットがあります。
実際に活用を考えられている方は、我が家にとってどちらの方法をとって融資を行ったほうがいいのか?想定されるデメリットは?など、実際に家族信託・民事信託に精通している専門家と相談しながら、設計をしてみてください。

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