全銀協の指針見直しで認知症預金口座の凍結・払戻しのルールが変わる?司法書士が実務目線で徹底解説

この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)


司法書士法人勤務後、2013年独立開業。
司法書士としての法律知識だけではなく、「親子の腹を割った話し合い、家族会議」を通じて家族の未来をつくるお手伝いをすることをモットーに、これまでに200件以上の家族信託をはじめ、相続・生前対策を取り組んでいる。年間50件以上のセミナーを全国各地で行い、家族信託の普及にも努めている。

2021年2月18日に全国銀行協会から高齢者との金融取引、親族との代理等に関する考え方が発表されました。この発表は2月19日の日本経済新聞朝刊にも取り上げられました。

高齢者の親をお持ちのからの相談で最近多いのが、親の認知、判断能力の低下がすすみ、金融機関での預貯金の払い戻しができなくなる、生活費が支払えなくなると困るといった相談を受ける機会が増えてきています。

全国銀行協会の発表では、高齢者、とりわけ生活費や医療費との支払いのために親族との取引を認めるための具体的事例についても言及したことから話題になった内容です。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

  • 認知症など判断能力が低下した高齢者が行う金融取引の基本は成年後見制度
  • 診断書の提出のほかに複数の行員による面談、医療介護費の内容の確認、ビデオ会議など非対面ツールの利用などにより親族などからの銀行取引が認められる可能性が今後ある
  • 代理人取引として、事前に代理人届を提出する方法のほか、親族との財産管理契約による取引も容認している
  • 全国銀行協会に加盟する金融機関が銀行窓口対応の参考となる考え方をとりまとめしたもので、全国一律ですぐるにルールが変わるわけではない

2021年2月18日の全国銀行協会の発表内容と金融機関での高齢者や親族が代わりに行う金融取引の指針について解説していきます。

1.全国銀行協会が2021年2月18日に発表した高齢者や親族による金融取引の考え方

高齢者銀行取引

すでに認知症が進み、判断能力がかなり低下している場合、銀行がその事実を知れば口座を凍結されてしまいます。以後出金、契約内容の変更(定期預金の解約など)は、原則、家族であってもすることはできません。

1‐1.判断能力が低下した高齢者が行う金融取引の基本は成年後見制度

原則的な考え方としては、認知症による判断能力が低下した場合の取引については、基本として成年後見制度の利用を従来通り求められます。家庭裁判所により選任された成年後見人は、法的にも本人の代わりに金融取引ができる代理権が与えられるため、各種手続きを本人の代わりに行うことができます。

認知判断能力が低下した顧客本人との取引
▷ 認知判断能力の低下した本人との取引においては、顧客本人の財産保護の観点から、親族等に成年後見制度等の利用を促すのが一般的である。
▷ 上記の手続きが完了するまでの間など、やむを得ず認知判断能力が低下した顧客本人との金融取引を行う場合は本人のための費用の支払いであることを確認するなどしたうえで対応することが望ましい

(金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)より引用)

成年後見人

成年後見制度を利用するためには、申し立てから成年後見人が就任するまで状況にもよりますが、1か月~2か月程度の時間がかかります。そのため、選任されるまでの間に預貯金口座か生活費が必要など、やむを得ず預貯金の払い戻しを行う場合にはあくまで本人のための費用であることをきちんと確認したうえで対応すべきとしています。

法定代理人との取引
▷法定代理人(成年後見人等)との取引は、法的な裏付けのある代理権者との取引となることから、法定代理人であることを確認のうえ、各行の取引手順に則って対応する。

(金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)より引用)

認知症高齢者との取引の基本はあくまで成年後見制度の利用を基本としているという点は従来と変わらないということを理解しておきましょう。

■関連記事
今まで通り”家族だけ”で親の預金口座を管理できる家族信託・民事信託の仕組みとは?

1‐2.親族などからの銀行取引が認められる可能性も今後ある

親族による取引

成年後見制度を基本とするものの、その利用者総数は 2019 年 12 月末で約 22 万人にとどまっており、家庭裁判所の監督を定期的に受ける、第三者が成年後見人に選任された場合には、その報酬が継続的にかかるといった成年後見制度の煩雑さから利用がすすまず、財産が凍結してしまっている方が多いのが現状です。

そこで、成年後見制度を利用していない(法的な代理権がない)親族からの本人のための医療費、生活費などの支払いに応じるため、下記の考え型を示しています。

無権代理人との取引
▷親族等による無権代理取引は、本人の認知判断能力が低下した場合かつ成年後見制度を利用していない(できない)場合において行う、極めて限定的な対応である。成年後見制度の利用を求めることが基本であり、成年後見人等が指定された後は、成年後見人等以外の親族等からの払出し(振込)依頼には応じず、成年後見人等からの払出し(振込)依頼を求めることが基本である。

▷ 本人が認知判断能力を喪失していることを確認する方法としては、本人との面談、診断書の提出、本人の担当医からのヒアリング等に加え、診断書がない場合についても、複数行員による本人面談実施や医療介護費の内容等のエビデンスを確認することなどが考えられる。対面での対応が難しい場合には、非対面ツールの活用等も想定される。
▷ 認知判断能力を喪失する以前であれば本人が支払っていたであろう本人の医療費等の支払い手続きを親族等が代わりにする行為など、本人の利益に適合することが明らかである場合に限り、依頼に応じることが考えられる。
▷ 無権代理の親族等からの払出し依頼に応じることによるリスクは免れないものの、真に本人の利益のために行われていることを確認することなどにより、当該リスクを低減させることができる。
▷預金が僅少となり、投資信託等の金融商品しかまとまった資産として残っていない顧客の医療費や施設入居費、生活費等の費用を支払うために、親族等から本人の保有する投資信託等の金融商品の解約等の依頼があり、やむを得ず対応する場合、基本的には上記の預金の払出し(振込)の考え方と同様であるが、投資信託等の金融商品は価格変動があることから、一旦、解約等を行った場合、預金と異なり、原状回復が困難である。この点に鑑み、金融商品の解約等については、より慎重な対応が求められる。

(金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)より引用)

金融手続きができない高齢者本人の代わりに、親族が代わりに医療費や介護費支払いのための預金引き出しや解約については極めて限定的な対応としつつ認める事例として、診断書の提出のほかに複数の行員による面談、医療介護費の内容の確認、ビデオ会議など非対面ツールの利用などを示しています。また、投資信託の解約については原状回復が困難なため預金よりも慎重な対応を求めています。

1‐3.本人より委任を受けた代理人による取引を認めている

全国銀行協会の発表は、本人から委任を受けた代理人による金融取引についても言及しています。もともと、代理人による取引については、金融機関に代理人届を提出する方法と、財産管理契約を親族との間で交わしておく方法がありました。

金融機関に代理人届を提出する方法

代理人届

金融機関に代理人届を提出してもらい、代理人用のキャッシュカードを発行して利用する方法です。
代理人カード(家族が持つことのできるキャッシュカード。複数枚作成できることも多い)を作っておき、家族が預金口座からの引き出しができる体制を作っておく従来からの方法です。

任意代理人との取引
▷本人から親族等への有効な代理権付与が行われ、銀行が親族等に代理権を付与する任意代理人の届出を受けている場合は、当該任意代理人と取引を行うことも可能(本人の認知判断能力に問題がない状況であれば、本人との取引が可能なケースもある)

(金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)より引用)

金融機関によっては、「代理人指名」のシステムがあり、本人の判断能力のあるうちに出金の代理人をあらかじめ指名しておき、指名された家族は本人の判断能力低下後も窓口で出金ができるシステムを作っています(出金限度額あり)。

代理人制度を利用することにより、代理人が取引を行うことができますが、金融機関において、口座名義人である本人の判断能力が喪失したことと判断された場合には、上記の代理人制度での取引ができなくなる可能性もあるので、注意してください。

財産管理契約を親族と契約する方法

財産管理契約

判断能力喪失後に裁判所で選任された成年後見人ではなく、親が元気なうちに後見人となる者を定める方法として任意後見契約があります。

注意をしなければならないのは、任意後見契約を作成してもそのままでは効力は生じないことです。将来、本人の判断能力が低下した時に、任意後見人となる人や本人の親族などが家庭裁判所に申し立てを行います。問題が無ければ、家庭裁判所は任意後見監督人を別途選任して、その時点で任意後見契約の効力が発動し、任意後見人は契約に従って委任事務をこなしていくことになります。

そのため、任意後見監督人が選任されるまでは、任意後見の効力が発生しないため、任意後見規約とセットで預貯金口座や不動産の管理を別途親族に依頼する財産管理契約を結ぶことがあります。任意後見が発動するまでは預貯金の払い戻しなどに対して消極的な金融機関が多くあり、財産管理契約を示しても手続きに応じてくれない現状がありました。

任意後見監督人が選任される前であっても、任意後見人が顧客本人の預金取引を代理できるよう、任意後見契約とともに委任契約を締結している事例もある。その場合は、任意後見監督人が選任される前であっても委任契約の受任者である任意後見人との取引が可能

(金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)より引用)

全国銀行協会の発表により、上記のとおり、財産管理契約でも取引が可能と考え方は示されました。この内容にそって、今後金融機関の対応が変わる可能性があります。

なお、弊社司法書士・行政書士事務所リーガルエステートでは、預金が凍結されてしまいお金の管理ができなくなった方、現在キャッシュカードで認知症の親の預金管理を行っている方へ、今後どのように財産管理の仕組みを作ればいいのか、無料相談をせていただいております。どのような対策が今ならできるのかアドバイスと手続きのサポートをさせていただきますので、お気軽にお問合せください。

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2.全国銀行協会の発表にによりすべての金融機関対応が一律に変わるとは限らない

今回の発表は全国銀行協会に加盟する金融機関が銀行窓口対応の参考となる考え方としてまとめたものであり、直ちにこの資料の内容に拘束され、全国統一で運用されるものではないということを理解しておく必要があります。

本考え方は、銀行の窓口等において、高齢のお客さま(特に認知判断能力 の低下した方)や代理の方と金融取引を行う際の参考となるよう取引のポイントや、好事例等を掲載している。

(金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)より引用)

資料の中でもあるとおり、金融取引の参考となる取引のポイント等を紹介しています。もともと、各金融機関において高齢者取引における社内対応マニュアルや規則などがあり、それぞれの金融機関のルールで現在は運用しているという話をよく聞きます。

当然、この指針が発表されたため今後各金融機関で社内マニュアルを制作、改定、見直しをする際に参考となる可能性は高いですが、直ちに拘束されるものではないため、すぐに運用がされるものではないため、金融機関によっては、当面は今まで通りの運用となる可能性もあります。

そのため、親の預貯金口座管理のための、家族信託などの活用も引き続き検討しておくべきです。

■関連記事
今まで通り”家族だけ”で親の預金口座を管理できる家族信託・民事信託の仕組みとは?

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4.まとめ

  • 認知症など判断能力が低下した高齢者が行う金融取引の基本は成年後見制度
  • 診断書の提出のほかに複数の行員による面談、医療介護費の内容の確認、ビデオ会議など非対面ツールの利用などにより親族などからの銀行取引が認められる可能性が今後ある
  • 代理人取引として、事前に代理人届を提出する方法のほか、親族との財産管理契約による取引も容認している
  • 全国銀行協会に加盟する金融機関が銀行窓口対応の参考となる考え方をとりまとめしたもので、全国一律ですぐるにルールが変わるわけではない

全国銀行協会の発表した考え方は、あくまで全国銀行協会に加盟する金融機関の会員の参考とするための情報であり、会員各行に一律の対応を求めるものではないということです。

金融機関の個別の状況等により異なる対応が取られるケースもあり、異なる対応がとられる可能性がある点は留意してください。

今後は一定の条件、手続きを経れば、施設や医療費の支払いについては代理権がない親族でも預金口座の引き出しなどが行える可能性がありますが、診断書の提出など厳格な要件は求められる可能性があります。どの範囲までの引き出しが認められるか、どんな手続きが必要かは個別に確認が必要となることは変わりがないことに注意をしておきましょう。

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