【任意後見VS家族信託】知らないと損をする3つのチェックポイントとは?

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに100件以上の家族信託や生前対策を取り組んでいる。年間50件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

いま、認知症の対策として、「家族信託」と「任意後見」という制度が注目されています。私たちの事務所の無料相談でも、「どちらの制度を選べば良いでしょうか?」という質問を受けることがよくあります。正直、どちらも文字面だけでは、どんな制度なのかよく分からないですよね。

しかし、きちんと中身を比べずに選んでしまうと、「こんなハズではなかった…!」という後悔につながります!なぜなら、この2つの制度は、まさに「似て非なるもの」だからです。「任意後見」と「家族信託」どちらの制度がそのご家族に合っているのかは、本人(とその家族)が置かれている状況によって変わります。

この記事のポイントは下記の通りです!

  • 「家族信託」と「任意後見」どちらも馴染まない場合があるので、要チェック!
  • 積極的な財産管理を行いたいのであれば、家族信託がお勧め
  • 身上監護が必要なら、任意後見がお勧め
  • 裁判所の関与を避けたいのなら、家族信託がお勧め
  • どちらの制度も馴染むのあれば、費用で比較!

今回は、私たちの事務所が相談者にヒアリングする主なチェックポイントをまとめました。この記事を読んで、みなさまの家族が、最適な選択をする手助けとなれれば嬉しいです。

事例

今回は、下記のようなご家族を例にとってご説明していきます。

①高齢の母親がいる
・父親は他界
・最近物忘れが多くなってきている(将来の認知症が心配)
② 子供は、長男・長女の2人
・子供たちは、それぞれ家族をもって独立して暮らしている
・財産管理は、長男が行おうと考えている

そんなに珍しくはないご家族ですよね。
さて、それでは、このご家族の認知症対策として、最適なのは「任意後見」でしょうか?「家族信託」でしょうか?

まずは、スタート地点に立てるかをチェック!

生前贈与には期限がある

どちらの制度が良いのかを選ぶ前に、まず、そもそも、この2つの制度を使えるのかを確認していきましょう。

①目的は「母親」の生活を守るためです!

両制度とも、母親が、将来、認知症になってしまったとしても、母親の生活を守ることを目的としています。(母親に代わって、母親の財産を守る人のことを、任意後見では、「任意後見人」家族信託では、「受託者」と呼びます。)

そのため、「母親の口座のお金を引き出して自分の為に使いたいな…」「母親の不動産を売却して自分の生活費に充てたいな…」というような希望は、どちらの制度でも叶えることはできません。

②いま現在、母親の「判断能力」はあるか?

どちらの制度も「将来」の認知症リスクに備えるためのものなので、「既に」認知症になっている方は、残念ながら、どちらの制度も利用できません。その場合は、法定の成年後見制度を利用することになります。

成年後見の記事については、下記の記事が参考になります。気になる記事があればご参照ください。

》成年後見・遺言と家族信託って具体的にどう違うの?|信託実績100件超の司法書士が事例を遺言と成年後見制度の限界を解説します!
》成年後見制度の申立で知っておきたい「診断書」のもらい方|診断書の書き方で判断能力判定に差が出ます

③詐欺対策にはならない

「母親が悪徳商法に合ってしまった場合、後から取消しができるか?」という心配事もよくあるご相談です。残念なら、両制度とも、長男には契約の「取消権」がないため、詐欺対策としては無力です。この場合も、法定の成年後見制度の利用を検討することになります。

【チェックポイント①】財産どう守りたいか?~攻める?守る?~

さて、無事にスタート地点に立つことができたら、いよいよ、「家族信託」と「任意後見」どちらの制度が最適なのかを考えていきましょう。

チェックポイントの1つめは、母親の今の財産(不動産)の積極的な活用を考えているのか?という点です。「不動産の積極的な活用」というのは、具体的には、下記のようなことを考えている場合です。

・不動産の買い替え(組み替え)を考えている
・不動産を担保にして、銀行から融資を受け、新賃貸ビルの建築を考えている
・古いアパートの建て替えを考えている

主に相続税対策として、上記を検討しているご家族が多いですが、そのようなご家族は、「家族信託」一択となります。なぜなら、「任意後見」では、「本人の財産を1円たりとも減らさせない!」という基本思想があるので、リスクのある(合理的な理由がない)財産の処分は禁じられているからです。
一方、家族信託では、信託契約の条項に定めておけば、柔軟な財産管理ができます。

また、「主な不動産は自宅だけだが、将来の施設費用を捻出するために売却を考えている」という場合も注意が必要です。もちろん、「施設に行ったきりで自宅に戻る目途はない」「売却しないと施設費用が支払えない」というような状況であれば、「任意後見」でも売却は認められるでしょう。(売却しないと本人の生活が守られないのは明白ですからね)

ただ、どのような場合にせよ、売却時は、任意後見監督人(後述)への説明は必須です。一方、家族信託では、家族の判断した必要なタイミングで自宅売却を行うことができます。

そのため、私たちの事務所では、ある程度財産をお持ちで、不動産の売却を含め柔軟な財産管理を行いたいご家族には、「家族信託」をお勧めしています。

【チェックポイント②】身上監護が必要か?

チェックポイントの2つめ、母親の身上監護をする家族がいるか?という点です。「身上監護」とは、母親の生活や治療、介護などに関する法律行為を行うことを言います。具体的には、下記のような行為です。

・介護サービスの契約手続き
・入院の手続き、医療費の支払い
・要介護認定の申請などの手続き
・施設入所手続き、介護費用の支払い

今回の事例で言うと、長男か長女が母親の近くに住んでいて、母親の身上監護ができるのであれば、何の心配もいりません。大抵の医療施設や介護施設では、本人の「家族」であれば、上記の手続きを行うことが可能だからです。

しかし、長男・長女とも遠方に住んでおり、自分たち家族の代わりに、例えば、母親との関係が深い近所の方に身上監護を頼みたいのであれば、「任意後見」一択となります。何故なら、「家族信託」では、「身上監護」は対象とならないからです。(この場合、母親の面倒を見る「任意後見人」は、長男ではなく、その近所の方が就任することになります)

》親の一人暮らしが不安・・・。同居ができないご家庭が取り組むべき財産管理の方法とは?

ちなみに、例え「任意後見人」であっても、実際の介護などの事実行為(入浴の介助、掃除等)や、手術や医療治療に関する同意書へのサイン等、委任できない(又は、委任する必要がない)行為はありますのでご注意ください。
詳しくは下記の記事を見てみてください。

》【親の老後のために必見!】任意後見人の権限、手続き、費用のこと|ご家族で財産管理が可能に

【チェックポイント③】見知らぬ第三者が関与することをどこまで許容できるか?

最後のチェックポイントは、見知らぬ第三者、要は、裁判所の関与をどこまで許容できるか?という点です。家族(母親)の財産は、家族だけで管理していきたい(第3者にあれこれ言われたくない)というのであれば、「家族信託」一択となります。

何故なら、「任意後見」が始まると、裁判所は、任意後見人としては長男を選任しますが、それと同時に「任意後見監督人」として専門家(主に司法書士や弁護士)を選任するからです。任意後見監督人の使命は、中立的な立場で、母親の財産を監督すること(任意後見人を監督すること)です。(ちなみに、専門家が就任するので、彼らに対する報酬も、もちろん必要となります)

任意後見人である長男は、定期的に任意後見監督人に、母親の財産状況を報告する義務があります。そして、任意監督人は、任意後見人からの報告内容を元に、裁判所に対して、母親の財産が適正に管理されていることを報告します。

また、「任意後見」の大きな特徴の1つとして、一度発動すると、原則、母親が亡くなるまでやめられない、という点もあります。任意後見は、任意後見発動後(任意後見監督人選任後)は、正当な事由がある場合に家庭裁判所の許可を得て解除することができます。つまり、原則は、母親が亡くなるまで、その財産は、裁判所の監視・監督下におかれるということになります。そのため、家族(母親)の財産を家族以外に開示したくない、と考えるご家族には、「家族信託」をお勧めしています。

どちらの制度も当てはまるご家族、又は、当てはまらないご家族は、どうする?

チェックポイントの結果はどうでしたでしょうか?

もし、「家族信託」も「任意後見」も両方とも当てはまったご家族は、両制度の併用をお勧めします。一方、チェックポイントのどれも当てはまらなかったご家族は、「家族信託」「任意後見」のどちらの制度も馴染むということになります。その場合は、コスト(費用)を比較して選択すれば良いと思います。

一般的に、初期費用は、「任意後見」の方が「家族信託」よりも安価です。ただ、上記で述べた通り、「任意後見」は一度発動すると、任意後見監督人への報酬(月額2万円程度が一般的)が、母親の亡くなるまで発生します。その一方で、家族信託にランニング費用はありません。

ご家族の将来設計をどのように考えるかで、「家族信託」にするか「任意後見」にするかを選択してみてください。

まとめ

今回の記事では、「家族信託」と「任意後見」について、下記をご紹介しました。

  • 「家族信託」と「任意後見」どちらも馴染まない場合があるので、要チェック!
  • 積極的な財産管理を行いたいのであれば、家族信託がお勧め
  • 身上監護が必要なら、任意後見がお勧め
  • 裁判所の関与を避けたいのなら、家族信託がお勧め
  • どちらの制度も馴染むのあれば、費用で比較!

今回は、私たちの事務所で相談があった場合の大事なチェックポイントをご紹介しました。ただ、任意後見にせよ、家族信託にせよ、どちらが良いのか悩んでいる場合は、専門家へのご相談をお勧めします。

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